第八十二話 買い物
ミクの家に滞在していた私はすっかり暮らしに慣れていた。
朝、起きてみんなと食事をしてミクのパパのお仕事の手伝いをする。
ミクのパパは畑で野菜や果物を作っている農家だ。
敷地が広大なので朝から晩まで働いている。
現代にあるような農薬を撒くドローンやAI工作機などはない。
その代りに魔法を使って水を撒いたりしているのだ。
「今日は月1の買い出しの日だな。パパは畑仕事があるからママに任せるよ」
「わかったわ。買い物は任せてください」
ミクの家は自給自足をしているので食材は豊富にある。
けれど、日用品や雑貨などは王都へ買い物にいかないとない。
だから、月1でまとめ買いをしてストックしておいているのだ。
「ママ、私もついて行っていい?」
「いいけど、ルイがひとりぼっちになっちゃうわよ」
「そうか……でも、王都へ行きたいな」
ミクはつまらなそうな顔を浮かべて俯いた。
パパは畑に行くから家にはルイだけになってしまう。
ルイがお留守番をできない訳ではないがひとり残して行くのは不安だ。
もし、誰か尋ねて来たらルイが対応しないといけない。
まあ、こんな辺鄙なところに尋ねて来る人などいないのだけど。
すると、話を聞きつけたのかルイが2階から降りて来た。
「ルイはひとりでもお留守番できるよ」
「ルイ、大丈夫?」
「心配しないでよ、ママ。ルイは大丈夫だから」
「でもね。ママ、心配でしかたないわ」
親からしてみたらまだ5歳の幼女を家にひとりで残すことは心配だ。
おまけに病気を患っているから、もしものことがあった時はいてもたってもいられない。
それならばルイも買い物に連れて行くのがいい方法だがルイは太陽の光を浴びれない。
病気のせいで昼間は家に閉じこもっていないといけない体になっているのだ。
「大丈夫だよ。ルイ、しっかりお留守番できる」
「ママ。ルイを信じてみようじゃないか。ルイもいつまでも子供じゃないんだから」
「まだまだ十分子供ですよ」
パパはルイの味方をしたいようだがママは反対をする。
ママからしたら自分がお腹を痛めて産んだ娘だから大切なのだろう。
ルイが大人になるいい機会だけれどママとしては心配でしかたないのだ。
「ルイ、本当にひとりでお留守番できるの?」
「できるよ。その代りお土産を買って来て」
「お土産は何がいい?」
「カワイイものが欲しい」
「わかった。なら、お姉ちゃんが買って来てあげるね」
カワイイものだなんて随分と範囲が広いお願いだ。
カワイければ何でもいいのだから選ぶときに困るだろう。
まあでも、裏を返せばカワイければ何でも喜んでくれることだ。
「ちょっと、ミク。ママはまだいいと言っていないでしょう」
「ママ。ルイを信じようじゃないか。それにパパは畑にいるんだから何かあったらすぐに家に戻るよ」
「でも、パパ……」
ママの心配は尽きないだろう。
でも、これはルイが大人になるチャンスなのだ。
ひとりでお留守番できればまた一歩前に進む。
そう言う経験を積み重ねて大人への階段を登って行くのだ。
「ママ、ルイを信じよう」
「わかったわ。その代り誰か尋ねて来ても出ちゃだめよ」
「わかった。ルイ、ずっとお部屋にいる」
と言うことでルイのお留守番が決まった。
ママとミクは余所行きの服に着替えてパパは仕事着を着る。
私は着替えなくてもいいのでそのままの姿でいた。
すると、ミクが私の頭に赤いリボンをつけてくれた。
「王都にお出掛けだからちょめ太郎もお洒落しないとね」
「ちょめちょめ」 (お洒落って言うほどでもないけど、ありがとう)
鏡に映った自分の姿を見て微妙な感情を覚えた。
キノコのような緑の青虫だからリボンをつけてもカワイクならない。
せめて体がピンク色だったら少しはカワイく見えたと思うが。
「それじゃあ出かけるぞ」
「ルイ、お留守番を任せてからね」
「はーい。いってらっしゃい」
「ルイ、カワイイお土産を買って来るね」
「ちょめちょめ」 (バイバイ)
私達一行は家にルイを残して家を出て行った。
「ちょめちょめ」 (ところで、ミク。王都まで歩いて行くの?)
「ううん。転移装置を使うのよ」
「ちょめ?」 (転移装置?)
転移装置だなんて気になるワードが飛び出して来る。
アニメや漫画で見るワープみたいな方法なのだろうか。
「転移装置を使えば世界のどこにでも一瞬で行けるのよ」
「ちょめちょめ」 (”ド○えもん”のどこでもドアみたい)
「どこでもドアって?」
「ちょめちょめ」 (こっちの話。気にしないで)
まあ、魔法があるぐらいだから転移装置があっても驚かない。
実際にちょめジイが召喚魔法を使って私をこの世界に転移させたぐらいだから。
「だけど、転移するには転移先にも転移装置がないとダメなの」
「ちょめちょめ」 (まあ、そうよね。転移しても転移先に転移装置がないと戻って来れないから)
現実世界のモノに例えたら電車みたいなものだろう。
電車は駅と駅をつないでいるからあっちの駅からこっちの駅まで行き来できる。
ただ、電車の場合はそれなりに時間がかかるから転移とはちょっと違うけれど。
そんなことを話していると転移装置のある場所まで辿り着いた。
「ちょめちょめ」 (これが転移装置なのね。ちょっと思っていたのと違うわ)
そこにあった転移装置は地面に魔法陣が描かれていて四隅に機械があると言うものだった。
恐らく四隅にある機械がパワーを送って魔法陣を補強しているのだろう。
「パパは野菜を出荷しに行くから市場までいっしょについて行くぞ」
「ミク、パパのお手伝いをしてちょうだい」
「はーい」
パパは野菜を積んだ牛車を引いて来て魔法陣の上に止める。
ミクも同じように他の牛車を引いて魔法陣の上に移動させた。
「ちょめちょめ」 (牛車なんて原始的ね。馬は使わないの?)
「牛さんの方が力があるから荷物を運ぶ時は具合がいいのよ」
「ちょめちょめ」 (まあ、見た感じ牛の方が馬より力がありそうだ)
「でもね。長距離を移動する時はお馬さんの方がいいの」
ミクが言う通り牛車が長距離を走っているのを見たことがない。
牛は力があるが早くは走れないので馬に分があるのだろう。
「よし、準備が整ったぞ」
「ちょめちょめ」 (いよいよだわ。どうなるのか気になる)
転移装置を使って転移するのははじめてなのでワクワクする。
「それじゃあ魔力を注ぐぞ」
「ちょめ?」 (魔力って?)
「転移装置は魔力を注がないと動かないの。おまけに強い魔力が必要だから子供の私じゃ動かせないの」
「ちょめちょめ」 (へぇ~、そうなんだ。まあ、転移させるのだから強力な魔力が必要なのはわかるわ)
パパが転移装置に魔力を注ぐと魔法陣が眩く光り出す。
そして光が私達を包み込むと視界が明転して何も見えなくなった。
「ちょめちょめ」 (うぅ、眩しい……)
「着いたぞ」
「ちょめ?」 (へ?)
パパの声を聞いて瞼を開けると景色がガラリと変わっていた。
たくさんの人達が集まっていて野菜や家畜が並べてあった。
「ここが王都の市場だよ」
「ちょめちょめ」 (うわぁ~、すごい活気が溢れている)
市場は競りをしていて仲買人達の声が騒がしく響いている。
人の数もそうだけれど野菜や家畜の量もすごかった。
「じゃあ、パパは野菜を出荷して来るから買い物はママ達に任せたよ」
「わかりました。買い物はミク達とすませて来ますわ」
パパは牛車を引いて野菜を出荷しに向かった。
「それじゃあ、ミク。行きましょう」
「はーい」
私達はパパと別れて王都の商店街へ足を運んだ。
「まずは馬車をレンタルしましょう」
「ちょめ?」 (馬車?)
「荷物を運ぶためのものだよ。全部は持って帰れないからね」
確かに1ヶ月分の荷物を買うのだから馬車は必要だ。
私は元の世界の感覚でいたから車を使うものとばかり思っていた。
まあ、車は馬車の進化版のようなものだからあながち外れていない。
そしてママがレンタルして来たのは馬ではなくロバだった。
「ちょめちょめ」 (随分とこじんまりとしてるわね)
「馬車だと高いし、荷物もそんなに多くないからロバがちょうどいいの」
「まずは日用品の買い出しね」
私達はロバを連れながら日用品が売っている店に向かった。
「ちょめちょめ」 (うわぁ~、すごい広い)
「王都の店だからね。規模も大きいのよ」
日用品店は”コスどこ”を思わせるような広さがあった。
置いてある商品も箱詰で売っていて”コスどこ”そのままだ。
もちろんバラ売りもしているので必要な分だけ買える。
「ミク。トイレットペーパーを持って来て」
「いくつ?」
「6つ入りのものを2つお願い」
「6つ入りのを2つね。ちょめ太郎、行こう」
「ちょめ」 (うん)
ミクは買い物カートを押してトイレットペーパーを探しに行く。
この世界にも買い物カートがあったことに驚きを覚えた。
荷物を入れるためのカートだから世界共通なのだろう。
トイレットペーパーはすぐに見つかった。
それは山のように積み上げられていたからだ。
「ちょめちょめ」 (何よ、この陳列は。ピラミッドじゃん)
「この方が目立つからそうしているんだよ」
「ちょめちょめ」 (一番上の商品はどうやって取るの?)
「う~ん。知らない」
商品を見つけやすくするための陳列であるとすれば納得がいく。
だけど、商品を取りやすくしている訳じゃないので1番上を取る人は大変だろう。
ミクは下にあった6つ入りのトイレットペーパーを2つ買い物カートに入れた。
「ママのところに戻るよ」
「ちょめ」 (うん)
私達がママのところへ戻るとママの買い物カートもいっぱいになっていた。
ママの買い物カートにはシャンプーやリンス、石鹸や洗剤などが入っている。
「随分と買ったんだね」
「まだまだ序の口よ。買いたいものは他にもあるんだから」
1ヶ月分をまとめ買いするのだから相当な数の商品を買うのだろう。
とりわけ数が多くなりそうなのは消耗品の類だ。
ただ、バラ売りしているものをチョイスするだけなので商品の種類が増えるだけだ。
箱詰めにされてる消耗品などを買う必要はない。
それから私達は1時間かけて日用品をかき集めた。
「これぐらいでいいかしら」
「すごい量だね」
「1ヶ月分もあるからね」
「いくらぐらいになるかな」
「お金のことは心配しなくても大丈夫よ。パパが稼いでくれているから」
パパは人を雇っている訳じゃないから人件費がかからない。
だから利益がまるまる懐に入っている。
そこから毎月の生活費や将来のための積立をして残りがパパのおこづかいだ。
1ヶ月あたりどれだけ稼いでいるかわからないが相当潤っていることだろう。
「ママは精算をして来るからミク達は荷物をロバに積んでおいて」
「はーい。ちょめ太郎、行こう」
「ちょめちょめ」 (ちょっと待ってよ。どうやって商品を計算したのよ)
「商品はそこにある魔法陣の上を通ると自動的に計算されるんだよ。便利でしょう」
「ちょめちょめ」 (なんて画期的なシステムなの。日本の技術を上回っているわ)
近い将来、この世界にあるシステムが日本に誕生するかもしれない。
日本にある技術では無人コンビニに近いシステムだから実現されるのも遠くないはずだ。
ただ、買った商品は自分達で運ばなければいけないところはどの世界も同じだ。
私とミクは手分けをして買った商品をロバが引いている荷車に積み込んだ。
「これで日用品の買い物は終わりね。後は服飾類と食料品ね」
「ねぇ、ママ。ルイのお土産を買って来てもいい?」
「いいけど洋服はいっしょに見なくていいの?」
「ママに任せるよ。私が選ぶよりママに選んでもらった方がお洒落だから」
「わかったわ。なら、買い物が終わったら時計塔で待ち合わせをしましょう」
「時計塔ね。わかった。ちょめ太郎、行こう」
「ちょめ」 (うん)
ママと時計塔で待ち合わせをすることにして私達はルイのお土産を買いに向かった。
待ち合わせをする時計塔は街の南側の中央にあって一番高い建物だ。
なので、王都の南側の街のどこから見てもわかるので迷うことはない。
ちなみに王都には時計塔が東西南北に4つあるとのことだ。
「ちょめちょめ」 (本当に洋服を見なくてもよかったの?)
「うん。ママに任せておけば大丈夫だから」
「ちょめちょめ」 (ママを信頼しているのね。私だったらダメだわ。うちのママはセンスがないから)
「ちょめ太郎のママだなんて面白そう」
「ちょめちょめ」 (何よ、その言い方)
「だって、ちょめ太郎と同じ姿をしているんでしょう」
確かにミクが言うように今はちょめ虫だからママもちょめ虫と言うことになる。
もし、ちょめ虫が変態するならばその限りでもないけれど恐らく変態はしないだろう。
ちょめジイがそんなところまで気を使うようなことはしないと思うから。
「ちょめちょめ」 (それはいいけど、ルイのお土産は何にするの?)
「う~ん、そうだな。ファンシーショップで探そう」
「ちょめちょめ」 (この世界にファンシーショップなんてあるの?)
「ちょめ太郎は行ったことがないのね。なら、行こう」
ファンシーショップがあるだなんて、この世界は日本とそう変わりないようだ。
カワイイは世界共通の言語だから、異世界でも同じなのかもしれない。
でも、どんなカワイイものがあるのかすごく興味が湧く。
日本のようにカワイイキャラクターグッズが溢れているかもしれない。
ファンシーショップはさほど遠くない場所にあった。
ただ、すぐにファンシーショップだとわかる外観をしていた。
”ムーンリオピューランド”のようなカワイイ建物になっていた。
「ちょめちょめ」 (うわぁ~、カワイイ)
「カワイイでしょう。お店の中もカワイイで溢れているよ」
ファンシーショップに入ると夢の世界に迷い込んだかのような感覚に襲われる。
店内の色彩がパステルカラーで統一されていて優しい気持ちになってくる。
カワイイぬいぐるみをはじめフィギュア、マグカップ、ストラップなど。
数えきれないほどのカワイイキャラクターグッズで溢れていた。
「ちょめちょめ」 (なんて世界なの。こんなところにいたら私までカワイくなっちゃう)
「ファンシーグッズは心を癒してくれるから好きなんだ」
「ちょめちょめ」 (ファンシーグッズは乙女の嗜みよね。私も大好き)
「やっぱりちょめ太郎は女の子なんだね」
ミクには私の本当の名前を知られているので私が女の子であることは知っている。
だから、頭にリボンをつけてくたし、いっしょにお風呂に入っても嫌がらないのだ。
もし、私が男の子だったらミクといっしょにお風呂で洗いっこなんてできなかっただろう。
「ちょめちょめ」 (それでルイのお土産は何にするの?)
「ぬいぐるみとマグカップにしようかと思ってる」
「ちょめちょめ」 (定番の商品ね。どうせなら私達とお揃いにしない)
「それいいアイデア。ルイも喜ぶね」
と言うことで私達はルイとお揃いで買えるキャラクターグッズを選んだ。
「ぬいぐるみはこれにしたよ」
「ちょめちょめ」 (ピンク色のスライムか。いいセンスしてるね)
「スライムはカワイイし、ピンク色だから余計にカワイイから」
「ちょめちょめ」 (ピンク色は女子のマストカラーだからね)
女子にとってピンク色は特別な色で何でもカワイく見えてしまう。
それにピンク色を見ていると優しい気持ちになれるから好きなのだ。
ピンク色と言えば女子の色と言えるぐらい世界中で認識されている。
「マグカップはこれにしようか?」
「ちょめちょめ」 (ウサギのキャラクターの入ったマグカップね。このキャラクター人気があるの?)
「はじめて見るキャラクターだけどカワイイから」
「ちょめちょめ」 (確かにカワイイ)
マグカップは青と黄色と緑色のパステルカラーだ。
ピンク色を入れると取り合いになるからあえて避けたようだ。
他にも紫色、オレンジ色など虹色のカラーが揃っていた。
「それじゃあお金を払って来るね」
「ちょめちょめ」 (プレゼント用にリボンをしてもらった方がいいよ)
「うん。そうする」
ミクは商品を持ってレジで精算をすませる。
ラッピングするから少し時間がかるだろう。
私は先に店を出て外で待つことにした。
「ちょめちょめ」 (ふわぁ~、楽しかった)
ファンシーショップは女子にとって夢の世界だ。
カワイイものが溢れていて幸せな気持ちになれる。
とりわけ仕事で疲れた時はファンシーショップで癒されるのが一番だ。
周りをカワイイもので溢れさせていれば自分もカワイくなれる。
だから、女子の部屋にはキャラクターグッズが置いてあるのだ。
「ちょめちょめ」 (私の場合、ななブー一色だったから部屋にはななブーグッズが溢れていたのよね)
アイドルのグッズもカワイイものが多いので気に入っている。
とりわけ推しをキャラクター化したぬいぐるみは最高にカワイイ。
持っているだけで幸せになれるし、推しといっしょの気分を味わえる。
だから、ななブーのぬいぐるみはベッドの脇に置いてあるのだ。
「ちょめちょめ」 (ななブーグッズはちょめジイのところに預けてあるのよね。ミクの家に召喚してもらおうかしら)
すっかりミクの家に居候していたから住人のようになってしまっている。
ただ、私の部屋はないからミクといっしょに生活をしているのだけど。
だけど、屋根のある家で寝泊まりできることにありがたさを感じている。
少し前までは野宿をしたり、馬小屋で眠ったりしていたからだ。
「ちょめちょめ」 (このままミクの家で居候していようかな)
そんな思いがふと浮かび上がる。
元の姿に戻りたい気持ちはあるがこのままでもいいと思っている。
ちょめ虫も慣れてしまえばそう悪くはない。
手足はないけれどテレキネシスで物を動かせる。
おまけにミクとお喋りできるようにもなった。
だから、ちょめ虫であることがそんなに苦でないのだ。
「ちょめちょめ」 (最近、”カワイ子ちゃんの生ぱんつ”を集めていないけどちょめジイは文句を言ってこない。もしかしたら忘れされているのかもしれないわ)
このままちょめジイからも卒業をした方がいいのかもしれない。
ちょめジイの言うことをきいていると不幸になりそうな気がするから。
”カワイ子ちゃんの生ぱんつ”が欲しいなら自分で集めればいいのだ。
そんなことを考えていると周りが騒がしくなりはじめる。
「おい、早く行こうぜ。リリナちゃんから重大発表があるそうだぞ」
「重大発表なんてなんだろうな。もしかして、卒業とか」
「そんな訳あるかよ。リリナちゃんは売り出し中のアイドルなんだぞ」
「それもそうだな。本人から直接聞くのがいいな」
そんな会話をしながら男の子達は公園へ駆けて行った。
「ちょめ太郎、おまたせ。どうしたの?」
「ちょめちょめ」 (うん。ちょっと……)
ミクが声をかけて来ても私は上の空で公園の方を見つめていた。