60.接敵までのカウントダウン。三人組は、偵察?迂回する?正面突破する?母さんがクロよりのグレーだとしたら?俺と神様が満足する人生のために。
俺が三人組に気づいているということは。
三人組も俺に気づいている。
俺に気づいていて、俺の動きに注目している。
ダルそうにしながら。
「神様、俺が母さんの家を出る前から、三人組は、この辺で張っていたのかも?」
「三人組は、志春の顔の確認をしているのであろう。
警察から注目されている母親と行動を共にしているときは、志春に、近寄ってこなかった。
志春、正面突破せよ。」
と神様。
「神様、手前にある脇道に入って、三人組を避けずに、ぶつかるかもしれないけれど、このまま進む?」
俺が駅に通じる道を、駅に向かって進むと三人組の横を通り過ぎることになる。
脇道が手前にあるけれど、俺が脇道にそれると、三人組に追いかけられそう。
「志春がぶつかるのは、進行方向の三人組だけではなかろう。
目の前の事象だけに気を取られずに、動きの全体を考えるがよい。
脇道に、人を配置しておらぬとしたら。
志春が脇道に進んだ先で、三人組のうちの一人が、先回りして、志春は、はさみ打ちになるであろう。」
と神様。
俺は、自分の考えの甘さに冷や汗が出てきた。
「目の前にいる三人組から逃げ切ることばかりに気を取られたら、負ける?」
「あの三人組の主目的は、志春の顔を確認して、情報をつかみ、他に伝えることであろう。」
と神様。
「うーん。俺を偵察しにきただけ?
三人組が、捕まえにこないなら、無傷でやり過ごせる?」
「志春。
三人組の役割は、偵察だけとは限らぬ。
三人組が偵察して、情報を集め、情報を届ける役目を負うておるならば。
志春は、三人組を引き付け続けよ。
決して捕まることなく、三人組に志春を見失わせることなく、山に連れて行くがよい。」
と神様。
「三人組に、俺を尾行させる?何のために?」
「志春。
主戦場は、山。
山の怪の本領は、山でこそ発揮できるもの。
来るもの全て、山に引きずり込むがよい。」
と神様。
「分かった。」
「志春。
山に着くまで、何も仕掛けてこぬとは限らぬ。」
と神様。
「人通りが完全になくなれば、何が起きても、誰にも分からない。」
目撃者がいない。
証拠が残らないなら、事件にさえならない。
俺が対峙しているものは、深淵を抱えている深川さんが、匿おうか、と聞いてくる相手。
母さんは、母さん自身に自覚はないかもしれないけれど、警察が引っ張っていくくらいに、相手と深く関わっている。
母さんが知っていることは、警察が捜査の手がかりになると考えていることなんだと思う。
犯罪の証拠となる何か。
もしくは、
犯罪に関わっている誰かを引っ張ってこれるだけの何か。
俺の感覚だと、母さんは、クロよりのグレー。
母さんの供述次第では、グレーからクロになるだろうけれど。
犯罪に関わっている自覚がない母さんを警察の前に差し出したのが、母さんに勝手に部屋を貸し出されていた、母さんの息子の俺。
母さんが、犯罪に関係する人に、現場となったワンルームを、息子が使っていると話した上で、貸し出ししている可能性が高いと俺は思う。
息子がいないから、貸し出しても大丈夫、と母さんが説明していたとしたら?
通報したのが、息子の俺だと丸わかりだ。
実際に、警察を呼ぶと話して、俺は通報している。
俺を標的にする意味は、通報したことへの意趣返し?
母さんに圧力をかけるため?
俺と母さんの関係を知っていたら、俺をどうこうしても、母さんへの圧力にはならないんだけど。
もしくは。
母さんという手駒がいなくなったから、新しい手駒を手っ取り早く確保しようとしている?
俺の頭は、思考しているうちに、恐怖心が痺れて、冷静になってきた。
「志春。
あちらも、こちらも、条件は、同じと心得よ。
志春が何をしても、誰も見ておらぬ。
志春は、まず、山の怪と共に、引っ張り回し、まとわりつく全てを引きずり出すがよい。」
と神様。
「分かった。目の前にいる三人組も含めて、全部、一網打尽にする。」
俺は、神様とネットショップ〈神棚〉を続けていく。
俺じゃない誰かの思惑に、俺の人生を左右されたくない。
ここで、戦わずに逃げるのは、最初から負けを認めること。
負けたら、俺は、俺じゃない誰かの言う通りに生きることになる。
俺の脳裏に、深川さんの顔がよぎった。
俺は、次に神様と別れるときは、俺の一生を見ていて楽しかった、と神様に言ってほしいんだ。
俺は、俺と神様が満足する人生を生きる。
神様は、俺の背中を後押しする。
「志春、迎え討て。再起不能にしてしまうがよい。二度目はないと思い知らせよ。」
と神様。
「うん。」
俺は、足を止めない。
三人組との距離は縮まり続けている。
三人組との距離は、三メートル、二メートル、一メートル。
俺は、三人組の顔を一人一人確認した。
三人組も、俺が、三人組の顔を認識した、と気づいている。
互いに、手の届く距離。
俺は、何も言わずに、三人組の横を通ろうとする。
三人組は、道に広がった。
逃さないように?
偵察だけじゃない?
三人組は、三人とも、俺と同じくらいの年齢に見える。
一番ダルそうにしている一人が、俺の進行方向に足を踏み込んできた。
「あー、お兄さん、ちょっと。お話、いいですかー?」
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