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第百五十五話 お姉ちゃんとして

お店から追い出されてから30分。

まだ、ミクはお店から出て来ない。

ネイルをするだけならそんなに時間はかからないはずだ。


「もしかして、あんなことやこんなことをされているの」


ミクはとびきりカワイイから生け贄にされているのかもしれない。

嫌がるミクを丸裸にして縄で縛り上げて張りつけにされているのだろう。

そして熱々のろうそくを垂らしてヒイヒイ言わせているはずだ。


「あ~ん、そんなことをしたらミクが目覚めちゃうじゃない」


私はひとり悪い妄想をしながら不安を大きくする。


もし、ミクがMになって戻って来たら欲しがりさんになっているだろう。

そうしたら毎回ルイにおねだりしてイジメてもらうはずだ。


「私の大切な妹を汚さないで」


妄想が膨らむたびに不安が波のように押し寄せて来る。

しかし、その不安をかき消そうとしても目の前には壁がある。

アーヤのお店の店員が睨みをきかせているから入れないのだ。


「こうなったら奥の手を使うしかないわ」


お店の店員はギャルファッションをしているからチャンスがある。

スカートを捲ってぱんつを晒せば恥ずかしくてガードどころじゃないだろう。

その隙にお店に入ればミクを救えるはずだ。


私は素知らぬ顔をしながらお店の前を行ったり来たりする。


「いきなりテレキネシスを使うのはマズいからチャンスを窺わないと」


お店の店員は私を目で追いながら仁王立ちしていた。


「ダメだわ。完全にマークされてる。だけど、こんなところで時間を食っている場合じゃないわ」


私は覚悟を決めてテレキネシスを使ってお店の店員のスカートを捲り上げる。


「なんとー!」


私はスカートの中を見てどこかで聞いたことのある台詞を吐いていた。


「あれはぱんつって言うの。恥ずかしいところが丸見えじゃん」


しかし、店員はぱんつがさらされても平気な顔をしている。

まるでぱんつがさらされていることに気づいていないようだ。


「何なのよ。あんな恥かしいぱんつを履いているのに恥ずかしがらないなんて」


恥かしさを通り越してあたり前になっているのだろうか。

だけど、それにしたって恥ずかしいところが丸見えだ。

少しぐらいは恥ずかしがるのが普通の女子と言うものだ。

心からギャルになっているから厚顔無恥なのかもしれない。


結局、私のスカート捲り作戦は失敗に終わった。


「もう、これでミクを救出する作戦がなくなっちゃったわ」


もしかしてもミクもあの恥ずかしいぱんつを履かされているのだろうか。

そしてパンチラの写真を撮られて恥ずかしい思いをしているのかもしれない。


「あ~ん、もう我慢できない」


私はひとりヤキモキしながら行ったり来たりしていた。


「ありがとうごさいました」

「また、いつでも遊びに来てね」

「はい」

「楽しみにしてるよ」


お店から出て来たミクは店員らしき娘とお喋りをしている。

傍から見ても楽しそうで、まるで友達と話しているかのようだ。


「ちょめ太郎、お待たせ」

「変なことをされなかった?」

「変なことって?」

「あんなことやこんなことよ」

「あんなことって言ってもわからない」

「だから、エッチなことよ」

「そんなことされてないよ」


ミクは私の際どい質問にあっさりと答える。


「口止されているのね」

「もう、信じてよ」

「アーヤが何もせずに帰してくれることなんてないわ」

「アーヤさんはすごくいい人よ」

「うそ。あいつはべんじょ虫の親玉なのよ。いい人なわけない」

「ちょめ太郎は本当のアーヤさんを知らないのよ」


ミクはアーヤを庇うのでますますイライラが募る。

ただでさえミクをとられてイラついているのに火がついたようだ。


「アーヤのことなんて隅から隅まで知っているわ。あいつはどうしようもないクズなの」

「ちょめ太郎にとってはそうなんだね。でも、私にとっては違うよ」

「何であんなやつの肩を持つの。あいつは私の敵なのよ」

「それは私に関係ないもん」

「そんなつれないことを言わないでよ、ウルウル。”涙が出ちゃう。女の子だもの”」

「そうだったね。ちょめ太郎はマコちゃんなんだもんね」


私がどこかで聞いたことのある台詞を吐くとミクが間に受けて答えを返して来た。

ただ、涙が出るほど悲しいことは間違ってはいない。

純朴なミクだから悪魔のアーヤに気づいてはいないのだ。

いつだって騙されるのは純朴な少女なのだから。


私はふいに見上げると大きなフォトブックが目に止まった。


「何よ、それ?」

「フォトブックだよ」

「そうじゃなくて、どうしたって言うの」

「アーヤさんからもらったんだ。私の写真がいっぱいなのよ」


ミクは嬉しそうな顔をしながらフォトブックを見つめている。


「そんなもの捨てなさい」

「何で?」

「アーヤがタダでものをくれるわけないもの。きっと何か企んでいるのよ」

「そんなことないよ。プレゼントだって言ってくれたもん」


すっかりミクはアーヤに騙されているようで疑いもしない。

アーヤのことをよく知っている私だからわかることだ。

きっとミクを手懐けて自分の味方にしようとしているのだろう。


「見せなさい」

「乱暴に扱わないでよ。大切なものなんだから」


私はテレキネシスを使いミクの腕からフォトブックを奪い盗る。

そしてフォトブックの表紙をめくって中にあった写真を見た。


「何よこれ!」

「カワイイでしょ」

「ミクがべんじょ虫になってる……」

「べんじょ虫ってなに?」

「べんじょの隅にいる薄汚い色をしたバッタよ」

「なら、ちょめ太郎の仲間だね」


ミクが失礼なことを言って来るが私の耳には届いていない。

べんじょ虫になってしまったミクが可哀想で悲しみでいっぱいだったからだ。

もう、ミクはべんじょ虫のウイルスに犯されてしまっているのだろう。

でなければ、こんな写真を見て”カワイイ”なんて言うはずがない。


「こんな写真、燃やしてあげるわ」

「止めてよ。それは私のだよ」

「こんなのを持っていたら本当にべんじょ虫になっちゃうのよ」

「カワイイからいいもん」

「キーッ!ムカつく」


ミクに”カワイイ”と言わせるなんてアーヤのしでかしたことは大きい。

このお店に来るまでは汚れの知らない純朴な美少女だったのだ。

それをべんじょ虫の仲間にするなんて神様でもしてはいけないことだ。


「私のだよ。返して」

「ダメーッ!絶対にダメだから」

「ちょめ太郎も欲しいならアーヤさんにお願いすればいいじゃん」

「そんなものいらないわよ」

「なら、返してよ」

「ダメーッ!こんな趣味の悪いフォトブックは燃やして浄化しないといけないの」


たとえ燃やして灰にしてもべんじょ虫の魂までは消えないだろう。

何せべんじょ虫はおばさんの原石なのだからいつまでもしつこく残り続ける。

だからべんじょ虫に関わるものを近くに置いてはいけないのだ。


「返してったら返して」

「ダメーッ!」

「返してよ!」

「ダメだったら!」


私とミクがフォトブックを引っ張り合っているとチケットの時と同じ状況になった。


ビリ、ビリリリ。


「あーっ!私のフォトブックが……」

「ミクが離さないからいけないのよ」

「うぅ……グスン。ちょめ太郎のバカ……」

「いくらでも泣きなさい。これで手間が省けたってものよ」


私の手で破らなくても勝手に破れてくれたので助かった。

ミクの手から奪い盗ったら燃やすつもりでいたのだから。


すると、騒ぎを聞きつけたアーヤがお店から出て来た。


「またやってるの。マコも懲りないわね」

「アーヤが余計なことをするからでしょ」


文句を言う私をスルーしてアーヤはミクのところへ駆け寄る。

そしてポケットからハンカチを取り出すとミクの涙を拭ってあげた。


「また、作ってあげるから泣かない」

「グスン……ほんと?」

「ほんとよ。だって私はミクちゃんのお姉ちゃんだもん」

「あーん、お姉ちゃーん」


泣きじゃくるミクを優しく抱きながらアーヤはしたり顔を浮かべた。


「ちょっと、ミク。べんじょ虫の親玉から離れなさい!バイ菌が移るわよ」

「よしよし、怖いちょめ虫だね。たんとお姉ちゃんの胸で泣きなさい」

「うぇ~ん、ヒクッヒクッヒクッ」

「キーィ、ぐやじい。それは私がするはずだったのよ」


ミクはルイのお姉ちゃんで過ごして来たから甘えたことがない。

いつでもルイのことを気にかけていて自分のことはおざなりだ。

だから、アーヤがお姉ちゃんみたいなことをしたから張り詰めていた糸が切れたのだろう。

そのぐらい私もわかっていたのにアーヤみたいなことをすることがなかったのだ。


「全く、小さな子を泣かすことしかできないのね、マコは」

「うぅ……そもそもアーヤが余計なことをしたからでしょ」

「お得意の逆切れね。まったく学習しないわね」

「アーヤに言われたくないわ」


アーヤに責められて行き場をなくして私は怒りに変える。

それを見たアーヤはかかったと思ったようでバカにして来た。


「本当にミクちゃんのことを想っているなら認めてあげなさい」

「ダメよ。そんなことをしたらミクがべんじょ虫になっちゃうでしょ」

「べんじょ虫、べんじょ虫ってね。ギャルファッションはもう確立されているのよ。あっちの世界でもギャルは文化になっていたでしょ」

「援助交際とか薬とか買春とか、いつも暗いワードが寄り添っていたけどね」

「それはマスコミのせいだわ。雑誌の売上を伸ばしたくてキャッチ―な記事を書いていたのよ。ほんとのギャルを知らないくせにね」

「けど、記事になるぐらいだから半分はあたっているってことだわ」


マスコミが何の根拠もなく絵空ごとを書くわけない。

そんなことをしたら読者が離れるし、他の出版社から叩かれる。

そこまでして雑誌の売上を伸ばそうとは思わないはずだ。


「まあ、有名にもなればあれこれ書かれるものよ。それも人気がある証拠だわ」

「人気があるのはべんじょ虫の間だけでしょ。世間は必要としていないのよ」

「なら、何でギャルが文化になっているのかしら?今では世界のファンもいるぐらいよ」

「それは悪い文化として残っているだけよ。未来にはギャルなんていないの」


ギャルなんていなくなっていて欲しい。

未来まで犯されるなんて世界が終わってしまう。

そこらじゅうべんじょ虫だらけになっていたらお終いだ。

そうならないためにもべんじょ虫を駆逐しないといけない。

それが私の使命なのだ。


「まあ、マコには一生わからないわよね。ギャルの魅力なんて」

「わからなくてもいいわよ」


全く知りたいとも思わない。

べんじょ虫なんて忌み嫌われる存在なのだから。


「あっ、ミクちゃん。ネイルがとれてるね」

「グスン……ほんとだ」

「また、つけてあげるね。こっちに来て」


アーヤがミクを連れて行こうとしたので待ったをかける。


「ダメよ、ミク。そんなものをつけちゃ。それは怠け者がつけるものなのよ」

「怠け者って何よ?」

「あら、知らなかった?ネイルの長さは怠け者の度合いを現したものなのよ。だから、ギャルは超ド級の怠け者なの」

「何よ、それ。ネイルはファッションよ」

「何がファッションよ。どうせネイルの先っちょで鼻をほじってるだけでしょ。この、鼻くそ娘が!」


私の渾身の一撃を受けてアーヤの表情がガラリと変わる。

それまでいいお姉ちゃんをしていたのに本性を現したようだ。


「キィー、マコのくせに生意気よ」

「それはこっちのセリフ」

「マコなんておもらししてクサクサになっている女子じゃない。いい年をして恥ずかしくないの」

「そんな昔のことを言われても平気でーす。あれはいたいけな少女時代の話よ」

「小学生なんてちょっと前のことじゃない」

「私にとっては遠い昔のことなの。過去は振り返らない主義よ」


人生の汚点なんて早く忘れてしまった方がいい。

そのことを気にしながら生きていくなんてバカらしいからだ。

どうせ過去は消せないのだし、忘れてしまう方がいいのだ。


「ご都合主義ね。どうせ今でもおもらししているんでしょ」

「してませーん。今はちょめ虫だし」


たとえちょめ虫であってもそこいらでトイレをすることはしていない。

ちゃんとトイレに入って用を足しているから何も問題ないのだ。


「ふん、どうだか」

「残念でした」


所詮アーヤが突いて来ることは私がおもらししたことだけだ。

もう、何回も聞き慣れているから改めて指摘されてもムカッ腹も立たない。


「そうだ。シゲルくんとはどうなったの?」

「ギクリッ。シゲルくんて誰よ?」

「マコが二番目に好きになった人よ。忘れたの」

「ヒューヒュヒュヒュー、忘れたわ」


アーヤが私の暗黒の恋歴史に言及するので口笛を吹いてとぼけた。


「はじめての失恋のショックから立ち直るために好きになったのよね、シゲルくんを」

「なんのことかしら」

「だけど、シゲルくんには気になっている人がいて断られちゃったのよね」

「そんなことあったかしら」

「それでマコがとった手段は自分のぱんつをシゲルくんの机に忍ばせること。シゲルくんがマコのぱんつを盗ったってことにして弱みにつけ込もうとした」

「そ、そんなことするわけないじゃん」

「けど、あてが外れてシゲルくんがぱんつを見つける前に先生に見つかっちゃったのよね。その後、先生が学級会を開いて誰のぱんつかみんなに尋ねたのよ」

「し、知らないわ」

「無造作に机にしまっていたからぱんつが汚れて汚ぱんになっていた。そうしたら男子達が”汚ぱんつ”と騒ぎ出してバカにしていたわ」

「な、何のことかしら」

「そしたらぱんつに見覚えのあった女子がマコのぱんつだって言い出したのよ。結局、マコはみんなの前で恥をかいたのよね」

「……」


アーヤの言ったことはみんなでたらめだ。

私が好きな男子の気を引くためにぱんつを忍ばせるなんて手段は使わない。

そんなことをしても相手の気持ちを引けないし、返って警戒されてしまうからだ。

ちゃんとシゲルくんに告白して振られただけのエピソードでしかない。

それを逆手にとってアーヤが脚色しているのだ。


「ほんと、マコってぱんつが好きよね。だから、今もぱんつを盗っているのかしら」

「私がぱんつを集めているのは元の姿に戻るためよ。けっしてぱんつが好きなわけじゃないわ」

「どうだかね。初恋の時も2回目の時もぱんつを使っていたからね」

「あ、あれは気の迷いよ。あの時は心が病んでいただけ」

「あっ、認めた。さすがは”汚ぱんつマコちゃん”だわ」

「そんな嘘を言っても誰も信じないから」


私の過去を知っているのはこの世界ではアーヤだけだ。

だから、アーヤが嘘を言っていると言えばみんな嘘だと思ってくれるだろう。

おまけに突飛な話だから誰も信じないはずだ。


「ミクちゃんはお姉ちゃんの言うことを信じてくれるよね」

「わ、私は……」

「ミク、そんなの無視しなさい。答えたくないことには答えなくていいの」

「余計なことを言わないでよ。ミクちゃんが困っているでしょ」

「そのセリフ、そっくり返すわ」


ミクは私とアーヤの間に入ってどうしたらいいか戸惑っている。

私達の醜いケンカを見ていたら誰だって嫌な気分になってしまう。

ミクは言葉にして言わないけれど嫌気がさしているのだろう。


「もう、マコと仲よくするのは止めた方がいいわよ。どうせぱんつを盗られるだけだから」

「残念でした。もう、ミクのぱんつはもらったから関係ない」

「やっぱりぱんつを盗っていたのね。どうしよもない輩ね。ぱんつを盗って何をしていたわけ」

「ちょめジイに渡しただけよ。それが私の仕事だからね」

「変態ジジイと結託していたいけな少女のぱんつを奪うなんて最低ね。心が痛まないの」

「仕方ないじゃない。それしか方法がないんだから」


他に方法があればそっちを選んでいる。

”カワイ子ちゃんのぱんつを100枚集める”なんて面倒なことはしたくない。

だけど、そうしないといつまでもちょめ虫のままだから仕方ないことなのだ。

ある意味、必要悪だと言っていいだろう。


「ミクちゃん、こんな変態といっしょにいたらミクちゃんも変態になっちゃうよ。こんな奴とは縁を切って私とお友達になりましょう」

「ちょっと、ミクを誘惑しないでよ。ミクをべんじょ虫の仲間に引きずり込まないで」

「ギャルになれば毎日が楽しくなるよ。今から人生を変えてみない」

「えっと……その……」

「べんじょ虫になってもいいことなんてないわ。世の中からつまはじきにされたりするだけだし、スケベなおじさんからエロい目で見られるようになるのよ」

「うん……イヤ……」


ミクは私とアーヤの間に入ってどう返事しようか迷っている。

アーヤの甘い誘惑に落ちそうだし、私の注意勧告に気持ちを向けていた。


「ギャルは来るものを拒まない心が広い人達ばかりよ。お初のミクちゃんなら大歓迎で迎えてくれるわ」

「そうやって仲間を増やして徒党を組んでいるだけでしょ。べんじょ虫の仲間になれば烏合の集になるだけだわ。ただのモブになるのよ」

「今からギャルになれば将来はファッションリーダーになれるわよ。ミクちゃんの思う”カワイイ”を世の中に発信しよう」

「ウイルスを撒き散らすのは止めて。これ以上、べんじょ虫が増えたらべんじょ臭くなっちゃうわ」


私もアーヤも必死になってミクを囲い込もうとする。

いかにしてミクを仲間にできたかで勝敗も別れるのだ。

ただ、ミクの方はどうしたらいいのか真剣に悩んでいた。


そしてミクは覚悟を決めると意を決して本音を呟いた。


「私はちょめ太郎とアーヤさんに仲よくして欲しいです」

「それは無理な注文ね。マコは私を受け入れてくれないから」

「受け入れないのはお互い様でしょ。私ばかりのせいにしないで」

「でも、ケンカするほど仲がいいって言うし。ダメですか」

「う~ん、難しいわね。私は来るものは拒まずなんだけどマコがね」

「ミク、私とアーヤは敵同士なの。だから、仲良くなんてできないわ」


ケンカをしているのはお互いを否定するためだ。

けっしてライバル関係のようないい間柄ではない。

あくまで敵同士なので仲良くすることなどないのだ。


「なら、お姉ちゃんなんていりません。私にはルイがいますから」

「ミクちゃん……」

「ミク……」


ミクは心を鬼にして私とアーヤを否定した。

これまでルイと二人で姉妹をして来たので今さら感がある。

ただ、甘えられることを知ったから心の中では悲しんでいるはずだ。


「わかったわ。ミクちゃんがそこまで言うならマコと仲直りしてあげる」

「ほんとですか」

「ギャルに二言はないわ。それよりマコの方はどうなのよ」

「ちぃ、大事な妹の願いだものね。私もアーヤと仲直りするわ」

「ちょめ太郎、ありがとう」


ミクの決死の言葉が私達の心をつなぎとめた。


「仲直りの握手よ。手を出しなさい、マコ」

「私に手なんてないの」

「なら、頭をいーこいーこしてあげるわ。これで仲直りよ」

「汚い手で触らないでよ」

「ちょめ太郎」

「わかったわよ。これで仲直りだからね」


ミクの前でアーヤが私の頭を撫でたことで仲直りの儀式を終えた。


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