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第五十話 おぼこぼさま

霊樹の影から出て来たのはたまごおやじのトノだった。

たまごおやじの五人衆を引き連れて威武堂々たる姿だ。


(私に何か用なの)

「久しぶりの再会に水を差すようなことを言うでない」

(何が久しぶりの再会よ。酔っ払っている私を捨てて行ったくせに)

「捨てて行ったのではない。送り届けてやっただけじゃ」


トノはそう言うが実際に私は森に捨てられていたのだ。

私に対してもっと敬意を持っていたら丁重に扱うはずだ。

トノはたまごおやじのリーダーだからおごりを持っている。

私のことなどただの下僕としか映っていないのだろう。


(あなたと話すことなんてないわ。用があるなら早くすませて)

「せっかちな奴じゃ」


私が催促するとトノは顔を顰めてぼやいた。


(私をせっかちにさせているのはみんなあなた達のせいよ。だから責任をとって)

「わかったわい。本題に進むのじゃ」


私がガミガミ言うのでトノは諦めて話をはじめることにする。


「お主はおぼこぼさまを探しておるようじゃな」

(それがどうしたのよ)

「おぼこぼさまは恥ずかしがり屋だから滅多に姿を現さない」

(あなた達とはぜんぜん違うタイプなのね。たまごおやじなんて存在だけで自己主張が強いから)

「話の腰を折るでない」


思っていたことを口にするとトノは怪訝そうな顔を浮かべた。


(で、伝えたかったのはそれだけ)

「ここからが本題じゃ。おぼこぼさまが滅多に姿を見せないのは恥ずかしがり屋だからだけでない。人間そのものを警戒しておるのじゃ」

(私はあなた達を警戒しているけどね)

「人間達はおぼこぼさまが願いを叶えてくれると知っているからおぼこぼさま探しに夢中じゃ。そなたといっしょにおる少女がいい例だ」

(ミクは危険な子じゃないわ。純粋で妹想いな優し子よ)


おぼこぼさまが何を恐れているのかわからないがミクを怖がる必要はない。

ミクは純粋な願いを持っているだけでおぼこぼさまをとって食おうとは思ってない。

ただ、妹のルイの病気を治してほしいだけだ。


「人間は目的があればそれに向かって邁進する。それが子供であればなおのことだ」

(それのどこがいけないって言うのよ。目標を持つことは良いことよ)

「その目標に対する想いが強ければ歯止めが利かなくなってしまう。あの少女も毎日この森に来ているようにな」

(ミクはただルイに外の世界のことを教えてあげたいからしているだけよ)


トノが何を言いたいのかいまいちわからない。

ミクを人間を悪く言っているのとしか思えない発言だ。

確かにトノが言うように人間は欲深い生き物だ。

目的があれば手段を選ばない非道な輩もいる。

だけど、ミクは病気の妹を想う純粋な気持なのだ。

少しだけおぼこぼさまの力を借りたいだけだ。


「人間がこの森に入り浸るようになれば静かな森が奪われる。森で暮らしているのはおぼこぼさまをはじめ我々だけでないのじゃ」

(そんなの言いがかりよ。人間だって自然の一部じゃない。それを目の敵にして悪く言うのは間違っているわ)

「確かに人間も自然の一部じゃ。じゃが、人間は森を焼き払う火を使う。それが我らには脅威に映るのじゃ」

(それはちょっとの火は使うわ。だけど森を焼き払おうなんて誰もしないわよ)


人間が火を使わなければ料理ができなくなる。

人間は獣と違うから生の肉は食べられない。

それに火を使って加熱処理することで食中毒も防いでいるのだ。


それだけじゃない。

火を灯かりにすることで夜でも過ごせるようにしている。

人間の活動時間は長いから夜働く人達には役立っている。


「じゃが、この森が誕生した当初は人間達の手によって焼き払われようとしたのじゃ。何もなかった土地に急に森ができたのじゃからな。人間達は驚いたのじゃろう」

(それは何か理由があったはずよ。何の理由もなしに人間はそんなことはしないわ)

「理由などどうでもいいのじゃ。人間がこの森を焼き払おうとした事実が大切なのじゃ」

(そんなの屁理屈よ。理由を無視して事実だけを見るなんてお門違いだわ)


事実と理由には因果関係があるものだ。

その関係を無視して片方だけを取り上げるのは馬鹿げている。

まるで車のタイヤを片方だけ外して道路を走るようなものだ。


「おぼこぼさまはこの森を守護している精霊じゃ。森に恵みを与えて豊かな自然を形成しておるのじゃ。自然がなければ生き物たちは生きられない。人間達とは違って生き物たちには森が必要なのじゃ」

(そんなことを言うなら人間にだって森は必要よ。森が近くにあることで心が癒されるし、人間が出している二酸化炭素も吸ってくれる。森はこの世界にとってなくてはならないものよ)

「そこじゃ。人間達は森を道具のようにしか思っておらん。自分達の都合のいいように森を扱い、自分達に役立てようとしているだけじゃ」

(そんなの言いがかりよ。人間だって森と共生したいと思っているのよ。だからあちこちで植樹活動をしているんじゃない。その努力ぐらい認めてよ)


私が食い下がるように訴えかけるとトノは視線を外した。


「フフフ。不思議なものじゃな。そなたは人間ではないのになぜ人間を庇うのじゃ」

(それは私はもともと人間だったからよ。この世界の人間じゃないけどね)

「異世界から来たと言うのか。面白いやつじゃ」

(驚かないの?)

「森羅万象の理など心得ておるからな」


トノは思った以上に博識で知見を持っている者のようだ。

姿が醜いたまごおやじだから少し侮っていた。


(あなた、意外とできるタイプなのね)

「褒めても何も出んぞ」


そうは言っているが私に褒められてトノも得意気にしている。


(そんな博識を持っているならわかるでしょう。おぼこぼさまにお願いしてルイの病気を治してあげて)

「それはできん質問じゃ。予がおぼこぼさまにお願いできるほどの立場ではないからな。予らは、この森の安全を守っている警備兵に過ぎん」

(たまごおやじも使えないのね。おぼこぼさまってどんな存在なのよ)

「おぼこぼさまは神に近しい存在であり、尊ぶべきお方なのじゃ」


要は神格化された存在ってことだ。

ミクから聞いた伝承でも豊穣の女神さまが霊樹の種を植えたのがはじまりだ。

その霊樹から生まれたのがおぼこぼさまと言うことだから神に近い存在だ。

ある意味、豊穣の女神さまの落し子と言っても過言でないだろう。


(そんな偉い方でも純粋な少女の願いは叶えてくれないのね)

「一度願いを叶えてしまったら癖になってしまうからな。それに噂を広められるのが一番怖い。噂を聞きつけた人間達がこぞってこの森にやって来るじゃろう。そうなれば森の安寧は失われる」

(それには返す言葉がないわ。本当のことだもん)


ミクがみんなに言いふらすようなことはしないだろうが噂は流れてしまう。

不治の病にかかっていたルイが回復したら、みんな感心を持つはずだから。

何も病気で苦しんでいるのはルイだけじゃない。

王都にいる人達も何かしらの病は持っているだろうから。


「ようやく認めおったか。そう言う訳じゃから少女の願いは叶えられん」

(私にそれを伝えたってことは私の口からミクに話をしろって言う訳ね)

「そう言うことじゃ。これはこの森を守るために必要なことなのじゃ」

(残酷だわ。ルイの病気を治そうと必死になっているミクにそのこと伝えるなんて)


どうせなら私ではなくミクのところに現れて欲しかった。

そうすれば私は嫌な役をしなくてすんだのだから。

ミクは命の恩人だから悲しませることはしたくない。

本当のことを知ったらミクは泣き伏せてしまうだろう。


「では、用件は伝えたぞ」

(ちょっと待って。なら、私の願いは叶えてくれる)

「どんな願いじゃ」

(私を元の人間の姿に戻してほしいこと)


ルイの病気を治せないならせめて私が人間に戻って力になりたい。

この体でいると制約が多いから思うように動けないのだ。

それに私が人間に戻っても森が脅かされることもない。


「それもできん質問じゃな。お主を元の姿に戻せば人間を増やすことになってしまう。そうなったら元もこうもない」

(私ひとりぐらい人間に戻っても何の害もないわ。それに誰にも言わないって約束するから)


私の言葉を聴いてトノは疑いの眼差しを向けて来る。


口では他言しないと簡単に約束できる。

ただ、実際に誰かに話さないとも限らない。

その場では約束を守れても時間が経てば変わることもある。

人間には往々にしてそう言うことがあるのだ。


「口約束ほど簡単なものはないのじゃ。残念じゃがお主の願いは叶えられぬ」

(もういいわ。あなたなんかに頼らない。直接、おぼこぼさまに訴えるわ。おぼこぼさまを呼び出してよ)

「そう言うところじゃ。人間の欲深さは」

(欲深くてけっこうよ。だって人間なんだもの)


私はどこかで聞いたことのある名台詞を吐き捨てる。


ルイの病気も直してくれないし、私を元の姿にも戻してくれない。

おぼこぼさまの存在意義が疑われると言うものだ。

願いも叶えてくれない精霊なんていなくてもいい。


「開き直っても話は変わらんぞ」

(あーあ。何のための精霊よ。森を育むだけの存在なんて自然に任せておけばいいのよ)

「ありとあらゆるものには精霊が宿っておるのじゃ。精霊が宿っておるから自然が生まれるのじゃ。森も川も泉も全てじゃ。人間はもっと精霊に感謝をしなければならないのじゃ」

(もう聞きたくない。おぼこぼさまがいなくったっていいわよ。自分の力で何とかするから)


はじめから神頼みをする方が間違っていたのだ。

目の前に立ちはだかる壁は自分の力で乗り越えなければならない。

そうすることで成長して次の段階へ行けるのだ。

ただ、ルイの病気をどうやって治すのかわからない。

将来、ミクが医者になるのを待つのはしんどい。

その間、ルイは病気に犯され続けるのだから。


私が開き直るとトノの顔色が変わった。


「あと、これだけは伝えておこうかのう」

(何よ)

「おぼこぼさまは満月の夜にしか姿を現さない。叶えられる願いは二つにすることはできない。おぼこぼさまと出会ったことは他人に話してはならない」

(どう言う風の吹き回しよ。そんな重要なことを教えるなんて)

「予も鬼ではないからな。今のは予のひとり言じゃ」

(ひとり言ね。とりあえずお礼を言っておくわ。ありがとう)


なぜ、トノの気が変わったのかはわからない。

たまごおやじにも人間の情が伝わったのだろう。

ただ、重要な情報を聞けたことで可能性は高まった。

ミクは今まで昼間に精霊の森を探してたから見つからなかったのだ。

”満月の夜にしか姿を現さない”のならば満月の夜にすればいい。

夜の森の方が危険度が増すけれどおぼこぼさまに会うためだ。


「それではさらばなのじゃ」

(えっ?何?)


トノが別れの言葉を呟くと私の意識が遠のく。

深い海に沈み込むようにじわじわと意識が消えて行く。

そして全ての意識がなくなると同時に視界が暗転した。





目を覚ますと私はミクのベッドで横になっていた。

傍らにはミクがいて心配そうな顔を浮かべている。

私は両眼を開いて覗き込んでいるミクの顔を見た。


「ちょめ太郎、起きたの。随分うなされていたよ」

「ちょめ」 (そう。嫌な夢を見たせいね)

「起きれる?」

「ちょめ」 (うん。何とかね)


頭が少しボケボケしているけれど意識ははっきりしている。


「怖い夢でも見た?」

「ちょめ」 (怖い夢と言うか大切な夢……だったような気がする)


夢の中の出来事を思い出そうとしたがはっきりとはわからない。

たまごおやじに会ったことは覚えているがどんな話をしたのか覚えていない。

感覚的にはたまごおやじと議論していたような気がするが気だけだ。


「お水を持って来るね。待ってて」

「ちょめ」 (ありがとう)


そう言ってミクは慌てて部屋を出て行くと1階のキッチンへ向かう。

ひとり残された私は夢の中の出来事を必死に思い出そうとした。


「ちょめ……」 (何だったかな……確かたまごおやじと出会って話をしたんだよね)


おぼろげにトノの姿が映るだけではっきりとは思い出せない。

トノが何かを訴えかけるように私に話をしていた。

断片的に残っている記憶から類推をしてみた。


「ちょめ……」 (確かおぼこぼさまは森を育んでいると言っていたような気がする……。そして神に一番近しい存在で尊ぶべき存在ってことも。ただ、人間達には警戒していて滅多に姿を現さないと言うことだ)


たまごおやじ達は森を守っている警備兵だと言っていた。

トノでもおぼこぼさまにお願いをするのは憚れると言う。

そしておぼこぼさまは豊穣の女神の落し子的な存在なのだと。


「ちょめちょめ」 (その後でトノが最後に大切なことを呟いたのよね。何だったかな……)


肝心なところが全く思い出せない。

そこがわからないと何のための夢だったのか疑問だ。

せっかく重要な話を聞いたのだから何としてでも思い出したい。


すると、ミクがコップ一杯の水を持って戻って来た。


「はい、ちょめ太郎。水を飲んで」

「ちょめ」 (ありがとう……ゴクゴク。ぷはーっ)

「落ち着いた?」

「ちょめ」 (ちょっとね)


ミクが持って来た水を飲んだら気持ちが落ち着いた。


「どんな夢を見てたの?」


私はミクの質問に答えるべく紙と鉛筆を使って文章を書いた。


「精霊の森でたまごおやじに出会ったんだね。そのたまごおやじが大切なメッセージをくれたのね」

「ちょめ」 (そう。だけど思い出せないの)

「ところでたまごおやじって何?」


ミクは私が書いた文章を読んで疑問符を浮かべる。

たまごおやじと書かれていても全く想像できないだろう。

私だって最初にたまごおやじを見た時は驚いたのだから。


私はミクにでもわかるようにイラストを描いてみせた。


「これがたまごおやじなの?ペンギンみたいだね」

「ちょめ」 (そうなのよ。醜いでしょう)

「で、このたまごおやじが何を言っていたの?」

「ちょめ」 (おぼこぼさまのことよ)


私は想い出せる範囲でたまごおやじから聞いたことをミクに伝えた。


「そう。願いは叶えてもらえないんだ。でも、私は諦めないよ。だってルイに元気になってもらいたいもの」

「ちょめ」 (そう言うと思ったわ。ただ、おぼこぼさまに出会える方法があるのよ)

「どんな方法?」

「ちょめ……」 (何だったかな……確かに聞いたはずなんだけど)


肝心な部分が抜けていて想い出せない。

唯一、想い出せたのは”夜”と言うキーワードだった。


「夜か……。だから今までおぼこぼさまに出会えなかったのね」

「ちょめ」 (ごめんね。大切なことを聞いたんだけど想い出せなくて)


私がガックリ項垂れているとミクが気をきかせる。


「気にしなくていいよ。夜だってことがわかっただけでも嬉しいよ」

「ちょめ」 (ミクは優しいね)

「それじゃあ今夜、精霊の森へ行ってみよう」

「ちょめ」 (大丈夫?夜だよ)


ミクは出掛ける気まんまんになっているがミクのパパが許してくれるのかわからない。

私がいっしょにいるとは言え大事な娘が夜に精霊の森に出掛けようとしているのだ。

普通の親だったら完全に反対するだろう。

とりわけミクのパパは娘想いだからきっと反対するはずだ。


「パパに話すと反対するから夜、こっそりと抜け出そう」

「ちょめ」 (ミクも悪い子ね。だけどそれしか手はなさそうね)

「決まりね。なら、どこから抜け出すか作戦を考えよう」

「ちょめ」 (まずは下準備ね)


玄関から出ようとしてもカギがかかっているから無理だ。

それに堂々と玄関から出たらすぐに見つかってしまう。

となると窓から外に出る方法しかない。

ただ、ミクの部屋は2階にあるからどうやって下に降りるかだ。


窓から外の様子を眺めてみるが近くに木は植わっていない。

すると、ミクがクローゼットからタオルをたくさん持って来た。


「これでロープを作ろう。私ぐらいの重さなら大丈夫だと思うから」

「ちょめ」 (確かに子供の重さなら途中で切れたりしないわね)


特に私はネコ程の重さしかないから2階から飛び降りても大丈夫だ。

後はどうやってミクが怪我せずに地上へ降りれるかだ。

私のテレキネシスを使えばある程度はアシストできるだろう。

問題は戻って来た時にどうやって2階へ戻るかだ。

ミクは木登りはできるけれどロープをよじ登ったことはない。

ある程度までよじ登れるだろうけど2階まで上がれるか心配だ。


「こうしてこうすればロープの完成よ」


私が考えている間にミクはタオルでロープを作っていた。


「後はベッドの足にロープを括りつけて窓から垂らせば終わり」

「ちょめちょめ」 (ねえ、ミク。戻る時はどうするつもり?)


私は素朴な疑問をミクにぶつけてみた。


「そこまでは考えていなかった。でも、木登りはできるから大丈夫だよ」

「ちょめ」 (不確定要素ね。はっきりと断言できないと外で夜を明かすことになるわよ)


そうなったらミクのパパに夜に外出したことがバレてしまう。

きっとミクのパパのことだからミクを外出禁止にするかもしれない。

ミクのママは味方してくれるだろうがミクのパパの怒りは収まらないだろう。


「なら、梯子を使おう。そうすれば私でも簡単に上ることができるよ」

「ちょめ」 (それはいいけど、どうやって梯子を片づけるのよ。梯子がかかっていたらモロバレよ)

「うーん。難しいね」

「ちょめ」 (わかったわ。私が梯子を片づけてあげるからミクは2階に登って)

「そうなるとちょめ太郎はどうするの?」

「ちょめ」 (私は外で夜を明かすわ。ちょめ虫だし大丈夫よ)


これが一番最適な方法だ。

ミクを危険な目に合わせないし、パパにバレることもない。

たとえ私が外にいても心配はしないだろう。

ちょめ虫なのだし外にいる方があっているのだから。


「それだとちょめ太郎に悪いよ。私だけ部屋に戻るなんて」

「ちょめ」 (仕方ないじゃない。この方法しかないのよ)

「でも……」

「ちょめ」 (ミクの言いたいことはわかるわ。だけど、もう決めたことだから)


そう言うことで私は帰りのプランを梯子で決めた。

ミクは少し遠慮がちでいたが私の意見を押し通した。


「なら、後は持って行くものの準備だね」

「ちょめ」 (夜だからランプは外せないわ)

「あと、軽食と水筒を持っていた方がいいかもね。途中でお腹が空いたり喉が渇いたりしたら困るから」

「ちょめちょめ」 (食料と水の調達の方はミクに任せるわ。私は物置からランプを持って来る)


私とミクはそれぞれの役割を決めて準備に取り掛かる。


ミクはミクのママにバレないように私と部屋でキャンプごっこをすると伝えた。

その提案にミクのママは乗り気になってサンドイッチと水筒を用意してくれた。

水筒にはミクが大好きなオレンジジュースが入っている。


私はミクの家の隣にある物置小屋へ向かった。


ちょうどミクのパパが農具を持ち出していたのでカギはかかっていない。

私はテレキネシスを使って物置小屋の扉を開けた。


「ちょめ」 (どこにランプがあるのかしら)


使い勝手のいい道具は壁にかかっているものだ。

ランプなんてよく使う道具だからすぐに見つかるはず。

私が考えていた通りランプは入口の壁にかかっていた。


「ちょめ」 (立派なランプね。これなら夜でも迷わないわ)


ランプにはちゃんと油も入っていていつでも使える状態だった。


「ちょめ」 (ついでにランプを点けるマッチも探しておかないと)


私はランプがかけてあった周りを調べはじめる。


ランプがかけてあるってことは近くにマッチがあるはずだ。

すると、物置の奥に古びた机が置いてあるのが見えた。


「ちょめ」 (あそこにありそうな予感がするわ)


古びた机の引き出しを順に開けて行くとマッチを見つけた。

マッチは一箱おいてあってマッチがいっぱい入っている。

火を点けることに失敗しても何とかなる量だった。


「ちょめ」 (これだけあれば十分だわ)


私はランプとマッチを持って物置小屋を出る。

もちろん出るときは人がいないか確かめてからにした。

もし、ここで見つかってしまえば作戦は失敗だ。


その後で私とミクは部屋で夜になるのを待った。


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