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第十一話 裏付け調査

宿屋に戻るなりボロにゃんとトラ吉は情報の整理にあたる。

ホワイトボードを取り出して来て容疑者の写真を並べた。


(このシーンって、2時間サスペンスに登場するシーンだわ。ちょっと感激)


私はひとりソファーに座りながらボロにゃん達の作業を見守る。


「ふむ。それではトラ吉よ。容疑者たちの証言を書いておくれ」

「わかりました、先生」


ボロにゃんの指示を受けてトラ吉はノートを広げて容疑者の証言を端的に書き記す。

文章が長めになるとわかりにくいので短い言葉でまとめていた。


「先生、終わりました」

「ふむ。では、まずは容疑者Aからじゃ」


ホワイトボードには容疑者Aの証言が書き記してある。

それによると――。


容疑者Aは朝から夕方まで畑仕事をしていた。お昼休憩は一旦家に帰る。30分ほどで食事を終える。その時にビールを飲んだので1時間ほど眠った。


とのことだ。


「容疑者Aの空白の時間は11時半から13時半までの2時間です」

「犯人の予想犯行時間が12時半から13時半の1時間だから十分に可能性はあるのじゃ」

(いやーん。本当にサスペンスドラマを観ているようだわ。ちょっとおせんべいが欲しいところね)


休憩中の主婦ではないがサスペンスドラマを観ながらおせんべいを食べるのは主婦あるあるだ。

とかくお昼をすませてから夕方になるまでは時間が空くから主婦はサスペンスドラマにハマる。

それを狙ってテレビ局もその時間帯にサスペンスドラマを放送しているのだ。


「次は容疑者Bじゃ」


ホワイトボードには容疑者Bの証言が記されてある。


容疑者Bは朝から夕方まで釣りをしていた。その間、一度も村には戻っていない。釣果はフナ3匹。


「一日かけてフナ3匹とは釣果が少なすぎるのじゃ」

「その間に森に出掛けたとも考えられますね。往復しても時間は十分に余ります」

「そうじゃな。じゃが先入観は禁物じゃ。あくまで事実を積み上げて当日の行動を明らかにするのじゃ」

「容疑者Bの空白時間は朝9時から夕方の15時までの6時間です」

(一番可能性が高いのが容疑者Bね。空白の時間が長すぎるからね)


そう言っておきながら実際に犯行をしたのは私なのだ。

だが、現段階ではボロにゃん達は真実に近づいていないので安心していられる。

このまま推理を間違えて犯人を捕まえてくれたらバンバンザイだ。


「次は容疑者CとDじゃな」


容疑者Cは容疑者Dと朝から川のせぎ上げをしていた。お昼にいったん家に戻ったが1時間ほどで現場に戻った。その後は日が暮れるまで川のせぎ上げの続きをした。


「ただし容疑者Cと容疑者Dの証言に矛盾があったのじゃ」

「容疑者Cはお昼に家に戻ったと証言しましたけれど、容疑者Dは現場で食事をとったと言ってましたからね」

「二人で口裏を合わせておったのかもしれん」

「疑わしいですね」

(嘘をつくと言うことはやましいことがあると言うことだわ。いったい何をしていたのかしら)


全くの他人ごとであるから私は目の前で繰り広げられる推理に夢中になってしまう。

リアルの推理だから臨場感があってついのめり込んでしまっている。

こんなリアルショーは中々お目にかかれないものだ。


「犯人はひとりとは限らんからな」

「共謀したとも考えられます」

(共謀説ね。いいじゃない、いいじゃない。サスペンスドラマにはありがちな展開だわ)


私はひとりウキウキしながらボロにゃん達の推理を生で見ている。

すっかり擬態は板についているので気を緩めても解けることはない。

感覚の鋭いボロにゃんですら全く気づかないぐらい背景に溶け込んでいる。


「次は容疑者Eじゃな」


容疑者Eは当日、お休みだった。朝から晩まで家の掃除をしていた。その間は家からは出てない。


「容疑者Eも容疑者Bと同じで空白の時間が長いのじゃ」

「しかし、誰も容疑者Eの姿は見てないと言っていますからずっと家に閉じこもっていたのかもしれません」

「ふむ。じゃがそれが返って怪しいのじゃ。完璧なアリバイ程疑わしいものはないからな」

「人目を盗んで森へ行くことは可能ですしね」

(さすがは迷探偵ね。抑えるべきポイントを抑えているわ)


まあ、完璧なアリバイと言っても村の人間が見かけていないだけの話だからないと言ってもいい。

トラ吉の言う通り村の人達の目を盗んで森に出掛けることはいくらでも可能なのだ。

今のところ全員の容疑者が疑いの対象だ。


「次は容疑者Fじゃ」


容疑者Fは朝から写真撮影に出かけていた。村に戻ったのは夕方。16時に村に帰って来たのを村の人間が目撃をしている。


「容疑者Fも容疑者Bと同じじゃ。1日中、村の外に出ておった」

「なら、そのまま森に行くことも可能だと言うことですね」

「じゃが、容疑者のカメラには何枚も風景の写真が残されておった。おまけに自撮りした写真もある」

「それなら犯人から外れますね。証拠写真があるのですから」

(何を言っているのよ、トラ吉。そんなものは容疑者Fの偽装工作よ)


写真なんて前もって撮影しておけばいくらでも時間を誤魔化せるわ。

それに証拠を残せる写真撮影に出かけたなんて言うのは怪しいじゃないの。

あくまで捜査の手をから逃れるために容疑者Fが考えたシナリオよ。


「最後は容疑者Gじゃ」


容疑者Gは朝からひとりで家畜の小屋の掃除をしていた。家畜小屋の掃除は当番制になっているので当日は容疑者Gの番だった。お昼は村の食堂でテイクアウトをした。11時半頃、容疑者Gがやって来たのを食堂の店主が目撃している。


「11時半以外はみんな空白の時間じゃ」

「家畜小屋の掃除を早めにすませて、その足で森に行ったとも考えられますね」

「わざわざ食事を食堂のテイクアウトにしたことも怪しいのじゃ」

「アリバイづくりってことですか」

(”灯台下暗し”ではないけど、村の外に行った容疑者よりも村の中にいた容疑者の方が怪しいわ。アリバイ工作しやすいし、目撃者も作ることができる)


そんな推理を巡らせている私だが犯人は自分なのだ。

つい、のめり込んでしまって私も推理に参加してしまっている。

リアル中のリアルだからハマってしまうのだ。


「これで全ての容疑者の証言が明らかになったのじゃ。後はひとりひとりの証言の裏付けをとるぞ」

「調査の再開ですね。すぐに準備します」


そう言うとトラ吉は荷物をまとめてボロにゃんと部屋を出て行く。

私も後れをとらないように二人の後を追い駆けた。


「まずは容疑者Aの証言の裏付けをとるぞ」

「何を調べますか?」

「本当にお酒を飲んでいたのかビール瓶の数を数えるのじゃ」


そう言ってボロにゃんとトラ吉は容疑者Aの家の裏口に回る。

そしてビール瓶ケースに並べてあったビール瓶の数を数えはじめた。


「ひい、ふう、みい……ふむ。全部で10本あるのじゃ」

「1日1本と言う計算でしょうか」

「事件のあった日は金曜日じゃ。今日は月曜日じゃから3日と言うことになる。10本を3日で割れば1日あたりの消費本数がわかるのじゃ」

「と言うことは1日あたりビール瓶3本と言うことですね」

「そうじゃ。残りの1本は今日の分じゃ」


今はちょうどお昼ぐらいだから朝からビールを1本飲んだことになる。


「朝からビールなんて贅沢ですね」

「水がわりに飲んでいるのかもしれんのじゃ」


だとするならば朝1本、昼1本、夕1本と言う計算だ。

そんな配分でお酒を飲んでいれば事件当日もお酒を飲んでいたことになる。


「ならば、容疑者Aの証言は本当だったってことですね」

「そう言うことになるのじゃ」


ボロにゃんとトラ吉は容疑者Aの証言の裏付けをとったあと容疑者Bの家に向かった。


「容疑者Bの証言の裏付けはどうやってとりますか?」

「実際に釣りをしていた現場へ行ってどれぐらい魚が釣れるのか確かめるのじゃ。本当にフナ3匹だけしか釣れなかったら嘘でないことがわかる」


と言うことでボロにゃんとトラ吉は容疑者Bから釣りをしていた場所を聞いてから、そこへ向かった。


容疑者Bが釣りをしていた場所はイメル村から南西に3キロのところにある小さな池だった。

辺りは下草が伸びていて隠れ家的な雰囲気のあるある場所だ。

釣りが好きな人なら目をつけるであろう釣り場だ。


ボロにゃんとトラ吉は池の周りを歩いて容疑者Bが釣りをしていた場所を探す。


「ここじゃ」

「地面が抉れていますね」

「ここに竿を立てて椅子を置いて釣りをしていたのじゃ」


ボロにゃんはその場所に椅子を設置すると釣りの準備をはじめる。

容疑者Bと同じように針にエサをつけてポイントに放り投げた。


「あとは時間との勝負ですね」

「本当に1日で釣果がフナ3匹なら容疑者Bの証言は正しいことになるのじゃ」


そう言いながらボロにゃんとトラ吉は釣りモードに入って行った。


(もしかして1日中、釣りをしているつもりなの。いやーん、いやーん。たいくつー)


釣りの好きな人にとっては魚が連れなくても楽しい時間だが、そうでない人には退屈な時間だ。

ただ、魚が釣れるのをひたすら待っているなんて私にはできそうにもない。


私はボロにゃん達とは離れたところに陣取って何気に池の中を見つめた。

水面に反射する私の姿はまぎれもなくちょめ虫で改めてちょめ虫であることを実感する。


(こんなにもへんてこな姿なのね……グスン)


美少女であった頃の面影など微塵もない。

”カワイ子ちゃんの生ぱんつを100枚”集めなければ一生このままだなんてあまりに酷すぎる。


(ねぇ、ちょめジイ。暇だからスマホを召喚してよ)

(ダメじゃ)

(なら、ラノベでいいわ。ハートフルなコメディを召喚してよ。好きなのよねぇ~)

(ダメじゃ)

(書物ならいいんでしょう。ラノベは書物だから大丈夫よ)

(それはワシの場合だけじゃ。お主はダメじゃ)

(ブー。ちょめジイだけずるいわ。1日中ここでボーっとしてろとでも言うの)

(それがお主の定めじゃ)


口を開けば”定めじゃ”と言って取り付く島もない。

私とちょめジイが本を読むことにどんな差があると言うのだろうか。

私はもともと日本に住んでいたのだから問題はないと思うのだけど。


それから何度もちょめジイにお願いしてみたが無駄だった。

その間にボロにゃんとトラ吉は容疑者Bの裏付けをとっていた。


「1日かけて釣果がフナ3匹だったのじゃ」

「なら、容疑者Bの証言も本当だったことですね」

「次じゃ」


ボロにゃんとトラ吉の裏付け調査は翌日に持ち越された。


「今日は容疑者Cと容疑者Dの証言の裏付け調査ですね」

「川のせぎ上げをしとったと言っておったからヘドロの量を調べるのじゃ」


証言の川は村を迂回するように流れている用水路だ。

幅が1メートルほどで深さが50センチほどある。

畑にも繋がっていて、ここから水を流しているようだ。


「あっ、ありましたよ、先生」

「すっかり乾燥してカピカピになっておるのじゃ」


ヘドロは山のように積み上がっていてところどころひび割れしている。

匂いは相変わらずするので鼻をつままないと近くには寄れない。

ボロにゃんとトラ吉は大きなマスクをして準備万端だった。


「これだけあれば証言は正しかったと言えますね」

「ふむ。トラ吉よ、ヘドロを用水路のヘドロを掬い上げるのじゃ」

「えーっ。僕がやるんですか」

「1回あたりどの程度ヘドロを掬えるのか計るためじゃ」


ボロにゃんに指名されてトラ吉は嫌そうなリアクションをする。

1日のはじまりなのに臭い仕事をしなければならないのは苦痛なのだろう。

ただ、これも仕事なので断ることはできない。


「ウヘェ~。クッサー」

「さあ、トラ吉よ、ヘドロを掬うのじゃ」


トラ吉は用水路に入るとスコップでヘドロを掬い上げる。

そしてそのまま用水路の外にヘドロを移した。


「どうですか、先生」

「ふむ。1回でこの量ならば……」


ボロにゃんはトラ吉が掬い上げたヘドロとカピカピになっているヘドロを比べて計算する。


「この量ならば2人で作業して1日分の量じゃな」

「なら、容疑者Cと容疑者Dの証言も正しかったことになりますね」

「そう言うことじゃな。では、次に行くのじゃ」


ボロにゃんとトラ吉は用水路を後にして容疑者Eの家に向かう。

トラ吉はヘドロで汚れて臭いのでボロにゃんは少し距離をとっていた。


「容疑者Eは一日中、家で掃除をしていたと言っていました」

「1日中、掃除をしておったのならば大量のゴミが外に出ているはずじゃ」

「と言うことは、ゴミの量で裏付けをとるんですね」

「そう言うことじゃ」


ボロにゃんとトラ吉は容疑者Eの家の裏口に回って片づけられたゴミを探す。

すると、容疑者Eの家の裏口に大量のゴミが山積みになっていた。


「先生、ありましたよ」

「ふむ。中々の量じゃな」

「なら、容疑者Eの証言も正しいと言うことですね」

「まだじゃ。ゴミの種類を調べねばならぬ」


トラ吉がさっさとまとめようとするのでボロにゃんは制止した。


「種類って?」

「どんなゴミを捨てたのか明らかにする必要がある。例えば紙くずや新聞だけじゃったらリビングしか掃除してないことになるじゃろう。1日中、掃除をしていたのなら全部屋掃除したはずじゃからな」

「なるほど!さすがは先生ですね」

(ふ~ん。そんな所に視点を向けるなんてね。勉強になるわ)


別にこれから探偵になるつもりはないが少しためになった。

自分では気づかない視点に立っているから勉強になるのだ。


私はゴミを漁っているボロにゃんとトラ吉を遠目に見ながら見守る。

傍から見たらノラ猫がゴミを漁っているようにも見えてしまう。

トラ吉はともかくとしてボロにゃんはすごく似合っている。


(実際の探偵ってアニメの名探偵のようにはいかないものなのね)


それからボロにゃんとトラ吉は1時間ほどゴミの種類を調べていた。


「全ての部屋のゴミがあるのじゃ」

「やっぱり容疑者Eの証言は正しかったのですね」

「次じゃ」


ボロにゃんとトラ吉はゴミをそのままにして容疑者Fの家に向かった。

容疑者Eがこの状況を目の当たりにしたらなんと思うだろうか。

せっかくキレイにゴミを片づけたのに散らばっているのだから。


そんなことを考えながら私はボロにゃんとトラ吉の後を追い駆けた。


「先生、ここが容疑者Fの家です」

「ふむ。では」


ボロニャンは一歩前に踏み出すと容疑者Fの家の扉をノックする。

しかし、反応は全く帰って来ず辺りは静寂に包まれていた。


「留守でしょうか」

「どこかに撮影に出かけたのかもしれん」

「どこへ撮影に出かけたのでしょうか」


ボロにゃんとトラ吉はお互いの顔を見合わせて考え込む。

容疑者Fのメモ書きみたいなものはないのでどこに出掛けたのかわからない。

あてがなければ探しようもないのだ。


「容疑者Fは風景写真が好きなようじゃからどこか景色のよい場所に出掛けたのかもしれぬ」

「この村の近くで風光明美な場所と言えば……」


トラ吉はバッグからイメル村周辺の地図を取り出して広げる。

そして地図に掲載されている場所をピックアップしてみた。


「村の北の山にある滝、南西にある池、東にある森の湖が該当します」

「南西にある池はいったことがあるから、まずは北の山にある滝を目指すのじゃ」

(まあ、妥当な選択だわ。山は風景写真を撮る人にとってマストだもの)


と言うことでボロにゃんとトラ吉と私はイメル村の北にある山を目指した。

いつの間にか私もボロにゃんチームの一員になっている。

ボロにゃん達が調査をはじめた当初からいっしょにいるから自然とそうなったのだ。

けど、そう思っているのは私だけだけどね。


「思ったよりも遠いですね」

「年寄りの体にはキツいのじゃ」

(年寄りじゃなくてもキツいわよ)


まだ若いトラ吉はピンピンしていたが年寄りのボロにゃんと私はゼエゼエ言っていた。

北の山は想像以上に遠くて、かつ、急斜面だから足に来るのだ。

私には足はないけどそんなような感じがするのだ。

人間であった頃の名残だろう。


「先生、あともう少しで滝です。頑張ってください」

「ゼェゼェ……トラ吉よ、おぶってはくれぬか。ワシはもう歩けん」

「仕方ないですね。先生、私の背中に捕まってください」

「さすがはワシの弟子じゃな。それじゃあ、遠慮なく」

「フンガッ」


ボロにゃんがトラ吉の背中におぶさるとトラ吉が唸った。


(じゃあ、私も)

「フンガッ」


ついでに私もトラ吉の頭に乗るとトラ吉がさらに唸った。


「ちょ、ちょっと……先生。重くなったんじゃないですか」

「バカを言うでない。ワシはいつもの通りじゃ」

「な、何だか二人分背負っているような気がします」


そう感じているのは当然のことだ。

ボロにゃんと私が乗っているのだから。

だけど、重いのはボロにゃんであって私じゃない。

一応、これでも女の子だし重いなんて言われたくないわ。


トラ吉は重い足を一歩、二歩と前に踏み出して山道を登って行った。


「ゼェゼェゼェ……もう、動けません」

「助かったのじゃ」


切り立った崖までやって来るとトラ吉はすっかり伸びてしまった。

ボロにゃんはひょいと飛び降りて腰をぐいーんと伸ばして凝りをほぐす。

年寄りになると体のあちこちが悲鳴をあげるからストレッチは欠かせないのだろう。

私もその隣で体を捩って凝りをほぐした。


「あっ、探偵さん。こんなところで何をしているのですか?」

「お主を探しておったのじゃ」

「私を?」


容疑者Fは心あたりがないようでポカンとした顔を浮かべる。


「カメラを少しばかり貸してほしいのじゃ」

「別に構いませんけど」


そう言ってボロにゃんは容疑者Fからカメラを受け取ると写真を調べた。

写真と言うよりも事件当時に撮影した写真の日付を確認していたのだ。

しかし、予想とは違って事件当時に撮影した写真の日付は確かだった。


「ふむ。これも違うか」

「何です?」

「ご協力を感謝するのじゃ。おい、トラ吉。次じゃ」


結局、ボロにゃんとトラ吉は何の収穫もなく来た道を引き返して行った。

まあ、容疑者Fの裏付けもとれたのだから犯人の線からは外れることになる。

あとは容疑者Gの裏付け調査だけだ。


「ここが容疑者Gが証言した家畜小屋です」

「ふむ。当番表にはちゃんと印がつけてあるのう」

「お昼にお弁当をテイクアウトしたことはわかってますから、それ以外の時間がどうかと言うことです」

「これだけの家畜小屋を掃除するのは片手間でできるものではないのじゃ」


家畜小屋は豚にはじまり、鶏、馬、山羊、羊、牛など様々だ。

ひとつひとつはそれほど規模が大きいものじゃないがそれでもだ。


「容疑者Gもハズレですか」

「そう言うことになるのじゃ」

(何よ。それじゃあ犯人がいないじゃない。何をやっているのよ。通り名通り”迷探偵”だけのことはあるわ)


そう言っている私が真犯人なのだけど。


「でも、そうすると全ての容疑者の裏付けがとれたことになります」

「ムムム……トラ吉よ。再調査じゃ。何か見落としておるかもしれん」


さっそくボロにゃんとトラ吉は調査のやり直しをするため一旦宿へ戻る。

私も最後まで見届けるため二人の後を追い駆けた。


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