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第百十六話 缶詰

ミクの部屋まで戻って来るとミクが机に向かっていた。

何やら書いているようでときどき嬉しそうな顔をしている。

私は静かにミクの背後に回り込んでミクに声をかけた。


「ちょめちょめ」 (そんなところで何をしてるの?)

「日記を書いているんだよ」

「ちょめちょめ」 (マメね。私なんか真似できないわ)

「それよりちょめ太郎。用事はもうすんだの?」

「ちょめちょめ」 (一応はね。だけどまだやることがあるから机が空いたら教えて)

「あと少しで終るからクッキーでも食べていてよ」


後を振り返ってテーブルの上を見るとクッキーの入ったお皿が置いてあった。

中にはチョコチップクッキーのほかアーモンドクッキーなど代わり映えもある。

みんなミクのママが愛情を込めて作ったものだから美味しいだろう。


私はテレキネシスでクッキーを一枚とると口の中に放り込んだ。


「ちょめちょめ」 (モグモグ。サクサクしていて美味しいわ)


甘さ控えめでサクサクしていてどこから食べても美味しい。

チョコチップは少ししっとりとしていて、アーモンドはカリカリだ。

味だけでなく食感を楽しめるところがミクのママのすごいところだ。

ちゃんと食べる時のことを考えて工夫して作っているのだ。


「ちょめちょめ」 (糖分を摂ったら怒りが収まって来たわ)

「怒りって?」

「ちょめちょめ」 (ちょっと王都で嫌なことがあったの。思い出したら腹が立って来たわ)

「友達とケンカでもしたの?」

「ちょめちょめ」 (嫌な奴と会ったのよ)

「ちょめ太郎にも苦手な相手がいるんだね」


苦手と言うよりも憎い相手だ。

顔を合わせれば私を貶してばかりいて。

私の人生はアーヤと出会ったことでガラリと変わった。

小学生時代はいじめられていたし、中学生になったら敵対した。


そもそも私は平穏な学校生活を送りたかったのだけれどアーヤが邪魔をしたのだ。

アーヤは憎むべき相手で仲良くする相手じゃない。

この先も一生アーヤと仲良くすることはないだろう。


「ちょめちょめ」 (ミクは何をしていたの?)

「私は精霊も森へ出掛けて、その後、ルイと遊んでいたよ」

「ちょめちょめ」 (いつもの日常ね。飽きない?)

「毎日、違ったことが起こるから楽しいよ」

「ちょめちょめ」 (ミクはほんと純粋なのね。私だったらすぐに飽きてしまうわ)

「ちょめ太郎は好奇心旺盛だからね」


ミクはオブラートで包んでくれたけれど私は飽きっぽいのだ。

それでいて推し活だけは飽きずにずっと続けている。

推し活は楽しいから何度も続けていても飽きないのだ。


「ちょめちょめ」 (それより日記は終わったの?)

「うん。ちょうど終わったところ」

「ちょめちょめ」 (じゃあ、私に机をかして)

「何をするの?」

「ちょめちょめ」 (新しい楽曲を作るのよ)

「あれ?この前作ったばかりじゃん」

「ちょめちょめ」 (あれは愚作だったの。だから、今度はちゃんとしたのを作るつもりよ)

「ちょめ太郎は頑張り屋なのね」


ミクは私のことを褒めてくれたが私はアーヤを見返したいだけだ。

”ぱんつの歌”ですっかり馬鹿にされてしまったから、すごいのを作るのだ。

今度は奇をてらうのではなく、オーソドックスな楽曲にしようかと思っている。

やっぱりファンの心に響くような楽曲じゃないとヒットしないのだ。


「ちょめちょめ」 (ひとりで集中したいからミクは部屋を出て行って)

「えーっ、部屋を出て行かないといけないの」

「ちょめちょめ」 (協力してよ。これには私の名誉がかかっているの)

「しょうがないな~」

「ちょめちょめ」 (この埋め合わせは後でちゃんとするから)

「約束だよ」


ミクと約束をするとミクはクッキーを持って隣のルイの部屋へ行った。


「ちょめちょめ」 (クッキーは持って行かれちゃったけどひとりになれたわ)


私は扉のカギを締めてひとりで部屋に閉じ籠る。

途中でミクが様子を見に来ないようにするためだ。


今度の作業は全身全霊を込めるつもりだから邪魔されたくはない。

”つるのおんがえし”のように途中で覗かれたら終わってしまうのだ。


私はミクの机に向かってノートを広げた。


「ちょめちょめ」 (まずはテーマから決めないといけないわ)


オーソドックスな楽曲にするつもりだから定番がいい。

あげるとすれば、恋愛、青春、応援などだろう。

どれも使い古してあるテーマだから数多く楽曲がある。

だけど、どの曲も似通っていないところがスゴイところだ。

それは楽曲を作った人の感性がみんな違うからだろう。


「ちょめちょめ」 (とりあえず、この3つの中から選ぶことにするわ)


あまり考え込むと邪念が入ってよからぬキーワードが浮かび上がってしまう。

先の失敗があるから同じ轍は踏みたくない。


「ちょめちょめ」 (どれにしようかな……)


3つの中からひとつだけ選べばいいのだけど迷ってしまう。

どれを選んでもやることは同じなのでどれでもいい。

だから、余計に迷ってしまうのだろう。


「ちょめちょめ」 (やっぱ、恋愛かな)


さんざん迷ったあげく、私は恋愛をテーマにすることにした。


「ちょめちょめ」 (恋愛だったら、やっぱ失恋よね)


初恋もいいけれど失恋の方が数多く経験する。

一度きりのことよりも数多く経験している方が刺さるのだ。

とりわけ女子は失恋ソングが好きだからハマるはずだ。


「ちょめちょめ」 (失恋までは決まったけれど、誰の失恋にしようかな)


自分と同じティーンの失恋にするか、それよりもちょっと大人になった女子の失恋にするか。

主人公がどう言う設定なのかで失恋の内容は変わって来る。

ティーンだったら青春の失恋だろうけれど、大人女子だったらいろいろとある。

純粋な恋愛での失恋もあるけれど、不倫などの失恋も視野に入って来るのだ。


とかくダメ、ダメと世間で叫ばれていても、ついつい不倫に手を出してしまう。

それは”好きになっちゃったから”と言い訳をするが、そもそも不倫願望がどこかにある。

だから、知らず知らずのうちにドツボにハマってしまうのだ。


「ちょめちょめ」 (けど、不倫なんてしたことがないから大人女子の気持はわからないな)


わかりたくもないけれど、いずれ自分もするかもしれない。

今のまま、ずっと純粋でいられることはないからだ。

どこかで道を間違えて歪んだ心を持つようになってしまう。

たとえ好きな人と結婚をしてもいつか飽きてしまうのだ。

そうなったら他の男性を求めるようになるだろう。


「ちょめちょめ」 (何だかな~、なんて思うけど私ちょめ虫だからな~)


もし、元の姿に戻れなかったら私は一生ちょめ虫として生きて行かなければならない。

そんな人生はこちらからお断りだ。

年頃になっても恋愛もできないなんて悲し過ぎる。

絶対に”カワイ子ちゃんの生ぱんつ”を100枚集めて元の姿に戻るのだ。


「ちょめちょめ」 (大人女子の失恋はダメダメ。素直にティーンの失恋にしよう)


ティーンの失恋と言えばやっぱり卒業式が合う。

卒業式は別れを彷彿とさせるから失恋と相性がいい。

卒業式に告白をして、ことごとく振られて失恋を味わう。

そんな女子は世の中にどれだけいることだろう。

青春の一ページが涙色なんて悲しいけれどいい想い出だ。

きっと大人になってから懐かしく感じることだろう。


「ちょめちょめ」 (と言うことで、卒業式に告白をして失恋をした女子高生の気持ちを描くことにするわ)


私はまだ14歳だから女子高生の経験はないけれど何となくわかる。

中学にも卒業式があるから重ねて想い描けば描けないことはない。


「ちょめちょめ」 (後は何度目の恋で失恋したかにするかよね)


主人公が女子高生だったら少なくても2、3回は恋愛経験がある。

だから、卒業式で告白するなんてことは経験上しないだろう。

もし、振られた時はとりかえしがつかないほど傷つくからだ。

おまけにそれっきりになるから余計に傷が深くなってしまう。

祝福するべき卒業式が悲しい想い出になるなんて避けたいはずだ。


「ちょめちょめ」 (となると初恋をした女子高生が卒業式で告白をして失恋するってストーリーになるわ)


初恋だからどのタイミングで告白すればいいのかわからないから合っている。

きっと卒業式に告白をして好きな人といっしょに卒業しようと思っているのだろう。

だが、現実はそんなに甘くはない。

大抵、好きな人には他にいい人がいるものだ。

だから、覚悟を決めて卒業式に告白しても無駄なのだ。


「ちょめちょめ」 (悲しい現実だけれど悲しければ悲しいほど刺さるのよね)


できれば、これでもかと言うぐらいに悲劇にしたい。

甘い青春ライフを送れるのはごくわずかの女子高生だけだ。

多くの女子高生達はカップル達を羨みながら過ごしている。

恋愛を忘れて部活に捧げて青春時代を汗臭くするのだ。


「ちょめちょめ」 (そう言っている私も同じだけど)


私の場合は青春を”ななブー”に捧げている。

とかくカップルを見ても羨ましいとは思わないから問題ない。

それよりも”ななブー”をトップ声優アイドルにする方が大切なのだ。


「ちょめちょめ」 (恋愛なんて大人になってからもできるし、今しなくてもいいわ)


ただ、推し活はそう言う訳にはいかない。

今を逃せば”ななブー”に全てを捧げることはできないのだ。

大人になってしまえば”ななブー”はアイドルを卒業しているかもしれないからだ。


「ちょめちょめ」 (私のことじゃないのよ。初恋をしている女子高生の気持にならないと)


私の初恋は小学生時代のカズくんのことだけどあれは数に入れたくない。

ちゃんと告白もしていなければ、ハンカチを鼻紙がわりにされただけだからだ。

もっと失恋ってのはちゃんと告白をしてからでなければならないと思う。


「ちょめちょめ」 (とりあえず、思いつくことをノートに書いて行こう)


そうすれば何かしらフレーズが見えて来るはずだ。

アーティストも作詞する時はノートに思いついたフレーズを書いているらしい。

だから、同じ作業をしていいフレーズを導き出すのだ。


私はひとり机に向かいながら作詞作業を進めて行った。


それから3時間――。


「ちょめちょめ」 (終わったーっ!何とか書き上げられたわ)


自分で見る分にはうまく書けたと思っている。

ファーストシングルの”恋するいちごぱんつ”にはないテイストだ。

恋愛と言う同じテーマだけれど、こっちの方がだいぶシックになった。


「ちょめちょめ」 (やっぱり攻め過ぎるのはよくないよね)


奇をてらうよりもオーソドックスな方がファンにウケるのだ。

”共感する”ことが一番大切だからありきたりの方がいい。

ただ、ありきたり過ぎてもよくないので程よいバランスが大切だ。


「ちょめちょめ」 (とりあえずこれでいいわ。後は作曲ね)


またAIに任せるつもりでいるから苦労はない。

キーワードさえ間違えなければ歌詞に合う曲を作曲してくれるのだ。

今度は失恋ソングだから”悲しい”とか”寂しい”とかのキーワードがいいだろう。

後は思いつくキーワードを入力してみて出来上がった曲を選ぶだけだ。


「ちょめちょめ」 (作曲はまた今度にしよう)


根を詰めてもよくない結果になるかもしれないからだ。

芸術活動は心のゆとりが大切だから今は頑張る時じゃない。

それよりも歌詞ができあがったことを十分に喜んでおくのだ。


「ちょめちょめ」 (さて、作業も終わったことだし、ミクのところへ行っておやつをもらって来よう)


私は机の灯かりを消してミクの部屋を出て行こうとした時に突然、ちょめジイの叫び声が届いた。


(何じゃこれは!ワシのぱんつコレクションの中にぱんつじゃないものが入っておる)

「ちょめちょめ」 (いきなり大声を出さないでよ。ビックリするじゃない)

(何じゃ、これは!)

「ちょめちょめ」 (これって何よ。ぱんつじゃないの?)

(ぱんつじゃない。何かのパットのようなものじゃ)


そのちょめジイの言葉を聞いてなんのことかすぐにわかった。


「ちょめちょめ」 (それはぱんつよ)

(どこがぱんつなのじゃ。こんなぱんつは見たことない)

「ちょめちょめ」 (仕方ないわよね。だって、みらいのぱんつなんだもん)

(みらいのぱんつじゃと。バカを言うでないぱんつばみらいになってもぱんつじゃ)


ちょめジイは私の言うことが理解できないようで否定して来る。


「ちょめちょめ」 (ぱんつもみらいになれば変わるものなのよ。それがみらいのぱんつなの)

(認めん、認めんぞ。ぱんつは小さくてモコモコしていてビヨーンと伸びるのがぱんつなのじゃ。それ以外はぱんつじゃない)

「ちょめちょめ」 (時代錯誤な。ちょめジイがそう思っていてもみらいのぱんつは変わるものなのよ)

(いいや。ぱんつはぱんつのままじゃ。みらいになってもぱんつはぱんつじゃ)


まるで駄々っ子のようにちょめジイはみらいぱんつを認めようとはしない。


「ちょめちょめ」 (ぱんつはちょめジイのためにあるものじゃないのよ。それにぱんつを履く人のことを考えてよ。みらいぱんつの方が何かと便利でしょう)

(便利とはなんじゃ?)

「ちょめちょめ」 (そんなこと女子の私に言わせないでよ。ニュアンスでわかるでしょう)

(わからんのじゃ)

「ちょめちょめ」 (ド変態のロリコンでぱんつ好きな大スケベジジイ!)


ちょめジイは知っているくせに私の口からそれを言わせようとしている。

どんな変態プレイなのかわからないがちょめジイのペースにハマってはだめだ。


(いずれにせよ、これはぱんつとしてカウントせんからな)

「ちょめちょめ」 (何でよ。せっかくとびっきりのカワイ子ちゃんのみらいぱんつを盗ったのよ。おまけしてくれてもいいじゃない)

(ダメジャ。こんなものはいらんのじゃ)

「ちょめちょめ」 (ちょめジイはぱんつを見に着けている姿を見ていないから、そんなことが言えるのよ。ぱんつを見に着けている姿を見たら絶対に興奮するわ)


いや、興奮するだけじゃないかもしれない。

鼻血を出し過ぎて出血多量で死ぬ可能性もある。

とかくちょめジイはじいさんだから血の気が少ないのだ。

まあ、でも、そうなったらそうなったで私は都合がいい。

もしかしたら私の呪いも解けるかもしれないからだ。


(ワシはぱんつが好きなのじゃ。けっしてぱんつを履いている姿を見るのが好きなわけじゃない)

「ちょめちょめ」 (嘘だー。前に”カワイ子ちゃんがぱんつを履いている姿”を撮影して来いって言ったじゃない)

(あれはあれ。これはこれじゃ)

「ちょめちょめ」 (何よ、それ。とんだ食わせ者だわ)


本当は”カワイ子ちゃんがぱんつを履いている姿”を見たいのだ。

ちょめジイもいちおう男子に入るから考えていることはみんな同じだ。

どこにいても”ぱんつ姿のカワイ子ちゃんを見たい”と思っている。

それが男子のスケベ本能だから仕方のないことなのだけど。

ただ、ひとつ言えることがある。

それは”ぱんつは男子を喜ばせるために履いているものじゃない”ことだ。

だから、迂闊に女子のスカートを覗こうと言う軽率な行動はしてはいけない。

立派な犯罪になるからみんなは真似しないでね。


(何をひとりでブツブツ言っておるのじゃ)

「ちょめちょめ」 (こっちのことよ。それよりみらいぱんつもカウントに入れてよね)

(ダメじゃ。こんなものはぱんつじゃないからカウントに入れない)

「ちょめちょめ」 (えーっ、そんな~ぁ。とびっきりのカワイ子ちゃんのぱんつなのよ)

(それでもダメじゃ)

「ちょめちょめ」 (ケチ)


これじゃあ、何のためにセレーネに疑われて手に入れたのかわからない。

みらいぱんつを見ればちょめジイも喜ぶだろうと思っていたのに心外だ。


「ちょめちょめ」 (やっぱ年寄りは頭の中まで年寄りなのね)

(聞えておるぞ)

「ちょめちょめ」 (いいよ、聞えていたって)

(それより、今度同じことをしたら罰を与えるからな)

「ちょめちょめ」 (ちょっと、ルールを変更しないでよ)

(お主は楽をしようとしたがるからな。人間、苦労しなければ幸せになれんのじゃ)


その言葉をそっくりちょめジイに返したい気分だ。

今の私はちょめ虫だから人間ではないのだから関係ない。

それよりも私を使って”カワイ子ちゃんのぱんつ”を手に入れようとしているちょめジイにこそ罰が当たるべきなのだ。

神様はきっとどこかで見ているはずだから、いつかちょめジイに罰が下るはずだ。

そうでなければ私は浮かばれない。


「ちょめちょめ」 (それならカワイ子ちゃんがどこにいるのか情報をちょうだいよ)

(それはお主がすることじゃ。それじゃあな)

「ちょめちょめ」 (ちょっと。もう、いつも勝手なんだから)


都合が悪くなると念話を切るのがちょめジイの悪い癖だ。

それでいて用がある時は所かまわず念話をつないで来る。

すっかり私はちょめジイの都合のいい女に成り下がっているのだ。


「ちょめちょめ」 (せっかく気分がよかったのに台無しだわ。おやつをたらふく食べて憂さを晴らそうっと)


私は勢いよく扉を閉めて隣のルイの部屋へ向かった。


「ちょめちょめ」 (ミク。おやつちょうだい)

「あっ、ちょめ太郎。もう、終わったの?」

「ちょめちょめ」 (何とかね。けど、いいのが出来たわ)

「そんなことを言って、また”ぱんつの歌”じゃないの」

「ちょめちょめ」 (馬鹿にしないでよ。私だってしょっちゅうぱんつのことを考えてるわけじゃないのよ)

「ごめんごめん」


ミクは少し悪びれたようすで謝って来た。


いくら私が”カワイ子ちゃんのぱんつ”を集めているからと言って四六時中ぱんつのことを考えているわけじゃない。

私は仕方なくぱんつを集めているのであって趣味で集めているのではないのだ。

四六時中ぱんつのことを考えているのはこの世界でちょめジイだけだろう。


「ちょめちょめ」 (それより、おやつは?)

「ないよ」

「ちょめちょめ」 (えーっ!また、ないの)

「ちょめ太郎、集中したいって言っていたからルイと半分こにしちゃった」

「ちょめちょめ」 (そんなぁぁぁぁぁ~ぁ)


ショボボーン。


私は目にいっぱい涙を溜めながらガックリ肩を落とした。

私が席を外しているとミクはおやつをとっておいてくれない。

いっつもルイにあげて全部食べて私の分はなくなってしまう。

それは悪気があってしていることじゃないから強くも言えない。

その場にいなかった私のせいなのだ。


「ちょめ太郎、ごめんね」

「ちょめちょめ」 (いいわよ。明日のおやつまで我慢するから)

「美味しかったよ、おやつ」

「ちょめちょめ」 (今日の15時のおやつは何だったの?)

「プリンアラモードだったよ」

「ちょめちょめ」 (プリンアラモード~ぉ)


頭を使った後に欲しいおやつだ。

消費してしまったエネルギーを補給するには甘いものがいい。

よくスポーツをした後なんかも体が甘いものを欲するからだ。

今の私には糖分がないから頭もボケボケしている。


「でも、あと2時間で夕飯になるから大丈夫だよ」

「ちょめちょめ」 (今日の夕飯は何なの?)

「チャーシューメンだよ」

「ちょめちょめ」 (エーッ!この世界にもラーメンがあるの!)


長い間、日本から離れているから日本を感じさせるものは嬉しい。

ラーメンなんて言えば”ザ、日本”とも言うべき料理だ。

日本を飛び出して世界に広まっているので”ラーメン”が共通語になっている。

ある意味、ラーメンは日本人の心と言っても過言でないメジャーな料理なのだ。


「ちょめ太郎、ラーメンを知っているんだ。ラーメンは最近、王都で流行り出した料理なんだよ」

「ちょめちょめ」 (最近なのね。他の国から入って来たのかしら)

「王都に行けば屋台が出ていて、外でラーメンが食べられるんだ。とっても美味しいんだよ」

「ちょめちょめ」 (まるで日本ね。もしかしたらラーメンは次元を越えるのかもしれない)


そんなバカなことを考えながら今度、王都へ行った時に食べに行こうと思っている。

日本人ならラーメンを食べずにはいられないからだ。

まだ、何系のラーメンかわらからなけど楽しみだ。

できればガッツリ食べられる次郎系が欲しいところだ。


「いいな~。私も外でラーメンを食べてみたい」

「それはできないね。ルイは外に出ちゃいけないから」

「えーっ、少しだけでもいいでしょ」

「ダメよ。病気が悪化しちゃうかもしれないから」


外に出れないルイからしたら屋台で食べるラーメンは夢のようだろう。

せっかくだから本物を味合わせてみたいけれどこればかりはできない。

もし、ルイの病気が悪化してしまったら命に関わることになるからだ。

だから、どんなにルイがお願いをしても言うことを聞くことはできない、


「ちょめちょめ」 (夕飯になるまで他のことをしよう)

「そうだね。トランプでもしようか」


私とミクはルイの関心を逸らすためトランプをすることにした。


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