73.俺は、餌になりきる。俺は、逃げないんじゃない。俺が、逃さないんだ。山の怪(け)が来るまで、捕まえておくんだ。
8月1日、複数話、投稿。
餌、俺は、餌なんだ。
この人達を山の中にいさせるための餌。
俺は、深呼吸した。
俺に引き付けさせて、逃さないために、俺は何をしたらいい。
「眩しい。懐中電灯は、人の顔に向けるものじゃないと思う。」
とりあえず、懐中電灯を顔に向けてくることについて文句を言う。
「冷静だね?ずっとここに?一人で?」
一人と一柱。
答えないけど。
「そちらさんは、何人いる?」
全員、山の中にいる状態にしたいから、俺を捕まえにきた人達の人数を教えてほしい。
「生意気だー。質問に質問で返すなんて、立場ってのが、分かってないよー。」
「もう逃げられないんだから、素直になるのが、一番。」
ギャハハと笑う二人組。
「もう逃げないんだ?肩透かしもいいとこだな。
もっと派手に逃げ回るかと思って、楽しみにしていたのに。
予定より早く片付きそうで、がっかりだよ。」
「こいつ、捕まえて、連れていくんすよね?」
「その予定だったが、誂えたように、ちょうどよく山の中だからな。」
「労働時間は、少ないにこしたことがない。」
「シャベル、今のうちに持ってきます?」
ここに、山の中に、俺を埋める気満々の会話をしている。
俺の目の前でする会話じゃないと思う。
訂正。
俺のいないところでも、俺を埋める話はしないでほしい。
「山の中で、何をする気なんだ?」
会話をして、気をそらしてみる。
「分かりきったことを聞くじゃないか。
逃げ回っていたくせに、何にも知りませんでした、がいまさら、通るとは、思っていないだろ?」
「息子ちゃんは、賢いもんな。
賢い頭を賢く使って、お返事してくれりゃ、すーぐーに、バイバイしてやるよ。」
「おう、すぐにバイバイしてやる。約束なー?」
「優しいからな、すぐにバイバイしてやるぞ?」
全員、ニヤニヤしているのが、口ぶりから分かる。
バイバイって、この世にバイバイという意味だと思う
優しいという強調は、苦しめない、というつもり?
絶対に嫌だ。
都合よく、俺の存在を消そうとするな。
山の怪は、まだ来ない。
多分、俺の周りにいる人達だけだと、全員揃った状態じゃないからだ。
俺は、逃げない。
この人達を逃さない。
山の怪が来るまで。
ここで、引き止める。
そのために、もっと会話をしないと。
この人達が知りたい情報を話したら、すぐに会話が終わってしまう。
会話を長引かせてるには、どうしたらいい?
この人達は、俺をどうしようと気にならない人達だ。
俺が怪我して、動けない状態になったら、俺の負け。
俺は、元気で、勝たないと。
俺は、何を話そうか、と考えた。
「どうして、俺のことを知っている?」
「母ちゃんと仲良しなんだー。」
「俺は、仲良くない。」
「ごめんなー。母ちゃん盗っちゃって。」
「俺は、なんて呼べばいい?」
「呼ばなくていいよ。俺達しかいないし。
そういうことは、言わなくてもわかるよなー、賢い息子ちゃんは。」
「俺の部屋にあった色々を持ち出したのは、母さん?それとも、そちらさん?」
「大事な物は、管理しておかないと、すぐにバイバイすることになるんだよー。」
「「バイバイ、バイバイ。」」
ギャハハと二人組が笑う。
二人組は、笑う沸点が低いんじゃない。
わざわざ笑っている風を装おっている。
開いている目は、笑っていない。
「そろそろ、選手交代しようか。
小野志春くんは、知っていること、全部、ためずに、話してくれるよなー?」
本題だ。
ここから、いかに引っ張れるか。
俺の頑張りどころ。
「全部話してほしい?
そちらさんが、一番偉い人から、一番偉くない人まで、俺を捕まえにきた人、全員、ここに揃えてからなら、話さないこともない。
同じ話を何回もしたくないんだ。
一回で、全員に、この場で聞かせる。
電話はなしで。
それが、俺の条件。
譲り合い精神がないと、うまくいかないって、知っている?」
俺は、この場所を強調した。
この人達が、山の中にいないと、意味がない。
「えらくこだわるな?この場所から動かないことが、大事なのか?
誰か待っているのか?
誰を待っている?」
なんで、俺が誰かを待っている、と確信して話している?
「志春。この者達が、先ほどから、周辺を歩き回っていたのは、周りに罠がないことを調べておったのであろう。
罠がなかった以上、志春に手を貸す協力者が、何か仕掛けてくるかと疑っておる。」
と神様。
ありがとう、神様。
「俺は、俺の家を荒らすような人を俺の家に近づけたくない。」
協力者、山の怪が来るまで。
俺が、この人達を捕まえておくんだ。
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