5.神様が常世に還る前に、思い出を作りたい
神様の希望を聞きながら、場所探し。
「人の世にある、人に作られたものがよい。人ならではのもの。人そのものは、志春を見てきたから、いらぬ。」
と神様。
「店を見て回る?欲しいものを買う?」
「志春のように買い物はせん。人の世のものは、人の世に。捧げられたもの以外は、持てぬ。」
と神様。
神様は、お金を持っていないから、お金を出して買ったりしないんだった。
「買い物は、なし、と。」
商業施設は、却下。
「ゲームは、神様が、見るだけになるから、ゲーセンはなし。
映画館や、美術館、博物館は?」
「映画館とやら、では、何をする?」
と神様。
「映画を見る。美術館では、美術品を見る。博物館は、人が作ったものや、自然のものを見る。」
「志春スマホとタブレットとパソコンとやらで、一緒に見たであろう。」
と神様。
見るだけ、じゃなく、体感できるものがいいのか。
映画も美術品も展示物も、完成品を見るためだから。
「神社やお寺に、神様が行ったら?」
「喧嘩になる。道場破りだと勘違いされる。」
と神様。
神社や、お寺もなしかー。
「海は海でも、人工の浜や海岸。
後は、動物園、遊園地、水族館なんかは?」
「良かろう!」
と神様。
ゴーサイン出た!
俺は、スマホで条件の合う海を探した。
「あった。神様。ここなら、人の世の思い出を作ってから、還れる!」
「どんなことができる?」
と神様。
「人工の浜と水族館と観覧車がある、海に面した公園がある。
観覧車は、座っているだけで、周りを一望できる。
水族館は、人の作り出した技術の結晶なんだよ。
人が、海や川に入らないで、陸にいながら、水中の生き物を観察できる工夫がしてある。
神様が還る海を、人の視点から見てみるのは?」
「志春は、そこへ行って、楽しいのか?」
と神様。
神様は、優しいなあ。
「俺は、神様と遊びに行くのが楽しいんだ。
もっと早くに、神様と遊びに行くことを思いついていたらなあ。」
「志春は、人の作ったものの中で生きるのが苦しかったから、この家に住んでいるのだろう?」
と神様。
「そうなんだけど。仲良くなった友達と、もっと遊びたかったな、って。」
「そう思えるくらいに元気になるには、時間が必要だったのだろう。
志春が遊びたいなら、一日中付き合ってやろう。」
と神様。
「いいの?時間切れとか、ならない?」
タイムオーバーで、神様が消滅したら嫌なんだけど。
「ならぬ。そのときがきたら、分かる。小童は、何にも気にせず、一日中遊ぶものだ。」
と神様。
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