36.インターネットが!父さんは、父さんが与える仕事を俺がすることは、息子だから問題ない、と言う。俺は、そう思わないよ、父さん。
7月30日、複数話、投稿
神様には、まだ、会えていない。
インターネットを繋げるのって、難しいことだった?
俺は、ずっと、パソコンと格闘している。
ネットの電波状態が悪い?
部屋の位置が問題?
パソコンが古いから?
ネット環境は、整えられている。
ただ、不安定。
繋がった、と安心したら、回線が切れる、を繰り返し、何も変わらないまま、時間だけが経っていた。
スリッパのパタパタ音が聞こえる。
俺に与えられた仕事部屋の扉の外に、誰かが来た。
扉を振り返るような、心の余裕は、今の俺にはない。
神様に会いたい。
インターネットさえ、安定して繋がれば。
俺、今日、ネットショップ〈神棚〉のホームページにアクセス出来る?
「志春。成果を見せなさい。」
と父さんの声がした。
父さんの声を聞くと、体がびくっとしてしまう。
頭の痛みが、ぶり返した気がした。
「頭が痛いよ、父さん。」
「志春の頭が痛いのは、志春が賢くないからだな。
賢くない息子を持つと、父親は、苦労する。
言い訳をするのは、仕事をしていない証拠。
仕事が終わるまで、そこにいなさい。」
と父さん。
「父さん。この部屋は、寒すぎる。
家の中なのに、息が白いんだ。」
「コンピューターは、繊細で、暑い部屋には向かない。」
と父さん。
「父さん、コンピューターを使うのは、人間だよ?
部屋が、寒すぎたら、仕事する前に体調が悪くなるよ。」
俺は、話をとぎらせないようにして、父さんを引き止めた。
「そのために、志春がいるんだろう?」
と父さん。
「え?俺?なんで?」
「志春は、息子だから、家の仕事のために働いても問題ない。」
と父さん。
「家の仕事のため?
家の仕事とは違うんだ?」
父さんの仕事が、データ入力というわけではない?
データ入力は、誰の何のための仕事?
依頼されている仕事なら、
誰かから、お金が支払われる仕事?
父さん、俺に押し付けた仕事の契約は、どうなっている?
データ入力は、誰が、いつまでに、することになっている仕事?
データ入力の報酬は、誰から誰に渡される?
俺の仕事部屋の机に積まれている仕事が終わるまで、父さんは、俺を部屋から出さないような気がする。
父さんは、俺専用の仕事部屋と、仕事を用意していた。
俺が、何の行動も起こさないまま仕事に取り組んだら、俺が成果を渡す先は、父さんしかいないことになる。
俺は、俺の報酬、仕事に関する契約は、何一つ、父さんから提示されていない。
依頼主も明かされていない。
それって、家のお手伝いとどう違う?
お手伝いは、手伝ったら、褒めてもらえる。
自発的にしても、促されてしても、多分。
俺の場合は?
騙されて、殴られて、閉じ込められたから、仕事をする?
仕事の成果を渡して、父さんに褒められたら、無報酬でも、俺は、気分良くいられる?
俺は、父さんに褒めてもらいたいと思うか、を考えてみた。
結論。
思わない。
俺は、ネットショップ〈神棚〉の売り上げに一喜一憂して、お金を稼ぐのが、苦しみを伴う先にあると知っている。
俺は、売り上げを、一、にしたいからって、俺じゃない他の誰かに、仕事の苦しい部分を押し付けなかったよ、父さん。
『俺には、父さんと違って、押し付ける息子がいないだけ』
と、父さんは考える?
データ入力が、父さんの仕事に繋がるなら、父さんと父さんの家族がする。
俺は、父さんの家族にはならないよ、父さん。
だから、きっぱりと父さんに伝える。
「父さん。
俺は、仕事の成果を、父さんじゃなく、依頼主に直接渡して、仕事の報酬は俺が直接、依頼主から受け取ることに決めた。
この仕事の依頼主を、俺に紹介して。」
俺は、扉の向こうにいる父さん相手に退かないことにした。
扉を挟んで、顔が見えない分、冷静になれる。
父さんと俺の間に扉があるから、殴られる心配をしなくていい。
「志春は、大学まで行って、仕事をしない言い訳を考えるしか能がないのか。
時間をかけてやれば、志春でもできる、必ずやりなさい。
終わる頃に、また来る。」
と、扉の向こうにいた父さんは、どこかへ行ってしまった。
父さんを説得することは、できなかった。
説得に応じてもらえるような信頼関係が、俺と父さんの間にはないんだ。
俺は、毛布にくるまりながら、パソコンの前に陣取る。
ネットショップ〈神棚〉のホームページに安定したアクセスできれば、神様に会える。
八方塞がりにしか思えない現状で。
神様に会えるかもしれない、という、かすかな希望の糸を、俺は手放すことができずにいた。
今、ネットショップ〈神棚〉のホームページにアクセスすることを諦めたら、神様には二度と会えなくなるんじゃないか、という焦燥感が俺を急き立てる。
俺の頭の中は、どうにかして、神様に会う、の一色に染まっていった。
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