51.母さんからのメッセージは、母さん本人からのメッセージ?母さんと誰かから?神様は、母さんの意思をはかってみることを勧めてくれた。
俺は、メッセージを見て、思った。
母さんのメッセージって、もっと柔らかかったような。
あれ?
柔らかいメッセージをもらったのは、いつまでだった?
もう家族じゃないから、柔らかいメッセージは、来ない?
考えてみても、分からない。
でも、俺は、一人で悩まない。
ネットショップ〈神棚〉のホームページにアクセスすれば、いつでも、神様に会える。
「神様、母さんから、メッセージが来たんだけど、もらったことがあるメッセージと文体が違いすぎて、メッセージに従っていいか、分からないんだ。
神様は、どう考える?」
今日の神様は、跳び箱をしていた。
跳び箱の上で、前転、後転、倒立、と色々な技を決めていく。
ネットショップ〈神棚〉は、昨日、新商品を追加した。
卒業式から帰ってきて、卒業に関するイラストを描いたんだ。
俺のイラストは、風景画だから、俺が卒業を感じた風景を描いている。
時期的なものだから?
昨日出したイラストは、初日から、売り上げがあった。
イラストをアップした後、俺は、ホームページの神様と踊った。
パントマイムもした。
神様はパントマイムで、ウミウシと出会った場面を表現してくれた。
「小童は、親の便りを疑わぬ。
筆跡の崩れから、親の身を案ずることはしても。
親の便りは、真実、親が出したものが届くこともあれば、親の名を騙ったものが届くことも少なからずある。」
と神様。
「母さんの名前で、偽物がメッセージを送ってきた可能性がある?」
偽物のメッセージで呼び出し?
メッセージの文面は、『金送れ』詐欺で話題になるような、定型文とは違う。
俺と母さんの事情をある程度、聞き及んでいないと、書けない文面だった。
俺と父さん母さんしか知らない、母さんと俺の事情。
俺は、神様にしか話していない。
神様は、俺の友達。
俺からは、事情は漏れない。
漏れるとしたら、父さん母さんから。
母さんが、自分から事情を話して、誰かに協力を頼んだ?
母さんは、そんな殊勝なことする?
父さん相手なら、ともかく。
俺相手になら、お金を踏み倒すと思う。
そんな母さんから、取り立てに来い、という連絡が来ることも驚きなんだ。
文面以上に。
「志春は、したいようにしてみよ。
小童が親の便りを疑うのは、親に関心があるうちだけ。
志春と母親の縁は切れておらぬ。
どうしようかと悩むくらい、母親の便りが、嬉しかったのであろう?」
と神様。
「うん。
母さんから、連絡が来るとは考えていなかった。
母さんから俺に連絡することなんて、何もないはずだから。
母さんには、俺から催促する連絡をして、無視されることを想定していたんだ。
母さんは、犯罪に加担していた可能性が高いんだ。
母さんの呼び出しに応じたら、犯罪に関わった人に鉢合わせするかもしれない。
全然関係ない人かもしれない。
呼び出された場所が、母さんの住所じゃないから、警戒してしまう。
母さんが、母さんの意思で俺を呼び出したんじゃなくて、母さんに、俺を呼び出させた、と俺は考えたんだけど。
俺を呼び出して、何をしたいのか、分からない。」
「良からぬことを企むものと母親の関わりによるであろう。
母親が、無関係を押し通せぬほど深く関わっているのなら、便りを受け取るだけにしておくとよい。」
と神様。
「うん。それがいいとは、分かっている。
母さんから来たメッセージは、無視するのが一番だって。
それなのに。
母さんのメッセージをなかったものとして処理することは、出来ないんだ。
こんな、母さんが自分の意思でくれたかどうかも分からないメッセージなのに。
母さんは、俺のことを家族じゃない、とハッキリ言い切っていたのに。
俺も、あの場では、母さんに家族じゃないと言い返せたけれど。
メッセージに従って現れた俺に、母さんは、家族じゃないと言ったのを謝って、俺の母さんに戻ってくれるかも、と考えてみたりもする。
でも。
母さんの上辺は変わってもきっと一時的で、気持ちの根っこは変化しない、とも思うんだ。
母さんの、俺に対する気持ちの変化は、俺が母さんの味方にならなかったという失望によるものだから。」
「母親のことを必死に考えるほど、志春は、行きたいのだろう。
母親に呼ばれて、嬉しい気持ちがあるからこそ、行かぬ選択肢に絞れぬのだろう。」
と神様。
「うん。俺は、行きたいんだ、神様。
父さんについてきてもらうのが、ベストだと思うけれど、俺は、父さんと二人きりでいたくない。
神様も一緒に行くけれど、スマホを壊されたり、取り上げられたり、電波の届かない場所に連れて行かれたら、神様に会えなくなる。」
「母親の意思であるか、はかってみるがよい。」
と神様。
「どうやって?」
「メッセージに指定されている場所を調べ、メッセージに指定されている場所とは違う場所から観察してみるが良い。
時間になっても、現れぬ志春に、母親がどう動くか、見てみよ。」
と神様。
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