19.たくさんの人が見るだけで買わない店じゃなく、見にくる人は少なくても、商品を見たら買っていく店にしたい。考えられるだけの工夫はしてみた。
俺は、商売の戦略というものを考えた。
俺の目指す目標は、決まっている。
ネットショップ〈神棚〉を続けること。
そのために、必要なのは、商品である、俺のイラストを買ってくれるお客にアクセスしてもらうこと。
重要なのは、アクセスの多い少ないじゃない。
アクセスが多くても、買う人がいなければ、売り上げはゼロ。
アクセスが多ければ、目立つかもしれない。
でも。
アクセス数は、俺の商売の肝じゃない。
見るだけで満足する人に、アクセスされても、売り上げに繋がらない。
ライトなノリで、アクセスしてくる人を増やしても、売り上げに直結しない。
買う気のある人にアクセスしてもらわないと。
買う気はあるけれど、買わなかった人対策をしていけばいいと思うんだ。
アクセスしたけど、買わなかった人が、買うようになるには、どうすればいい?
アクセスがゼロじゃないのは、俺のショップの何かに興味をひかれて、ホームページを見たいと考えた人がいたから。
興味をひかれたけど、買わなかった。
アクセスした人が、買う気を失くした理由は、なんだろう?
突き止めて、解決すれば、買う気になるはず。
ネットショップは、実店舗じゃないから、興味がないならアクセスしないと思う。
俺は、店の広告を掲載していない。
俺の店にアクセスしてくれた人は、何かを探して、俺の店にたどり着いているはず。
買う気があって店に来ている人の買わない理由を潰していけば?
俺は、自分のホームページをじっくりと見る。
機能と見栄え、見やすさ。
一文字を大きく。
説明は文章は、箇条書きに。
商品の安売りはしない。
セールもしない。
安くなる、今より価値が下がると思うものを待っている間に、買いたい気持ちは目減りすると思う。
俺は、買いたいと思える商品のイラストを増やすことにした。
過去のイラストを見返しているうちに気づいた。
神様と過ごすようになってからの俺は、都会の景色を一つも描いていない。
神様と過ごした時間と場所は、俺の全部になって、イラストに表れている。
神様と出会う前と後では、描くときに内に秘めているものが変わったんだと思う。
前のイラストは、俺の中で、自信作とは言えなくなっている。
新しく描こう。
出来上がったイラストを商品欄に並べていく。
俺は、神様と酒を酌み交わした時間を思い起こしながら、一枚、描いた。
神様と観覧車から見た景色も一枚。
公園内を神様と散歩中に、野鳥が俺の目の前を横切った場面を一枚。
野鳥は、何度も練習した。
野鳥の姿を目でとらえたのは一瞬だった。
鳥を景色の一部にしない描き方をしてこなかった俺史上、初の試み。
新作イラストを三枚追加して、俺はやりきった、と思った。
商品が増えたら、どうなるか、しばらく様子をみてみよう。
興味を持った人の心に届け、俺の力作。
俺は、描ききって満足していた。
毎日のアクセス数が、ゼロじゃなくなった。
俺の店とイラストが、世界に浸透しつつあるのは確かだ。
でも、一向に注文が入らない。
俺は、お金を払うほどの価値がないイラストしか描けないのか。
俺は、壁にぶち当たった。
どうしよう。
俺は、俺の考え得る改善策を全部やった。
これ以上、何をしたらいい?
俺は、売り上げゼロ記録を更新する毎日に、ひたすら困っていた。
こんなとき、誰かに相談できたら。
悩みを聞いてくれる人が、一人でもいたら。
俺は、スマホの連絡先を指で滑らせる。
ダメだ、誰もいない。
俺には、相談できる人が一人もいない。
俺が大学生になってから、悩みを打ち明けたのは、神様だけだって気づいた。
神様、どうしよう。
俺、神様がいなくなった世界に、一人ぼっちだ。
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