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第八十六話 ルイミン

私がリリナちゃんのぱんつに夢中になっていたせいで大幅に遅れてしまった。

先に行ったミクに追いつくとつぶさに文句を言われた。

私のせいでルイミンを見失ってしまったとぼやいた。


「もう。ちょめ太郎のせいだからね」

「ちょめちょめ」 (仕方ないじゃない。大事な用事があったんだから)

「そんなこと言って。本当はエッチなことをしていたんでしょう」

「ちょめちょめ」 (何でそうなるのよ。ミクの中では私は変態なの)

「だって、私のぱんつを盗ったのはちょめ太郎でしょう」

「ちょめちょめ」 (ゲッ。バレてたの……)


ミクの顔を見ると罰が悪いので私は視線を逸らした。


私がミクのぱんつを盗ったことばバレてしまったけれど”カワイ子ちゃんの生ぱんつ”を集めているところまではバレていない。

だから、このまま黙っていれば”変態ぱんつ泥棒”と言うことにはならないだろう。


「ちょめ太郎、ぱんつが欲しいなら欲しいって言ってよ」

「ちょめちょめ」 (う~ん……そう言うこととちょっと違うのよね。何と言うか……その……)


ぱんつは買うのではなく奪うことに意味があるのだ。

それも”カワイ子ちゃん”であることが絶対条件だ。

それは私が決めたのでなくちょめジイの要求だ。

けっして、私がぱんつ好きの変態と言うことではない。


そんな風にミクに責められている間に公園まで来ていた。


「ここにルイミンさんいるかな?」

「ちょめちょめ」 (そんなに遠くまで行っていないはずよ)


辺りを見回してルイミンがいないか探す。

すると、ブランコにひとりで座っているルイミンを見つけた。


「見つけた。ブランコのところにいるよ」

「ちょめちょめ」 (とりあえず様子を見るわよ)

「何で?」

「ちょめちょめ」 (だって、あれだけ錯乱していたのよ。変に刺激するのは危険だからよ)


私とミクはルイミンに気づかれないようにそっと近づいて行った。


ルイミンは項垂れたまま思いつめたような顔で地面をじっと見つめている。

よく見ると唇が小刻みに動いていてブツブツ何かを呟いているようだ。


「なんか言っているみたいだね」

「ちょめちょめ」 (ヤバいわ。ルイミンを取り巻いている負のオーラが凄過ぎる)


どんよりとした負のオーラに押しつぶされてしまいそうだ。

アニメなんかでよく見る負のオーラを大きくしたような感じだ。

ルイミンを取り巻いている世界が負の色に染まってしまっている。


「声をかけた方がいいんじゃないかな」

「ちょめちょめ」 (あんなルイミンにかける言葉はないわ)


ちょっとでも刺激しようものなら逆に刺されてしまうだろう。

そんなことになったらルイミンは傷害罪で捕まってしまう。

今のルイミンだったらやりかねないから怖い。


すると、ルイミンは顔を上げて空を見上げる。

そして持っていたナイフを首に押しあてた。


「ちょめ太郎、早く行かないと!」

「ちょめちょめ」 (まだよ。どうせできっこないんだから見守っていた方がいいわ)

「でも、ルイミンさんが自殺しちゃったらどうするの」

「ちょめちょめ」 (躊躇っている時点で自殺する気なんてないのよ。本当に自殺したい人は躊躇わないわ)


自殺する時の躊躇いは”死にたくない”気持ちの表れだ。

自殺をする人は必ず躊躇い傷が残るように本当は死にたくないのだ。

だけど、死ぬ以外の方法を見出せなくて自殺してしまう。

毎年、自殺をする人が絶えないのもそれが原因かもしれない。


ルイミンは首に痛みが走るとナイフを手から零れ落した。

そして目からボロボロと涙を零しながら静かに泣きはじめた。


「ちょめちょめ」 (ほら、私の言った通りでしょう)

「けど、泣いているよ」

「ちょめちょめ」 (自分のやったことを後悔しているのよ)

「可哀想だね」


肉体的に傷ついたのはリリナちゃんだけれど心が傷点いたのはルイミン自身だ。

ルイミンもけっしてリリナちゃんを傷つけようだなんて思っていなかっただろう。

ただ、膨れ上がった気持ちの処理の仕方を間違えてしまったのだ。


「ちょめちょめ」 (もう、頃合いね。ミク、行くわよ)

「うん」

「ちょめちょめ」 (前もって注意しておくけれど勝手にルイミンに話しかけちゃダメだからね)

「何で?」

「ちょめちょめ」 (変に刺激をすると何をするのかわからないからよ)

「もう、落ちついたんじゃないの」


ルイミンは自殺をするのを止めただけだ。

だから、まだ感情は激しく入り乱れている。

そんな状態の人を刺激したら、また感情を爆発させる恐れがあるのだ。

今のルイミンに必要なのは春のような優しい温もりだけだ。


私はルイミンの隣のブランコに座ってブランコを揺らした。


キー、キー、キー。


ブランコが錆びついているのか鈍い金属音が聞えて来る。

その物音に気づいたルイミンが私の方を振り向いた。


「ちょめ助……」

「ちょめちょめ」 (おひさ。元気してた?)

「ちょめ助……ちょめ助ぇぇぇぇぇー」

「ちょめちょめ」 (うぉっ。ぐっ、ぐるじい……)


ルイミンは私を見るなりギュッと抱きしめて来る。

その力強さは半端なくて私はくにゃっと潰れてしまう。

スライムじゃないけれど私の体が変形していた。


「ちょめ助……わ、私……」

「ちょめちょめ」 (とりあえず解放して。話はそれからよ)

「ごめんね。ちょめ助を見たら我慢しきれなかったの」

「ちょめちょめ」 (わかればよろしい)


ルイミンは慌てて私を解放すると涙を拭った。


「え?どう言うこと?ルイミンさんはちょめ太郎の言葉がわかるの?」

「ちょめちょめ」 (わからないわよ。だけど、ルイミンはフィーリングで私の言わんとしていることを察しているだけ)

「すごーっ」

「ちょめちょめ」 (まあ、私達は似た者同士だから何となくわかるのよ)


私もはじめてルイミンと出会った時は驚いたものだ。

ただ、同じ穴の貉のみたいだから阿吽の呼吸で通じ合えるのだろう。

もしかしたらミクもアイドルオタクになればわかるかもしれない。


そんな私とミクのやり取りを見ていたルイミンが質問をして来た。


「ちょめ助って本当はちょめ太郎って言うの?」

「ちょめちょめ」 (まあ、ミクからはそう呼ばれているかな)

「ちょめ太郎が本当じゃなくて、ちょめ助の方が本当なんじゃないかな。私がちょめ太郎と会ったのはルイミンさんより後だから」

「ちょめちょめ」 (どっちでもいいわよ。好きなように呼んで)


今さら呼び名にこだわる必要もない。

ちょめ助でもちょめ太郎でもどっちでもちょめなんだから。

これもそれもちょめジイが私をちょめ虫に転生したことが原因だ。

まあでも、呼ばれ慣れてしまうとちょめ助もちょめ太郎もシックリ来る。

だから、どちらで呼ばれても構わないのだ。


「じゃあ、私は今まで通りちょめ助って呼ぶね」

「ルイミンさんって本当にすごい。ちょめ太郎の言葉が聞えているようだわ」

「ちょめちょめ」 (そんなことより、もういいの?)

「そうだ。私はこんなことを話している場合じゃないんだった……」


私に指摘されてルイミンは沈んでいる気分に戻って行く。

すぐに頭の上にどんよりとした空気が漂いはじめた。


「ちょめちょめ」 (ルイミン。何があったのか正直に話しなさい。誰かに話せば落ち着くわよ)

「うん……」


ルイミンは頷きながらも不安そうな目でミクのことを見つめる。


「ちょめちょめ」 (ミクのことは心配しなくていいわ。デキた子だから)

「私、邪魔だったら向こうへ行っているよ」

「ううん、いてもいいよ」


ミクが気をきかせるとルイミンは話を聞いて欲しいとお願いをして来た。


「私、リリナちゃんがナコルを選んだことが許せなくて控え室に乗り込んだの。そうしたらリリナちゃん達驚いて」

「ちょめ」 (それで)

「リリナちゃんを傷つけるつもりはなかったのよ。ナコルを怖がらせたらそれでよかったの。でも……」

「ちょめちょめ」 (リリナちゃんがナコルを庇ったのね)

「リリナちゃん。私じゃなくてナコルを選んだの。それが許せなくて逆上しちゃって……」

「ちょめちょめ」 (気づいたらリリナちゃんを傷つけていたのね)

「どうしよう、私。こんなことをするはずじゃなかったのに……」


ルイミンは事実を話し終えると青い顔をしながら頭を抱えて蹲った。


まあ、ハッキリ言ってルイミンは嫉妬にかられてしまったことが原因だ。

傷つけるつもりはなくてもナイフを持ち出した時点でルイミンの非は明らかだ。

ナコルのことを気に入らないのはわかるがやり過ぎていた感は否めない。


「ちょめちょめ」 (やってしまったことはもう変えることはできないわ。それよりも、これからのことを考えなさい)

「何も考えられないよ……」


私が諭すようにアドバイスをしてもルイミンには届かないようだ。


まあ、気持ちはわからない訳でもない。

大好きだった人に傷を負わしてしまったのだから。

私に置き換えれば私が”ななブー”を刺すと言うことだ。

そんなことは地球が逆回転してもあり得ない。

愛情が殺意に変わるなんてサスペンスドラマも驚きだ。


「ルイミンさんはリリナちゃんのことが大好きなんだね」

「そうよ。私はリリナちゃんがアイドルをはじめる前からファンだったから」

「私にも大切な妹がいるんだ。だから、ルイミンさんの気持ちがわかるよ」

「……いっしょにしないでよ。私の愛は深いのよ」


ルイミンはミクに悪態をつきながら自分の愛を崇高なものだと言い張る。

だけど――。


「ちょめちょめ」 (深いからしつこいのよね。本当にリリナちゃんのことが好きだったら応援しているもの)

「ちょめ太郎、言い過ぎだよ」

「ちょめちょめ」 (ルイミンみたいなタイプの人にはハッキリ言った方がいいの)

「どうせ私の愛情はねちっこいわよ」


私の言葉にルイミンはむくれた顔をしながらそっぽを向く。


愛情は深ければいいと言うものではない。

深ければ深いほど相手を束縛してしまうのだ。

そんな愛情は迷惑でしかないから必要でない。

それよりも春の温かさを感じさせるよそ風程度がちょうどいいのだ。


「ちょめちょめ」 (で、どうしたいわけ。このままってこともないでしょう)

「リリナちゃんに謝りたい。だけど、勇気が出ない」

「ちょめちょめ」 (リリナちゃんが会いたくないって言ったら怖いのね)

「リリナちゃん、きっと怒っていると思う」

「ちょめちょめ」 (まあね。ナイフを向けて来た相手だもんね)

「どうしよう……」


ルイミンは頭を抱えて髪の毛を掻きむしるような動作をする。

それは感情の現れであってルイミンの心の中はぐちゃぐちゃだ。

大好きなのにリリナちゃんを傷つけてしまった後悔でいっぱいなのだ。


「素直に謝った方がいいと思う」

「あなたに何がわかるの。これは私の問題なの。口を出さないで」

「ちょめちょめ」 (そんな言い方はないんじゃない。ミクは心配してくれているのよ)

「だって、こんな小さな子に私の苦しみなんてわかる訳ないもの」

「わかるよ。私だって大好きな妹を傷つけたら悲しいもん」


ルイミンにとってリリナちゃんが好きなのようにミクもルイのことが大好きなのだ。

だから、毎日精霊の森へ出掛けては精霊の森の話をルイに聞かせていた。

本当に大好きでなければできないことだ。


「妹とリリナちゃんをいっしょにしないで」

「ちょめちょめ」 (ルイミン、観ない間に随分とひねくれちゃったのね)

「私は変わってないわよ。ちょめ太郎が変わったんでしょう」

「ちょめちょめ」 (そうかもしれないわ。ミク達といっしょに暮して来たことで優しくなれたと思う)


それはルイの存在が一番大きいかもしれない。

太陽の光を浴びてはいけない体なんて可哀想でならない。

もし、ルイの病気を治せることができたら太陽の下で遊ばせてみたい。

そうしたら今まで感じたことのない喜びに出会えるだろう。


「私が苦しんでいる間、ちょめ太郎は楽しんでいたのね。許せない」

「ちょめちょめ」 (誤解しないでよ。私もルイミンと別れた後、ルイミンのことを心配していたんだよ)

「そんなの嘘よ。ナコルから逃げられたからって喜んでいたのよ」

「ちょめちょめ」 (あの後、ナコルに何をされたの?)

「言いたくない」

「ちょめちょめ」 (言いたくないような酷いことをされたのね)


あの頃のナコルは調子こいていたからやりたい放題やっていた。

その餌食になってしまったのがルイミンと私だ。

私は何とか逃げることができたがルイミンは違っていた。

私がいなくなった後で酷いことをされたのだろう。

それが心の中に深く刻まれているからナコルを許せないのだ。


「ちょめ太郎に私の気持なんてわからない」

「ちょめちょめ」 (そうかもね。私はルイミンのようにナコルに対して恨みなんて持っていないから)

「あれだけイジメられたのに恨まないの」

「ちょめちょめ」 (そんな心を持ってもキレイな心が蝕まれて行くだけだからね)

「ズルいわ。ひとりでいい子ぶっちゃって」

「ちょめちょめ」 (羨ましいならルイミンもナコルに対する恨みを捨てればいいのよ)


それが一番の方法だ。

ナコルに対する恨みがなくなればナコルを選んだリリナちゃんを許せるだろう。

リリナちゃんはナコルが必要だと感じたからナコルといっしょにアイドル活動をしようと思ったのだ。

自分の推しがそう思っているならば応援してあげるのがファンの務めだ。


「今さらそんなことを言われたって遅いわ。もう、リリナちゃんを傷つけちゃったのよ」

「ちょめちょめ」 (早いも遅いもないわ。本当に謝りたいのならば素直な気持ちでいればいいの。余計なことを考えるから怖くなっちゃうのよ)

「そんなこと言われたって……」

「ちょめちょめ」 (このままでいたらルイミンは二度とリリナちゃんを応援できないよ。そうなったら推し活部も辞めないといけなくなるわ。どうせリリナちゃん以外の人は応援できないでしょうから)


私も”ななブー”だけを推しているからルイミンの気持は痛いほどわかる。

もし、ルイミンのようにもう二度と”ななブー”を応援できなければ私の人生も終わりを告げる。

“ななブー”がいたから私は今まで生きて来られたのだ。

“ななブー(推し)”は人生そのものなのだ。


「リリナちゃんの応援を止めたくない」

「ちょめちょめ」 (なら、やることはひとつよ)

「ちょめ太郎もいっしょに来てくれる?」

「ちょめちょめ」 (いいわよ。親友のルイミンの頼みだからね)

「なら、いっしょに行こう」

「私も行っていいかな?」

「ちょめちょめ」 (いい経験になるからミクも同行してよ)

「わかった」


と言うことで私とミクはルイミンの謝罪に付き合うことになった。


ひとりでルイミンを行かせるよりも私達がいっしょの方がいい。

さっきのようにルイミンが感情的になることも考えられるからだ。

リリナちゃんのことだからルイミンの気持ちを察してくれているだろうけどナコルに反応するかもしれない。

少しでもリスクがある以上、私達が同行していた方がいいのだ。


控え室がある廊下まで戻って来ると慌ただしくなっていた。


「リリナちゃんがファンに襲われたって本当なのか」

「わからないわ。だけど、怪我をしているのは確かよ」

「スタッフは何をやっていたんだ」

「とりあえず会場を見回るわよ。犯人が近くにいるかもしれないからね」

「なら、ふたり一組で行動した方がいい」

「犯人を見つけても迂闊な行動はするなよ」


スタッフ達は慌てふためきながら廊下を駆け回っている。

情報が独り歩きして通り魔的な犯人像へと変わっていた。


「すごいことになっているね」

「ちょめちょめ」 (まあ、仕方ないわよ。リリナちゃんが怪我をしちゃったんだからね)

「遠回しに私を責めないでよ。私だって好きでやったんじゃないから」

「ちょめちょめ」 (けど、ルイミンが傷つけたのは事実だし)


私の言葉を聞いてルイミンは罰が悪そうな顔を浮かべた。


「ちょめ太郎、着いたよ」

「ちょめちょめ」 (それじゃあ行こうか)

「ちょっと待って。まだ心の準備が」

「ちょめちょめ」 (そんなもの。あたって砕けろよ)

「ちょっ……」


ルイミンの制止を振り切って私はテレキネシスで控え室の扉を開けた。


「ルイミンさん!」

「……」

「何しに来たのよ」

「ちょめちょめ」 (ナコルは邪魔だから下がっていなさい)

「うおっ、な、何だ」


私はテレキネシスを使ってナコルを持ち上げるてどかせる。

すると、ルイミンはモジモジしながらリリナちゃんの前に移動した。


「ルイミンさん……」

「……」


ルイミンは中々口を開けずにリリナちゃんの前で固まっている。


「ちょめちょめ」 (ルイミン、勇気を出しなさい。何のためにここまで来たの)

「ルイミンさん、頑張って」


私とミクは手に汗を握りながらルイミンが謝るのを待つ。

私に手なんてないのだけれど感覚的にそう感じている。


「ルイミンさん、お話があるんですね」

「うん」

「ルイミンさんのお話なら何でも聞きます。おっしゃってください」


ルイミンの様子に気づいたリリナちゃんの方から橋を渡してくれた。

恐らくリリナちゃんはルイミンが何を言おうとしているのか察しているのだろう。


「リリナちゃん、ごめんなさい」

「はい」

「私がみんな悪いんです」

「はい」

「リリナちゃんがナコルを選んだことが許せなくて」

「わかってます」

「えっ?」


予想もしていなかったリリナちゃんの言葉にルイミンが反応をする。


「ルイミンさんがずっと私のことを応援してくれていたのは知っていました。私がまだ無名な頃からルイミンさんはひっきりなしに路上ライブに来てくれました。私はルイミンさんがいたから今までアイドルをして来られたのかもしれません」

「リリナちゃん……」

「これからも私のことを応援してもらえますか?」

「うぐっ……うん」


リリナちゃんの温かくて優しい気持ちに触れてルイミンも涙ぐむ。

こんな結果になるとは思ってもみなかったから嬉しいのだろう。


すると、ルイミンの足元で土下座をして謝った。


「私からも謝らせてくれ。リリナちゃんがこんな風になったのもみんな私のせいなんだ。私がイジメをしていたからいけなかったんだ。許してくれとは言わない。だけど、リリナちゃんは嫌いにならないでくれ」

「ナコルちゃん」

「……」


ルイミンは顔色を変えてキッとナコルを睨みつける。


「何でそんなことをあなたに言われなくちゃいけないのよ」

「それは……」

「私はリリナちゃんのことが大好き。だから誰と組んでも文句は言わないわ」

「ルイミン……」

「だけど忘れないでよね。もし、リリナちゃんの足を引っ張ることをしたら許さないから」


そんな悪態はついてはいたがルイミンがナコルのことを認めた瞬間だった。

これでルイミンがナコルに嫉妬して危害を加えることはないだろう。


「ちょめちょめ」 (ようやく解決したわね)

「雨降って地固まるってやつですわ」

「ちょめちょめ」 (リリナちゃん、うまい!座布団一枚さ仕上げよう)

「何それ?」

「ちょめちょめ」 (こっちの話よ)


ミク達にいちいち笑○のことを説明するのは大変だ。

いい年したおじさん?達がネタを披露しているなんてこの世界では見ないのだから。


ボーン、ボーン、ボーン。


不意に控え室の時計が16時の鐘を鳴らした。


「あっ、ちょめ太郎。もう、16時だよ。ママのところへ行かないと」

「ちょめちょめ」 (そうだったわね。こうしちゃいられないわ)

「ちょめ助、ありがとう」


私とミクが控え室から出て行こうとするとルイミンがお礼を言って来た。

その言葉を聞いて安心した私達はママのいる時計塔へ急いだ。


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