20.売り上げゼロが続いて、よく眠れない。短期バイトを探していたら。あれ?俺の店に見覚えがないアバターが!神様に似ている?
俺の店は、開店休業。
アクセスは、ゼロになっていないけれど、売り上げはゼロ。
俺は、今、短期バイトを探している。
一日働いて、一日分きっちりもらえるバイト限定で。
分かっている。
短期バイトを繰り返すだけじゃ、俺の店の売り上げには繋がらない。
でも、収入がほしいんだ。
まだ、四月じゃない。
父さんと母さんの援助は、まだ打ち切られていない。
現金がカツカツだから、じゃなく。
現金が欲しいのもあるけれど。
それよりも、もっと大事なことのため。
仕事して、報酬を受け取って、自信を取り戻したいんだ。
俺は、俺が一人でも金を稼げる、という自信がぐらぐらになっている。
不安なんだ。
俺は、全然、世界から相手にされていない。
俺は、『なんかいたかな?』くらいの影の薄さで、いてもいなくてもいい存在になんて、なりたくないのに。
売り上げゼロを打開したいという思いを抱えたまま、何も思いつかず、時間だけが過ぎていく。
今から、就職に切り替えることも考えた。
でも、どうしても、諦めきれない。
俺の商品を売る、俺の店をたたみたくない。
足掻けるだけ、足掻けないかと思って。
三月までは、店を軌道に乗せるためだけに足掻くと決めた。
大学を卒業する三月までは、父さんと母さんの援助があるから、切り詰めたら、カツカツでもなんとか乗り切れる。
山のふもとに住んでから、神様を海に送りにいくぐらいしか、外出していない。
服飾費や、遊興費が、ほぼゼロ。
就活のために外出することもなくなったから、交通費もゼロ。
この何ヶ月かは、生活費と光熱水費と食費くらいしか使っていない。
今は、極力、お金を使わずに生活できるけど、いつまでも、というわけにはいかない。
何か、思いつけたらいいのに。
神棚にマグロがある光景も見慣れた。
最近思うんだ。
寿司屋のオブジェっぽい、と。
山のふもとに住んで、外へ働きに出ようとすると、移動時間と交通費が、無視できない。
スマホで、短期バイトを探しても、現場までの時間と交通費がひっかかって、決められない。
弱った、と頭を抱えていたら、店のホームページに、知らない反応があった。
ひょっとしたら?
期待しながら、ホームページをチェックする。
売り上げ、一。
初めての、売り上げ一。
売れた!
やった!
俺は、ガッツポーズして、神棚からマグロのぬいぐるみをおろしてきた。
「マグロ、売り上げ、一だ!」
マグロは、何も言わない。
マグロは、喋らないぬいぐるみだから。
俺って、マグロ以外に、話しかける相手がいない?
マグロのぬいぐるみに、店のホームページを見せながら、そのことに気づいた。
俺は、悩み事があっても、相談する相手がいない。
それは、イヤというほど思い知ったけど、それだけじゃない。
嬉しいことがあっても、報告して、一緒に喜んでくれる人が、俺にはいない。
俺って、孤独?
めちゃくちゃ神様に、会いたい。
神様と、話したい。
神様との暮らしは、毎日楽しかった。
また、前みたいに、神様と暮らせたらなあ。
ん?
ん?
俺のホームページで、アバターが、俺に手を振っている。
俺のホームページにアバターなんて、用意していないんだけど。
和装で、和風の顔。
デフォルメされているけれど。
どこかで、見たことがあるような?
俺は、マグロのぬいぐるみにホームページを見せた。
「マグロ、このアバター、見覚えがあるような気がしない?」
そのとき。
「志春。」
と懐かしい声が聞こえた。
「マグロのぬいぐるみは、御守だから、喋らないものだ。」
ホームページのアバターが、呆れ顔になっている。
アバターが神様の声で話しているんだけど。
話し方も、神様そっくり。
「神様?」
「いかにも。」
とアバターは、得意そうに笑った。
楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。




