64.俺は、なぜ狙われる?犯罪の自覚がない母さんのせい?『母親ではない。狙われる理由は、志春(しはる)自身と追いかける者にある。』『え?』
追手が、刃物を使ってくる?
神様からの注意は、しっかり受け止めたいけど。
「神様、なんで、俺、重要人物みたいになっているんだろう?
恨みをかったぐらいなら、最初の三人組だけで終わらない?」
何人も人を使って、俺を追いかける意味は?
俺は、改札の中に入って、駅ナカを見ながら、神様と会話している。
山のふもとの我が家の最寄り駅とは違って、乗客が俺以外にもいる。
一車両が貸し切り状態になったりしないから、電車に乗ったら、神様と会話できない。
神様に言われて、持ち歩ける携帯食や飲み物を買った。
「志春を狙う者は、志春を狙う理由がある。」
と神様。
神様は、分かるんだ?
「なんで?」
「志春は、志春が隠していることを知っていそうな者を見つけたら、どうする?
隠していることは、公になると破滅する内容だと、考えてみよ。」
と神様。
クイズ?
「知っているかどうか、定かじゃないなら、知っていても話さないように、祈るしかない。
確認しにいって、藪蛇になったら、口止めしないといけなくなる。
神様、これは、答えに困る質問。」
俺が結論を出せないでいると。
「破滅するような秘密を抱えている者は、迷わぬ。」
と神様。
「即決できない俺は、たいそうな秘密を抱えていなくて、助かった。」
「迷うのは、志春が、健やかに育っている証。」
と神様も喜んでいる。
「神様がいたから。ありがとう。
神様がいてくれなかったら、俺は、自分の足で立って、自分の手で未来を掴もうとするところまでこれなかった。」
「汚泥に沈まぬように、と、あがく小童を見捨ててなるものか。
志春が、ただ沈みゆくままに沈むままであったなら、今の志春はおらぬ。」
と神様。
神様、めちゃくちゃ嬉しい。
神様は、俺が頑張っているのを認めて、俺の側にいて見守るだけじゃなく、俺を助けてくれて、俺が死ぬまで一緒にいると決めてくれた。
神様といると、気持ちが元気になる。
体を動かそう、何かしようという意欲がわいてくる。
「小童は、小童の見えておる世界が全て。」
と神様。
うん?
「志春。自覚するがよい。
志春が追われている原因は、母親ではない。
志春自身にある。」
と神様。
俺自身に?
「俺には、覚えがない。思い当たるものがない。」
「志春にはないであろう。
志春自身の行動を振り返ってみよ。
志春がいるときに、訪ねてきた者と母親相手に、志春は、警察を呼ぶと伝えておる。
志春は、母親達が訪れる前に、空き巣被害を訴えて、警察に行ったであろう?」
と神様。
「行って、被害届を出した。」
「警察が捜査のために、部屋に入ったのは、部屋を訪ねた者と母親に、警察を呼ぶと伝えた後。
志春は、部屋を訪ねた者と母親の動画を見せて、証拠として警察に提出しておる。」
と神様。
事実確認。
「スマホごと持っていかれそうになったから、警察には動画だけをコピーして提出した。」
「その後、志春は、そのスマホを父親に取り上げられたであろう。
取り上げられたスマホはどうなっておる?」
と神様。
スマホは、気にしても仕方ないと思っていたから、諦めていた。
「解約したって、父さんが。」
「志春が、撮影した動画は、スマホが志春の手を離れた後、どうなっておる?」
と神様。
え?動画?
アップロードしていないから、スマホにしかない。
父さんが解約した、俺のスマホに。
スマホを解約して、初期化したら、もう何も残っていない。
でも。
「スマホを解約しても、本体が手元に残っていて、本体を初期化していなかったら、まだ見れる。
スマホ代を払っていた父さんは。
父さんは、母さんにスマホを渡してはいないと思うけど。」
撮影した動画が原因?
「志春が、動画を撮影したことを、志春の父親は知ることができた。
志春の父親は、深淵の腹の中におる。
深淵も知ることができる。」
と神様。
「え?じゃあ。」
深川さんが、けしかけている?
何のために?
「志春、結論を急ぐでない。
志春は、警察に証拠として採用される動画を持っており、それは、母親ともう一人が写る動画であった。
そのことを知るのは、警察。
次点で、志春の父親。
三番目に、深淵を秘めた者。
志春の思い当たるのは、三人。
警察は、捜査のために使うとする。
志春の父親は、深淵を秘めた者には逆らわぬ。」
と神様。
「他に、誰かいる?誰も思いつかない。」
「志春は、家に押し入ろうとする者を証拠として動画を撮影した。
他の者には、出来ぬか?」
と神様。
「出来る。スマホ以外でも、機械があれば。誰にでも。誰にでも。」
胸の中に寒風が吹いてくる。
「志春の部屋に出入りしていた者は。
志春が、警察に通報するだけの確証を得たと考えたであろう。」
と神様。
そんなこと、ある?
憶測すぎない?
「俺は、空き巣で被害届を出した家にいて。
知らない人と母さんが入れろと暴れられたから、通報したんだ。」
「志春は、空き巣の件があったから、警察が捜査にきたと考えておる。
空き巣の被害届を出しただけでは、捜査は始まらなかったであろう?」
と神様。
神様の確認を聞いて、記憶を思い出して、重ね合わせてみる。
「空き巣事件は、捜査に着手するためのとっかかりにはなっている。
ただし、空き巣事件の解明は、警察の主目的じゃない?」
「主目的は、母親が部屋を貸し出していた者達を捕まえることであろう。」
と神様。
「うん、そうだとしても、空き巣じゃない方に、俺は関係ない。
俺、母さんの交友関係は、知らない。
母さんが、部屋を又貸しした相手が、部屋を何に使っていたか。
又貸しした相手は、誰か、なんて。」
「志春は、志春自身を関係ないと言い切れる。
志春の他に、志春が無関係だと理解する者はおるか?」
と神様。
「いない。神様だけ。」
「警察に追われることになった者が、警察が動いたことに、志春が無関係だと知ることは容易ではない。
状況は、逆であろう。
志春が、警察に差し出した動画。
志春が撮影した動画が、一つしかない、など誰が、信じる?
母親のしていることについて。
部屋の主の志春が知っていて隠していることがある、と暗に示すために、無害な動画をあえて警察に見せた、ととらえるであろう。」
と神様。
「母さんと母さんが部屋を又貸しした相手の犯罪の証拠を持っている、から、俺は母さんを警察に突き出した、と思われている?
追ってくる人に。」
「志春を狙う者の狙いは、その者らの安心と安寧。
志春が持っているであろう証拠を回収し、志春自身に確認して、不安要素を取り払い、安寧を守ろうとしておる。」
と神様。
「俺、誰かの犯罪の証拠なんて何も持っていない。
警察に渡した動画くらいしかない。
今は、その動画も手元にない。
それに、あの動画は、証拠と呼ぶには、だいぶ弱い。」
「志春は、証拠がないことを知っておる。
志春以外に、志春が、他の証拠を持っていたり、証拠を複製していないことを知る者も、それを証明できる者もおらぬ。」
と神様。
「じゃあ、俺が狙われているのは。
俺が、証拠を持っているって思われているから?」
「志春が、証拠を持っていないと主張しても、証拠を持っていない証明はできぬ。
秘密の中身が誰にも知られていない、秘密を証拠にして持っていない。
追いかけてくる者が、そう納得したときに、全て終わる。」
と神様。
「納得したら?どうやって、納得する?」
「志春を捕まえて、満足のいく結果が出たらであろう。」
と神様。
「満足のいく結果って、どうやって?知らないことや、持っていないことを証明する方法がある?」
「証明できたとしても、意味はなかろう。安心を欲している者は、他者の証明など信用せぬ。」
と神様。
「え?じゃあ、俺のことをどうする気?」
「他者を信用せぬ者が、安心する方法は、過程が分かれるが、結果は、一つ。
秘密を知っていると疑った対象を捕まえてきて、口を割らせて、証拠ごと始末して安心する。
口を割るまでいたぶりながら弱らせていき、静かになったときに、何の情報も漏れていなかった、と安心する。」
俺には、拷問されて、殺される結末しかない?
「志春を生け捕りにしようとするのは、志春に話をさせたいからであろう。
生け捕りの段階で、対象の命を取ることはないが、対象に怪我を負わさぬとは限らぬ者達こそが、志春の追手。」
「捕まったら、俺。」
殺される、という言葉を言う前に、神様に止められた。
「神の前で、口に出してはならぬ。」
と神様。
俺、自分が考えているよりも、ずっと、危ういんだ。
神様が、一生懸命、俺を助けようとしてくれているのが分かって。
こんなときだけど、神様の気持ちと行動が嬉しい。
絶対に、捕まらない。
俺は、神様と長生きするんだ。
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