表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/161

第十三話 推理ショー

村長の家に着いて事情を説明すると村長はすぐに動いてくれた。

緊急会議に参加していた村の男達を集めてくれる。

ついでに容疑者となった男達も招集された。

村の男達は訳もわからない様子で困惑している。


「村長、緊急会議って何だよ」

「まだ仕事の途中なんだぞ」

「それはこの探偵さんから話してもらうのじゃ」


村長が一歩後退すると代わりにボロにゃんが一歩前に踏み出す。


「みなに集まってもらったのは他でもない。これから事件の真相を解き明かすのじゃ」

「何だと。犯人がわかったのか」

「誰なんだ、犯人は」


ボロにゃんの言葉を聞いて村の男達は食い入るように迫って来る。

それはイメル村を震撼させた事件だっただけに村の男達の関心の強いからだ。


「まあ、そう慌てるでない。まずは事件のあらましから説明するのじゃ。トラ吉よ」

「はい、先生」


ボロにゃんが指示を出すとトラ吉はホワイトボードを引っ張って来る。

そしてくるりと回転させて事件のあらましが書かれている面を出した。


「事件は今月の6日に起こった。その当時、複数の家族が森でキャンプをしていた。通い慣れている場所だったので子供達を自由に遊ばせていた。大人達がバーベキューの準備をしている間に犯行は起こった。」

「それで」

「まず狙われたのはキャンプから300メートル離れたところで遊んでいたいちごぱんつの幼女じゃ。犯人は幼女から警戒されることなくぱんつを奪うことに成功した」

「どんな方法で?」

「先を急ぐ出ない。おいおい説明するのじゃ」


ボロにゃんは話の腰を挫かれて少し嫌そうな顔を浮かべる。


「その後で犯人はキャンプ場へ向かった。そして他の幼女たち4人のぱんつを気づかれることなく奪ったのだ」

「まるで怪盗そのものだな」

(いやーん、怪盗だなんて。そんなに褒めないでよ)


自分のことを言われているからか村の男の言葉に嬉しくなってしまう。

誰にもできないことをあっさりとやってのけたのだから私は名怪盗だ。

たとえ名探偵でも私のトリックには気づかないはずだ。


「大人達が事件に気づいたのはその後じゃ。犯人はその間に姿を消しおったのじゃ」

「俺達が森を捜索しても犯人はいなかったからな」

「煙のように消え去ったと言うべきか」

「だが、そんなことが可能なのか」

(私なら可能なのよね。今もこうしてここにいるし)


何だか自分が凄いことをしたのではないかと思ってしまう。

普通の人間であればこんなことはできなかっただろう。

ちょめジイさまさまだと言えるがちょめ虫であることは嫌だ。


「で、犯人は誰なんだ?」

「容疑者として浮かび上がったのは彼らじゃ」

「俺じゃないぞ」

「俺でもない」

「そんな訳ないだろう」


容疑者Aたちは口を揃えて無実を訴えかけて来る。

だが、他の村人達の視線は疑いの眼差しを向けるばかりだ。


「本当にこの中に犯人がおるのか?」

「では、次の説明に移るのじゃ。容疑者として可能性が高いのは彼ら7人じゃ。彼らには犯行当日のアリバイがなかった。それぞれがそれぞれの行動をとっていて目撃者もいない。だから容疑者として名前が挙がったのじゃ」


ボロにゃんの説明を受けて容疑者A達は気まずそうな顔を浮かべる。

犯人ではないのだけど犯人にされているので気持ちが沈んでいるのだ。

まあ、かくいう私も同じ立場になったとしたら同じ顔をしていただろう。


「もったいぶってないで早く教えてくれ」

「では、まずは容疑者Aの当日の行動を振り返ってみるのじゃ」


ボロにゃんがホワイトボードを指し示すと容疑者Aの顔は歪む。


「容疑者Aは当日、朝から夕方まで畑仕事をしておった。11時半から13時半までの2時間の空白時間がある。犯行が行われた時間が12時半から13時半の間だから十分に容疑者である可能性が高いのじゃ」

「だから俺は酒を飲んで眠っていたと言っただろう」

「本当なのかよ。お前じゃないのか」


ボロにゃんの説明に村人の疑惑が容疑者Aに向かう。


「時間的に見れば昼間の2時間も酒を飲んでいるのはおかしい」

「だから酒を飲んだ後で眠っていたんだよ」


容疑者Aがなけなしの言葉を吐き捨てたところでボロにゃんが人さし指を立てた。


「そうなのじゃ。そこがポイントじゃ」

「どう言うことだ」

「ワシ達の行った裏付け調査によれば容疑者Aは確かに当日の昼間にお酒を飲んでいたことがわかっておる。しかも、毎日、朝、昼、晩に1本ずつお酒を飲んでいることになるのじゃ」

「悪いかよ。俺の習慣なんだ」


朝からお酒を飲んでいることにも驚きだったが村人達はボロにゃんの証言に関心を向ける。


「なら、容疑者Aは犯人じゃないのか」

「そう言うことになるのじゃ」

「ふーぅ。だから言ったろう、俺じゃないって」


容疑者Aは無実が証明されたのでほっと胸を撫で下ろしていた。


「なら、犯人は他の6人の中の誰かと言うことになるんだよな」

「さっきっから急ぐ出ないと言っておるじゃろう」

「みなさん、落ち着いてください。これから先生が説明しますから」


村人が答えを急ぐのでボロにゃんは不機嫌な顔を浮かべる。

その様子を見てトラ吉がフォローに回ってみんなを落ち着かせた。


「では、次は容疑者Bの当日の行動を振り返るのじゃ」


ボロにゃんが容疑者Bに視線を向けると容疑者Bは視線を外す。


「容疑者Bは朝から夕方までイメル村から南西に3キロ言った先にある池で釣りをしておった。夕方に村に戻って来たところを村人に目撃されておるのじゃ。じゃから、丸1日すっぽり空白の時間と言うことじゃ」

「なら、その間に森に出掛けることが可能ってことだよな」

「犯人はお前に決まりだ」

「俺はただ釣りをしていただけだ。信じてくれ」


村人から疑惑の目を向けられて容疑者Bは涙目で訴えかける。


「丸1日をかけて釣果がフナ3匹と言うことじゃ」

「そんな訳あるかよ。あの池は穴場なんだぞ」

「やっぱり容疑者Bが犯人なんだ」


みんなの疑いが容疑者Bに向かったところでボロにゃんは人差し指を立てる。


「そこがポイントじゃ。本当に1日かけて釣果がフナ3匹であるのかがカギじゃ」

「で、どうだったんだ。調べたのだろう」

「ワシとトラ吉で容疑者Bが釣りをしていたであろう場所で調べてみたが容疑者Bの証言通り1日かけたのに釣果がフナ3匹じゃった」

「俺は数多く釣るよりも釣りの時間を楽しみたい派なんだ」


容疑者Bは言葉の通り根っからの釣り好きのようだ。

素人だと魚をいっぱい釣りたいことろだが本物は違う。

難しいポイントでいかに魚を釣るかに焦点をあてている。

だから、釣果が少なくても楽しめるのだ。


「じゃあ、誰が犯人なんだよ」

「次は容疑者Cと容疑者Dについてじゃ」


容疑者Cと容疑者Dはお互いの顔を見合わせながら目配せをする。

その行動から明らかに嘘を証言したことを現しているかのようだ。

それも踏まえてボロにゃんは説明に移った。


「容疑者Cと容疑者Dは朝から夕方まで村の用水路のせぎ上げの仕事をしていたと証言しておる。ただ、目撃者がいないので容疑者Bと同じで1日中、空白の時間となる」

「何を言っているんだ。俺達は二人でいっしょにいるから犯人じゃないぞ」

「そうだ。俺達は確かに二人でせぎ上げをしていたんだ」


その反論の言葉に村の男達の関心もボロにゃんに集まる。

それを確認してからボロにゃんは犯人である可能性を示唆した。


「犯人は必ずしもひとりであるとは限らんのじゃ。共謀して行えば幼女に抵抗されることなくぱんつを奪えるのじゃ」

「そう言われてみればそうだな。ひとりが幼女の注意を惹きつけておいてもうひとりがぱんつを脱がせれば犯行は十分に可能だ」

「おい、冗談を言うなよ。俺達がそんなことする訳ないだろう」

「そうだ。共犯なんてただの言いがかりだ」


村人の思わぬ発言を受けて容疑者Cと容疑者Dは声を揃えて反論する。


(いい線をついているわ。共謀犯と言うことで落ち着かないかしら。そしたら私の犯行も闇に紛れるし)


そんな私の淡い期待もすぐにかき消されてしまう。


「ポイントは二人はちゃんと1日中せぎ上げをしていたかじゃ」

「それも調べたのだろう。本当のことを言ってくれ」

「用水路に上がっていたヘドロの量を調べたのじゃが証言通り二人が1日をかけて掬い上げたヘドロの量じゃった」

「だから言ったろう。俺達が犯人じゃないって」

「共謀なんてあり得ない。俺達は仲がいいだけだ」

(それなのに証言が食い違うのはどう言うことかしら。疑わしいから嘘をついたのでしょう)


私の指摘通りボロにゃんの関心も食い違った容疑者Cと容疑者Dの証言に向いた。


「じゃが、何でお主らは嘘をついたのじゃ」

「そ、それは犯人だと思われるのが嫌だったからだ」

「みんなに疑われてつい嘘の証言をしてしまったんだ」


確かに同じ立場に立たされたら嘘を言ってしまうかもしれない。

だけどそれは余計に疑いの眼差しを自分に向けるだけの愚かな行為だ。

今回は証言の裏付けがとれたけど一歩間違えれば犯人になってしまう。


「何だよ期待させておいて」

「俺はこいつらが犯人だと思ったんだけどな」


村人の関心はすっかり誰が犯人であるのかに向いている。

残っているのは3人だがこの中に犯人がいることを祈りたいかのようだ。


「では、次は容疑者Eの証言を振り返るのじゃ」

「僕は一日中家で掃除をしていたんですよ。犯人な訳ないじゃないですか」

「ゴホン。ワシより先に言うんじゃない。目撃者がおらんから1日中が空白の時間じゃ」

「なら、一番怪しいじゃないか。家に籠ってたなんて誰でも言える」

「それにお前は掃除をするような玉じゃないだろう」


容疑者Eは自ら証言をしたが返って疑いを持たれてしまう。

まあ、1日中掃除をしているなんて普段からは考えられないから仕方ない。

容疑者Eの風貌からはキレイ好きとは思えないほどだらしない格好をしている。

シャツはヨレヨレでズボンもシワシワだ。


(全く説得力がないわ。この見た目でキレイ好きだなんてちゃんちゃらおかしいわ……人のことは言えないけどね)


私の部屋も”ななブー”グッズで溢れかえっていて泥棒が入ったかのような感じだ。

キレイな女の子の部屋とは程遠いほど散らかっている。

だから、部屋の中へは両親を入れないようにしていたくらいだ。

お母さんに入り込まれたらが最後、みんな捨てられてしまうのだ。


(母、恐るべし)


「それで裏付け調査はどうじゃったのだ」

「容疑者Eの証言通り家の外にはゴミが山積みになっておった。ゴミの種類を調べたが各部屋から出たと思われるゴミもあったのじゃ。だから、容疑者Eは犯人ではないのじゃ」

「だから言ったじゃないか。僕がそんなことする訳ないのだから」


容疑者Eは疑いが晴れるとそれ見ろと言わんばかりの態度をする。

自分に疑いが向けられていたことがとことん嫌いなようだ。


「なら、あとは残り2人じゃな。この2人のうちどちらかと言うことになるのじゃ」

「ゴホン。では、次は容疑者Fの証言を振り返るのじゃ」

「私を疑っているのですか。そんな訳ないじゃないですか」


容疑者Fも他の容疑者と同じく自分が犯人でないと主張する。


「容疑者Fは事件当日、写真撮影に出かけていた。16時に村へ戻った時に村人に目撃されておる。ただ、それまでの時間は空白じゃ」

「森に行こうと思えばいくらでも行けるってことだな」

「盗撮でもしてたんじゃないのか」

「バカを言わないでください。私はただのカメラ好きです」


カメラを持っているだけで盗撮魔と呼ばれてしまうのは不憫に思う。

確かにカメラは盗撮に用いられる道具ではあるが誰もがそうではないのだ。

私も声優アイドルオタクと言うだけで白い目で見られたこともある。

とかくライバル関係にあったギャルグループとは火花を散らしていた。

ギャルは文化として認められているし、雑誌もあるから鼻高々なのだ。

その内、声優アイドルオタクの雑誌も発行されて欲しいのが本音だ。


「じゃから容疑者Fのカメラを調べて事件当時撮影された写真を確認したのじゃ。そうしたら全ての時刻で撮影された写真が出て来たのじゃ。撮影された場所と森は対極にあるので容疑者Fには犯行は不可能なのじゃ」

「ほら、言ったでしょう。私がそんな卑劣なことはしませんから」

「なら、自ずと犯人は容疑者Gと言うことになるな」

「おい、正直に言え。お前が犯人なのだろう」


容疑者Fが犯人の可能性がなくなったことで村人の関心は容疑者Gに向かう。

すでに犯人と思っているようで容疑者Gに対するあたりも強くなっている。


「それでは最後に容疑者Gの証言を振り返るのじゃ」

「容疑者Gが犯人なんだろう。なら、証言を振り返らなくてもいいじゃないか」

「まだ、犯人とは決まっておらん。それよりワシの話を最後まで聞くのじゃ」


息せく村人を落ち着かせながらボロにゃんは容疑者Gの証言を振り返る。


「容疑者Gは朝から家畜小屋の掃除をしていた。11時に食堂に行ってお弁当をテイクアウトしたから店主の目撃情報は得られている。ただ、11時半以外の時間は空白の時間じゃ」

「お前達もわかっているだろう。家畜小屋の掃除は片手間ではできないんだぞ」

「それはそうだが適当に誤魔化すこともできる」

「チェック表に印をつければ調べようがないからな」


確かに村人が指摘するように当番表には容疑者Gのサインがしてあった。

だから、それを証拠とするならば容疑者Gも犯人の可能性がなくなる。

しかし、当番表はいくらでも偽装が可能なのだ。


「1日でも家畜の世話を怠ったら大変なことになるんだ。それぐらいわかるだろう」

「そこがポイントじゃ。容疑者Gの言う通り掃除を1日怠っただけで家畜小屋は荒れてしまう。たかが1日ぐらいと思うじゃろうが掃除をしなければ家畜もストレスを溜めてしまうのじゃ。とりわけ乳を搾っている牛や山羊、卵を取っている鶏は深刻じゃ」

「その通りじゃ。ワシらは家畜があっての生活をしておるから家畜の世話は欠かせない。だからみんなで当番制にしたのじゃ」


ボロにゃんが家畜の世話の何たるかを説くと村の村長も同意を示した。


「それじゃあ容疑者Gも犯人でないことになるじゃないか」

「だったら犯人はどこにいるんだよ」


村人の関心は誰が犯人であるのかに向かう。

ボロにゃんが説明した通り容疑者A達は犯人でないことが証明されたのだ。


「それをこれから説明するのじゃ。ここからはワシの仮説を元にしての話だから覚悟して聞くがよい。トラ吉よ」

「はい、先生」


ボロにゃんの指示を受けてトラ吉がホワイトボードをくるりと回転させる。

すると、被害者たちの証言と証拠写真が貼りつけてある面が現れた。


「まず、当日の犯人の行動を振り返るのじゃ」

「どう言うことだよ」

「犯人はまず、キャンプ場から南に300メートル行った第一現場で被害者であるいちごぱんつの幼女と出会った。この出会いは偶然で犯人も予想していなかっただろう」

「それなら計画的な犯行じゃないと言うことか」

「そう言うことになるのじゃ」


この場にいた誰もが犯人は計画的に犯行をしたと思っていたから想定外だった。

偶然、幼女と出会ってぱんつを奪おうと思うなんて普通の人間では考えられない。

村人達はお互いの顔を見合わせながら困惑した顔を浮かべていた。


「犯人は第一現場で犯行を犯した後、家族連れがいる河原へ向かった。恐らくその時に風は北から南に吹いていたからバーベキューの匂いで気づいたのだろう」

「匂いを辿って行ったことか」

(その通りよ。ボロにゃんの仮説も中々のものじゃない)


私はトラ吉の隣でボロにゃんの仮説を聴きながら心の中で褒める。

まあでもこれぐらいは誰でも考えつくことだから大したことはないけどね。


「犯人は第二現場へ辿り着いた時に河原で遊んでいる幼女たちを見つけた。大人達が近くにいなかったので犯人はチャンスと考えたのだろう。そして気づかれないように水中を歩きながら近づいて行って幼女たちからぱんつを奪ったのじゃ」

「水中を歩くって?泳ぐの間違いじゃないのか。あの川は浅いんだぞ」

「確かにあの川は30センチほどの深さしかない。じゃが犯人にとっては身を隠せるほどの深さじゃったのだ」

(ボロにゃんの仮説はあっているけど村人達には理解できないようね)


村人達は困惑しながらお互いの顔を見合わせて理解できないでいた。

それは村人が思い浮かべている犯人像は人間であるからだ。

人間からしたら30センチしかない川なんて身を隠せるはずもない。

たとえ泳いだとしてもすぐに気づかれてしまうだろう。

”頭隠して尻隠さず”の状況だ。


「犯人はその後、来た道を引き返してその場を立ち去った。それは犯人にとっては、この場所は土地勘がないからだ」

「と言うことは犯人はよそ者だと言うことだな」

「やっぱりよそ者だったのか」

「なら、俺達は犯人じゃないってことだな」

「よかった」


ボロにゃんの言葉を受けて容疑者Aたちはホッと胸を撫で下ろして喜ぶ。

犯人がイメル村の人間でないことがわかったので安心したようだ。


「なら、どうやって犯人は幼女からぱんつを奪ったんだよ」

「幼女たちに気づかれずにぱんつを盗るなんてことはできないぞ」

「それが肝心なのじゃ。ワシの立てた仮説によれば犯人は……」

「犯人は……」


ボロにゃんが溜めていると村人達の関心が一気に集まる。

それを確認するなりボロにゃんが徐に口を開いた。


「犯人は掃除機のようなもので幼女のぱんつを吸い取ったのじゃ」

「掃除機のようなものってどう言うことだよ」

「詳しい仕組みまではわからんがぱんつを吸い込むことができれば幼女に気づかれずにぱんつを奪える」

(いい線ね。だけど、掃除機じゃないのよね。まあ、ボロにゃんが”ちょめリコ棒”なんて知っているわけないけどね)


「それが本当だったとすると犯人はどこに奪ったぱんつを隠し持っているんだよ」

「よそ者ならば拠点を持っていないはずだからぱんつを隠せる場所なんてないぞ」

「ぱんつはまだ掃除機のようなものの中じゃ」

(ご名答。ボロにゃんの言う通りぱんつはまだ”ちょめリコ棒”の中よ)


まあ、とは言ってもちょめジイがぱんつを取り出しているはずだから”ちょめリコ棒”の中にはないけどね。

奪ったぱんつはちょめジイがコレクションとして部屋に飾ってあるはずだわ。

幼女の生ぱんつを眺めながらお酒を飲んで堪能しているのよ。


「なら、その掃除機のようなものを持っているのが犯人なのだな」

「犯人がここにいなとなるとどこに隠れているんだよ」

「心配せんでもよい。犯人はこの中にいるのじゃ」


ボロにゃんの思わぬ発言を聞いて村人達は驚きの顔を浮かべる。

今、この部屋にいるのは村人たちとボロにゃんとトラ吉しかいない。

その上で村人たちが犯人でないと必然とボロにゃんとトラ吉が犯人になってしまうのだ。


「もしかしてお前達が犯人てことはないよな」

「あたり前じゃ。ワシらはお主達に雇われた迷探偵じゃぞ」

「僕たちを疑うなんて酷いです」

「じゃあ、誰が犯人だって言うんだよ」

「それはじゃな……」


ボロにゃんは村人達の顔を見回しながらトラ吉を見つめる。

そして人さし指を突き立てるとまっすぐに私を指さした。


「犯人はお前じゃ!」

(いやん。見つかっちゃった?)

「何をふざけているんだよ。誰もいないじゃないか」


ボロにゃんはトラ吉の横を指さしたが村人達には私の姿が見えない。

なので、ボロにゃんがふざけているのかと思ったようだ。


「犯人はそこにいるのじゃ」

「ワンワン」

(ちょっと小太郎。あっちへ行きなさい。私がいることがバレちゃうでしょう)


小太郎は私の周りを回りながら吠えて村長を呼んでいる。


「ワシのメガネはただの老眼鏡ではないのじゃ。熱感知をデキる特殊なメガネなのじゃ。犯人はトラ吉の横にいるのじゃ」

(何よ、その反則的な設定。はじめから私がいることを気づいていて泳がせていたの。性格が悪すぎるわ)


掛けるだけで人格が変わるトラ吉のグルグルメガネも気になったがボロにゃんのメガネに注意するべきだった。

片方しかかけていないからてっきり老眼鏡だとばかり思っていたのだから。


(もう、ここから逃げるしかないわ。まだ、みんなには見えてないから逃げられるはず)


私はボロにゃんと視線を合わせながらジワリジワリと後退して行く。

すると、小太郎が私の逃げ道を塞いで私のお尻に噛みついた。


「ちょめっ!」 (フギャンッ!ちょっと私のお尻は骨じゃないのよ。噛んでも味はしないわ)


その衝撃で擬態が解けて私の姿が徐々に見えはじめた。


「な、何だあいつは」

「あんな生き物なんて見たことがないぞ」

「まるで緑色のキノコだな」

「被害者が”緑色のキノコ”を見たってのは本当のことだったんだな」


村人達は私の姿形を見て驚いている。

はじめて見る生き物だから理解できないでいるのだろう。

すると、ボロにゃんがすぐさまトラ吉に指示を出す。


「トラ吉よ。その者を捕獲するのじゃ」

「はい、先生」


トラ吉はすぐにロープを取り出して私を捕獲しようとする。

それを受けて私は逃れようと試みるが小太郎が食いついているので逃げらられない。

その間にトラ吉が私の体をロープでぐるぐる巻きにしてしまった。


「ちょめ……」 (何よ、そんなにもげっとにしなくてもいいでしょう。私は焼き豚じゃないんだから)

「先生、犯人を確保しました」

「よくやったのじゃ」


ボロにゃんは満足そうな顔を浮かべながら得意気にしている。

自分の推理で犯人を捕まえたのだから自信を持ってもいいだろう。


「本当にこやつが犯人なのか。実しやかには信じられん」

「じゃがこの者が真犯人なのじゃ」


誰も私を見ても真犯人であるとは思わないだろう。

どこからどう見ても新種の生物なのだから。

そしてボロにゃんの推理はこの後で確信に迫るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ