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第百三十一話 営業開始

約束の週末になったので屋台を引いてイルカ公園にやって来た。

屋台の開店準備もあるので8時にイルカ公園へ着くようにした。

朝、早いこともあってかイルカ公園を散歩している人は少ない。

その代り噂を聞きつけてやって来た”ファニ☆プラ”のファン達が待っていた。


「うわぁ~、けっこういるね」

「予めファンクラブにお知らせしておいたのがよかったのよ」

「にらせんべい屋のオープン日ですからお客さんがいないと」

「けれど、どれくらいの人がにらせんべいを食べてくれるでしょうか」

「そんなのやってみないとわからないわ。考えているより準備よ」


私達はいつも路上ライブをしている場所を陣取って開店準備をはじめる。

小麦粉、卵、ニラ、水はいっしょに持って来たので一通り揃えてある。

あとは生地を多めに作っておいて、しばらく寝かせておくだけだ。


「じゃあ、役割り分担をするわよ。リリナとセレーネは生地作りをお願い」

「わかりました」

「リリナさん、いっしょに頑張りましょう」


リリナとセレーネはガッツポーズを決めて気合を入れる。


「ルイミンは客寄せをお願い」

「客寄せ~ぇ」

「客寄せも大事な仕事よ」

「何だかハズレを引いたような気分だわ」


ルイミンは手先より口先の方が器用だから客寄せが向いている。

いたって普通のカワイイ女子だし、知名度もないから客も身構えないだろう。

もし、リリナやセレーネが声をかけて来たらお客も構えてしまうはずだ。


「じゃあ、任せたからね」

「ちょめ助は何をするの?」

「私?私は現場監督よ」

「なにそれ。サボりってことだよね」

「な、何を言うのよ。現場監督もちゃんとした仕事よ」

「えーっ、私達のことを見ているだけでしょ」


そうとも言う。

現場監督なんてものはみんなそんなものだ。

クーラーの利いた涼しい部屋で胡坐をかいてテレビを観ながらお茶を飲んでいる。

それなのに現場で働いている労働者よりも給料が多いから酷いものだ。

本来であれば汗をたくさん流した人が給料を多くもらうべきなのだ。


「とにかく時間も時間だから準備にとりかかりなさい」

「あっ、誤魔化した」


余計なことをしゃべっていたので8時半になってしまった。

9時にはオープンする予定だから急ピッチで進めないといけない。


「焼きに10分かけたとすると生地作りは20分で終わらせないといけませんね」

「2人ならギリギリってところでしょうか」

「残り時間もあんまりありません。セレーネさん、はじめましょう」

「なら、リリナちゃんはニラを切ってください。私が小麦粉を溶きますから」


と言うことでリリナとセレーネも役割り分担をして準備にとりかかった。


しばらくすると屋台から軽快な音に包まれる。

トントントンと言う音に混じってカシャカシャカシャと言う音も聞こえて来る。

それはリリナがニラを切って、セレーネが小麦粉を溶いている音だ。


私は椅子に座ってまったりしながらお茶を啜っていた。


「何だか実家に帰って来たような雰囲気だわ」


実家でも夕食の時間になるとキッチンから料理をする音が聞えていた。

料理は母親の仕事だったから私はいっさいお手伝いをしていない。

ただ、茶の間でテレビを観ながら夕食ができるのを待っていただけだ。

それは子供の特権とも言えるものだろう。

大人になってもその構図は変わらないから実家へ戻ると子供でいられる。

そんなことをいとこのお姉ちゃんが言っていたのを覚えている。


「にらせんべい屋のオープン日です。美味しいので寄ってくださーい」


遠くからルイミンの客寄せしている叫び声が聞こえて来る。

暇そうに公園を散歩している人をターゲットにしているようだ。

ただ、客寄せする台詞としてはイマイチのレベルだ。


私は椅子から飛び降りてルイミンのところへ駆け寄った。


「ちょっと、ルイミン。それじゃあお客が来ないわよ」

「何でよ。ちゃんと呼び込みしているじゃない」

「台詞がマズイわ。もっと、”ファニ☆プラ”をアピールしないと」

「えーっ、それなら”ファニ☆プラ”のにらせんべい屋オープン日って言えばいいの?」

「そうよ。実際に”ファニ☆プラ”がやっているんだから自信を持って言っていいわ」

「でもなー。”ファニ☆プラ”のイメージとにらせんべいのイメージが合わないんだよね」

「今さら?とにかく”ファニ☆プラ”を前面に押し出しなさい」

「わかったわよ」


ルイミンは納得していなかったが私の言う通りにしてもらった。

私はプロデューサーなんだから決定権は私にあるのだ。


それからルイミンは私が言った通り”ファニ☆プラ”を前面に押し出した呼び込みをはじめた。


「さてと、あと10分ね。リリナ達は焼きに入ったかしら」


私は急いで屋台に戻って進捗具合を確認した。


リリナ達はちょうど焼きの工程に入ったところで油と格闘している。

目分量でサラダ油を注いでいたので生地を入れた時に跳ねたようだ。


「ちょっと油を入れ過ぎましたね」

「ちょめ助くんの感覚がよくわかりませんから仕方ありませんわ」

「私のせいにしないでよ。油が飛び跳ねるぐらいがちょうどいいのよ」


リリナ達は半袖だったので飛び跳ねた油をもろに感じたのだろう。

次回からは長袖シャツを用意した方がよさそうだ。


しばらくすると生地とニラの焼ける香ばしい匂いが漂いはじめる。


「美味しそうな匂いにつられてお客さんが来ましたわ」

「セレーネ、団扇で仰いで匂いを拡散するのよ」

「それはちょめ助くんがやってください。私は焼きで忙しいので」


そう言われればそうだ。

リリナもセレーネも焼きで手がいっぱいだ。

唯一、手を持て余しているのは私だけだ。

仕方ないのでテレキネシスをつかって団扇で仰いだ。


美味しい匂いは公園を漂いながらお客を連れて来る。


「なんかいい匂いがするな」

「あれじゃない」

「ちょっと覗いてみるか」


気がつけば屋台の周りには匂いにつられて来たお客でいっぱいだった。


「効果てきめんね」

「おおっ、もうこんなにもお客さんが集まっていたのね。さすがは私」

「違うわよ。このお客は私が呼んだのよ」

「ちょめ助は何もしてないじゃん」


ルイミンにサボっていたことを指摘されたのでムッとする。


確かにはじめは現場監督気取りでサボってばかりいた。

だけど、団扇で匂いを拡散してお客を呼ぶ仕事はしたのだ。

だから、この功績は私の力と言っても過言でない。


「二人とも、あと1分でオープンですよ」

「こんなことはしていられないわ。ルイミン、カウントダウンをして」

「えーっ、私?ちょめ助がやればいいじゃん」

「文句は言わない」

「チェッ」


ルイミンは呼び込みの仕事を終えて帰って来たのに次の仕事を押しつけられて不満のようだ。

つまらなそうな顔をしながら舌打ちをしてカウントダウンの準備をはじめた。


「リリナ、セレーネ、時間になったら、このクラッカーを鳴らして」

「いつの間にこんなものを用意したんですか」

「デキる女は何かにつけて用意がいいのよ」

「ちょめ助くんって女子だったんですね」


今さらかと思ったが仕方がない。

見た目がこんなのだし、女子と思う方が難しい。

でも、これで心おおきなく女子トークが楽しめる。


「ちょめ助、あと30秒だよ」

「10秒前になったらカウントダウンをして」

「わかった」


あと30秒なのにやたらと時間を長く感じる。

時間を気にしていないと30秒なんてあっと言う間なのに。

今は30秒が10分のように感じられる。

だけど、秒針は刻一刻と時を刻んでようやく10秒前になった。


「10、9、8、7……」

「うおっ、いよいよね。ドキドキするわ」

「6、5、4……」

「あと3秒」

「3、2、1……」

「オープン!」


私の叫び声に合わせてリリナとセレーネがクラッカーを鳴らす。

すると、集まっていたお客さんが拍手で迎えてくれた。


「”ファニ☆プラ”のにらせんべい屋がオープンだよ。欲しい人はここに並んでー」

「にらせんべいだって。聞いたことあるか?」

「いや~」

「うまそうな匂いがするし買ってみるか」

「そうだな。列に並ぼう」


ルイミンの掛け声を聞いてにらせんべいに興味のあるお客さんが列を作る。

その行列は30人ほどになっていた。


「すごいじゃないですか、ちょめ助くん。30人も並んでいますよ」

「こんなのまだまだよ。私のにらせんべいはとっても美味しいんだから」

「えっ?ちょめ助くんのにらせんべいなんですか?私はてっきり”ファニ☆プラ”のにらせんべいかと思っていました」

「え、あっ、いや。今のは取り消し。これは”ファニ☆プラ”のにらせんべい屋よ」


そう言うことにしておかないとネームバリューが下がってしまう。

私の名前で売り出してもお客は誰も集まってくれないだろう。

その分、知名度のある”ファニ☆プラ”を前面に押し出せば効果は高くなる。

”ファニ☆プラ”のファンはもちろんのこと関心のある層も引き込むことができるのだ。


「いらっしゃいませー。いくつにしますか?」

「う~ん、そうだな。とりあえず2枚で」

「にらせんべい、2枚入りましたー」

「ごちそうさまでーす」


そんな誰が教えたわけでもないのにリリナとセレーネは独自の掛け声を出していた。

その掛け声だけ聞いていると、景気のいいラーメン屋を彷彿とさせる。

ルイミンはルイミンで予め注文をとってリリナ達に知らせていた。


「いいチームワークだわ。さすがは”ファニ☆プラ”ね」


私は少し離れたところから屋台の様子を見守った。


時間が経つたびに行列に並ぶお客が増えて来る。

それは最初に買った人達の感想を聞いたからだろう。

おまけに屋台の周りには美味しい匂いがプンプンしている。


「思った以上に大盛況ね。これならがっぽり儲けられるわ」


私は屋台の繁盛具合を見ながらしたり顔を浮かべた。


「何なの、この行列は。邪魔よ、どきなさい」


すると、行列の最後尾の方がざわつきはじめる。


「横入りする人がいたのかしら」


私も行列の最後尾を見ると見たことのあるようなうさぎがお供の者達を連れて歩いて来た。


「アーヤ!何しに来たのよ!」

「あら、マコのお店だったの。みすぼらしいわね」

「冷やかしなら帰ってよ」

「ようやく普通に喋れるようになったみたいね」

「そうよ。悪い?」

「別に悪くなんかないわ。その方が都合がいいし」


そう言ってアーヤは私のところへ近づいて来ると私の首輪を見つめていた。


「何よ」

「いい首輪ね。ダイヤモンドがはめ込んである。マコにはもったいないわ」

「いいじゃない。似合っているんだから」

「マコには分不相応だわ。これでもハメておきなさい」

「ちょっと、何をするのよ」

「大人しくしなさい……取れた」


アーヤは首輪を鷲掴みして強引にハメてあったダイヤモンドを取り外した。


「ちょめちょめ」 (返しなさい。それは私のよ……って、もとに戻ってる!)

「アハハハ。やっぱりダイヤモンドの効力だったのね。代わりに石ころをハメといてあげる」

「ガガガ、ガガガ」 (ちょっと、声が擬音に変わっているじゃない)

「アハハハ。おもしろ~」


擬音しか話せなくなった私を見てアーヤはお腹を抱えて笑い転げる。

その姿を見ていたらムカッ腹が立って来てテレキネシスでアーヤをブン投げた。


ガサガサガサ。


「やってくれるじゃない、マコ。いい度胸しているわね」

「ガガガ、ガガガ」 (あなたが先にちょっかいをかけて来たんでしょ。当然の報いだわ)

「何言っているかさっぱりわかんな~い。ウヘヘヘ」

「ガガガ、ガガガ」 (ムカつく。アーヤって昔からそうよね。人のあげ足ばかりとってバカにして。アーヤみたいな性格の悪い女子ははじめてだわ)


アーヤは自慢の長い耳に手をあてながらまともに喋れない私をバカにして来る。

すぐさま平手ではっ倒したかったが今の私には手がないことを忘れていた。


「ガガガ、ガガガ」 (アーヤ、それを返しなさい)

「まともに喋れないってのも不便ね。代わりにルビーをハメてあげるわ」


アーヤは私の首輪にハマっていた石ころを外して代わりにルビーをはめ込んだ。


「わかればいいのよ、わかれば」

「なに、今度はおばさんの声になっている。じゃあ、サファイアは」

「ちょっと勝手に変えないでよ」

「うわぁ~、今度はおじさんの声になっている。おもろ~」


アーヤはとっかえひっかえしながら私の首輪に宝石をハメて遊んでいた。


「私の声で遊ばないでよ」

「エメラルドはおばあちゃんの声か。なら、トパーズは」

「バブバブ」 (いい加減にしなさい。私は変声機じゃないのよ)

「赤ちゃんの声か。これが一番面白いからこれにしておこう」

「バブバブ」 (止めてよ。これなら”ちょめちょめ”の方がマシだわ。お願いだから私の声を返して)

「まあ、これも話しずらいからな。仕方がない、返してあげるわ」


ようやくアーヤからダイヤモンドを返してもらって元の自分の声になる。


「ふぅー、一時はどうなるかと思ったわ」

「それより、マコ。何屋をはじめたわけ?」

「にらせんべい屋よ」

「にらせんべいって長野県の北信あたりで食べられている食べ物でしょう。田舎くさ~」

「にらせんべいも食べたことないくせにバカにしないでよ」

「どうせ食べたって美味しくないんでしょ。それならパンケーキを食べている方がいいわ」


アーヤはすっかり都会っ子になっているからお洒落なパンケーキばかりを食べている。

出身は茨城のくせに都会っ子ぶるのは止めてほしい。

納豆くさいくせにバカにし過ぎだ。


「所詮、田舎娘にはにらせんべいの美味しさなんてわからないわ」

「私は根っからの都会っ子よ。バカにしないで」

「嘘コケ。出身は茨城のくせに」

「”いばらぎ”って言わないで。正式名称は”いばらき”なんだから」

「あっ、認めた~」

「い、今のは正しい日本語を教えただけよ」


アーヤは足元を掬われてオタオタしながら田舎娘であることを誤魔化す。

その慌てぶりを見ていたら、さっきまでのイライラが嘘のように消え去った。


「用がないなら、もう帰って。邪魔よ」

「その扱い方はなに?私はお邪魔虫じゃないのよ」

「お邪魔虫じゃない。ごたいそうに、お供を連れて来てさ。”水戸肛門”のつもり?」

「いちいち煩いわね。何でもかんでも茨城と結びつけないで」


ここに来てようやくアーヤの弱点がわかった。

茨城イジリをすれば怒り心頭になることだ。

普段からさんざんやられているから、これを機に立場逆転だ。


「そう言えば茨城出身の芸人でアメリカに渡った人がいたわよね。う~ん、誰だっけ?」

「答えたくない」

「確か芥川賞を受賞した”又吉(またきち)”の相方だった気がするんだけど」

「知らないわ。”綾部(あやぶ)”なんて知らない」

「あっ、そうそう。”綾部(あやぶ)”だったわ。アーヤと同じね」

「どこが同じなのよ。私はあんな大法螺吹きじゃないわ」


アーヤはそっぽを向きながら”綾部(あやぶ)”と同じなのを否定する。

綾部(あやぶ)”が何者になろうと私に関係ないが”綾部(あやぶ)”をネタにアーヤをイジれる。


「で、結局、”綾部(あやぶ)”は何者になったの?」

「そんなの知るわけないじゃない。アメリカで芸人でもやっているんでしょ」

「やっぱ芸人はどこまで行っても芸人よね。アーヤがただのギャルであるのと同じだわ」

「ただのって何よ。ギャルは神聖な存在なのよ。マコみたいな弱虫がイジッていい存在じゃないの」

「ギャルはクズだわ。社会のゴミよ」

「くぅ~、言わせておけば」


普段やられている私にバカにされてアーヤは怒り心頭になる。

おまけにギャルを否定されたので腸を煮え繰り返しているようだ。


「さあ、クズギャルはお家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶっていなさい」

「こうなったら勝負よ!」

「勝負って。もうアーヤの負けじゃない」

「違うわ。アイドルバトルで勝負を決めるのよ!」

「また~ぁ。つまんない」

「あ~ら、私に敵わないから尻尾を巻いて逃げるのね。弱虫マコちゃん」


ここでアーヤの挑発に乗ってはダメだ。

私を怒らせてアイドルバトルをさせようとしている。

負ける気はさらさらないけれど今はにらせんべい屋の方が大事だ。


「何とでも言いなさい。私はにらせんべい屋の方が大事なの」

「そんな田舎くさい食べ物を売って何をしようってのよ」

「そんなの決まっているじゃない。がっぽり稼いで活動費にするのよ」

「そんなのムダムダ。いったいいくらで売っているのよ」

「にらせんべい2枚で銅貨1枚よ。リーズナブルでしょう。庶民的な価格設定にしてあるのよ」

「銅貨1枚?あちゃー、やってらんないわ。ちゃんと原価計算をしたの?」


してない。

材料を集めて作っただけだ。

にらせんべいだったらこれくらいだろうと言うイメージで価格設定をした。

なので、原価がどれくらいかかっているのかわからない。


「うちは薄利多売なのよ。たくさん売ればいいだけだわ」

「効率悪いわね。食べ物の原価率は30%に抑えるのが基本よ。でないと利益が出ないわ」

「また、難しいことを言う。私の商売なんだから口を挟まないでよ」

「マコが無様な商売をしていると元同級生の私としては恥ずかしいのよ」

「私の方が恥ずかしいわよ。元同級生がクズギャルなんだもん」

「いいわ。私達がいかに優れているギャルであるかをマコに教えてあげる。来週末にROZEの路上ライブをやるから観に来なさい」

「えーっ、来週もにらせんべい屋で忙しいのよ」

「どうせここでやるんでしょう。路上ライブもここでやるから問題ないわ」


今さらにらせんべい屋を他の公園でやるとかは言えない。

この公園が出発点だからたやすく変えたくはないのだ。

今日、にらせんべいを買ってくれたお客はリピーターになる。

だから、他の場所に変更することはチャンスを逃すことになるのだ。


「わかったわよ。観てあげるわ。どうせたいしたことないだろうけど」

「約束だからね。来なかったら許さないからね」

「はいはい」


約束を取り付けるとアーヤはROZEのメンバを連れて帰って行った。


「ちょめ助、あんな約束してよかったの?」

「いいのよ。ROZEのファンも集まるだろうからにらせんべいを売りつけられるわ」

「私は嫌な予感がするんだけどな」

「ルイミンは心配し過ぎよ。それよりにらせんべい屋は?」

「最後のお客がハケて閑散としているわ」

「何枚ぐらい売った?」

「そんなの数えてないよ」


時計を見るとすでに11時を回っていた。


「午後の仕込みをするわよ」

「えーっ、まだやるの?」

「今から準備しておかないと15時のおやつに間に合わないわ」


にらせんべいは主食にはならないからおやつだ。

なのでお昼の仕込みをするよりも午後の仕込みをした方がいい。

ちょうど小腹が空く15時の時間帯が一番稼げるのだ。


「文句を言わない。これはプロデューサー命令よ」

「パワハラで訴えてやる」


そんなことを口走ったルイミンだったが最後は私の言う通りにした。


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