第七十四話 ファンだから
ステージは最高潮を迎えエンディングへと移る。
その頃になると舞台裏のスタッフ達も慌ただしくなる。
しかも、私が紙吹雪を撒いていたことも一因だ。
本来、紙吹雪を撒くスタッフが現れたのでひと際騒がしくなっていた。
「何であなたがここにいるのよ」
「ちょっと休憩をとってトイレに行っていたんだ」
「じゃあ、あいつは誰なの?」
「わからないよ」
スタッフ達は舞台裏で本来、紙吹雪を撒くスタッフを問い詰めている。
ときおり私の方を指さしていたのでバレたのだと気づいた。
「そろそろ潮時かもな。捕まる前にとんずらしよう」
私は紙吹雪が入っていた籠を脇に置いて梯子を降りて行く。
そして下まで降りるとスタッフ達がいない暗がりに姿を消した。
「とりあえず一安心かな。後はリリナちゃんを探すだけだ」
私は物陰に身を隠しながらスタッフがいない時を見計らって移動する。
まるでかくれんぼをしている時のような状態だ。
ステージのある方向から割れんばかりの拍手が起こると舞台裏はさながら戦争状態になった。
スタッフは駆け回りライブの後片付けをはじめる。
その中で私の行方を探しているスタッフ達もいた。
「ようやく路上ライブが終わったようだな。ここにいると見つかるから他へ行こう」
私はスタッフ達に紛れて外へ外へと駆けて行く。
ただ、スタッフ達の波に飲まれて押し戻されてしまう。
仕方ないのでスタッフ達を掻き分けながら外を目指した。
そして、手近な部屋を見つけてそこへ逃げ込んだ。
「ハアハアハア。何とか避難出来たな。表が落ち着くまでここに隠れていよう」
部屋はこじんまりとしていてテーブルの上にケータリングが置いてある。
そのテーブルにリリナちゃんがいて水を飲んでいる最中だった。
「マズい。見つかった」
「お疲れさまです」
「お疲れさま?」
私は小首を傾げて疑問符を浮かべてからすぐに気がついた。
今スタッフの格好をしているからスタッフと間違えられたのだろう。
とりあえず大声を出されなかったことに一安心する。
そして私もスタッフの振りをして椅子に腰を下ろした。
「今日はありがとうございました。おかげでライブは大盛況です」
「あ、ああ。リリナちゃんが頑張ったおかげだよ」
「私が頑張れるのもスタッフのみなさんが支えてくれるからです。これからもよろしくお願いします」
「こ、こちらこそ」
スタッフの格好をしていたからリリナちゃんに感謝されてしまった。
これはこれで嬉しいものでスタッフ達が羨ましく感じる。
私は今まで人に感謝されたことがないから余計にそう思った。
「水、飲みますか?」
「う、うん」
「はい」
「あ、ありがとう」
リリナちゃんから水を渡されて嬉しくなってしまう。
ただのケータリングの水なのだけれどリリナちゃんが渡してくれたからだ。
もし、これがリリナちゃんのファンだったら昇天をして喜んでいたことだろう。
私は水を一口飲んで気持ちを落ち着けた。
「ところで今は休憩ですか?」
「あ、ああ。そんなところ」
「スタッフさん達も大変ですよね。私なんてステージで歌うだけだから」
「何言っているんだ。リリナちゃんが歌ってくれるから私達は頑張れるの。ステージで歌うだなんてすごいことだぞ」
何もできない私からしたらリリナちゃんはスーパーマンのように見える。
ステージに立つことだけでもすごいのにおまけに歌を歌っているのだ。
すごい以上に言える言葉は見つからない。
「そんな風に言われると照れるな。私は好きなことをしているだけですから」
「好きなことか……やっぱりリリナちゃんはすごいな」
何だかリリナちゃんと私の間に高い壁があるような気がした。
「この後で打ち上げがありますけれどスタッフさんは来るんですか?」
「う~ん。私はこの後で予定があるから参加できないな」
「そうですか。寂しいです」
「なっ!」
私が打ち上げに来ないだけで悲しんでくれるなんてリリナちゃんはなんていい奴なんだ。
仲の良いギャル友達といた時もそんなことを言われたことは全くない。
この部分がリリナちゃんが人を惹きつける魅力なのかもしれない。
「そうだ。あのさ、リリナちゃんにお願いがあるんだけど」
「何でしょう」
「実は会って欲しい人がいるんだ」
「スタッフさんですか?」
「スタッフじゃない」
「なら、ダメです。マネージャーから禁止されているんです」
リリナちゃんクラスのアイドルになると人に会うことも制限されてしまうようだ。
あのマネージャーはキツそうなタイプの人だったからキツク言われているのだろう。
だけど、そうなるとどこかで見かけたことのある女子との約束を果たせなくなってしまう。
「ちょこっとだけ会ってくれればいいんだ」
「でもな。マネージャーに怒られちゃうから」
「バレないようにひと気のないところで会わせるから」
「う~ん。難しかな。ファンの人に知られたら不公平になっちゃうから」
顔も名前も知らないようなファン達の心まで気づかうなんて中々できることでない。
確かにリリナちゃんが言うようにどこかで見かけたことのある女子がリリナちゃんと会ったら不公平になる。
そんなことが許されるなんて誰も望んでいないことだからなおのことだ。
もしかしたらリリナちゃんファン達が減ってしまう原因になるかもしれない。
「そうか……でも、まあ仕方ないよな」
「ごめんなさい」
「リリナちゃんが謝ることはないよ。私がワガママを言っただけだから」
「その人に会うことはできない代わりにこれを渡してください」
そう言ってリリナちゃんが差し出したのはサインの書れている色紙だった。
しかも、どこかで見かけたことのある女子宛てにリリナちゃんからのメッセージがついている。
「これを渡したら喜ぶよ。ありがとう」
「これからも私のファンでいてくださいね」
なんて神対応をしてくれるのだ。
普通なら門前払いをさせられるのに。
これだからリリナちゃんは人気があるのかもしれない。
「そいつに伝えておくよ。それじゃあ私は後片付けがあるから」
「あまり無理はしないでくださいね」
「ありがとう。じゃあ」
私がお別れの挨拶をするとリリナちゃんは深々と頭を下げてくれた。
誰に対しても分け隔てなく謙虚で低姿勢な姿がリリナちゃんの魅力のひとつだ。
私もそんなリリナちゃんを見習ってアイドルになろうと、その時思った。
「あっ、そうだ。最後にひとつだけ」
「何でしょう」
「アイドルになるにはどうしたらいいんだ?」
「特別なことは必要ありません。アイドルになると決めた時からアイドルなのです」
「なるほどな……」
私はどうやら形ばかりアイドルになることを目指していたようだ。
リリナちゃんが言うようにアイドルになると決めた時からアイドルならば私はもうアイドルなのだ。
ただ、リリナちゃんのように人気を集めるにはそれなりに努力をしなければならない。
それは追々考えるとして今は答えがわかったことに一安心をした。
「では、お仕事頑張ってくださいね」
「おう」
私はリリナちゃんに見送られながらドアノブに手をかけるといきなり扉が開いた。
「うわぁっ!」
入って来た人物にぶつかって私は後ろに倒れ込んでしまう。
「いてて。いきなり何なんだ」
私が徐に顔を上げると目の前にいたのはどこかで見かけたことのある女子だった。
「おい。何でお前がここにいるんだ。外で待ってろって言ったろう」
「あなたに任せておくよりも確かだからね」
そう言ってどこかで見かけたことのある女子は外の様子を確かめてから扉にカギを掛けた。
「おい、お前。何をしているんだよ」
「邪魔が入ると嫌だからカギをかけたのよ」
「邪魔ってな……」
これではリリナちゃんを監禁したようなものだ。
どんな権限があってそうしているのかわからないがこれは犯罪だ。
すると、どこかで見かけたことのある女子はリリナちゃんと所へ近づいた。
「はじめまして。私は推し活部のルイミンです。ずっと前からリリナちゃんの推し活をしていました」
「あ、ありがとう……」
「ちょっと待て。ルイミンって」
「今頃、思い出した?私はあなたにイジメられたルイミンよ」
どこかで見かけたことのある女子だとは思っていたがよりによってルイミンだったことに驚きだ。
今さら私の前に現れて復讐でもしに来たのかとさえ思ってしまう。
ただ、ルイミンの方にそんな意図はなく純粋にリリナちゃんに会いたかっただけのようだ。
「リリナちゃん、大丈夫だった?あいつは冷酷なイジメっ子なの」
「おい。リリナちゃんに変なことを吹き込むな」
「だって事実じゃない。それに私をイジメたから退学になったのでしょう」
「そ、それはそうだけど……」
ルイミンをイジメたことが学院にバレたから退学になってしまったことは事実だ。
それが本当のことだけにルイミンに言い返せないでいる。
「そんなことより、リリナちゃん。私とデートしよう」
「デート?」
「うん。遊園地に行ったり、映画を観たり、1日中遊ぶの。楽しいよ」
「ごめんなさい。ファンの人とそう言うことしちゃいけない決まりになっているから」
「えーっ。固いことは言わない。黙っていればわからないよ」
「けど、ダメなの」
ルイミンがハイテンションで誘って来るのでリリナちゃんは引き気味だ。
「リリナちゃんのいけず~。なら、私のお部屋で遊ぼう。それならいいでしょう」
「ごめんなさい。それもできないの」
「えーっ。それも」
「おい。リリナちゃんが困っているじゃないか」
「あなたには関係ないでしょう。これは私とリリナちゃんの問題なの」
間に入って来ないでよと言わんばかりにルイミンは文句を言う。
リリナちゃんが困っているのにおかまいなしだ。
これが熱狂的なファンの一面なのだろう。
「ごめんなさい。ルイミンさんのお誘いには乗れません」
「じゃあ、この指輪をはめてよ。私とおソロなのよ。これが友達の証よ」
「ほんと。本当にごめんなさい。ファンの人と直接関わっちゃいけないの」
「もう、リリナちゃんったらないないづくしじゃない。私とお友達になるのがそんなに嫌なの」
「そう言う訳じゃないけれど、決まりだからダメなの」
「ブー」
いくらお誘いしてもリリナちゃんがOKしてくれないからルイミンは頬を膨らませてブー垂れた。
「これでわかったろう。リリナちゃんは忙しいんだ。お前なんて相手にしている暇はない」
「わかった風な口を聞かないで。コソ泥の分際で図々しいのよ」
「コソ泥って何だよ?」
「その黒Tを盗んで来たでしょう。はじめからわかっていたんだから」
「お前、それを知って私に要求していたのか」
「イジメっ子なんだから仕方ないじゃない。いつ復讐されてもおかしくないわ」
やっぱりルイミンの行動には裏があったようだ。
私を見てリリナちゃんのスタッフだと思ったこと自体が嘘だった。
はじめから私がイジメっ子だと知って復讐しようとしていたのだ。
「お前も性格が悪いな」
「あなたほどじゃないわ」
確かに私もルイミンもどっこいどっこいだ。
ただ、私はもうイジメっ子から足を洗っている。
学院を退学になった時点でイジメっ子から卒業したのだ。
今は純粋にアイドルになろうとしている普通の女子だ。
「もう、二人とも喧嘩を止めてください」
「別に喧嘩なんてしてないよ」
「リリナちゃんがそう言うなら止めまーす」
リリナちゃんが間に入って来たので私は良い争いを止める。
ルイミンはコロッと態度を変えてリリナちゃんにすり寄った。
「ゴロにゃん」
「おい、リリナちゃんにくっつくんじゃねぇ」
「この膝は私だけのもなの」
「……」
リリナちゃんもルイミンの行動にどうしたらいいのか戸惑っている。
ルイミンは猫のようにリリナちゃんの膝の上でゴロゴロしていた。
「リリナちゃん、ごめんな。変な奴を連れて来ちゃって。すぐに追い返すから」
「仕方ありませんよ。私もファンだったらスキンシップしたいと思いますし」
「こいつの場合はやり過ぎなんだ。いい加減にしろ」
「ゴロにゃん」
私はルイミンの首根っこを掴んで猫をどかすように移動させた。
憧れのアイドルの前に来たらどんなファンでもこうなってしまうのか。
ルイミンの場合、少し度が過ぎているようにも思えてしまうが。
ただ、ルイミンの気持はわからないでもない。
憧れの人に出会ったら気分がよくなるのも理解できるからだ。
「全く。お前は達の悪いファンだな」
「あなたに言われたくないわ。私は純粋にリリナちゃんが好きなだけ」
「好きになってくれるのは嬉しいですけれど、もう少し節度を持ってもらいたいです」
「ほらみろ。リリナちゃんもこう言っているじゃないか」
「リリナちゃんが望んでいるのならそうする」
これからルイミンに言うことを聞かすならリリナちゃんにお願いした方がいいかもしれない。
リリナちゃんの言うことなら絶対に無視をしないから一番有効な方法だ。
ただ、その度にリリナちゃんを使うのは心苦しい。
「迷惑をかけてすまなかったな。私達はこれで失礼する」
「またお会いできることを楽しみにしています」
「じゃあね~ぇ」
「おう……って、お前も来るんだよ」
「何で私が。帰りたいならひとりで帰りなさい。私はまだリリナちゃんに用があるの」
「どうせくだらないお願いをするだけだろう」
「失礼ね。崇高なお願いよ」
ルイミンはまだ懲りていないようだ。
リリナちゃんにお願いしても断られるだけだ。
リリナちゃんはファンと関係を持つことを禁じられている。
だから、頭を下げてお願いしても聞き入れてもらえないのだ。
「デートもダメ、いっしょに遊ぶのもダメ、プレゼントもダメ。だったら私とお友達になって」
「お友達?」
「お友達だったら構わないでしょう」
「う~ん。どうかな」
判断に迷う微妙なラインをルイミンは攻めて来た。
アイドルとファンとならば関係を持つことはできない。
ただ、お友達になったらそう言った限りでもない。
お友達と言う前提があるからお近づきになれるのだ。
「私とお友達になることが嫌なの?」
「そう言う訳ではありません。ただ……マネージャーがなんて言うか」
「マネージャーは鬼のような人なの。私はリリナちゃんとお友達になりたいだけなのよ。文句を言われる筋合いはないわ」
「……」
即答しかねる質問だ。
ルイミンの目的はリリナちゃんと友達関係を結ぶことにある。
お友達になれば普通に遊んだり、お喋りしたりできるからだ。
しかも、推しとお友達になれるなんて夢のようなことだ。
ファンだったら誰しも憧れることだろう。
ただ、リリナちゃんからしたらファンとお友達になると言うことなのだ。
ルイミンがファンである以上、うかつにお友達になることはできない。
もし、そんなことをしてしまえば他のファン達に顔向けができなくなるからだ。
ルイミンだけ特別扱いをすることはできない。
「リリナちゃんが困っているだろう。お前もリリナちゃんのファンと言うならリリナちゃんの気持ちを一番に考えろよ」
「知った風な口を聞かないで。これはリリナちゃんが幸せになるための問題なの。ルールばかりに縛られていたらリリナちゃんはいつまで経っても飛び立てないわ」
「私は……」
リリナちゃんはアイドルなのだから縛りがキツくても仕方がない。
誰でも触れ合えるアイドルになってしまえばブランドが落ちることに繋がる。
ファンが手を伸ばしても届かないところにいるからアイドルとしていられるのだ。
「リリナちゃん。こいつの言うことは無視していいからな。何だかんだ理由をこじつけしてリリナちゃんを納得させようとしてるだけだから」
「そんな言い方をされるなんて不愉快だわ。私はただ、リリナちゃんの可能性を導きたいのよ。偶像としてのアイドルはもう古いわ。これからは触れあえるアイドルが流行るのよ」
「わかりました。ルイミンさんとお友達になります」
「おい、本当にいいのか?怒られるのはリリナちゃんなんだぞ」
「いいんです。それに私もお友達が欲しいと思っていましたし。だからスタッフさんもお友達になってください」
リリナちゃんの口から予想もしていなかった言葉を聴いて私が驚いてしまう。
お友達が欲しかっただなんて周りにお友達がいない環境だったのだろうか。
アイドルとして活動する上でお友達の存在が邪魔になるから反対されていたのかもしれない。
あのマネージャーなら言いそうだから恐ろしい。
「リリナちゃん、いいの?こんな奴とお友達になってもロクなことがないよ」
「いいんです。お友達は多い方がいいですから」
「悪いな。私まで便乗してしまったみたいで」
「お二人と話していると楽しいですからいいんです」
と言う訳で私とルイミンは正式にリリナちゃんとお友達になった。
「じゃあ、私のことはルイミンて呼んでね。こいつはイジメっ子でいいから」
「おい、勝手に決めるな。私はナコルだ」
「ルイミンさんとナコルさんですね。私のことはリリナって呼んでください」
「ダメだよ。リリナちゃんはリリナちゃんなの。呼び捨てになんてしないわ」
お友達になってもルイミンの中ではリリナちゃんはアイドルなのだろう。
すると、廊下から控え室の扉を激しく叩く音が聞えて来る。
「リリナちゃん、いるんですか?開けてください」
「マズい。バレたかな」
「今、開けます。みなさんは隠れてください」
スタッフに見つかるとマズいので私とルイミンはロッカーに隠れた。
「リリナちゃん、開けてください」
「はい、どうされたのですか?」
「無事だったんですね、よかった」
「何かあったんですか?」
「実は不審者がスタッフに扮して侵入したんです。見たことのないスタッフを見かけませんでしたか?」
「いいえ。見ていません」
「そうですか。なら、よかった。とりあえずリリナちゃんはこの部屋にいてください。不審者は私達で探しますから」
「わかりました」
「カギはちゃんとかけておいてくださいね」
「はい」
リリナちゃんに忠告を与えるとスタッフは急いで駆けて行った。
「ふーぅ。助かった」
「不審者ってお前のことだろう」
「何を言っているのよ。あなたに決まりじゃない。どこからどう見ても不審者だわ」
「私はリリナちゃんのスタッフだ」
「さっきのスタッフはスタッフに紛れてって言っていたでしょう」
「余計なところだけ覚えているな」
リリナちゃんのスタッフが探しているのは恐らく私のことだろう。
代わりに紙吹雪を撒いたことが見つかる要因だったのかもしれない。
でも、あれはスタッフに任されたことなのだから私の問題ではない。
それよりも――。
「ここに留まるのはよくない。私達はこの場から立ち去るぞ」
「名残惜しいけど今は仕方ないかもね」
「と言う訳だから。リリナちゃん、また会おう」
「リリナちゃんと別れるのは寂しいけれど少しばかりの我慢だからね」
「皆さんが無事に帰れることを祈っています」
「もう、リリナちゃんったら。私のことはルイミンでいいよ」
「そうでしたね。ナコルさん、ルイミンさん、またいつか」
その言葉をリリナちゃんからもらって私とルイミンは控え室を後にした。
これで危険を冒して路上ライブの舞台裏へ侵入した成果はあった。
あのリリナちゃんとお友達に慣れたのだからこれ以上の収穫はない。
これからはファンとしてではなく、お友達としてリリナちゃんに会えるのだ。