69.我が家の庭が明るい。ヘッドライトをつけたんだ。山の怪は、ヘッドライトでは見えないけど、俺には、山の怪の活躍が見える。集中攻撃?
突然、我が家の庭が明るくなった。
庭に停めてある車のヘッドライトがついている。
俺にも、我が家一帯が見えるようになった。
姿が見えない山の怪に翻弄されたから、明るくした?
「神様、山の怪は無事?」
「あの者達は、山の怪をつかむことさえままならぬ。」
と神様。
山の怪は、俺をつかんでいたけど、俺にも山の怪がつかめる?
どこをつかめばいいんだ?
山の怪のどこに、つかむところがあった?
俺の影に一体化していた山の怪。
影をつかむ方法がある?
山の怪に聞いたら、教えてくれる?
今は、山の怪が無事なら、いい。
木の枝と枝の間を移動していた山の怪は、急に止まった。
小さい塊が、一人に向かって、次々に飛んでいく。
「いって!いって!なんか、めちゃくちゃ痛いんですけど!
刺さるんですけど。なんなんすか!」
イガ栗が、一人の顔面狙って、飛んでいる。
顔を庇うように手で顔を庇った人は、車に乗って、俺の首をつかみそこねた人だ。
その人が顔を両手で覆った途端、その人へのイガ栗集中攻撃は止んだ。
「くっそ!こっち飛んできたぞ。こっちに弾いてんじゃないだろうな!」
車から聞いた声が、聞こえた。
上役?
顔面に飛んでくるイガ栗をものともせずに、話をしながら、手でイガ栗を叩き落としている。
イガ栗が痛くないってことはないと思うんだけど?
「違います。俺のところには、何も飛んできていません。」
若い人が、ハキハキと否定している。
「ああ?
なんで、こっち飛んできたんだよ!しつけー。
避けてもかわしても、飛んできやがる。」
「手袋していて良かったじゃないか。ははは。」
と夜中に朗らかな笑い声が響いた。
「穴だらけにならずに済んだな。」
「うっせーよ。当たるかよ。」
ギャハハという笑い声の後。
「飛んでくる対象を絞っているのか?」
という冷静な声が聞こえた。
「どれどれ。イガ栗か。地味に痛いな。」
叩き落とされたイガ栗を、拾った人が、しげしげと確認している。
「おい、何をしたら、イガ栗が飛んでこなくなったか、分かるか?」
「顔を両手で覆いました。」
「よし、手をどけてみろ。」
「え?」
「早くしろ。」
「はい。う、うぎゃー。痛い、痛いっ!鼻に刺さった!」
「分かった、次は、顔を塞いでみろ。」
「大丈夫です。何も来ません!」
「また、こっちに飛んでくるようになったぞ。」
とても賑やかな人達だけど、騒いでいるのが、我が家の庭だって忘れている?
俺の庭に入り込んで、夜中に騒ぐな。
隣近所はないけど、俺が嫌だ。
「一人に絞って、顔を見て狙っているなら、アタリじゃねーのか。
俺らの顔に見覚えがあるんだろうよ。」
「一人歩きで、山に逃げたんだったか。」
「この辺りにいるな。捕まえろ。」
「うぃーす。」
「すみません、顔を塞いでいたら、動けないんですけど。」
「用事が済むまで、休んどけ。」
「ええ、いいんですか?」
「テメェには、後で、大事な仕事を任せてやるよ。
体力温存しとけや。
ショベルも積んである。」
「ありがとうございまーす。」
元気よく返事しているけど、体力温存する仕事って、穴掘り?
用事って、俺を捕まえて、白状させること?
俺の話が終わったら、俺を埋める気?
俺の家の庭で、俺を埋める話をするのは、止めてほしい。
山の怪に頑張ってもらって、俺を埋める気をなくさせよう。
我が家の庭にいた人は、懐中電灯であたりを照らしながら、探し始めた。
俺は、木の後ろに隠れて、小さくなる。
俺がいるのは、ヘッドライトと懐中電灯がなければ、見つからない場所。
何人かで、明かりを山側に照らして探し始めたら、俺を探せると思う。
俺を探しながら、山へ足を踏み入れてくれるといいんだけど。
山の怪が、本領発揮できる山の中へ。
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