第十話 聞き取り調査
イメル村に戻ったボロにゃんとトラ吉は聞き取り調査をはじめる。
村長に頼んで当時、森へキャンプへ出掛けていた家族連れを集めさせる。
聞き取りする場所は村長の家を借りることにした。
「では、まずはお主達からじゃ」
呼び出された家族は緊張した面持ちでボロにゃんとトラ吉の向かいに座っている。
トラ吉はボロにゃんの隣に座って聞き取りした内容を書き記して行く。
「まずは当日のスケジュールを簡単に教えてほしいのじゃ」
「私達、家族は森でキャンプをするため朝9時に村の入口へ集合しました」
「朝9時とな」
ボロにゃんが復唱をするとトラ吉がその時間をノートに書き記す。
「キャンプ場所に辿り着いたのは10時半頃です」
「1時間半かかったと言うことじゃな」
「荷物が多いので馬車を使いました」
「ふむ」
実際にボロにゃん達が歩いた時は1時間でキャンプ場所へ辿り着くことができた。
そのことを考慮すると真っすぐにキャンプ場へ向かったのではないことになる。
「途中で寄り道などはしなかったのか?」
「途中で子供達が飽きてしまったので少し遊ばせました」
「ふむ、幼い子供にはあるあるのできごとじゃな」
その時間が約30分と言うことになる。
「キャンプ場についてからすぐにテントを張りました。時間にして30分はかかったでしょうか」
「その間、子供達はどうしたおったのじゃ?」
「子供達は近くの河原で遊ばせました」
「それはちょっと危険じゃとは思わなかったのか?」
「河原の水深は浅いですし、目の届く場所だったのでそうしました」
家族連れの証言通り河原の水深は30センチほどしかない。
それにテントを張っていた場所からは目と鼻の先だ。
「その後で一度子供達の様子を見てからバーベキューの準備をはじめました」
「焼いていたのは焼きそばじゃな」
「よく、ご存知ですね。簡単にできますし、子供達が大好きですからね」
料理にかかった時間は30分程度で11時半に昼食にしたそうだ。
「ここまでは事件が起こっていなかったことになるのじゃ」
「昼食は1時間ぐらいかけてすませました」
「ふむ、子供達にとっては長すぎる時間じゃと思うが」
「子供達は昼食をとったあと、すぐに河原で遊んでいました」
そうなると事件が起こったのは午後と言うことになる。
「食事が終わったらお主達は何をしておったのじゃ?」
「私達はお酒を飲んでいたのでそのまま眠ってしまいました」
「時間にしてどれぐらいじゃ?」
「1時間ぐらいでしょうか。子供達が戻って来たので起きましたから」
と言うことは13時半頃に事件が発生したことに気づいたと言うことになる。
「その時、子供はどういう状況だったのじゃ?」
「”おまたがスースーする”と言って妻のところに駆け寄って来ました。そして妻が娘のスカートをめくるとぱんつを履いていないことに気づいたのです」
「ふむ、それはひとりだけじゃったのか?」
「いいえ、他の家族の娘達も同じ状況でした。全員で5人です」
ボロにゃんは難しい顔を浮かべながら頭の中で状況を整理している。
その横でトラ吉はメモをとり、私はトラ吉の横で話を聞いていた。
もちろん擬態しているので周りの人間達は気づいていない。
「となると犯行時刻は12時半から13時半の1時間と言うことになるのじゃ」
「私がもっと娘のことに注意していればこんなことにはならなかったのに」
「お前だけのせいではない。あまり自分を責めるな」
娘が被害者になってしまったことで妻は酷く自分を責めている。
それを見かねた夫が優しい言葉をかけて妻を励ましていた。
「その後はどうしたのじゃ?」
「妻達に片付けを任せて私達、男は周辺の様子を確認しに行きました」
「おかしなことはあったのか?」
「いいえ。辺りには人影すらありませんでした」
「ふむ」
犯行直後に周辺を確認したのに犯人がいなかったことは大きな情報だ。
それは犯人は犯行をしてからすぐに森を離れたと言うことになるからだ。
この行動には計画性がなく突発的な行動だったことが窺える。
もし、計画性があったらすぐに現場を離れることはせずに証拠隠滅を図っていたからだ。
「キャンプ場を離れたのはだいたいどれくらいの時間じゃ?」
「はっきりとは覚えていませんが14時頃だったと思います。村に着いたのが15時頃でしたから」
帰りにかかった時間が1時間だったのならばどこにも寄り道しなかったことになる。
まあ、事件があったのに寄り道なんてしていられる訳もないのだから。
恐らく必死で村に戻って来たのだろう。
「質問はここまでじゃ。ご協力に感謝するのじゃ」
「探偵さん。必ず犯人を捕まえてくださいね」
「娘のためにも頼みます」
「先生に任せれば大丈夫ですよ」
ひと家族目の聞き取り調査をすませてから次の家族の聞き取り調査をする。
返って来る言葉はひと家族目と同じ内容だったがそうすることで矛盾を少なくできるのだ。
1時間ほどかけてキャンプをしていた家族から当日の状況を全て聞きとった。
その後でいったん休憩を入れてボロにゃんとトラ吉は情報の整理をはじめた。
「実際の犯行時刻が12時半から13時半に絞り込まれましたね」
「それだけの時間があれば犯行を犯してから逃げるまで十分過ぎる時間があるのじゃ」
「犯行直後に男達が現場を探したのに何も見つけられなかったのですしね」
「恐らく犯人もどこかに馬を隠していたのかもしれんのじゃ」
ただ、森の中に残っていた馬の足跡は森の西側にしかなかった。
だから自ずと家族連れが使っていたルートと同じ道を使ったことになる。
「犯人は村の人間でしょうか?」
「現段階では何とも言えんのじゃ。その可能性も十分にあり得るし、違う可能性もある」
(犯人は私なんですけど……)
ボロにゃん達の推理に耳を痛くしながら私は話を聞いていた。
今のところ私に繋がる情報は得られていないからひとまずは安心だろう。
「それでは次は被害者の聞き取りじゃ」
「はい。準備をします」
次いでボロにゃん達は被害者である幼女たちから話を聞くことにした。
もちろん被害者が幼いので両親もいっしょに聞き取り調査を受ける。
まずはいちごぱんつを奪われた幼女と両親が部屋に入って来た。
「では、お座りください」
トラ吉が促すといちごぱんつの幼女と両親は向かいの席に腰を下ろす。
「それでは質問をはじめるのじゃ」
「お手柔らかに」
「当日、どこで遊んでいたのじゃ?」
「うーんとね。森の中」
「ひとりで行ったのか?」
「うん、そうだよ」
ボロにゃんの質問に淡々と答えるいちごぱんつの幼女。
全く物怖じもせずに出されたオレンジジュースを飲んでいる。
「何でひとりで森の中に行ったのじゃ?」
「探検したくなったから」
「お主は勇気があるのう。怖くはなかったか?」
「ぜーんぜん平気」
いちごぱんつの幼女はニンマリと笑みを浮かべて楽しそうにしている。
確かに聞き取り調査を受けているのに怯えていないのは勇気があると言うことだ。
「ふむ。なら、森の中でどんな遊びをしておったのじゃ?」
「キノコちゃんと泥んこ遊び」
(ギクリ。それって私のことじゃん)
そのいちごぱんつの幼女の回答にボロにゃんの目が光る。
「キノコちゃんとは何じゃ?」
「うーんとね。喋るキノコちゃんだよ」
「喋るとな」
「うん」
「先生」
一同の関心がいちごぱんつの幼女の言葉に向かう。
メモをとっていたトラ吉も手を止める。
「ふむ。そのキノコちゃんのことを詳しく教えて欲しいのじゃ」
「うーんとね。緑色をしていて、ネコぐらいの大きさで、グニョグニョしているの」
「緑色でネコぐらいの大きさじゃな。トラ吉、メモをとるのじゃ」
「はい、先生」
ボロにゃん達は思わぬ情報を入手して少し興奮している。
メモをとっているトラ吉のペンも走りシャカシャカ音を立てていた。
「そのキノコちゃんはどこに行ったのじゃ?」
「わかーんない」
「先生。そのキノコちゃんが犯人でしょうか」
「その可能性もなくはないのじゃ」
(ヤバい……私のことがバレてる。正確に言えばキノコちゃんじゃなくてちょめ虫だけど)
トラ吉の隣で話を聞いていた私も思わず冷や汗を流してしまう。
まさかいちごぱんつの幼女の口から自分のことが話されるなんて思ってもいなかったからだ。
「ふむ。ならば確信に迫ろう。ぱんつはどこで盗まれたのじゃ?」
「うーんとね。起きたらおまたがスースーしていたの」
「起きたらとはお主は眠っておったのか?」
「うん。お昼寝をしていたの」
その回答にボロにゃんとトラ吉はお互いを顔を見合わせる。
それはいちごぱんつの幼女が眠っている間に犯行が行われたからだ。
眠っている幼女を狙うなんて犯人は非情な人物であることが窺える。
ただ、それは逆に言うといちごぱんつの幼女が犯人を見ていないことを現してもいる。
「もういいでしょう。娘はちゃんと答えたのです」
「そうじゃな。これはワシからのプレゼントじゃ」
「ありがと」
両親から制止の言葉が入ったのでボロにゃんは聞き取り調査を止めて、いちごぱんつの幼女にお礼のクッキーを渡した。
「これは貴重な情報が得られたのじゃ」
「キノコちゃんと言うのは犯人が用意したおもちゃかもしれませんね」
「あの娘の気をおもちゃで惹きつけておいて油断させたのかもしれん」
(ナイス、トラ吉。ボロにゃんの関心を私から背けてくれたわ)
私のことがバラされたのはビビったがボロにゃん達はおもちゃだと思っている。
まあ普通に考えても喋るキノコなんてこの世に存在しないから無理もないのだ。
それからボロにゃん達は他の被害者からも聞き取り調査をした。
いちごぱんつの幼女と同じ言葉が聞かれたのは緑色のキノコを見たと言うことだった。
河原で緑色のキノコが水面から顔を出していたと証言を得た。
その後でぱんつを盗まれたのだとのことだった。
ただ、いちごぱんつの幼女と違っていたのは他の幼女たちは目を覚ましていたと言うことだ。
この場合、犯人の姿を目撃されずにぱんつを奪われることは事実上あり得ない。
その事実に先ほど答えを出していたボロにゃんとトラ吉の予想も大きく外れてしまった。
「先生、これはどう言うことなのでしょう」
「犯人の姿を目撃されずに幼女たちからぱんつを奪うことは不可能じゃ」
「幼女たちからぱんつを脱がせる動作が入りますからね」
「ふむ。これは暗礁に乗り上げてしまったのかもしれん」
さすがのボロにゃんでも犯人が私であることには気づいていていないようだ。
まあ、”ちょめリコ棒”を使ってぱんつを奪ったなんて想像できないからね。
「やはり犯人は透明人間なのでしょうか」
「幼女たちに目撃されずにぱんつを奪えるのは透明人間だけじゃ」
「でも、透明人間なんて現実的ではありません」
「透明になれる道具を持っておるのかもしれん」
(おしい。けど、ハズレ)
ボロにゃんの推理も突拍子もない方向へ進んで行く。
透明になる道具なんてこの世界にあるのかわからない。
私のいた日本でもそんな技術はどこにもなかったのだ。
ステルス機能を備えた戦闘機はあったがレーダーに捕らえられないようにするだけだ。
実際は透明になっている訳じゃない。
「トラ吉よ。村の男達を集めさせるのじゃ」
「聞き取り調査をするのですね」
「可能性をひとつずつ潰さねばな」
と言うことでトラ吉は村長にお願いして村の男達を集めさせた。
もちろんその中には村長も含まれている。
「何だよ、俺達まで取り調べかよ。疑われているのか」
「可能性を潰すためじゃ」
最初の男はドカリと腰を下ろすとすぐにお茶に手を伸ばす。
「早くしてくれよな」
「ふむ。では、事件があった当日、何をしておったのじゃ?」
「俺は朝から夕方まで畑仕事だ」
「それを証明してくれる者はおるのか?」
「年寄りに聞いてくれ」
男は椅子に踏ん反りかえりながらどうでもかと言うような態度をしている。
その様子から見ても自分が犯人でないことを主張していた。
「ふむ。休憩時間は何をしておったのじゃ?」
「年寄り達と畑でお茶を飲んでいた」
「ならば、一時たりとも畑を離れたことはないと言うことじゃな」
「いや。お昼を持って来るのを忘れたから昼は村に戻って来た」
「ふむ」
男はちょっと気まずそうな顔を浮かべながらボロにゃんの顔を見ている。
ボロにゃんは逐一男の表情の変化を読み取りながら質問を続けた。
「時間はどれぐらいかかったのじゃ?」
「そうだな。11半頃に仕事を止めて13時半頃に畑に戻ったかな」
「2時間もお昼をとっておったのか。随分と長いのじゃ」
「お昼をとったあとビールを飲んだら眠くなってな。1時間ほど寝ていた」
「それを証明してくれる者はおるのか?」
「そんな奴、いる訳ないだろう。俺は独身なんだからな」
男はちょっと不機嫌になりながら言葉尻をあげてあたり散らす。
その証言ではアリバイがないことを現していた。
男には11時半から13時半までの2時間が空白の時間となる。
その時間があれば犯行を犯して戻って来るには十分に可能だ。
ボロにゃんは意味あり気に口元を緩ませると聞き取り調査を終わらせた。
「質問は以上じゃ。もう、帰ってよいぞ」
「俺は疑われているのか。本当のことを教えてくれ」
「ふむ。では、教えてやろう。お主は容疑者Aじゃ」
「容疑者だって!」
「ここで言う容疑者とは犯人の可能性があると言うことじゃ。確定ではない」
「俺は何もしてないぞ。無実だ」
ボロにゃんの言葉を聞くなり男は声を荒げて否定する。
まあ、いきなり”容疑者A”と言われたのだから無理もない。
”可能性がある”からと言っているが気分が悪いのも事実だ。
「後日、また聞き取り調査をするから今日は帰ってよいぞ」
「このままおめおめと帰れるかよ。俺を容疑者から外せ」
「それはできぬ質問じゃな。お主には空白の時間があるからのう」
「俺が幼女のぱんつを盗るような奴だと思っているのか。俺は大人の女にしか興味ない」
「可能性の問題じゃ」
「そんなの同じことじゃないか」
男は酷く興奮をしながらボロにゃんに食らいつくように反論する。
それを目の前にしてもボロにゃんは心を乱すことなく淡々と答えた。
「もう、時間ですからお帰りください」
「いや、俺は帰らないぞ。容疑者から外されるまでは帰らない」
「どうしましょうか、先生」
「ふむ。ならば少し休憩にするのじゃ」
ボロにゃんとトラ吉は席を立つと男を残して別の部屋に移動した。
その後、男が村長の家を出て行ったのは1時間後のことだった。
最後まで無実であることを叫んでいたが今のところ容疑者Aである。
真犯人が捕まるまでは容疑者から外れることはないのだ。
そのような要領で村の男達全ての聞き取り調査をした。
その中には空白の時間がある者達がちらほら見られた。
もちろんアリバイのない者は容疑者と認定した。
そして容疑者はAからGまで7人も出揃った。
世代はバラバラだが共通していたのは全員独身者であると言うことだ。
「この中に犯人はいるのでしょうか」
「あくまで可能性の問題じゃからな。犯人がいるとは限らん」
たとえ空白の時間があったとしてもそれだけで犯人とは断定できない。
犯人たる確実な事実を積み上げて明らかにしなければ何もわからないのだ。
「では、最後の聞き取り調査をはじめるぞ。村長を呼ぶのじゃ」
ボロにゃんが促すと恐る恐る村長が部屋の中に入って来た。
「ワシも聞き取り調査の対象なのか」
「お主も男性じゃからな。調査の対象じゃ」
「ワシは孫娘が被害者なのじゃぞ。犯人である訳なかろう」
「これはみんなにしておることじゃ。お主とて例外じゃない」
ここで例外を作ることは捜査に穴を開けることに繋がってしまう。
だから捜査対象が誰であっても聞き取り調査をしなければならないのだ。
「では、質問じゃ。事件があった当日、お主は何をしておったのじゃ?」
「ワシは朝起きてから書斎で書類の整理をしておった」
「それを証明してくれる者はおるか?」
「いる訳なかろう。ワシはひとり暮らしじゃぞ」
「ふむ。午前中のアリバイはなしじゃな」
ボロにゃんに疑いをかけられたことで村長は声を荒げる。
ただ、午前中のアリバイがないだけなので犯人である可能性は低い。
続けてボロにゃんは次の質問をした。
「具体的に聞く。12時半から13時半は何をしておったのじゃ?」
「12時にお昼をすませてから午後は村の中を見回っておった。村人から苦情があった場所の確認が主じゃな」
「それを証明してくれる者はおるのか?」
「村人がおる。何人かとは話もしたから問題はないのじゃ」
これで村長は容疑者から外れることになる。
犯行が行われた時間に村にいたことが証明されるからだ。
まあでも、孫娘が被害者である時点で容疑者から外れていたようなものだけど。
「これで聞き取り調査は終わりじゃ」
「それで犯人は誰なのかわかったのか?」
「可能性のある容疑者は7人絞り込めた」
「その中に犯人がいるってことか?」
「そこまでは現段階ではわからん。あくまで可能性があるってことじゃ」
「そうか。何でもいい。早く犯人を捕まえておくれ」
今日で事件が発生してから10日になるので村長も責任を感じているようだ。
事件は村の外で起こったことだが村の混乱は村長の責任でもあるからだ。
村のリーダーとして1日でも早く事件を解決させたいのが本音だろう。
「それよりもお主に頼みがある」
「何じゃ?」
「容疑者になった者を村の外へ出ないようにしてもらいたいのじゃ」
「その中に犯人がいたら逃げると言うことか」
「そうじゃ。それに証拠の隠滅を図られるかもしれん」
「じゃが、他の村人にバレたら騒ぎになってしまうぞ」
今の段階ではボロにゃんとトラ吉、そして当事者以外の者は誰が容疑者であることは知らない。
もし、他の村人達にバレたら白い目で見られることだろう。
そうなってしまえば村の空気が悪くなってしまう。
それに村人の間にしこりが生まれることになるので問題になるのだ。
「じゃから、他の村人には話が漏れないようにしてもらわなければならん」
「わかったのじゃ。それで容疑者は誰と誰と誰なのじゃ」
「トラ吉。リストを村長に見せるのじゃ」
「リストはこちらです」
トラ吉が調査ノートをテーブルに広げて村長に見せる。
村長はノートに記された名前を見ながら大きなため息を吐いた。
「みんな独身の者達ばかりじゃな。じゃがみんな働き手ばかりじゃから村の外に出さないのは難しそうじゃ」
「お主の命で村長の仕事を手伝わせておけばよいのじゃ」
「そうじゃな。それが一番怪しまれないか。その代り一刻も早く犯人を捕まえてほしい」
「わかっておる。そう時間はとらんよ」
容疑者を7人まで絞り込めたのだ。
あとは事実を積み上げながらひとりずつそぎ落として行けばいい。
そして最後まで残ったものが犯人となるのだ。
ボロにゃんとトラ吉は聞き取り調査を終えると宿屋へ戻って行った。
もちろん私もボロにゃんとトラ吉の後について行くのも忘れない。
調査がどう言う風に進んで犯人が特定されるのを知る必要があるからだ。