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神様WEB!山のふもとの一軒家に住む俺と、俺のネットショップに棲む神様の冒険と日常  作者: かざみはら まなか


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44/80

44.店ではなく、一人の青年へ融資をしようか。送っていこう。『チェーザレ・ボルジアの覇権が続かなかった理由は、何だと思う?』

「頭を上げていいよ。先達への敬意を払ってくれたんだね。」

と壮年の男性。


良かった。体がぎりぎりだった。

足の指先の踏ん張りがきかなくなっていた。


俺が頭を上げると。


「行き先は、あるのかい?送るよ?」

と壮年の男性。


「お名前を存じ上げない方に送っていただくわけには。」

俺は、迷わず断った。


この壮年の男性は、父さんを知っている、父さんの関係者。


父さんの味方になりそうな人の厚意は、素直に受け取れない。


父さんに頼まれて、父さんに引き渡そうとするかもしれない。


「名刺を渡そうか?」

と壮年の男性。


俺は、素直に謝った。


「すみません。父さんに近い方からの、父さんの息子だから、と、かけてくださるご厚意は、受け取らないことにしています。」


「お父さんから、自立したいんだね?」

と壮年の男性。


「はい。」


「お店への援助も嫌なんだね?」

と壮年の男性。


「はい。」


「一人で、頑張りたいんだね。」

と壮年の男性。


一人と一柱、と俺は、心の中で付け足した。


俺と神様だから、一人と一柱。


「それなら、小野おの志春しはるくんという一人の青年に融資することにしようか?」

と壮年の男性。


「融資ですか?でも。」


俺は、断ろうとして、口をつぐんだ。


壮年の男性は、俺に断らせるつもりがない。


志春しはるくんは、ネットショップを始めて、まだ、間がないのかな?


ネットショップを経営しているのは、志春しはるくんだね?


志春しはるくんは、社長で合っているね?


志春しはるくん。

社長は、体が資本だよ。


志春しはるくんの代わりをする人がいても、社長が求められることがある。


会社を立ち上げてすぐは、走り続けるだけの体力と気力を損なわないようにすることだよ。」

と壮年の男性。


「はい。」


もし、俺が、倒れて、ネットショップ〈神棚〉を継続できなくなったら、ホームページに棲んでいる神様はどうなる?


俺は、神様との縁を自分から切りたくない。


俺も神様も悲しい思いをすることになる。


元気な俺ならともかく、俺の負傷した体は、寒空の下をあてもなく歩けるとは思えない。


山のふもとの我が家に帰り着くまでの距離も考えると、壮年の男性の申し出は、喉から手が出るほど魅力的な、救いの手。


暖房の聞いた車に座れるなら、どれだけ、ありがたいことか。


その手をつかんでも、問題ないなら、今すぐつかみたい。


「俺は、父さんの家には、行きません。

電車の本数がある路線の駅に連れていってもらえますか?」


俺は、慎重にお願いした。


「駅で、いいのかい?」

と壮年の男性。


「はい。」

俺は、現在地が分からない。


確実に安全な方法がとれないなら、リスクを減らそう。


山のふもとの我が家を父さんの関係者に知られるのを避けたい。


山のふもとまで、送ってもらった後に、家にあげずにさようならができるとしても。


壮年の男性からの心象は悪くなると思う。


「少し遠いところにある、大きな駅に向かおう。

そこで、買うものがあれば、買い足しなさい。」

と壮年の男性は、俺のサンダルを見た。


「はい。」

俺は、大人しく同意する。


山のふもとの我が家への道を思えば、スニーカーが履きたい。


志春しはるくんは、助手席に乗って。

駅に着くまで、話をしようか?」


俺は、助手席を勧められたことに驚きながら、話をしようと誘われたのが、嬉しかった。


父さんは、俺が、助手席に乗るのを頑なに拒んだことを思い出す。


助手席に乗せて、話をしたくないほどだったのに、父さんは、俺を連れてきた。


俺を連れてこない選択肢は、父さんには、なかったのかな。



俺と壮年の男性が乗っている車は、静かに走り出した。


志春しはるくんは、チェーザレ・ボルジアを知っているかい?」

と壮年の男性が尋ねてきた。


話好きの人?


「聞いたことがあるような、ないような、です。歴史の授業で聞いたことがあるのかもしれません。」


「ざっくり言うと、チェーザレ・ボルジアのお父さんは外国の偉い人だったんだよ。

チェーザレ・ボルジアは、環境に己の才覚が噛み合って、大成功をおさめた歴史上の人物だよ。


チェーザレ・ボルジアは、その環境と才覚を最大限活かし、危機を乗り越えた。


チェーザレ・ボルジアから仕掛けた争いは、チェーザレ・ボルジアの筋書き通りの成果をあげた。


チェーザレ・ボルジアは、時代の寵児となった。」


歴史好き?


「不勉強で、すみません。」

相づちを打てる知識もない俺は、無知を謝って、話を聞くことに徹した。


「チェーザレ・ボルジアの覇権は続かなかった。理由は、なんだと思う?」

と壮年の男性。


クイズ好き?


「成功を妬まれて、敵が増えたんですか?」


「敵はいたよ。でも、最大の敗因は、チェーザレ・ボルジア自身にある。


チェーザレ・ボルジア自身が、味方を率いて立ち上がらないといけないタイミングで、病に倒れていたことが、その後の流れを決めた。」

と壮年の男性。


「病ですか?」

壮年の男性がどんな意図で、俺にこの話をしているのか、分からない。

返事は、短く、意見は言わないようにする。


「流行り病でね。

チェーザレ・ボルジア自身が回復したときには、時代の潮目は変わっていた。


回復したチェーザレ・ボルジアは、盛り返しを狙ったけど、失速していくのを止めることはできなかった。」

と壮年の男性。


御高説をたれたい?


「体が資本、に繋がるんですね。」


「チェーザレ・ボルジアは、社長じゃないけれどね。

社長と立場は、似ていないかい?

志春しはるくんとネットショップの関係はどうかな?」

と壮年の男性。


「俺が、司令塔です。」


「司令塔が、司令塔の役目を果たせないことで、負けがこむのは、悔しくないかい?」

と壮年の男性。


「俺は、負けたくありません。」


「そうだよ。V字回復がどうして話題になるか?


負けがこんだ状態から、選択を誤らないで、息を吹き返すのが、難しいことだからだよ。


志春しはるくんのお父さんのように、ね?」

と壮年の男性。


え?父さんの話題に繋がった?

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