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第百十八話 ラーメン屋

次の日の早朝、私はミクに見送られながら転移した。

朝が早かったのでミクは寝ぼけ眼だったがお土産のことは忘れていなかった。

私も約束なので出来るだけカワイイお土産を買って来る予定だ。


「ちょめちょめ」 (それじゃあ、行って来るわ)

「お土産をお願いね」


私はコクリと頷いて返事をすると転移の指輪に魔力を込める。

魔力が指輪に溜まると眩い光が私を包み込んだ。

そして、次に目を開けた時は王都の公園に転移していた。


「ちょめちょめ」 (今回は成功のようね。大通りの真ん中じゃないわ)


だけど――。


ジャポーン。


私は噴水に落ちてしまいずぶ濡れになってしまった。


「ちょめちょめ」 (ウプウプ……ブハッ。中々うまく行かないものね)


場所はよかったのだけれど位置が悪かった。

もう、30センチ横にズレていたら成功だったのに。


「ちょめちょめ」 (まあ、いいわ。おかげでピキッと目が覚めたからね)


私は噴水から出て体を震わせるとイヌのように水を弾き飛ばした。


「ちょめちょめ」 (さてと。ラーメン屋の屋台を探さないとね)


ママから聞いたのは王都の東の公園だと言うことだけ。

王都の東側にもいくつも公園があるので見つけるのは大変だ。

今ここにいる公園なのかさっぱり見当もつかない。


「ちょめちょめ」 (公園の名前を聞いておくべきだったわ)


ちなみにこの公園はクジラ公園と言う名前だ。

クジラと言うだけあって遊具がクジラのカタチをしている。

滑り台はもちろんのこと跨る遊具もクジラのカタチをしている。

もちろん噴水の水が噴き出る場所もクジラのオブジェから水が噴き出していた。


「ちょめちょめ」 (とりあえず、この公園から探してみよう)


ラーメン屋の屋台があれば目立つからすぐにわかるはずだ。


私は噴水を目印にしてクジラ公園の中をぐるりと回った。


「ちょめちょめ」 (ないわ。この公園じゃないのかな)


屋台だからあっちこっちの公園を回っている可能性はある。

だけど、より稼ぐならばひとつの場所に絞るはずだ。

その方がリピーターも来やすいからたくさん稼ぐことができる。


「ちょめちょめ」 (となると、まだ朝早いからアジトで仕込みをしているかもしれないわ)


とかくラーメンのスープを作るには何時間も時間がかかる。

具材をじっくり煮詰めて出汁をとって、こして、また煮込む。

その作業を絶え間なく続けてようやく美味しいスープができあがるのだ。


それだけではない。

麺も一から作らないといけないからいくら時間があっても足りない。

だけど、そのおかげで美味しいラーメンを食べられるのだ。


ラーメンを作っている店主に「うまい」と言って感謝しないといけない。


「ちょめちょめ」 (とりあえず、この公園に絞って張り込みをしよう)


私は暇をつぶすためクジラのカタチをしたブランコで遊ぶことにした。


ブランコの座るところが横になっているクジラのカタチだ。

珍しいブランコなのでつい惹かれてしまったのだ。


足がないのでブランコに座ってからテレキネシスで動かす。

ブランコはキーキー鳴きながらゆっくりと動き出した。


「ちょめちょめ」 (ブランコなんていつ以来かしら)


小さい頃はよく遊んでいたけれど物心つくようになったら離れていた。

大きくなると視野が広くなるからブランコ以外のモノに関心を持つからだ。

私の場合はその頃、テレビで放映していた”プニキュア”にハマっていた。

女の子向けの魔法少女のアニメだったから夢中になったのを覚えている。

文具はもちろんのこと靴下や下着まで”プニキュア”にしていた。

とかく何かを好きになるとそれ一色に染まりたくなってしまうのだ。


「ちょめちょめ」 (いい思い出だわ。ホッ)


私は振り子のようにブランコに揺られながらホッとため息をつく。


「ちょめちょめ」 (ブランコってこんなに単純な乗り物なのに何でハマるのかしら)


子供の頃はブランコで遊んだ思い出だけど女子になると恋の思い出に変わる。

学校帰りに公園によってブランコに座りながらお喋りをする。

それは大切な青春の一ページだから深く記憶に刻まれるのだ。


私はまだそんな経験はないけれど女子高生になればあるかもしれない。

だけど、その前に元の姿に戻る必要がある。


「ちょめちょめ」 (”カワイ子ちゃんのぱんつを100枚”集めて元の姿に戻ったら、あっちの世界へ帰れるのかしら)


元の姿に戻っても、あっちの世界へ帰れないならば、この世界で生きるしかない。

けしてこっちの世界が嫌と言う訳じゃないけれど、あっちの世界が恋しい。

あっちの世界には大好きな”アニ☆プラ”がいるからだ。


「ちょめちょめ」 (ちょめジイのことだから元の世界に帰りたかったら、また、”カワイ子ちゃんのぱんつを集めろ”と言うに決まっているわ)


どれだけぱんつがあれば満足するのか。

ちょめジイの欲望は深すぎてよくわからない。


「ちょめちょめ」 (あ~ぁ、これから私、どうなるんだろう)


答えの出ないことを考えながらひとりブランコに揺られていた。


しばらくブランコで揺られていると公園が徐々に賑わいはじめる。

早朝マラソンをしている人やペットの散歩をさせている人がやって来た。


「ちょめちょめ」 (朝からマラソンなんてよくやる気になるわね。私なんか寝ている方が幸せよ)


もともとポテンシャルの高い人がやるものなのだけどそうでない人もいる。

私のように食っちゃ寝していて太った人がダイエットのためにはじめるのだ。

私はまだ若いから食っちゃ寝していてもそれほど太らない。

今はちょめ虫になっているからわからないけどスリムなはずだ。


「ちょめちょめ」 (おデブが急にマラソンなんかしたら膝に来るわよ。止めておきなさい)


より効果的なダイエットはマラソンよりも水泳だ。

水の中なら抵抗が少なくなるから体にあまり負荷がかからない。

おまけに体温が低くなると体が脂肪を燃焼させるから、より効果が上がる。

それにおデブは脂肪だらけだから沈むことはないだろう。


すると、私の目の前を見たことのある少女が横切った。


「ちょめちょめ」 (あれ?ルイミンじゃない?)


ルイミンは私に気づかずにマラソンをしながら遠ざかって行く。

そんなルイミンのズボンをテレキネシスで掴んで引っ張った。


「えっ、何。キャーッ!ズボンを引っ張らないでよ!」


ズボンはスルスルと下に落ちてルイミンはぱんつ姿になってしまった。


「ちょめちょめ」 (今日はピンクのみずたまぱんつなのね……って、ちがーう。ルイミン、私だよ私。ちょめ助だよ)

「えっ、ちょめ助なの。朝からエッチなイタズラをしないでよ」

「ちょめちょめ」 (ごめんごめん。ルイミンが私を無視して行っちゃうからさ)

「無視なんかしていないよ。ちょめ助がいるなんて知らなかったもの」


ルイミンは私に気がづくとズボンを直してブランコのところにやって来る。


ぱんつまでリリナちゃん仕様にしてあることはさすがと言える。

ファンの鏡とも呼んでいいだろう。

私も下着まで”ななブー”仕様にしようかと思っていたけどわからないので想像に任せていた。

やっぱり推しと同じものを見に着けていると思うだけで力が湧いて来るのだ。


「ちょめちょめ」 (どころでこんな朝早くから何をしているの?)

「マラソンだよ。推し活は体力勝負だからね。普段から体力づくりをしているんだ」

「ちょめちょめ」 (見上げた根性ね。私なんて何もしていなかったわ)

「それに今はアイドル活動をしているからもっと体力が必要なんだ」

「ちょめちょめ」 (歌だけじゃなくダンスもあるからね。そりゃぁ、体力が必要だ)

「リリナちゃんの足を引っ張りたくないからね」


ルイミンがこれほどまでに真面目な女子だと初めて知った。

直向きにリリナちゃんを応援していたから身についたのかもしれない。

私なんかと比べたらルイミンは一段上のレベルにいるファンだ。


「ちょめちょめ」 (私もルイミンを見習った方がいいかもしれない)

「ちょめ助は、こんな朝早くから何をしているの?」

「ちょめちょめ」 (私?私はもちろんラーメン屋の屋台を探しに来たの)

「ラーメン屋の屋台?」


はじめて聞くワードなのかルイミンは小首をかしげて不思議そうな顔をした。


「ちょめちょめ」 (王都に美味しいラーメン屋の屋台があるって聞いたことない?)

「ラーメンって何?食べ物?」

「ちょめちょめ」 (ラーメンを知らないの?かわいそう。ラーメンってのはねすごくおいしいスープの中に細長い麺が入っている食べ物よ)

「ソーメンみたいなの?」

「ちょめちょめ」 (ちょっと違うけど親戚みたいなものね)


ルイミンの口ぶりからするとこの世界にラーメンと言う食べ物はなかったことがわかる。

最近、王都で流行り出したラーメンが先駆けなのだろう。


「ふ~ん。それでラーメン屋の屋台を探してラーメンを食べるんだ」

「ちょめちょめ」 (それもあるけど、作っている人のことが知りたいのよ)

「弟子入りでもするつもり?」

「ちょめちょめ」 (う~ん、なんて言うかな。私の国の人かもしれないのよ)

「へぇ~、ちょめ助の国にはラーメンがあったんだ」


正確に言えば国じゃなくて世界なのだけど遠からず近からずだ。

そもそもラーメンは日本にしか広まっていないから日本の食べ物と言える。

だから、国と言ってもあながち外れていない。


「ちょめちょめ」 (もしかしたらその人は重要なことを知っているかもしれないの。だから、絶対に会いたいのよ)

「そうなんだ。じゃあ、頑張ってね」

「ちょめちょめ」 (えっ、こう言う時って”私も協力してあげるよ”とか言うんじゃないの)

「私、この後、学校があるからちょめ助と遊んでいる暇はないの」

「ちょめちょめ」 (そうだったわね。今日は休日じゃなかったんだわ)


つい、ミクの家にいると曜日の感覚がなくなってしまう。

ミク達は学校がないから毎日同じような生活をしている。

だから、その中にいると今日が何曜日だとか忘れてしまうのだ。


「私は協力できないけれどちょめ助、頑張ってね。じゃあね」


心からそう言っているのかわからないがルイミンは行ってしまった。


「ちょめちょめ」 (あ~ぁ、またひとりぼっち。何をしようかな~)


ブランコはさすがに飽きたので目の前にあったクジラの滑り台で遊ぶことにした。

クジラの尾がちょうどてっぺんになっていて、クジラの背を滑り落ちるようになっている。

なので階段のところはクジラとは何ら関係ない造りになっていた。


「ちょめちょめ」 (さすがは滑り台ね。さっきよりも見晴らしがいいわ)


私は滑り台のてっぺんの手すりをよじ登って一番高いところから公園を見渡した。


「ちょめちょめ」 (滑り台って公園の遊具の中では王様よね)


一番高いところから公園を見渡せるから王様気分になれる。

滑り台が生徒会長だとするとブランコは優等生で鉄棒は図書係あたりだろう。

どれも3大遊具のひとつだけど、やっぱ滑り台は頭一つ抜きん出ているのだ。


「ちょめちょめ」 (あっああ~)


私はターザンの雄たけびを上げながら滑り台を滑って行く。

だけど全然滑り台の楽しさを味わえない。

今いる場所が変わっただけのことだから楽しくないのだ。


「ちょめちょめ」 (なんで子供の頃はこんなものを楽しいと思ったのかしら)


滑り台を見ると子供は目を輝かせて滑り台で遊びまくる。

何回も滑り台を滑っては登り、滑っては登りを繰り返す。

そこにどんな楽しみが隠れているのか少しだけ大人になった私にはわからなかった。


「ちょめちょめ」 (滑り台はつまんな~い。鉄棒にしよう)


私は滑り台をやめて隣にあった鉄棒で遊ぶことにした。

毎度のことだが鉄棒は錆びついていて茶色になっている。

基本、遊具は雨ざらしになるからすぐに錆びついてしまうのだ。


ジーッ。


私はじーっと鉄棒を眺めながらどうやって遊ぶか考えた。

手もなければ足もないので鉄棒で遊びようがない。

体の表面には小さな吸盤がついているから鉄棒にはくっつける。

だけど、それだけなのでぜんぜん面白くはない。


「ちょめちょめ」 (もう、何よ!私にも遊べる遊具を作ってよね!)


公園にある遊具は人間の子供仕様になっているから規格外の私には合わない。

せめて、ハムスターが走ってクルクル回るやつがあれば楽しめたかもしれない。

ハムスターのように早く走れないけれど、楽しかったはずだ。


「ちょめちょめ」 (ふぁ~ぁ、つまんない)


ひとりでいることがこんなにつまらないものだとは思わなかった。

いつもは何かしらしているから時間の長さなど感じていない。

だけど、今はやることがないからすごく時間が長く感じた。


それでも遊具で遊んでいたおかげで時計の針は8時30分を指していた。


「ちょめちょめ」 (まだ、ラーメン屋の屋台は来ないみたいね)


朝時を逃したから昼時を狙ってくる可能性がある。

お昼になればサラリーマン達も来るからお客はたくさんだ。


「ちょめちょめ」 (となると、あと3時間待たないとダメってことね。退屈だわ)


すると、さっきまで公園にいたランナーや散歩の人達は消えて、代わりにサラリーマンや女子高生が目立つようになりはじめる。

朝からサボるつもりなのかと思えば、みんな公衆トイレに駆け込んでいた。


「ちょめちょめ」 (トイレタイムか。きっと、通勤や通学の途中にトイレがないのね)


公衆トイレは公共施設にしかないから通勤路や通学路にない場合は非情に困る。

途中でトイレに行きたくなってもないから、野ションや野グソをするしかない。

男子だったらまだ大丈夫かもしれないが、女子で野ションや野グソは恥ずかしい。

誰かに見られようものなら一生、”野ション女”とか”野グソ女”とか言われるのだ。


私は小学生の時におもらしした経験があるから痛いほどよくわかる。

大人になっても心の傷とあだ名は消えることがないのだ。


「ちょめちょめ」 (やっぱ女子トイレだけ行列ができるのね)


男子トイレの方は効率よく人が出入りしているから行列がない。

それに比べて女子トイレはずらっと並ぶほど行列ができている。

同じおしっこをするはずなのに女子の場合だけ時間がかかるのだ。


この差はきっと男子のように立っておしっこができない差なのだろう。

それを表すように犬や猫のおしっこはオスメス関係なく同じ時間だ。

それがわかっているならば女子トイレの数をもっと増やすべきなのだ。


でないと厚顔無恥なおばさん達が男子トイレに入って行ってしまう。

背に腹は代えられないのはわかるが男子がいるなら止めておくべきだ。


「ちょめちょめ」 (私もおばさんになったらそうなるのかな……。いや~っ、考えられない)


どんなに年をとっても平気な顔で男子トイレに入ってしまうおばさんにはなりたくない。

たとえおもらししても淑女としてのマナーは守り続けるのだ。


「ちょめちょめ」 (私もおしっこがしたくなっちゃったわ)


私は辺りを見回して隠れられる場所がないか探す。


ちょめ虫なのだから関係ないのだが、いちおう女子だから隠れてしたい。

いくらちょめ虫になったとしても女子としての意識と感覚は残っている。

もし、それすら捨ててしまったら私は本当にちょめ虫になってしまうだろう。


ちょうどいい木陰があったのでそこでおしっこをすることにした。


「ちょめちょめ」 (ふぅ~、スッキリした)


私は木陰から抜け出て噴水のところまで移動する。

そして勢いよく水面にダイブしてお尻をキレイに洗った。


「ちょめちょめ」 (お尻におしっこがついていたらクサクサになっちゃうからね)


いつもは葉っぱで拭いているから今回はお尻に優しい。

お尻はデリケートな場所だから優しくケアする必要がある。

今度からポケットティッシュを持ち歩いていた方がよさそうだ。


その後、ラーメン屋の屋台が来るまでひたすら待ち続けた。

おかげでおじぞうさまのようにカチコチになってしまった。

だけど、その甲斐あってか、ようやくラーメン屋の屋台がやって来た。


「ちょめちょめ」 (もう、遅い。疲れちゃった)


私は付き合いたてのカップルのような文句を吐く。

待ちに待った登場だから自然と出てしまったのだ。

けしてお付き合いをすることを望んでいるわけじゃない。


ラーメン屋の店主はママが言っていた通り30代ぐらいの若い店主だった。

「飯はがっつり食いますよ」と言わんばかりにクマのような体格をしている。

おまけに日に焼けているからちょい悪おやじに見えた。


「ちょめちょめ」 (何の生き物に転生したのかと思ったけど人間なのね)


きっと初期の方では人間のまま転移していたのかもしれない。

その方が言葉も通じるし、便利だと考えたのだろう。

だけど、誰も言うことを聞いてくれないから徐々に人間から遠ざけたのだ。


「ちょめちょめ」 (さて、まずは話を聞いてみよう)


私は屋台の準備をしている店主のところへ近づいて行く。


「ちょめちょめ」 (率直に聞くけど、あなた転移者?)

「……」

「ちょめちょめ」 (ちょっと聞えているんでしょう。答えてよ)

「……」


私が何度も声をかけてもラーメン屋の店主は答えてくれない。

汗をかきながら黙々と屋台の準備をしていた。


「ちょめちょめ」 (もしかして寡黙系キャラ。低倉健なんて今どき流行らないわよ)

「しゃぁーっ!」


店主はいきなり大声を出すと寸胴に仕込んだスープを入れはじめた。


「ちょめちょめ」 (何よ、ちゃんとしゃべれるんじゃん。なら、私の質問に答えてよ)

「……」

「ちょめちょめ」 (また無視?イケメンを気取らないでよ、ラーメン屋だけに)

「……」


私がつまらないギャグを言ったので辺りが真冬のように冷たくなった。


「ちょめちょめ」 (今のはちょっとなしね)


イケメンとラーメンをかけるのは亜野英孝ぐらいで十分だ。


「ちょめちょめ」 (まずは私から自己紹介するわ。私は涼城マコ。こう見えてもピチピチの14歳よ)

「……」

「ちょめちょめ」 (あなたは?)

「……」


再び質問をしてみるが店主は全く相手にしてくれない。

ラーメンを仕込むことに夢中で聞えていないみたいだ。


「ちょめちょめ」 (私があまりにカワイイから緊張しているのね。きっとそうだわ)


何も答えないラーメン屋の店主に話しかけていると誰かに話しかけられた。


「あら、マコじゃない。奇遇ね。もしかして私のラーメンを食べに来たの?」


振り向くと忘れもしない憎っくきライバルのアーヤが立っていた。


「ちょめちょめ」 (アーヤ!何であなたがこんな所にいるのよ)

「そうまで言わなくてもいいわ。私のラーメンは美味しいからね」

「ちょめちょめ」 (私のラーメンてどう言う意味よ?)

「何を言っているのかわからないけど驚いているようね」


そう言ってアーヤは鼻の下をこすると得意気な顔を浮かべる。


「ちょめちょめ」 (答えなさい、アーヤ)

「教えてあげるわ。このラーメン屋は私がプロデュースしているのよ」

「ちょめちょめ」 (ええっ!)


アーヤの予想もしなかった発言には私は言葉を失った。

金縛りにあったみたいにしばらくの間、動けなかった。


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