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神様WEB!山のふもとの一軒家に住む俺と、俺のネットショップに棲む神様の冒険と日常  作者: かざみはら まなか


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34/80

34.父さんの運転する車が停まったのは?父さんは、俺の身の安全を危惧して、父さんの新居に招いてくれたんじゃなかった?

父さんが、俺を褒めてくれたのは、賞をとったとき。


参加賞じゃなく、一人しか受賞者がいないような賞。


思い出せたけれど、大学在学中の俺は、四年間、賞と呼べるものには無縁だった。


賞をとれていたのは、小学生のときだけ。


小学校のときの夏休みの宿題は、母さんが色々準備していたと思う。


母さんのサポートがなくなった大学生の俺に、抜きん出るような優秀さは、なかった。


父さんに話せること、他に何かないかな?


ある。


「父さん、俺、イラスト描いているんだ。」


父さんは、無反応。


「イラストで賞をとったことはないけれど、イラストを気に入ってくれた人はいて。


俺のイラストにお金を出す価値があると評価してくれたんだ。」


俺は、ミラー越しに、父さんの様子をうかがいながら話をした。


父さんは、話しかけてこないけれど、俺の話は聞いているっぽい。


俺を無視している、というより、父さんが相手にする価値が、俺にはないと考えているような気がする。


俺がイラスト、と言ったときの父さんの表情は、

『イラスト?役に立たない趣味ごときで、自慢げに。』

と、父さんのスタンスを如実に物語っていた。


イラストじゃ、父さんの関心をひけないと理解した俺は、別の話題を探した。


でも、俺の世界のほとんどは、俺がイラストを描いて、カリスマ店員の神様が売るネットショップ〈神棚〉が占めている。


俺の店、ネットショップ〈神棚〉は、俺と神様のどちらが欠けても、軌道にのらなかった。


俺だけの功績じゃないものを俺のものとして、話すのはおかしい。


話題にできることがなくなった俺は、ミラー越しに父さんを見るのをやめた。


流れる車窓に目をうつす。


ワンルームに入居する日が、父さん母さんと俺の三人でする最後のドライブになった。


最後のドライブに出発する日、父さんも母さんも、機嫌が悪いようには見えなかった。


俺が大学生になって、手が離れたから、やっと、親の責務を終えて、離婚できる、と開放感に支配されていた?


父さんの心も、母さんの心も分からないことだらけ。


俺は、父さんと母さんに持て余されていた?



父さんの運転する車は、寂れた住宅地の、古ぼけた一軒家の駐車場に停車した。



両隣は、空き家かな?


背の高い雑草が枯れている庭。


開けられていない雨戸。


壊れている雨どい。


錆びている門扉。



父さんが車を停めた家は、人が住んでいる分、隣近所よりマシに見える。


新居って聞いたから、新しい家だと俺は、勝手に思っていた。


今日から、卒業式までお世話になる家だけど、山のふもとの我が家の方が、周りが寂れていないから、物寂しさがなくて、心穏やかに生活できる気がする。


俺は、車から降りて、布団と毛布を家に運び込む。


父さんは、玄関に立っている俺の後ろから入ってきて、鍵を閉めて、チェーンをかけた。


玄関ドアを背にした父さんは、淡々と俺に言った。


志春しはるは、卒業式に着ていく一式を買う金を持っていない。今から、志春しはるが、自分で働いて稼ぎなさい。


仕事はある。


金が稼げないなら、卒業式は諦めなさい。」


え?父さん?


俺に仕事って、どういう意味?


犯罪現場となったワンルームにいたら、俺の身が危ないから、俺を避難させるために、父さんの新居に招いてくれたんだよね?


俺、父さんのメッセージを読み間違えていない、と思うんだ。


仕事については、一文も書かれていなかったよ、父さん。


俺は、ぽかんと、してしまった。


ぽかんとする俺に、父さんは、スマホを渡しなさい、と言った。


「嫌だよ。俺のスマホだよ?」

俺は、スマホを渡したくなかったから、拒否した。


俺は、わけがわからなすぎて、神様に会いたくてたまらない。


「使用者は、志春しはるだが、契約して、金を払っているのは、誰だ?」

と父さん。


「父さんと母さん。」

俺は、払っていない。

使っているだけ。


志春しはるは、スマホ代を一銭も払っていないんだ。」

と父さん。


「うん。」

強調しなくても、その通りだよ、父さん。


「スマホ代を自分で稼げない志春しはるには、スマホを持つ資格はない。


スマホが欲しかったら、スマホ代と服代を志春しはるは、これから自分で稼がないといけない。


今のスマホは、解約する。


無駄遣いだからな。」

と父さん。


父さん、話が違いすぎる。


「スマホ代と服代って?

父さんは、こっちで着る服は、あるのを着なさいって、俺に言ったよ?


スマホ代と、日常の服代と、卒業式の一式の代金を俺が、今から、働いて稼ぐってこと?


卒業式まで、一週間しかないのに、間に合うわけがないよ。


父さん母さんが支払ってくれていたスマホは、いずれ解約するにしても、俺が自分で契約してからにして。


データのバックアップとって、新しいスマホに移したい。」


俺は、父さんに押し切られないように頑張った。


ゴンっと、頭頂部に衝撃が走る。


俺は、くらくらして、床に手をついた。


上着のポケットに入っているスマホが、床にあたって硬質な音を立てる。


「ここか。素直さが足りない。」

父さんは、俺の上着からスマホを取り出した。


俺、殴られた?


俺は、動けないまま、声を振り絞った。


「返して、父さん。そのスマホは、俺のだよ。」


「この家に、志春しはるのものは、何もない。」


父さんは、玄関に置いてある布団と毛布を見て、安物だな、とコメントすると、玄関から続く廊下を歩いていく。


神様、どうしよう。

どうしたら、いい?


俺は、間違えたんだ。


俺は、痛む頭をおさえて、父さんが安物だと言い放った布団と毛布に倒れ込んだ。

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