第五十八話 恋い焦がれて
その日の夜、ミクとルイが眠るまで私は待っていた。
また精霊の森にミクを連れ出すと問題になるので止めておいた。
私ひとりの方が身軽だし、責任を果たすためにもいい。
安直にルイのMV撮影をしてしまったことは間違いだったのかもしれない。
ルイのアイドルへの想いは強まってしまったのだから。
「ちょめちょめ」 (これは私ひとりで解決しなくっちゃ)
私はそっとベッドから抜け出してミクが寝ていいるか確かめる。
ミクはスヤスヤと寝息を立てていて夢の中にいた。
「ちょめ」 (大丈夫みたいね)
私はベッドから離れてそっと窓を開ける。
「ちょめ」 (よし、行くぞ)
覚悟を決めて私は窓から外に出た。
窓はちゃんと閉めて風が入らないようにしておく。
ミクが風邪を引いてもマズいからだ。
私は壁を伝い地上に降りる。
そして後ろを振り返ってミクの家を見てから精霊の森の中へ入って行った。
ランプは持って行かないことにした。
荷物にもなるし、今夜は満月でいつもより森が明るかったからだ。
「ちょめちょめ」 (今夜は明るいから月明かりだけでも十分だわ)
精霊の森はいつになく蒼白く光っていて神秘的だ。
その名に相応しいほど神々しくてかつ幻想的だ。
何だか心が洗われるような気がした。
「ちょめちょめ」 (今夜はおぼこぼさまに会えそうな予感がするわ)
私は記憶を辿りながら精霊の森の奥へと進んで行った。
一度、霊樹の広場まで行っているから記憶の中の景色を頼りにすればいい。
同じような景色の場所を辿って行けば霊樹の広場へ行けるはずだ。
しかし、行けど行けど記憶の中にある景色と同じ場所は見当たらない。
それは精霊の森が生きているから日ごとに森の中の様子が変わるからだろう。
「ちょめちょめ」 (やっぱミクがいないとダメね。すっかり迷っちゃったわ)
今、どのあたりにいるのか全く見当がつかない。
ミクの家から北へ向って来たはずなのだけど。
一旦、森の中に入ってしまえば方向感覚が失われる。
どこもかしこも似たような景色で目印がつかないためだ。
「ちょめちょめ」 (とりあえず自分を信じるしかないわ)
考えていても時間は過ぎるばかりだ。
それなら自分の勘を信じて前に進んだ方がいい。
たとえ迷ったとしてもその場に留まるよりもマシだ。
普通なら森で遭難した時は動かずに救助が来るのを待つものだ。
その方が生存確率はあがるし、無駄な体力を消耗しなくてもすむ。
ただ、私の場合、黙って出て来たのでミクが来る保証はない。
だから、前に進む方が正しいのだ。
「ちょめちょめ」 (おバカなおサルの後を追い駆けて行ったら霊樹の広場に辿り着けたのよね。また、おバカなおサルが来ないかしら)
私は樹の上を見上げながらおバカなおサルがいないか探す。
しかし、辺りはシーンと静まっているだけで姿すら見えなかった。
「ちょめちょめ」 (食料を持って来ればよかったわ。それをエサにすればおバカなおサルも来たかも)
ミクのママの手作りのサンドイッチを食べたから味をしめているはずだ。
とかくおバカなおサルは食欲に貪欲だから食料があれば釣れただろう。
樹の上を見上げても果物も木の実も実っていない。
「ちょめ」 (はーっ。ダメか)
私は大きなため息を吐いてガックリ肩を落とした。
もう頼れるものは自分しかいない。
おバカなおサルもいないし、ミクもいないのだ。
どちらに霊樹の広場があるのかわからないけど前に進むだけだ。
私は気を取り直して再び歩き出した。
それから1時間ぐらい精霊の森を彷徨った。
空を見上げると丸い月が煌々と輝いている。
私の苦労などかき消すかのように混じり気がない。
そんな月を見つめていたら少し恥ずかしくなった。
「ちょめちょめ」 (ないわ。どこにあるのかしら)
GPSでもあれば一発なんだけどな。
今いるところがわからなくても地図があれば場所がわかる。
それに方向も示してくれるから遭難した時には便利なのだ。
「ちょめちょめ」 (こうも探して見つからないと心が折れるわ)
本当に霊樹の広場に辿り着けるのかさえ疑ってしまう。
一度、行ったことがある場所だけれど本当にあるのかさえ信じられなくなる。
あれは私の勘違いで実際は行ったことがないのかもしれなとさえ思ってしまう。
ミクと行った時も霊樹はなくてただの広場だったのだから。
「ちょめちょめ」 (やっぱり無謀な挑戦だったのかな……)
ルイのことを考えて飛び出したけど間違いだったのかもしれない。
非力な私がルイを救おうだなんて考えること自体がおこがましいのだ。
おぼこぼさまに会ってルイの病気をなおせばルイはアイドルになれる。
ただ、おぼこぼさまにルイの病気を治せる力があるのかさえわからない。
願いごとを叶えると言っても叶えられない願いもあるかもしれないのだ。
「ちょめちょめ」 (はーっ。もう、帰ろうかな)
心が折れたらやる気までなくなってしまった。
だが、帰り道がまったくわからない。
目印をつけて歩いて来た訳じゃないから。
やる気だけで前へ進んで来たけど気持ちがなくなれば終わりだ。
しかし、辺りを見回しても全くわからない。
「ちょめちょめ」 (私、このままずっと精霊の森を彷徨い続けるのだわ)
ちょめ虫だからしばらく食べなくても死なない。
だけど、ずっと食べなくてもいられる訳じゃない。
いずれ力尽きて倒れてしまうだろう。
「ちょめちょめ」 (短かったな。私の人生も)
私がフラフラと歩いていると枝葉で出来たトンネルを見つけた。
そのトンネルが霊樹の広場に通じていることなどすっかり忘れトンネルを抜けて行く。
すると、目的地であった霊樹の広場に辿り着くことができた。
「ちょめちょめ」 (あれ?ここって霊樹の広場じゃない?)
辺りを見回すとドーム状に開けた広場が広がっていた。
空は丸く切り取られていて月明かりが煌々と照りつけている。
そして広場の中央には探し求めていた霊樹が聳え立っていた。
「ちょめちょめ」 (やったー!やっと見つけたわ!)
私は思わず大声を出して飛び上がるように喜んだ。
これまでの苦労がようやく報われた瞬間だった。
ミクと探した時も見つけられなかった霊樹を見つけたのだから。
しかも、今回は私ひとりの力でだ。
「ちょめちょめ」 (やっぱり諦めなければ神様は味方をしてくれるのね)
私が霊樹のところへ近づいて行くと霊樹の影からトノ達が出て来た。
「何をしに来たのじゃ」
「ちょめちょめ」 (おぼこぼさまに会いに来たのよ)
「ここはお主のような者が来ていい場所ではない。帰るのじゃ」
「ちょめちょめ」 (いやよ。せっかくここまで来たのに手ぶらでは帰れないわ)
トノが合図をするとたまごおやじ達が私を取り囲む。
「帰らぬといいのなら力づくで帰らせるしかないようじゃな」
「ちょめちょめ」 (何よ。大勢でズルいわよ。私と一対一の勝負をしなさい)
「ふん。一度、予に勝っておるからって図に乗りおってからに」
「ちょめちょめ」 (どうしたの。やらないの。それとも怖気づいた?)
私はトノを挑発するように言う。
「予は、そんな挑発には乗らんのじゃ」
「ちょめちょめ」 (臆病者。それでもたまごおやじのリーダーなの)
「リーダーであるからこそ冷静でいるのじゃ」
「ちょめ」 (チッ)
トノは思っていた以上に大人のようだ。
ただ、状況が悪いことには変わりない。
たまごおやじ達に抑え込まれたら逃げられない。
周りを見回してもどこにも逃げ道はない。
絶対的なピンチに追い込まれた状況だ。
「さあ、大人しくするのじゃ」
たまごおやじ達はジワリジワリとにじり寄って来る。
「ちょめ」 (ちぃ。ここまで来て)
すると、霊樹が急に蒼白く輝き出す。
「おぼこぼさまじゃ」
「ちょめ」 (えっ、おぼこぼさま?)
たまごおやじ達は一斉に霊樹の周りに集まって頭を低くする。
霊樹を見上げると霊樹の枝に白いたまごのような実ができる。
それは月の光を受けて蒼白く輝きながら大きくなって行った。
「ちょめちょめ」 (何よ。おぼこぼさまってたまごおやじなの?)
大きくなった白いたまごは枝から離れて地上に落ちる。
それはひとつではなく霊樹が撓るほどたくさん実っていた。
「お主も頭を下げるのじゃ。おぼこぼさまの降臨じゃぞ」
「ちょめちょめ」 (たまごおやじに頭を下げるほど落ちぶれていないわ)
私はトノの言うことを無視して地上に落ちたたまごを見つめる。
しかし、たまごは何も変化せずにそのままの形を保っていた。
「ちょめちょめ」 (ぜんぜん変わらないじゃない。おぼこぼさまだなんて嘘っぱちじゃないの)
すると、たまごに亀裂が入っておぼこぼさまが姿を現した。
と言うか動物や鳥や魚の赤ちゃんがたまごから出て来た。
たまごからすっぽり出なくてお風呂に浸かるようにたまごに入っている。
頭にはたまごの殻が乗っていてまるで温泉に入っているかのようだ。
「ちょめ」 (キャワイイ)
予想もしていなかったおぼこぼさまの姿に私は目をトロけさせる。
たまごおやじ達とは違って愛くるしい姿をしている。
ペットにしたいぐらい可愛らしかった。
ただ、その中に一匹だけ変な姿をしたおぼこぼさまがいた。
たまごの殻を被ったような海月を思わせるような姿をしている。
「おぼこぼさま。今宵はどのような御用でしょうか」
「フム。ワタシタチヲモトメルケハイヲカンジタカラジャ」
トノはひれ伏しながら海月のようなおぼこぼさまと話をしている。
海月のようなおぼこぼさまは片言の言葉でトノと会話をしていた。
「ちょめちょめ」 (あいつもおぼこぼさまなのかしら。他のとはちょっと違うようだけど)
どちらかと言うと海月のようなおぼこぼさまはたまごおやじに近い。
可愛らしいと言うのには言いがたくておぼこぼさまの失敗作のような感じだ。
ただ、トノと話していることから察するとおぼこぼさまのリーダーなのかもしれない。
すると、不意に海月のようなおぼこぼさまが顔をあげて私を見る。
「アヤツガケハイノヌシカ」
「おぼこぼさまが会うような輩ではありません」
トノは私をこけおとそうとするが海月のようなおぼこぼさまは私の前まで来た。
「シテ、ワタシタチニドノヨウナヨウジャ」
「ちょめちょめ」 (あなたはおぼこぼさまなの?)
「サヨウ」
「ちょめちょめ」 (他のおぼこぼさまと姿が違うようだけど)
私は思っていることをはっきりと伝える。
「ワタシハユイイツハナシヲデキルオボコサマボナノジャ」
「ちょめちょめ」 (へぇ~、そうなんだ。確かにトノみたいに他のとは違っていてわかりやすいわね)
「シテ、イカヨウジャ」
「ちょめちょめ」 (あなたにお願いがあって来たの。精霊の森の外れに住んでいるルイって女の子の病気を治して欲しいの)
私がお願いを伝えると海月のようなおぼこぼさまは黙り込む。
そしてしばらく間を置いてから徐に口を開いた。
「ソレハカナエラレヌネガイジャ」
「ちょめちょめ」 (何でよ。何でも願いごとを叶えてくれるんじゃないの)
「ネガイゴトハホンニンガオネガイシナイトダメナノジャ」
「ちょめちょめ」 (何よそれ。そんなの聞いてないわよ)
私が聞いていた話ではおぼこぼさまは願いごとを叶えてくれるってことだ。
本人がお願いしないと叶えられないなんて条件は聞いていない。
「キイテナクテモダメナノジャ」
「ちょめちょめ」 (わかったわよ。手紙があるからこれでいいでしょ)
私はルイが認めたおぼこぼさま宛ての手紙を差し出す。
海月のおぼこぼさまは手紙を受け取ると手紙を読みはじめた。
「ちょめちょめ」 (その手紙はルイって子が書いたものだから)
「ハナシハワカッタノジャ」
「ちょめちょめ」 (なら、叶えてくれるわよね)
「ダメジャ」
「ちょめ」 (何でよ)
「ネガイゴトハコトバトシテハナサナイトダメナノジャ」
ここへ来て海月のようなおぼこぼさまは厳しいルールを提示する。
本人の言葉でお願いしないとダメなんてルールが厳し過ぎる。
ルイの手紙があるからいいじゃないと思うが海月のようなおぼこぼさまは納得しない。
「ちょめちょめ」 (あなた、そんなこと言って本当は願いごとを叶えられないんじゃない)
「ソウオモイタケレバオモエバイイ」
「ちょめちょめ」 (全く。おぼこぼさまもとんだ頑固ジジイね。ちょめジイと同じだわ)
「……」
私が舌打ちをして文句を言うと海月のようなおぼこぼさまは黙り込んだ。
すると、海月のようなおぼこぼさまは私に質問をして来た。
「オヌシノネガイハナンジャ」
「ちょめちょめ」 (私の願い?元の姿に戻りたいことと喋れるようになりたいってことね)
「ソノネガイ、カナエテシンゼヨウ」
「ちょめちょめ」 (私がお願いしているのはルイのことよ。話をはぐらかさないで)
私の言葉を無視して海月のようなおぼこぼさまは満足したような顔を浮かべる。
そしてフワフワと浮かび上がると蒼白く光り出して消えてなくなった。
「ちょめちょめ」 (何?何が起こったの?)
辺りを見回してみると可愛らしいおぼこぼさまの姿も消えてなくなっていた。
「おぼこぼさまが願いごとを聞き入れるなんて何十年ぶりのことじゃろうか」
「ちょめちょめ」 (そんなにケチなのに噂は広まっているのね)
「お主のような輩の願いごとを聞き入れるなんておぼこぼさまも何を考えておるのか」
「ちょめちょめ」 (だけど、私はちょめ虫のままよ。どう言うことなの)
私の姿がもとの姿に戻った風は感じない。
視線がそのままだし、手足を動かしている感覚もない。
私の願いは聞き入れてくれなかったのだろうか。
ならば、”喋れるようになる”願いは叶ったのかもしれない。
私は試しにトノに喋りかけてみた。
「ちょめちょめ」 (ねぇ、トノ。私の声が聞える?)
「聞えておるわい」
「ちょめちょめ」 (そうじゃなくて私が喋っているのか聞えているってこと)
「変わっておらんぞ。そなたはさきほどから”ちょめちょめ”としか言っておらん」
「ちょめ!」 (何よ、それ。願いごとを叶えてくれたんじゃないの)
「フム。さすがはおぼこぼさまじゃ。お主の願いごとを叶えるだけの者でないと判断したようじゃ」
トノの言っている通りならおぼこぼさまは人を選ぶと言うことになる。
願いごとを叶えてくれる精霊なのに人を選ぶだなんて邪道だ。
誰の願いも聞き入れてくれる神様とは大違いだ。
「ちょめちょめ」 (それって差別じゃん。人を見た目で選ぶなんて。今はちょめ虫だけど)
「おぼこぼさまはその者の心の奥底を見れるのじゃ。おおかたお主は邪な心を持っておったのじゃろう」
否定はしないけど改めて言われるとムッとする。
人間であった頃はそうでもなかったけど、ちょめジイの影響で邪になってしまったのだ。
そもそも”カワイ子ちゃんの生ぱんつを集めている”ことは罪を犯していると同じこと。
日本にいれば軽犯罪で捕まっていたことだろう。
「ちょめちょめ」 (おぼこぼさまもとんだ食わせ者ね)
「コラ。おぼこぼさまの悪口を言うでない」
「ちょめちょめ」 (だって、私の願いごとを叶えるとか言って逃げたのよ。文句のひとつくらい言いたくなるわよ)
「それはお主がそれ相応の者じゃなかったからじゃ。おぼこぼさまはけっして嘘は言わない」
トノはそう言うがおぼこぼさまを庇っているに過ぎない。
おぼこぼさまが食わせ者だとバレると困るからだろう。
もし、そんなことが王都に広まればおぼこぼさま信仰も薄れる。
そうなれば精霊の森を荒らす輩が現れるかもしれないのだから。
「ちょめちょめ」 (このことをみんなに広めてあげるわ)
「お、おい。そのようなことをするでない」
「ちょめちょめ」 (だって、みんなおぼこぼさまが願いごとを叶えてくれるって信じているのよ。その方が可愛そうじゃない)
「それはお主の心が歪んでいるからじゃ。心清き者であればおぼこぼさまは願いごとを叶えてくれるのじゃ」
トノは慌てながら私を説得するように言う。
だけど、ムカッ腹が立っているので素直に聞き入れたくない。
おぼこぼさまをギャフンと言わせないと怒りが収まらないのだ。
「ちょめちょめ」 (なら、何でルイの願いごとを聞いてくれないのよ。ルイは私とは違って純粋な子よ)
「だから言ったじゃろう。本人が直接お願いしないとダメなのじゃ」
「ちょめちょめ」 (あれもしてくれない、これもしてくれないじゃ、おぼこぼさまはただの大嘘つきよ)
「言ってもわからんようじゃな。この手段は使いたくなかったが仕方がない」
そう言うとトノの顔つきが真剣になる。
トノが合図を送るとたまごおやじ達が私を取り囲む。
「ちょめちょめ」 (何をするつもりよ)
「お主の記憶を消すのじゃ。そうすれば悪い噂は広まらん」
「ちょめちょめ」 (結局、あなた達も力で従わせようとするのね)
「これはしかるべき方法なのじゃ。予らに罪はない」
トノは悪びれたようすもなくシャアシャアと言ってのける。
自分達に罪はないと言っているが自分達を擁護しているだけだ。
力で人を従わせようとしただけで罪になるのだ。
今はちょめ虫だけど。
「やるのじゃ」
「ちょめちょめ」 (ちょっと、放してよ。私はか弱い乙女なのよ)
多勢に無勢で私はすぐにたまごおやじ達に取り押さえられてしまう。
「大人しくしておれ。すぐに終わる」
「ちょめちょめ」 (いや。放して。私、記憶をなくしたくないわ)
私の悲痛な叫びも虚しく、トノは私の頭に手をあてる。
そしてブツブツと呪文のような言葉を呟きはじめた。
「喝っ!」
トノが最後の言葉を発すると私の意識が薄れて行く。
それは深い眠りに落ちて行く時のような感覚に似ていた。
「ちょめ……」 (わ、私は……)
私はすっかり意識を失ってその場に倒れ込んだ。
その後、どうなったのかわからない。
気がつくと精霊の森の前に倒れていた。
「ちょめちょめ」 (あれ?何で私、こんなところで寝ていたのかしら)
少しボケボケしている頭を叩きながら辺りを見回す。
理由を思い出そうとしてもぽっかりと記憶が抜けていてわからない。
「ちょめちょめ」 (まあいいわ。ミクのところへ戻ってご飯にしようっと)
深く考えることは止めて私はミクの家へ戻って行く。
すっかり夜が明けていて東の空から太陽が顔を出したところだった。