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第九十三話 アーヤ再び

リリナちゃんは興奮気味だ。

はじめて”ナコリリ”の路上ライブを成功させたからだろう。

だけど、それはリリナちゃんの視点から見ただけであって私は違う。


私はリリナちゃんとは対照的に沈んでいた。


「やっぱり路上ライブがうまく行ったのもナコルちゃんがいてくれたからですわ」

「そう……」

「私、ひとりだったらこんな風にならなかったですもの」

「ふ~ん……」

「次回はもっと盛り上げましょうね」

「……」


リリナちゃんはすごく嬉しそうにしながら話しかけて来る。

それは路上ライブをやり切った感で包まれているからだろう。


「ナコルちゃんのコーラスは最高でしたわ」

「うん……」

「ひとりだったらあんな風に聴かせることができないですし」

「そう……」

「ナコルちゃんの歌声が加わったことで楽曲のボリュームが増えましたわ」

「へぇ~……」


何だからリリナちゃんの話を聞いていると自慢をしているかのように聞えて来る。


別に私がコーラスをしなくても予めパート分けして歌って吹き込んでおけばすむことだ。

リリナちゃんは歌がうまいからそんなこと容易くやってのけるだろう。


「次はナコルちゃんのパートを増やそうよ」

「私は……」

「絶対にうまく行くから、ね」

「……」

「なら、私、ナコルちゃんのパートを考えておくね」

「……」


私なんていなくてもリリナちゃんはひとりでもやっていける。

今までひとりで活動をして来たのだからできなはずがない。

リリナちゃんにお願いして”ナコリリ”になったけど間違いだった。

リリナちゃんはリリナちゃんとして活動をして行けばいいのだ。


そんな考えが頭の中に過っていると不意にリリナちゃんから呼ばれた。


「ナコルちゃんも参加するよね?」

「えっ?」

「これからみんなで打ち上げをするの。ナコルちゃんも行くよね?」


控え室を見回すといつの間にかスタッフ達が集まっていた。

私が考えごとをしている間にやって来たのだろう。


だけど、こんな気持ちのままみんなと打ち上げなんてできない。

リリナちゃんもスタッフも楽しそうにしているのに私はひとり沈んでいる。

こんな状態で打ち上げに参加しても地獄を味わうことになるだろう。


「私、ちょっと具合が悪いからパスしておく」

「ナコルちゃん、大丈夫?いっしょに病院まで行ってあげるよ」

「心配しないでリリナちゃん。少し休めばよくなるから」

「でも……」


そう嘘をついてもリリナちゃんは不安げな顔を浮かべる。

その素直な反応がやけに鼻について嫌な気持になった。


「私は大丈夫だからみんなと楽しんで来て」

「ナコルちゃんが行かないなら私も行かないよ」

「ダメよ。主役がいない打ち上げなんて意味がないじゃない。だから、私の分まで楽しんで来て」

「ナコルちゃんがそう言うならそうするわ」


何とかリリナちゃんを丸め込むことに成功した。


スタッフはリリナちゃんがひとりで活動して来た時からの付き合いだから私ひとりが部外者だ。

そんな状態の打ち上げに参加しても私だけのけ者にされるのは目に見えている。

スタッフ達も私がいない方がリリナちゃんと楽しめるからその方がいいだろう。


「それじゃあ私はこれで」

「ちゃんと病院に行ってくださいね」

「わかってる」


そう返事をして私は逃げるように控え室から出て行った。


不意に淡い期待が湧いて来て後ろを振り返ってみるが誰もいなかった。

もしかしたらリリナちゃんが追い駆けて来るだろうと思っていたが違った。

結局、リリナちゃんもスタッフ達と楽しめればいいと思っているのだろう。


「そんなものよね……」


私は背中に哀愁を漂わせながらあてもなくフラフラと歩いて行く。

その足取りにも力がなくやっと歩いているような状態だ。

気力が全然湧いてこないから生きる屍と言ったところだ。


気がつくと公園のブランコのところまでやって来ていた。


「ひとりになりたかったから自然にここに来たのかな……」


公園のブランコには人がおらず寂しそうにブランコが揺れていた。

今の私にちょうどいい場所に思えて無意識にブランコに腰をかけた。


「はぁ……」


私は大きなため息を吐きながらガックリと項垂れた。


「私って何なんだろう」


リリナちゃんに懇願して”ナコリリ”になったけれど私は蚊帳の外。

元からのリリナちゃんファンはリリナちゃんばかり応援している。

それはある程度わかっていたことだけれどショックだ。


重大発表の時、ファン達が”ナコリリ”を応援してくれるって言っていたことを信じていた。

だけど蓋を開けてみれば私の存在は眼中になくてリリナちゃんばかりだ。

ファン達にとってリリナちゃんがいればそれで十分なのだ。


「”ナコリリ”なんて御大層な名前をつけたけれど名ばかりだ。私なんていらなんだ」


それはファンからの暗黙のメッセージかもしれない。

直接、リリナちゃんの前では言えないから行動で示しているのだ。

誰も推しから嫌われるようなことは避けたいからなのだろう。


「結局、私はひとりなんだ」


ギャル部をやっていた時も仲間はいたが私は孤独だった。

集まった仲間は私のご機嫌をとることしかしなかった。

それは私の機嫌を損ねるとイジメられると思っていたのだろう。

実際に私に盾をついたやつはことごとくイジメてやった。

そう躾をしておかないと私に牙をむく恐れがあるからだ。


私はイジメっこのリーダー格だったが腕力が強い訳じゃない。

相手を力でねじ伏せて言うことをきかせることができない。

だから私はイジメと言う手段を使って相手を従わせていた。

それが思うようにうまく行くから調子に乗っていた。

イジメっこグループを作ってイジメを武器にしていたのだ。


「これも身から出た錆なのかもね」


私は昔のことを思い出しながら後悔した。


「けど、リリナちゃんもリリナちゃんだわ」


私を必要と言っておきながら自分達だけで盛り上がっていた。

私が落ち込んでいることにも気に留めず打ち上げに行くなんて。

リリナちゃんも表向きは肯定しているけれど裏では否定しているのかもしれない。

私とグループを組んだのも私に現実を見せるためだったのだろう。


そう考えれば納得がいく。

売れっ子の清純派アイドルが私をメンバーに加えること自体がおかしいのだ。

そんなことをしてもリリナちゃんになんのメリットもない。


「結局、リリナちゃんも他の人達と同じだわ」


イジメられっこの敵を討つために私とメンバーに加えたのだ。

リリナちゃんは正統派のアイドルだから間違ったことは嫌いだ。

だから、弱い者達の味方になってイジメっこの私を懲らしめた。

そう考えればリリナちゃんの行動も納得できる。


今頃みんなと大笑いしながら私を馬鹿にしてるのだろう。


「何だか気分が悪くなって来たわ」


何で私がこんな惨めな思いをしなければならないのか。

それは全てリリナちゃんのせいなのだ。

正義感に駆られて私を貶めようとしたのだから。


「もう、”ナコリリ”なんて辞めてやる」


私は吐き捨てるように”ナコリリ”からの脱退を口にした。


それが一番いい選択肢だ。

このまま我慢して”ナコリリ”を続けたところで結果は見えている。

私ひとりがのけ者にされて、リリナちゃんとスタッフ、ファン達が喜ぶ。

私と言う悪者に制裁を加えることができたから嬉しいのだろう。


「リリナちゃんは所詮、偽善者だったのね」


そんな風に考えているとリリナちゃんが憎く見えて来る。

清純派アイドルになってファン達を喜ばせているんなんてムカつく。

本当の醜い部分を隠してファン達を騙しているのだ。


本当のリリナちゃんはファン達が思うような清純派ではない。

人を妬み、嫉み、見下してイジメたりするような醜い少女なのだ。

私のように直接イジメはしないけれど間接的にイジメている。

そうすれば自分の手を汚さずにすむから罪悪感を感じることもない。


「リリナちゃんは清純派アイドルの皮を被った悪魔だ」


私は憎しみに駆られて思ってもみない言葉を口にする。

すると、パチパチパチと拍手をする音が聞えて来た。


「いいじゃない。それが本当のあなたよ」

「誰?」

「私のことは気にしないで。ただのしがない喋るウサギだから」


目の前にいたのは身長が30センチほどの喋るウサギだった。

ウサギのクセに一丁前にお洒落な服を着てメイクまでしている。

見た目はずばりギャルを思わせるような風貌だった。


「何の用なの。私は忙しいの」

「悪態をつくことに忙しいだなんてあなたらしいわ」

「知ったような口を聞かないで。あなたとは初めて会ったのよ」

「確かに会ったのははじめてだけどあなたは有名だからね。推し活部のルイミンをイジメて学校を退学になった元ギャル部の部長だってことは有名だからね」


喋るウサギはどこかで聞きかじって来た噂話を私に聴かせる。


確かに喋るウサギが言う通りルイミンをイジメて学校を退学になったのは本当の話だ。

ただ、それには続きがあって本当は停学処分だったのだけれど理事長が煩いからこっちから辞めてやったのだ。

傲慢な理事長にへいこらしてまでもセントヴィルテール女学院に通う義理はない。

どうせ留年は決まっていたから、こっちから先に辞めてやっただけだ。


「そこまで知っているなら私がどう言う人間だってこともわかるでしょう」

「元ギャル部の部長でイジメっこグループのリーダってことよね」

「そうよ。私が一声かければ仲間達が集まって来るのよ」

「それで私を脅しているつもり?」

「だったら」

「だったら心配していないわ。今のあなたに従ってくれる仲間なんていないもの」


喋るウサギは私の心情を見透かすかのように的確な指摘をして来る。


喋るウサギが言うように今の私について来てくれる仲間はいない。

イジメっこグループを勝手に辞めてアイドルになったからみんな離れて行ったのだ。

おまけにセントヴィルテール女学院を退学になったことも追い打ちをかけている。

私が学院を去ったことでイジメっこグループはあっと言う間に勢力を縮小させた。

今現在、セントヴィルテール女学院でイジメっこをしている人は誰もいない。


「ムカつくウサギね。ウサギのクセに生意気よ」

「まだ、皮を被っているのね。本当のあなたを見せなさい」

「これが本当の私よ」

「いいえ、違うわ。あなたはそんなキレイな言葉を使わない。もっと汚い言葉を使うわ」


そこまで見透かしているなんてこのウサギは何なのだろうか。

確かにアイドルになる前までは汚い言葉を使っていた。

だけど、もう生まれ変わったからとっくの昔に卒業しているのだ。


「何が言いたい訳よ」

「あなたは猫の皮を被ってアイドルになろうとしたことが間違いだったのよ。どんなに自分を装ってみても本当の自分からは逃れられないからね」

「私はもう、昔の自分から卒業したのよ」

「そう思っているのはあなただけよ。周りのみんなはあなたのことをイジメっこギャルだと認識しているわ。だからアイドルになってもファンができないのよ」

「くぅ……」


喋るウサギの的確な指摘に何も返す言葉が見つからない。

喋るウサギが言ったことは本当のことで自分でも薄々気づいていた。

だけど、それを認めることをしたくなくて視線を逸らしていたのだ。


「何も言い返せないことがあなたの答えね。もう、強がるのを止めなさい。あなたは所詮弱い人間なのよ」

「そんなことあるかよ。私は強いんだ」

「ようやく本当の自分を現したようね」

「ハッ」


喋るウサギの口車に乗ってつい昔の自分を出してしまっていた。

忘れたはずなのに、もう、卒業したはずなのに出て来るなんて。

喋るウサギが言うように身に着いた言葉は忘れることができないのだろうか。


ただ、認めたくはない。


「もう、肩の荷を下ろしなさい。あなたにはあなたの生きる道があるの」

「生きる道って何だよ」

「あなたはどうあがいても清純派アイドルになることができないわ。薄汚れてしまった心を真っ白に染めることはできないのよ」


喋るウサギが言った言葉は私に絶望を連れて来る。

アイドルになりたくて今まで頑張って来たが全部無意味だと言われたからだ。

心が薄汚れてしまった私にはアイドルになれる方法がどこにもないのだ。

だったら、どうやればルイのことを救えるのだろうと言うのか。

今の私の目の前には絶望しかなかった。


「私は……」

「ようやくわかったようね。あなたは逆立ちしても清純派アイドルにはなれないわ」

「……」

「だけどね。別の方法でだったらアイドルになれるわ」

「エッ?」


喋るウサギは真っ黒に染まった私の心に小さな灯をつけた。

それがどんなアイドルなのかは全くわからない。

だけど、その言葉が私を救う唯一の糸だった。


「こう見えても私はアイドルプロデューサーをしているの」

「嘘だぁ」

「信じるのも信じないのもあなたの勝手だけど、これはチャンスなのよ」

「嘘っぽいな。私を騙して馬鹿にするつもりなのだろう」

「いいわ。すごくいい。あなたはそうでなくちゃね」

「冷やかしならあっちへ行ってくれ。今はそう言う気分じゃないんだ」


いつの間にか地の私が出てしまっている。

この喋るウサギと話をしていたからだ。

ただ、本当の自分に戻ったことで気持ちが楽になっている。

今まではアイドルになるべく背伸びしていたから疲れていたのだろう。


良い子ちゃんなんて私の柄ではない。

本当の私は醜いイジメっこギャルなのだ。


「いい顔つきに戻って来たわね。あなたはそうでなくちゃいけないのよ」

「ムカつくけど気分が軽くなったわ」

「それは本当の自分に戻ったからよ。どんなに装っても違う自分にはなれないものだから」

「もう、アイドルなんて辞めてやる。私は私のままでいいんだ」


それが一番いい答えだ。

無理してアイドルをしていても私は幸せになれない。

ファン達から疎外されて相手にもされないのだから。

そんな屈辱を味わいながらアイドルをしていても意味がない。

リリナちゃんには悪いと思うが別の方法でお金を稼げばいいだけだ。


「別にアイドルを辞めなくてもいいのよ」

「私を貶めるつもりか」

「違うわ。清純派アイドルになる代わりに別のアイドルになればいいのよ」

「別のアイドル?」


そう言うと喋るウサギは一枚の名刺を差し出して来た。


その名刺には”アイドルプロデューサー”の肩書と”アーヤ”と言う名前が記されていた。

名刺の裏には事務所の場所を記したと思われる地図が書かれている。


「私は今、新しいアイドルを発掘するべく活動しているの」

「発掘?」

「もう、ある程度メンバーは揃ったのだけど主役がいないのよ」

「主役か……」

「グループの顔になる主役がいないと何のためのアイドルグループかわからなくなっちゃうからね」

「それで私に声をかけたのか」

「そうよ。あなた以外に主役を張れる人間はいないのよ」

「私が……」


アーヤが本気で言っているのかわからないが少しだけ嬉しい。

私以外に主役が務まらないなんて私を認めてくれたのと同じことだ。

ただ、あまりに話しが唐突で俄かにも信じられない。

他の奴らと同じように私を馬鹿にしている可能性はある。

今の私の状態ならことごとく潰すことができるのだから。

もしかしたら、アーヤも私が昔にイジメた奴なのかもしれない。


「どう、やる気になった?」

「ふん。そんな眉唾の話に乗るものかよ。お前もどうせ私に復讐をしに来たのだろう」

「冗談は言わないで。私はあなたにイジメられるほど落ちぶれてはいないわ」

「じゃあ仲間の敵討ちか」

「あんたってほんといろんな人達をイジメて来たのね。呆れるわ」

「私がイジメたんじゃない。あいつらがイジメて欲しいと言ったんだ」

「全く都合のいい解釈ね。そんなのだからイジメっこになれたのだわ」

「これでわかったろう。私はアイドルになれるほどキレイな人間じゃないんだ」


私はアーヤの前で醜いイジメっこであることを肯定した。

そうすることで少しだけ気持ちが楽になるのを覚えた。

それは私の心が醜く曇っていることを現している。

所詮、イジメっこはどこまで行ってもイジメっこなのだ。


「キレイな人間なんていないわ。みんな汚いくせに汚いことを隠しているだけ。それに比べてあなたは正直だわ。自分の醜さを肯定したのだから」

「私を貶しているのか。気分が悪い。あっちへ行ってくれ」

「あなたの中には世の中に対する不満が溢れているわ。その気持ちを言葉に変えればいいのよ」

「そんなことをしたって世の中が変わるもんか。ただ、叫んでいるだけで終るんだ」

「そうよ。普通に叫んでも雑踏にかき消えて行くだけ。だから歌に変えるのよ」

「歌?」


アーヤは真剣な顔で私を諭すかのように訴えかけて来る。


”世の中に対する不満”を歌に変えてどうなると言うのか。

そんな汚い歌を歌っても耳を塞がれて無視されるだけだ。

アーヤが何を考えてそう言うのか私にはわからない。


「私がプロデュースするアイドルグループはギャルアイドルよ」

「ギャルアイドルだって」

「一見するとギャルとアイドルは相反するものだと思いがちだけどミックスすることでこれまでにはないほどパワーを持ったアイドルに変わることができるのよ」

「ギャルがアイドルになれるのか……」

「なれるわ。私がプロデュースすればね」

「そんなの信じられない」

「まあ、無理もない言葉ね。まだ世の中にはギャルアイドルなんていないのだから」

「聞いたこともない」

「だからチャンスなのよ。世の中に一石を投じることができるのだからね」

「……」


アーヤは世の中にセンセーショナルを巻き起こそうとしているのだろうか。

だとしたら相当なキレ者なのかもしれない。

ギャルとアイドルをミックスするなんて誰も思いつかないのだから。


だけどインパクトだけでは世の中を動かすことはできない。

ぱっと出に終わってすぐに消えてなくなるのがオチだ。

ギャルアイドルが世の中に受け入れられなければ全部が無駄だ。


「どう、やる気になった?」

「まだ信じられない。ギャルアイドルがデビューしたところで世の中が変わるなんて思えない」

「そうよ。それだけでは世の中は変わらないわ」

「やっぱり」

「だから、歌に変えて発信するのよ。そうすれば人々の心に働きかけられるわ」

「変な宗教をやっているんじゃないの。歌で人なんて動かせないわ」


歌で人の心を変えられるなら戦争など起こるはずがない。

だけど実際は違うから歌では人を変えられないのだ。

世の中を作っている人を変えられなければ何も変わらないのだ。

アーヤの言うように歌で人々の心に働きかけるなんて夢物語だ。


「どう言う歌にするかで変わるのよ」

「どう言う歌がいいって言うんだ」

「ずばりラップよ」

「ラップ?」

「ラップは社会から虐げられていた人達から生まれたものなの。人々はラップに興じることによって社会を動かし世の中を変える力を持つまでに至ったわ。その後、ラップは社会に広まって様々な人たちに受け入れられたわ。現在の音楽シーンにもラップが登場するのはそのおかげよ」

「……」


アーヤの言うことが本当だとしたらラップはすごいものだ。

歌だけで社会を変えるなんて普通は考えられないことなのだから。

もしかしたら私にもまだ見ぬ可能性を導きだせるかもしれない。


だけど――。


「答えは急がないわ。気が向いたら私の事務所を訪ねて。じゃあね」


そう言い残すとアーヤはどこかへ消えてしまった。


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