第八話 その名は、迷探偵ボロにゃん
マコの状況が一変したのはとある情報が入って来てからだ。
酒場に足を運んだ時に行商人達が話していたことだ。
何でもイメル村の村長は名探偵を雇ったと言うことだ。
寝耳に水な話でマコも一瞬、理解ができなかった。
(何で名探偵なのよ。これじゃあ私が捕まっちゃうじゃない)
(仕方ないのじゃ。イメル村にとっては大事件なのじゃからな)
(そう仕向けたのはちょめジイでしょう。責任をとってよ)
(生ぱんつを奪ったのはお主じゃ。じゃからワシは関係ない)
(ここに来て責任逃れ。薄情過ぎじゃない。私はちょめジイに言われたから生ぱんつを奪ったのよ)
(それがお主の定めじゃ)
ちょめジイはあくまで自分には責任がないと言い張る。
確かに実行犯は私だから責められても仕方がない。
だけど、私をそうなるように仕向けたのはちょめジイなのだ。
だから、ちょめジイが本当の黒幕になる。
(私が捕まったらちょめジイのこともベラベラ喋るからね)
(誰も信じはせんわ。それにお主は”ちょめ”としか話せんのじゃ)
(くぅー、忘れていたわ)
ちょめジイが余計な設定をするから逃げ道がなくなってしまった。
こうなったら何としてでも捕まらないようにしなければならない。
名探偵がどの程度なのかはわからないが姿を見られなければ大丈夫なはず。
とりあえずしばらくの間は擬態で姿を隠しておくしかないわ。
(気になるから村の様子を確かめて来るわ)
(十分に気をつけるのじゃぞ)
ちょめジイがどこまで私のことを心配して言ったのかはわからない。
ただ、私がいなくなると”カワイ子ちゃんの生ぱんつ”を集めることができなくなる。
だから、そっちの方を心配して言ったのだろう。
私は擬態の能力を使て背景に溶け込むと歩いて村の様子を確かめた。
以前から漂っていた緊張感はあいかわらずだが少しだけ弱まった感じがする。
それは村長が名探偵を雇ったことが大きいのだろう。
そのことは村人には内緒にしていたが行商人達から話が漏れたようだ。
まあ、村長が名探偵を雇うなんてそうそうあることではないから仕方ないだろう。
民家の近くまで行くと主婦たちが井戸端会議をしていた。
もちろん議題は名探偵に関する噂話だった。
「ねぇ、知っている。村長が雇った名探偵って王都では有名人らしいわよ」
「数々の難事件を解決したって謳っているぐらいだから凄腕なのでしょう」
「けど、探偵に任せて犯人を捕まえられるのかしら」
「そうね。村で起こったのは殺人事件でもないからね」
主婦たちの関心の名探偵の実力の話になっている。
殺人事件とかならば名探偵の出番は多いが今回は違うのだ。
幼女の生ぱんつが奪われると言う奇妙な事件なのだから。
もちろん犯人は私なのだけれど……。
「幼女の生ぱんつを奪うなんてどんな変態なのかしら」
「きっとロリコンの変態男なのよ」
「無抵抗な幼女を狙うなんて非常識だわ」
「ぜひとも犯人の顔が拝みたいわね」
主婦達が指摘している通り幼女の生ぱんつを奪わせた黒幕は超ド級の変態ロリコンジジイだ。
私をちょめ虫に転生させて”カワイ子ちゃんの生ぱんつを100枚集める”ように指示を出した。
私だってちょめジイに加担したくはないけれど元の姿に戻るためには仕方のないことなのだ。
だから、私には責任がない。
「けど、幼女のぱんつを欲しがるくらいだから私達のぱんつも狙っているかもね」
「それは言えてるわね。なんて言ったて私達には大人の女の魅力があるから」
「いやーん。変態ロリコン男に狙われているって考えただけで痺れる」
「あなた、何を感じているのよ」
「だってこんな刺激的なこと久しぶりなんだもん」
おばさんがどうあがいても逆立ちしてもぱんつは盗まれない。
おばさんのデカぱんに興味を持つ男子なんてこの世にはいないのだから。
おばさんはおばさんになった時点であらゆる男子の興味から外れているのだ。
まあ、狙われるならば私のようなカワイ子ちゃんで若い娘だけだろう。
「名探偵がイケメンだったらいいわね」
「それ言えてる。旦那だけじゃ物足りないからね」
「私達もイケメンで癒される必要があるのよ」
「もしイケメンだったら恋してみたいわ」
おじさんやおばさんになると人はこうも変わってしまうのか。
”健やかなる時も病める時も……”なんて神様の前で誓ったことも忘れてしまっている。
カワイ子ちゃんやイケメンを見ただけで目の色を変えてがっつくのだ。
(おばさんが恋をしたとしても片想いまでだわ)
イケメンにだって選ぶ権利はある。
カワイ子ちゃんをほおっておいておばさんを選ぶことはない。
たとえ地球が逆回転してもそんなことはないのだ。
おばさんはもっと現実を見るべきだ。
そのためにもまずは鏡で自分の姿を映すのがいいだろう。
きっと鏡の中には鬼ババアが顔を覗かせているのだから。
(これ以上、ここにいても有力は話は聞けなさそうね)
すると、イメル村の門を通りり抜けて1台の馬車が村の中に入って来た。
1台しかいないから行商人の馬車ではないようだ。
行商人の場合は何台も馬車を用意するからすぐにわかった。
恐らく旅人を乗せた客車なのだろう。
そして馬車は大通りの手前で停車をする。
(こんな時に旅人なんて珍しいわね)
私も気になったので馬車が見える場所まで近づいた。
「旦那、着きやしたぜ」
「ほう、やっと到着か。随分と長旅じゃったのう」
そう言いながら馬車から降りて来たのはボロ雑巾のような三毛猫だった。
頭は禿げ上がっていないが髭がモジャモジャで片目にメガネをかけてる。
それに足腰が悪いのか杖をついていた。
(何よ、あのボロ雑巾。あれが名探偵とでも言うの)
寄り集まって来た主婦たちの感想も私と同じものだった。
どこからどう見ても名探偵のようには見えない。
よく言えばちょっと頭の良さそうな猫だと言うぐらいだ。
「先生、待ってよぉ」
「トラ吉よ、支払いの方を任せたぞ」
そう言いながら後から降りて来たのは頼りのなさそうなトラ猫だった。
ボロ雑巾のような猫を先生と呼んで支払いをしていた。
「これでお願い」
「まいど。しばらくこの村にいるから何かあったらまたよろしく」
トラ吉が差し出した金銭を受け取ると馬車は駅舎に向かって行った。
「さて、さっそく依頼者のところへ向かうのじゃ」
「なら、あっちだよぉ」
ボロ雑巾のような猫がそう言うとトラ吉は地図を広げて場所を確認した。
(やっぱりあれが名探偵のようね。でも、安心したわ。あんなへんてこな奴で)
随分と年寄りみたいだし見た目はボロ雑巾だし。
恐らく昔は凄腕の名探偵だったのだろうが今は違う。
ただのボロ雑巾になり果てているようだ。
すると、ボロ雑巾のような猫が振り返って私の方を見た。
「……」
「どうしたの、先生?」
「ワシはボロ雑巾ではないぞよ」
(エッ。私のことが見えるわけ!)
一瞬バレたかと思ったがボロ雑巾のような猫はトラ吉を連れてすぐに行ってしまった。
(ぶーぅ。ちょっとチビッちゃったわ)
見える訳ないよね。
私の擬態は完璧だもの。
きっと虫が飛んでいたのよ。
そうに決まってる。
ボロ雑巾のような猫とトラ吉は村長の家の方へ歩いて行く。
私も一定の距離を置きながら後について行った。
村長の家の前まで来るとボロ雑巾のような猫が扉をノックした。
「誰じゃ?」
「ゴホン。ワシは迷探偵のボロにゃんじゃ。この者はワシの助手をしておるトラ吉じゃ」
「トラ吉だよぉ。よろしくお願い」
ボロにゃん達を見るなり村長は固まってしまう。
しかし、ボロにゃんが自己紹介をするとすぐに我に返った。
「お主が名探偵か。待っておったぞ。早う中に入っておくれ」
「邪魔する」
「おじゃまさま」
村長に出迎えられてボロにゃんとトラ吉は村長の家の中へ入って行く。
それを確認してから扉が閉まる前に私も村長の家の中へ飛び込んだ。
村長の家の中には村の男達も集まっていて話し合いをしていた。
「みなのもの。王都から名探偵さまが起しになられたぞ。はよう茶の用意をしておくれ」
「名探偵ってどこです?」
男達の視線も空中を彷徨いながら名探偵を探した。
「では、みなのものに紹介しよう。この方が王都から来た名探偵じゃ」
「ゴホン。ワシは迷探偵のボロにゃんじゃ」
「ボクは助手のトラ吉だよぉ」
改めてボロにゃんが自己紹介をすると男達もようやく理解した。
ただ、男達が想像していた名探偵像とはあまりにも違っていたので一瞬戸惑ったのだ。
村の男がお茶を差し出すとボロにゃんはお茶をひと啜りした。
トラ吉はバッグからグルグルメガネを出して掛ける。
するとトラ吉の性格が変わって真面目な青年になった。
(あれもマジックアイテムなの。見た目は変わらないけど雰囲気が変わったわ)
それまでのトラ吉とは比べ物にならないほどキャラが変わった。
「それでは話を聞かせてもらうかのう」
「実は数日前に森で幼女のぱんつが奪われる事件が発生したのじゃ」
「ぱんつ?」
想いもしなかった言葉にトラ吉の顔に疑問符が浮かび上がる。
普通、この手の依頼だと難事件が多いから余計に驚いた。
「それでどうしたのじゃ」
「狙われたのは幼女ばかりで犯人の姿も見てないと言う」
「ならばどうやって犯人はぱんつを奪ったのです?」
「それはワシらにもわからん。ただ、幼女たちから話を聞いても何も聞けんのじゃ」
村長の説明を黙って聞きながらボロにゃんはお茶を啜った。
「それなら犯人に脅されていると考えられますね」
「ワシらもそう思ったのじゃが、そうではないようじゃ。幼女たちは全く恐れてはおらん」
「それはおかしいですね。ぱんつを奪われたのに犯人を知らないなんてあり得ない話です」
「じゃからワシらも幼女たちがぱんつを置き忘れたのじゃないかと思ったのじゃ」
「その可能性が一番高いですね」
「ただ、森の中を捜索した時にはぱんつなど見つけられなかったのじゃ」
話はだんだんと難解になって行く。
問いかけをしているトラ吉も理解が追いつかない。
ぱんつが奪われたのに犯人を見かけないことなどあり得ないのだ。
村長の話を聞く限りでは脅されているようすもないので辻褄が合わない。
村長たちが自分達を買被ってからかっているのかとさえ思ってしまう。
ただ、ボロにゃんだけは話に割り込むこともなく黙って聞いていた。
「では、お聞きします。森の中を捜索した時はぱんつが奪われてから何時間たってからですか?」
「ぱんつが奪われたのがわかったのが15時頃じゃったから森の中を捜索したのはそれから3時間経ってのことじゃ」
「犯行から3時間の時間の猶予があると言うことですね」
「それだけ時間があれば逃げることも可能じゃし、ぱんつを隠すこともできる」
ボロにゃんは徐に口を開くと質問を整理して答えた。
「ただ、ローラー作戦で森の中を捜索した時は何の痕跡も見つけられなかったのじゃ。森の中にぱんつを隠したとは考えにくいのじゃ」
「それならば森の中に隠した線は薄いですね。犯人が持ち去ったと考えるべきです」
ボロにゃんもあらかた同じ考えを持っていたようだ。
お茶を啜りながら茶菓子に手を伸ばしている。
「それなら犯人はこの村の近くにいると言うことじゃな」
「いや、この村に潜んでいるかもしれない」
「それはどう言う意味ですか?」
「実は1週間ほど前に民家の冷蔵庫を漁られたのじゃ。被害は小さかったが食料が奪われたのじゃ」
「犯人が食料を奪ったと?」
「ワシらはそう見ておる。それからは村の警備はいっそう強化させた」
新しい情報に茶菓子をつまんでいたボロにゃんの目も光る。
「先生、どう思いますか?」
「ふむ、犯人はこの近くにいるのじゃ」
(ギクリ。もしかしてバレた?)
村長の隣で話を聞いていた私を見てボロにゃんが呟く。
見えてないはずなのだけれど何故だか見らている気がする。
そのメガネの奥では鋭い眼光が光っているようだった。
「それで依頼を引き受けてくれるのか?」
「ふむ。報酬はいかほどじゃ」
「報酬?」
「先生、いきなり報酬の話なんて失礼ですよ」
「お主はまだわかっておらんようじゃな。ワシらは善意で仕事をしておるのじゃないのじゃぞ。これは当然の権利じゃ」
話がお金のことになったので村長も少し戸惑っていた。
しかし、すぐに気持ちを切り替えて報酬の話をはじめた。
「犯人を捕まえた暁には金貨30枚の報酬を出すつもりじゃ」
「金貨30枚かっ!ぜひ、仕事をさせてくれなのじゃ」
「全く先生は現金なのだから」
ボロにゃんと村長の交渉は締結して改めてボロにゃん達が事件解決に動くことが決まった。
調査の日取りは決めていないが村に滞在している間は全面的に村長たちが支援することにした。
と言うことでボロにゃん達はいったん村長が用意した宿へ向かうことになった。
もちろん私も様子を窺うためにいっしょについて行くことにする。
さすがに部屋の中までは入れなかったが隣の部屋に忍び込んだ。
しばらくの間はここでボロにゃん達の状況を把握することになるだろう。
(とりあえずボロにゃん達の部屋に忍び込まないとね)
私は隣の部屋にルームサービスが来たタイミングを狙って隣の部屋に忍び込んだ。
「お食事は20時にお持ちいたします」
「わかったのじゃ」
ボロにゃんはスタッフにチップを渡すと早々に引き取らせた。
そして部屋のソファーに座るとトラ吉と会議をはじめた。
「トラ吉よ。状況の整理じゃ」
「はい、先生」
村長の話をメモしていたノートを開いてボロにゃん達は状況の整理をはじめる。
「まず、犯行現場は村の隣の森です。家族連れがキャンプをしているとことを狙われたのです」
「ふむ、地図で言うとこの辺りじゃな」
テーブルにイメル村周辺の地図を広げて地図の上に駒を置く。
距離にしてみるとイメル村からそう離れていないので犯人の行動範囲内にある。
もし、犯がイメル村に潜伏している可能性は十分にあり得るのだ。
「犯行時刻はおおよそ12時半から13時の間だと思われます。キャンプをしていた家族連れがちょうどお昼の用意をしていた頃ですから」
「ふむ、5人の幼女からぱんつを奪うには十分過ぎる時間じゃな」
これが殺人事件であれば痕跡を消すための時間が必要になる。
そのため30分程度の時間では犯行に無理があるのだ。
ただ、今回は幼女のぱんつが奪われた事件だ。
痕跡を消す必要もないから30分でも犯行が十分に可能だ。
「被害状況は5人の幼女のぱんつが奪われたと言うことです。それ以外に危害を加えられた様子はありません」
「それは幸いと言うことじゃな」
もし犯人からイタズラでもされていたらこれだけではすまなかっただろう。
ただ、この状況から犯人の狙いは幼女のぱんつだけだと言うことになる。
「犯行目的は幼女のぱんつを奪うことになります」
「そう言うことになるのじゃ」
幼女のぱんつを欲しがるぐらいだから相当マニアックな変質しゃなのだろう。
もしかしたら幼女のぱんつに必要な執着心があるのかもしれない。
「被害者は犯人を見ていないと証言しています」
「そこが一番の謎じゃな」
犯人を見ていないのに犯行が行われたなどあり得ないからだ。
犯人はどうやって姿を見られずに犯行を行うことができたのか。
幼女たちの背後から近づいて幼女のぱんつだけを奪ったのか。
ただ、そうだとしても全く姿を見られないと言うことはない。
「犯人は透明人間なのでしょうか」
「ふむ、透明人間か……」
トラ吉が思わぬことを呟いたので私は思わずギクリとした。
(何よ、確信に近づいているじゃない。このままだとヤバいわ)
すると、ボロにゃんは顔を上げてトラ吉の隣に座っていた私を見つめた。
「どうされましたか、先生」
「いや、何。ちょっと妙な気配を感じただけじゃ」
瞬間、たまらずに私は息を止めて気配を消した。
(さすがは迷探偵だわ。微妙な空気も感じとっている)
だけど私の姿が見えないので話の続きをはじめた。
「犯人の人物像は幼女に執着心を持ったロリコンの変質者と言うことになります」
「そうなると必然と性別は男と言うことになるのじゃ」
「おまけに抵抗できない無力な幼女を狙っていることからしても知的なタイプだと思われます」
「ふむ、そのことから想像するに犯人は腕力のない華奢な姿をしていると予想できるのじゃ。それに狡猾で頭がキレるタイプじゃ」
ボロにゃん達は明らかにした情報を繋ぎ合わせて犯人の人物像を描く。
それは限りなくちょめジイを想像させるような人物像に落ち着いている。
ちょめジイも私に犯行をさせたぐらい知的で狡猾かつ華奢な人物なのだ。
「犯人は若者でしょうか?」
「その可能性もあるが年寄りでも十分に可能性はある。じゃから、犯人の年齢は10代から80代までじゃ」
「随分と範囲が広いのですね。これでは犯人のイメージ図を描けません」
「この事件ならば犯人のイメージ図を描かない方がいいのじゃ。先入観を抱いてしまうからな」
さすがは迷探偵と言ったところだろうか。
闇雲に答えに急がないで着実に推理を積み上げて行く。
そうすることで犯人に近づく作戦を敷いていたのだ。
それはなかなかできることではない。
「それで犯人の潜伏先なのですがこの村に絞り込まれます。森は村の男達が捜索したからです。それに民家の冷蔵庫が漁られた事実もあります」
「森に潜伏しておるよりも村の中にいた方が安全じゃからな」
ボロにゃん達の推理は着実に確信に迫っている。
その度に私は身を震わせながらひとり怯えている。
擬態しているので姿は見えてないはずだが見られているとさえ思ってしまう。
「では、一から整理します。犯人の人物像は幼女のぱんつに執着心を持ったロリコンの変質者。性別は男性で10代から80代まで。知的で狡猾で華奢な姿をしていることです」
「ふむ」
「犯行場所は村の隣の森の中で犯行時刻は12時半から13時までの30分間。幼女に危害を加えることなくぱんつだけを奪い去りました。被害者達は犯人を目撃してないことです」
「ふむ」
「犯人の潜伏先はこのイメル村になります。民家の冷蔵庫を漁った事実が裏付けです」
「ふむ、犯人は食事に困るような状況に置かれていることになるのじゃ」
ボロにゃん達は犯行のあらましを推理で明らかにさせた。
(マズいわ。限りなく捜査の手が私に忍び寄っている)
犯人の人物像はちょめジイそのものだし、犯行のあらましも私の行為そのものだ。
お腹が空いて民家の冷蔵庫を漁ったことが仇になってしまった。
(今さら後悔しても遅いけど、これからはもっと慎重になるべきね)
すると、部屋の扉がノックされてスタッフが食事を運んで来た。
そのタイミングを見計らって私はボロにゃん達の部屋から出て行く。
「トラ吉よ、とりあえず食事じゃ」
「はい」
ボロにゃん達は推理を止めて食事をとることにした。
恐らく明日は現場検証になるだろう。
私はホテルの厨房へ向かって食料を調達しに行った。