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第十二話 再調査

宿屋に戻って来たボロにゃんとトラ吉は情報の洗い直しをはじめる。

ホワイトボードに容疑者たちの写真を貼り証言を事細かに書く。

被害者の写真は右側に貼りつけて容疑者たちと区別した。


「まずは事件のあらましを明確にするのじゃ」

「事件が起こったのが今月の6日の金曜日。現場は森の中で、キャンプに来ていた家族連れの幼女がターゲットにされました。犯人が奪ったのは幼女のぱんつでそれ以外のものは盗っていません」

「ふむ」

「犯人の目撃情報は全くなく、村の中から疑わしい6人の容疑者が浮かび上がりました。しかし、容疑者たちの証言の裏付け調査の結果、誰も犯人に該当しないことがわかりました」


ボロにゃんはお茶を啜りながらトラ吉の報告を聞いている。

時折、沢庵をパリポリかじりながら頭の中を整理していた。


「となると犯人は別にいることになるのじゃ」

「真犯人説ですね」

「被害者の証言の方はどうなのじゃ?」

「被害者である幼女の証言に共通しているのは”緑色のキノコ”の存在です。中でもいちごぱんつの幼女は”喋るキノコ”だとも言っていました」

(ギクリ。私のことじゃん。キノコじゃないけど)


ようやくボロにゃん達が確信に迫ったので思わずギクリとする。

ここまで長い道のりだったけど、それは私の立場を危うくすることでもある。

喜ぶべきか喜ばざるをえるべきか今の私には判断に迷っていた。

ボロにゃん達といっしょに行動して来たことで情が移ってしまったのだ。


「”緑色のキノコ”か……もしかしたら新種の生物なのかもしれんのじゃ。トラ吉よ、村人に”緑色のキノコ”について尋ねてみるのじゃ」

「はい、先生」


ボロにゃんとトラ吉は宿屋を後にして村人たちから話を聞きに行く。

出会った村人たち片隅から声をかけて”緑色のキノコ”について尋ねた。


「ちょいとよろしいですか」

「あら、探偵さんじゃない。お仕事はいかが」

「捜査は順調じゃ。それよりもお主に聞きたいことがある」

「何です?」

「緑色のキノコをみたことがないか」

「そうね……森にいけば大抵のキノコはあるけど緑色のキノコはみたことがないわね」


恰幅のいいおばさんに尋ねてみたが心あたりがないようで困惑している。

確かに私がいた日本にも緑色をしたキノコなんて見たことがない。

もし緑色のキノコがあったとしてもそれは間違いなく毒キノコだろう。


「次じゃ」

「あら、探偵さん。もう行くんですか。事件か解決したら推理を聞かせてくださいね」

「先生、期待されていますね」

「おばさんは暇つぶしにしているにすぎん。相手にせんでもよい」


おばさんは噂話のネタになることであれば何にでも興味を持つものだ。

それがその場だけの話であっても何の価値を持たなくても構わない。

おばさんはただくっちゃべっていられれば幸せな生き物なのだから。

それはおいておいてボロにゃん達は次の村人に話を聞いていた。


「あのう、お話をいいですか」

「何だ。話なら手短にしてくれよ」

「この辺で緑色のキノコを見かけたことはないか」

「緑色のキノコね……キノコを放置しておくと青かびが生えるがそれじゃないのか」


次の村人も緑色のキノコについては全く心当たりがないようだ。

でも、村人が言うようにキノコに青かびが生えれば緑色になる。

ただ、それは緑色に近い青色なのだ。


「次じゃ」

「それよりも早く事件を解決してくれよ」

「わかっています」


村人の関心もぱんつ強奪事件に向いているようだ。

確かに事件発生以来、子供たちが村の外で遊んでいる姿は見かけない。

もっぱら家の前で遊んでいるだけで大人達から村の外に出ないように言われているらしい。

だから村人たちのボロにゃん達にかけている想いは強いようだ。

まあ、”私が犯人です”って言い出せば事件はすぐに解決するのだけど。


「次は村に出入りをしている行商人達に聞いてみるのじゃ」

「行商人達ならあちらこちらの土地を巡っていますから多聞ですしね」


ボロにゃんとトラ吉は行商人が集まっている市場へ足を向けた。


市場と言ってもイメル村は小さいので広場を市場の代わりにしている。

たくさんの農産物や加工品、服飾・装飾品、陶器類が所狭しと並んでいた。


「あのう、お聞きしたことがあるんですけど」

「手短にしてくれよ」

「お主は緑色のキノコを見たことがないか」

「キノコはこれまでにも取り扱って来たが緑色のキノコは見たことがないな。それは食べられるのかい?」


行商人を持ってしても知らないと言うことは緑色のキノコは新種と言うことになる。

私なんだけど……。

ボロにゃん達も私と同じように思ったようで緑色のキノコを新種と断定していた。


「ふむ。やっぱり一度、王立図書館へ行った方がいいかもなのじゃ」

「王都へ戻るのですか」

「トラ吉よ、ワシは王都へ戻って王立図書館で調べて来る。お主は引き続き”緑色のキノコ”について調べておくれ」

「わかりました、先生」


と言うことでボロにゃんはひとりで王都ダンテールへ戻って行った。

残されたトラ吉はボロにゃんの言いつけ通り”緑色のキノコ”について調べる。


「まずは村長さんに聞いてみよう。村長さんなら顔も広いし知っているかもしれません」

(確かに順当な線だけど私に行きつくかしら)


トラ吉は村の北側にある村長の家に向かう。

私もその後を追い駆けてトラ吉の調査を見守った。


「村長さん。おられますか」

「探偵さんかい」

「村長さんにお尋ねしたいことがあるんですけど」

「何じゃ?」

「村長さんは”緑色のキノコ”を見たことがありますか」

「はて?”緑色のキノコ”とは何ぞや?」


村長もピンと来ないようで困惑した顔を浮かべて首を傾げる。


「被害者である幼女たちが森の中で見かけたと言っているんです」

「ワシは何十年と森と共に暮らしてきたが”緑色のキノコ”なんて見かけたことはないのじゃ」

「そうですか……」

「そう、気を落すでない。誰も見たことがないと言うことは新種の生物であることじゃ」

「やっぱりそうですか。そうですよね」


がっくり気を落していたトラ吉だったが村長の言葉に励まされる。

”緑色のキノコ”が新種であると言うことは誰も見たことがないのはあたり前だ。

被害者である幼女たちはたまたま偶然に見かけたと言うことになるのだ。

まあ、それは私なのだけど……。


「ところでもうひとりの探偵さんはどうしたのじゃ?」

「先生なら王都にある王立図書館へ行っています」

「そうか。で、捜査の方は順調なのか」

「確信に迫りつつあります。事件が解決されるのも時間の問題です」

「ほう、それはよかったのじゃ。外で遊べん子供達を見ていると気の毒じゃからな」

(ううぅ……何だか心が痛いわ)


私が幼女からぱんつを奪わなければそもそもこうはならなかった。

それを考えると私は罪のあることをしてしまったと痛感する。

まあ、幼女のぱんつを奪っている時点で犯罪なのだけど。

だけど、それを命令したのはちょめジイだから真犯人はちょめジイなのだ。


「村の子供達のためにも全力を尽くします」

「心強い言葉じゃ。村の子供達も安心するじゃろう」

「では、僕は調査の続きがありますので」

「森に行くのかい?」

「はい。まだ何かしら手がかりがあるかもしれませんから」

「ならば、小太郎を連れて行くのじゃ」


そう言って村長は部屋の奥から一匹の豆柴を連れて来た。


「その犬は何ですか?」

「小太郎と言ってワシが飼っているペットじゃ。見た目は小さいが頼りになるぞ」

「それは助かります。僕ひとりでは手に余りますから」

「おい、小太郎。挨拶をせい」


小太郎と呼ばれてた豆柴は私の周りをクルクルと回って調べている。

そして鼻先を私の体につけるとクンクンと匂いを嗅ぎだした。


(ちょっと、あっちへ行ってよ。これじゃあバレちゃうでしょ)

「小太郎、何をしておるのじゃ」

「ワンワン」


村長が呼んでも私に夢中で小太郎は戻って行かない。

そればかりでなくしきりに吠えて村長を呼び寄せていた。


「いつもはこうじゃないんだじゃがな」

「犬も気まぐれですからね」


仕方がないので私が村長の隣に移動すると小太郎もついて来た。


「それじゃあ小太郎、しっかりと働くんじゃぞ」

「ワン」

「よし、いい子だ」

「それでは小太郎くんをお借りします」


トラ吉は小太郎のリードを掴んで村長の家を後にした。

私が小太郎を先導する形でトラ吉より先に歩いて行く。

目的地が森とわかっているので迷わずに進むことができるのだ。


「それでは小太郎くん。まずは河原へ行きますよ」

「ワンワン」

(目撃証言の多かった河原から調査するのは妥当な判断ね。私を目撃した幼女は多かったから)


トラ吉と小太郎は河原までやって来るとさっそく調査をはじめる。

幼女たちが遊んでいた場所を中心に調べながら範囲を広げる。

子供の行動範囲は予想以上に広いから広範囲を調べた方がいいのだ。


「小太郎くん、何か怪しいところがあったら教えてください」

「ワンワン」


トラ吉は小太郎のリードを首輪から放して自由にさせる。

すると、小太郎は元気よく河原に駆けて行った。


(こうして見て見ると滑稽ね。猫が子犬を連れているのだから。どっちが飼われているのかわからないわ)


私は少し離れた場所からトラ吉と小太郎の様子を見守る。

近くに行くと小太郎が騒ぐし、俯瞰して見ていた方が安全なのだ。

まあ、トラ吉と小太郎がいくら探しても私に繋がる痕跡は見つけられないだろうけど。


すると、小太郎が川岸でしきりに吠えだした。

まるでトラ吉を呼ぶかのようなけたたましい鳴き声だ。


「小太郎くん、何か見つけたのですか?」

「ワンワン」


トラ吉は小太郎の鼻先を見ると丸い石が転がっていた。


「これは先生が見つけた石ですね。確か、苔が不自然に削れていると言っていましたっけ」


ボロにゃんが言ったことを思い出しながらトラ吉は丸い石を持ち上げる。

そしてクルクルと回して丸い石の表面についている苔を確かめた。


「先生の言った通り苔が不自然に削られています。何か硬いものでこぞぎとったかのようですね。とりあえず写真に収めておきましょう」


トラ吉はカメラを取り出すと丸い石を並べて撮影をはじめる。

一方向だけでなく石を傾けて全方向から見た写真を撮った。


「他に何か手掛かりに繋がりそうなものはないでしょうか」

「クーン」


小太郎は捜査に飽きたのか川岸で水遊びをしている。

川底に転がっている丸い石をボール見立ててじゃれている。

犬程安上がりな動物はいないだろう。

ボールを与えておけばひとりで遊んでくれるのだから。


トラ吉はひとりで河原の周辺を歩き回って手がかりを探す。

しかし、苔の生えた石以外は何の痕跡も見つけられなかった。


「ここには何もないようですね。小太郎くん、次の場所へ行きますよ」

「ワンワン」


トラ吉たちは第一の現場へ足を向ける。

それはいちごぱんつの幼女が襲われた場所だ。

ボロにゃん達もこの場所が第一現場だと見ている。

複数のぱんつを奪ってからひとりのぱんつを狙うのは不自然だからだ。


「ここは事件当初から何も変わらないですね」


いちごぱんつの幼女が泥遊びをしていた場所はじめっとしていたが形状はそのままだ。

あまり日差しが届かない場所なので湿気が多く泥がカピカピに乾くことはない。


トラ吉は膝を折って第一現場を調べて何かしら痕跡が残っていないか探す。

すると、小太郎が地面の匂いをしきりに嗅ぎながらある場所で立ち止まって吠えた。


「ワンワン、ワンワン」

「小太郎くん。何かを見つけたのですか」

「ワンワン、ワンワン」


トラ吉は小太郎の鼻先に視線を向けると地面の泥が不自然に削れているのがわかった。

その後は河原のキャンプ場の方向へ向かって進んでいることが見てとれた。


「やりましたね、小太郎くん。これは大発見ですよ!」


思わぬ発見にトラ吉は歓喜の声をあげながら喜ぶ。

ボロにゃんと調べた時には見つけられなかった痕跡だからだ。

これである意味、”緑色のキノコ”が新種の生物であることが予想される。


トラ吉は他に何か手掛かりがないか現場を徹底的に調べた。


(トラ吉も案外やるじゃない。普段は頼りない猫なのに)


トラ吉はグルグルメガネをかけていない時は頼りない猫だ。

見た目からも頼りなさが伝わって来て如何にもと言う感じ。

クラスにいたら絶対にイジメの対象になっているだろう。

ただ、今の私も普段のトラ吉とは大差はないのだけど。


「他に手掛かりになるようなものは見当たりませんね。小太郎くん、そっちはどうですか?」

「ワンワン」


小太郎はいちごぱんつの幼女が眠っていた木の根元の匂いを嗅いでいる。

そしてクタクタになった葉っぱの手前で止まってトラ吉を呼ぶように叫んだ。


「これは現場に落ちていた葉っぱですね。これが怪しいのですか」

「ワンワン」

(あれはいちごぱんつの幼女が私の体を拭いた時に使った葉っぱだわ。もしかしたら私の匂いがついているのかも)


トラ吉はクタクタになった葉っぱの写真を撮ってからサンプルとして葉っぱを採取した。


「とりあえずこんなところでしょうか。新しい発見を出来たことは大きいです。これもみんな小太郎くんのおかげです」

「ワンワン」


トラ吉が感謝の言葉を伝えると小太郎は激しく尻尾を振って応えた。

そしてトラ吉と小太郎は第一現場を後にして宿屋へと戻って行った。


宿屋に戻ってからトラ吉は集めた情報の整理を行う。

撮影した写真をホワイトボードに貼って気づいた点を書き込む。

そしてボロにゃんの如く、独自の推理をはじめた。


「犯人が”緑色のキノコ”だとするならば全ての辻褄が合います。第一現場に残されていた痕跡も”緑色のキノコ”で、河原の石の苔も”緑色のキノコ”がつけたものです。だから、幼女たちに目撃されたのです」

(ちょっと強引のような気がするけどハズレてはいないわ。だけど、決定打に欠けるわね。第一現場の痕跡も河原の石の痕跡も”緑色のキノコ”がつけたとも言い切れないのだから)


ボロにゃんの助手であっても推理力は迷探偵に及ばないようだ。


(ちょっと遊んであげようかしら)


そう思って私はテレキネシスを使ってトラ吉のグルグルメガネを取り上げる。

すると、トラ吉は普段の頼りない猫に変わってしまう。


「あ~ん。ぼくのメガネを返してよぉ」

(いやーん。無抵抗な子供を構うのは意外と楽しいわ)


非力であればあるほど構いがいがあって楽しくなる。

これをイジメとして取られたらそれまでだけど私の中ではじゃれているだけだ。


「メガネ、メガネぇ~」

(ほれ、ほれ。取れるならとってみなさい)


トラ吉のグルグルメガネは宙を浮遊しながらトラ吉を挑発する。

そこへ王立図書館から戻ったボロにゃんが部屋に入って来た。

瞬間、私はテレキネシスを切ってグルグルメガネを放す。


「何を騒いでいるのじゃ、トラ吉よ」

「せんせぇ~。ぼくのメガネが」

「全く、お主はメガネがないとダメじゃな」


トラ吉は落ちていたグルグルメガネを拾い上げると掛け直す。


「取り乱しました、先生。随分とお早いお帰りですね」

「知り合いに頼んで世界のキノコ図鑑を調べてもらったのじゃ」

「それで”緑色のキノコ”は見つかりましたか」

「いや、どの図鑑を見てもなかったと言っておった」

「となるとやはり新種なのですね」

「そう言うことになるのじゃ」


結局、”緑色のキノコ”なんて見つかる訳ないわよね。

だって、それは私なのだもの。

それにちょめ虫は私ひとりきりのようだから新種の生物なのだ。


「僕の方は収穫がありましたよ」

「ふむ。それは何じゃ」

「第一現場で新しい痕跡を見つけました。これを見てください」

「ふむ……なるほど。何かが這った痕のようじゃな」

「”緑色のキノコ”が新種の生物だと全ての辻褄が合うんです」

「確かに容疑者が目撃しておるし、痕跡も確かな証拠になるのじゃ」


ただ、それは状況証拠だけで裏付けとなる情報ではない。

やはり犯人を特定するならばその動機も明らかにする必要はある。

新種の生物が何で幼女のぱんつを奪ったのかと。


「問題は動機がわからないことです」

「それは謎じゃな。新種の生物が幼女のぱんつを捕食したとも考えられんしな」


さすがの迷探偵でも崇高なる私の目的には辿り着かないようだ。

世界広しと言えども幼女の生ぱんつを欲しがるなんてあり得ないからだ。

よっぽどの変態やロリコンが欲しがるくらいだろう。


「こう言う場合は仮説を立てるしかないのう」

「仮説ですか?」

「そうじゃ。仮説を立てて犯人像を明確にさせるのじゃ。そうすれば自ずと犯人の姿も浮かび上がる」


ボロにゃんは集めた情報を組み合わせてある仮説を立てた。

それは――。


犯人は”緑色のキノコ”でとある目的で幼女を襲った。

それは被害者の目撃証言が裏付けとなっている。

犯行は計画性があるものではなく突発的に起こったものだ。

だから、証拠を隠滅した形跡がどこにも残されていなかった。

幼女は犯人を見ても驚かなかったことから考えると見た目は怖くない姿だ。

それに大きさ的に見ても幼女よりも小さい生き物であると窺える。

第一現場に残されていた痕跡や第二現場の河原に残っていた痕跡から類推したことだ。

おまけにその”緑色のキノコ”は”喋る”と言う特徴を持っている。

どんな言葉を使うのかまではわからないがある程度コミュニケーションは取れるらしい。

ただ、どうやって幼女たちからぱんつを奪ったのかまではわからない。

幼女たちが自らぱんつを脱いで渡したのか強引に脱がせたのか。

後者であるとするならば幼女は抵抗したはずだ。

その形跡がないとすると前者と言うことになるが結論付けられない。


「犯人は”緑色のキノコ”なんですね」

「そう言うことじゃ」


ひとつの答えが見い出せたことでボロにゃんとトラ吉はほっと胸を撫で下ろす。

犯人の見えない事件の調査をするほどしんどいことはないから安心したのだ。

ただ、これはあくまでひとつの仮設であって真実ではない。


(惜しいところまで近づいているけれど、それが限界のようね)


まあ、犯人が私であることに行きつくことはどう推理してもないだろうけど。


すると、小太郎が私の周りをウロウロと回りはじめる。

遊ぶ相手がいないから私をターゲットにしたようだ。


「小太郎くん、どうしたのですか?」

「ワンワン」

「トラ吉よ、その犬は何じゃ?」

「はい、この犬は村長さんが飼っている犬です。調査の役に立てばと村長さんが渡して来たんです」


ボロにゃんは小太郎の様子をじっくりと眺めながら不審がる。

何もないところで小太郎が嬉しそうにしているのが気になったのだろう。


「ふむ。わかったのじゃ」

「何がです?」

「真犯人がじゃよ」

「ええっ!本当なんですか!」


ボロにゃんが思いも掛けない言葉を発したのでトラ吉は腰を抜かした。


(私の存在に気づいたとでも言うの。あり得ないわ。だって、私のことは見えてないはずだもの)


擬態は完璧なのでボロにゃん達には私の姿は見えていない。

だから、恐れることはないのだけれど嫌な予感はしていた。

何と言っても一応ボロにゃんは有名な迷探偵なのだから。


「トラ吉。村長の家に行くぞ」


そう言ってボロにゃんとトラ吉、小太郎、私の4人は村長の家に向かった。


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