75.明らかな罪を犯さないように、説得してみる?警察が来ていたよねって、俺を監視していた?山の怪、山の怪、もういいかい?
大学の同級生だった人に、俺を殺すのは止めよう、と説得してみる?
「志春くんの疑問も解消されたから、志春くんのお話しタイムの始まり、始まり。」
「どんなノリだ?」
「どうせ、楽しい時間は、すぐ終わるから、最後まで、盛り上げていくんだよ。」
「楽しいのかよ!」
「楽しいっていうか、楽?」
「あー、楽だー。見てるだけだしなー。」
「逃げないように見ていないといけないからなあ。」
「自分だけ、楽していい思い、なーんて、人生はねえんだよ。」
「志春くんを殺せなかったら、二人まとめて、殺らねーといけねー。
こいつが殺れねーからって、こいつを無罪放免ってわけにはいかねーからな?」
「二人分の穴掘りは大変だから、一人分で済ませてもらいたいっす。」
殺らないと、殺られる?
暗くなっている人を説得しても、面白がられるだけ。
効果はなくても、話は引き延ばせる?
話しかけてみる。
「人殺しをしたくなさそうなのに、なんでここにいるんだ?」
「お前が余計なことをするからだろ!」
予想外。俺のせいにしてきた。
説得は無理かもしれない。
「俺は、いいことも悪いこともしていない。」
俺は、俺に必要なことをしただけ。
「お前のせいだ!クソっ。」
元気に怒鳴ってから、また暗くなった。
「はいはい、志春くんの、お話相手は、交代、交代。」
暗くなっている人は、静かになった。
「何が聞きたいんだ?」
「志春くんの知っていること全部?」
「同級生の顔も知らないような俺に聞くなら、具体的に聞いてほしい。」
「志春くんは、警察に、何をタレこんだ?」
具体的だ。
「タレこんだのは、俺じゃないと思う。
俺は、俺の家に空き巣が入ったから、被害届を出しただけだ。」
「空き巣?それは気の毒だったねー。」
「俺の不在中、俺の許可なく、俺のワンルームを好き放題使っていた人に、聞きたいんだ。
俺の部屋から、何か持ち出したか?
持ち出したなら、それは何か。」
「聞いてどうする?」
「持ち出したなら、弁償してもらう。」
「弁償してもらっても、志春くんは、受け取れないから、代わりに、貰ってやるよ。」
「ご相伴にあずかりまーす。」
「「ゴチ、ゴチ。」」
ギャハハの二人組は、臨時収入だ、と騒いでいる。
びた一文、くれてやらん、という台詞を使うのは、今だけど、スルーする。
「警察に行ったのは、それくらいだ。」
「でも、警察が、お部屋に来ていたよー?」
よく見ている。
監視されていた?
監視されていたんだ、きっと。
母さんは?
母さんも監視されていた?
母さんが警察に連れて行かれることを知って、母さんの供述から、ワンルームの主の俺へと捜査の手が及ぶ前に、俺をどうにかして、情報が警察に渡らないようにしたかったということ?
大それた何かが、いもづる式で発覚する恐れがあった?
そんなたいそうな証拠なんて、俺は握っていない。
と言っても、信じない人には通じない。
この人達の中で、結論が出ているから。
誤解と思い込みは、人を殺す原動力になるんだ。
「空き巣は、まだ捕まったと聞いていない。
警察は、空き巣の捜査をしにきたと思う。」
指紋採取は、空き巣の捜査と言っても大丈夫。
「つまらないゴタクはいらん。
志春くん。
もっと、大事な話があるだろう。
思い出せないなら、思い出すまで痛い思いをすることになるから、もう話した方がいいぞ。
さもないと、短い人生が終わる前に、余計な痛みを味わうことになる。」
暴力で、俺の口を割ると脅してきた。
脅しじゃない。
本気だ。
俺が、引っ張れたのは、ここまでで。
限界だ。
これ以上は、俺の身が危ない。
この人達は、暴力をふるうことに対するためらいがない。
山の怪、山の怪。
俺の状況よ、山の怪に伝われ。
おーい、山の怪、もういいかい?
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