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第百十一話 はじめての路上ライブ

私が伝えた内容を聞いてルイミン達が言葉を失う。

5歳の女の子が病気のせいで太陽の光を浴びれないからだ。

生まれてこのかた昼間に外に出たことはない。

だから、外の世界がどんなものかも知らないのだ。


「かわいそう」

「あんまりよ。神様は居眠りでもしているの」

「外の世界を知らないなんて考えられないわ」

「ちょめちょめ」 (でも、それが事実なの)


だからと言ってルイが悲観的になっている訳じゃない。

外に出れなくても毎日元気いっぱいに遊んでいるのだ。

おまけにアイドルになりたいと言う夢を持っている。

叶う訳じゃないけれど夢を持つことは大切だ。

夢があるかないかで気持ちも変わって来る。

たとえそれが叶わぬ夢でも元気でいられる。


「私達よりもアイドルになる素質があるのにもったいない」

「そうだね。私なんかがアイドルになってちゃいけないって思うわ」

「それは間違いよ。人には持って生まれた役割があるの。そのルイって子は病気だけれど、きっとそれも何かしら意味があるからなのよ」

「どんな意味よ。病気なんて誰もなりたくないよ」

「そこまではわからないけれど意味がないって思いたくないわ」


セレーネが難しそうなことを言うのでルイミン達も考え込んでしまう。


セレーネが言うように人には持って生まれた役割があるとするならばルイが病気を患っているのにも意味がある。

それは自分の自由は奪われるけれどみんなの心を動かしているってことだ。

人の心を動かすなんてそっとのことじゃできない。

それをやってのけているのだからルイの病気は悪いことじゃないのだ。


そう考えると少しだけ救われたような気持になる。


「ちょめちょめ」 (セレーネの言う通りよ。ルイは病気に負けるような子じゃないもの)

「ちょめ助がそう言うんだからそうなんだね」

「病気って聞くとマイナスイメージを持っちゃうけれど違うのね」

「なら、私達も頑張らないといけませんわ。ルイちゃんのためにも」


”ぱんつの歌”を歌うのが恥ずかしいとごねている場合じゃない。

アイドルなんだから例え”ぱんつの歌”でも歌いこなさなければならない。

それがルイミン達の役割なのだ。


「そうだ。アイドル活動で集めた資金をルイちゃんに渡しませんか?」

「義援金ってやつ?」

「そんな大それたものではありませんけれどルイちゃんのために使いたいです」

「それはいいアイデアですわ。ただでさえ難病を患ているのだから支援金があった方が役立つですしね」

「ちょめちょめ」 (なんていい奴らなの。見ず知らずのルイのためにそこまで考えてくれるなんて)


きっとがっぽりと稼げるはずだ。

なんて言ったってアイドルのリリナとレイヤーのセレーネがいるのだから。

リリナファンもすごいけれどセレーネファンはもっとすごいのだ。

その二つのファンが集まるのだから想像以上になるだろう。


「なら、次の路上ライブはチャリティーコンサートにしましょう」

「路上ライブで集まったお金をすべてルイちゃんに差し上げるのですね」

「賛成。なんだかやる気が出て来たわ」

「ちょめちょめ」 (私があれこれ言うよりもルイミン達の任せた方がいいわね)


私なんか”恋するいちごぱんつ”が売れることしか考えてなかった。

作詞作曲を手掛けたから印税がたんまりと入るからだ。

印税生活も夢みながらチャリンチャリンとお金を数えていた。

もちろんその収入の一部はルイの治療代にしようと思っていた。

嘘じゃないよ。


「それじゃあはじめにファンの方に向けて告知をしましょう」

「たくさんのファンに集まてもらいたいからPRしないといけませんしね」

「なら、私が噂を広めて来る」

「待ってください、ルイミンちゃん。それだけでは不十分です。ポスターを作りましょう」

「ポスターだけじゃなくチラシもあった方がいいですわ」

「ポスターにチラシか……となると」

「ちょめちょめ」 (ちょっと、その目は何よ。みんなして私を見つめないで)


ルイミン達がアイデア出しをしていると不意に私を見た。

何かを訴えかけて来るような目で全く視線を逸らさない。


「ちょめ助はプロデューサーなんだからポスターぐらい用意できるよね」

「ちょめちょめ」 (そう簡単に言わないで。私は業務用プリンターじゃないのよ)

「ポスターのデザインは私達が考えるのでちょめ助くんは仕上げをお願いします」

「印刷をするのは私が知っている方に頼むことにしますわ。ファンの中に印刷会社の人がいましたからね」

「ちょめちょめ」 (セレーネは想像以上に顔が広いみたいね。レイヤーって人脈が豊富なのね)


それよりもセレーネのファン層は大人世代が多いことに驚きだ。

アイドルと違って入りやすいからスケベおやじ達が集まるのだろう。

おやじにもなるとスケベなことが恥ずかしくないから露骨になるのだ。

きっと撮影したセレーネの写真を見ながらエッチなことをしているはずだ。


「なら、私がポスターのデザインをしますわ」

「印刷の手配は私がします。ちょめ助くんがポスターの仕上げをお願いしますね」

「なら、私は?」

「ルイミンちゃんは口コミで情報を広めてください」

「それなら得意。私に任せてよ」

「出来上がったポスターはスタッフの人達の手を借りて配りましょう」

「なんだか面白そうなことになるような気がする」


気がするだけではなく実際はすごいことになるだろう。

リリナやセレーネファン以外も集まるだろうから会場はすごくなるはずだ。

だけど、その分儲かるから大歓迎であることには間違いがない。


私達は、それぞれの役割が決まったとこでさっそく準備に取り掛かった。


ポスターは思いのほかすぐに完成した。

リリナがアイドル活動時代から手作りしていたからだ。

私が仕上げることになっていたけれどほとんどやることはなかった。


その後でセレーネに頼んで知り合いの印刷会社で印刷してもらった。

全部で1000部ほど刷り上がった。


最後はスタッフ総出でポスターを貼る作業だ。

リリナのスタッフが20人、セレーネのスタッフが10人だ。

レイヤーの方がスタッフが多いかと思っていたが違っていた。

ほとんどのことはレイヤー自信が行うからだと言う。


総勢30名のスタッフに私とルイミンとリリナとセレーネが加わる。

全部で1000部もあるから一人当たり約30枚弱の計算だ。

被るのは無駄になるので路地ごとに担当を決めてポスター貼りをした。


「じゃあ、ちょめ助。そっちは任せたよ」

「ちょめちょめ」 (こんなのプロデューサーがすることじゃないわ)

「仕方ないじゃん。人手が少ないんだから」

「ちょめちょめ」 (アルバイトでも雇って貼らせておけばいいのよ)

「そんな無駄なお金なんてないよ。コストが高くなったら利益も減っちゃうから」

「ちょめちょめ」 (まあ、今は無名のグループだから仕方ないわね。だけど、いずれ世界に名がとどろくアイドルグループにしてあげるわ)


なんて言ったって”アニ☆プラ”にちなんだ名前をつけたのだから。

”アニ☆プラ”が有名になるのが先か”ファニ☆プラ”が有名になるのが先かの勝負になる。

圧倒的に”アニ☆プラ”の方が優勢だけれど私の手腕でひっくり返してあげればいいのだ。


「じゃあね。終わったら音楽室に集合だよ」

「ちょめちょめ」 (わかったよ)


ルイミンの担当は隣の路地なので私と別れて現場に向かった。


「ちょめちょめ」 (さてと。ポスター貼りでもはじめるか)


ポスター貼りは適当にやっていてもダメだ。

より目立たせるためにポスターと対比するような壁を選ばないといけない。

ポスターの基調がピンク色だから寒色系もしくはダーク系の壁がちょうどいい。

しかし、どこを見渡しても寒色系の壁は見当たらなかったがダーク系の壁は見つかった。


「ちょめちょめ」 (この壁なら対比効果でポスターが目立つわ)


遠目で見ても壁に穴が開いているように見えるから目立つ。

例えるなら日に焼けた場所とそうでない場所のような感じだ。


「ちょめちょめ」 (さすがに寒色系の壁はないわね)


石造りの建物は基調が灰色だし、木造りの建物はベージュが基調だ。

まれにレンガ造りの建物もあるがポスターと同じ系統の色だから目立たない。

そう言う場合はポスターを並べて3枚貼ると言う荒業に出た。

こうすればいやがおうでもポスターが目に止まる。

ようは道行く人の目に止まるようにすればいいのだ。


おかげで効率よくポスターが減って行った。


「ちょめちょめ」 (終わったー。私にかかれば楽勝ね)

「ちょっとちょめ助。ズルしちゃダメじゃない。同じところに3枚もポスターを貼って」

「ちょめちょめ」 (これはズルじゃないわ。こうした方が目立つのよ)

「確かに目立つけどさ。もっと広範囲に貼らないと意味がないよ」

「ちょめちょめ」 (チッチッチ。これだから素人は困るのよね。ポスターは目立ってナンボなの。広範囲に貼っても目立たなければ意味がないわ)

「ふ~ん、そう言うものなんだ。初めて知った。さすがはプロデューサーだね」

「ちょめちょめ」 (もっと褒めて)

「調子に乗らない」


私の提案した方法でルイミンも効率よくポスターを貼った。

おかげでものの30分ほどで全てのポスターを貼り終えた。


「あとはこのポスターを見た人が路上ライブに集まってくれるのを待つだけだね」

「ちょめちょめ」 (それより、口コミの方は大丈夫なの?)

「私の情報網を甘く見ないでよ。同じ推し活仲間から情報は広がっているわ」

「ちょめちょめ」 (なら、問題はなさそうね)


恐らく推し活仲間ってのも女子が多いのだろう。

とかく女子はお喋りが好きだから瞬く間に情報を拡散させる。

ネットがなくてもリアルの拡散力も凄いから問題ない。

こうしておばさんと言う土台は若い頃から醸成されるのだ。


「さて、学院に戻ったら歌の練習をしなくっちゃ」

「ちょめちょめ」 (デビュー曲なんだからきっちり練習をするのよ)

「わかってるって」

「ちょめちょめ」 (ようやく”ぱんつの歌”も受け入れるようになって来たわね)


2週間後の土曜日が路上ライブの日だから気合が入っているのだろう。

私も”ファニ☆プラ”のプロデューサーとして路上ライブの準備をしないといけない。

やることは応援グッズの制作だけれど通訳がいないと進まないからミクに応援を頼む予定だ。


「ちょめちょめ」 (ルイミン。私、予定があるのでこれで行くね)

「予定って。歌の練習は?」

「ちょめちょめ」 (もう、私の指導を入れなくても問題ないわ。ガイドボーカルの通りに歌えばいいの)

「なら、ちょめ助は何をするの?」

「ちょめちょめ」 (それはあとでのお楽しみよ。じゃあね)

「ちょっと、ちょめ助~ぇ」


私はルイミンと強引にさよならをしてミクの家まで戻った。

そして予定通りミクに理由を話して協力してもらった。


あまり時間がないから作るのは写真入りの団扇だけだ。

前もってルイミン達の写真は撮っておいたからそれを使う。

後は制作会社に持ち込んで団扇を作ってもらうだけだ。

あいにくセレーネの顔が効いたのでスムーズに制作は進んだ。

おかげで500個ほどの写真入り団扇を制作することができた。





ポスターや口コミの効果もあってか当日はずごい賑わいだった。

圧倒的にリリナファンとセレーネファンが大多数を占めていたがお初の人も多い。

残念ながらその中にはルイミンのファンはいなかった。


「ちょめちょめ」 (ルイミン、落ち込むことはないわよ。誰でもはじめなんてこんなもんだから)

「別に気にしてないよ。それに推し活部の仲間は応援に来てくれているし」


そう言ってルイミンが指差した方を見ると推し活部らしきメンバーの姿が見えた。

みんな同じピンク色の法被を着て私達が作った応援団扇を持っていたのですぐにわかった。


「ちょめちょめ」 (いい仲間を持ったわね)

「えっへん」


私も現実世界で推し活をしていた時は仲間がいた。

同じ”ななブー”推しの人とは話が合うのでお喋りしているだけで楽しかったのを覚えている。

今は異世界にいるから”ななブー”に会いに行けないけれどネットで繋がっているから寂しくはない。

以前に稼いだ時に”ななブー”と二人っきりでお話しできる権利をかけた抽選が当たったおかげだ。


「ちょめちょめ」 (”ななブー”を垂らし込んで連絡先を教えてもらうんだから)

「ちょめ助、ひとりで何を言っているのよ」

「ちょめちょめ」 (気にしないで、こっちのことだから。それより準備はいいの?そろそろはじまるんじゃない)

「あっ、忘れれた。私も出演するんだった」

「ちょめちょめ」 (もう、ルイミンも主役なんだから忘れないでよね)

「なら、また後でね」


ルイミンは慌てながらリリナ達のいる控え室へ駆けて行く。

まだ衣裳に着替えてもいないし、メイクもまだできていない。

あと20分もあるから大丈夫だと思うけれど心配だ。


「ちょめちょめ」 (ルイミンは舞台慣れしていないからやらかすかもしれない)


転んだり、歌詞を間違えたりするぐらいに抑えていてほしい。

そのぐらいのレベルならばルイミンの愛嬌ですませることができる。

おまけに”ドジっ子”と言うブランドを獲得できる可能性もあるのだ。


「ちょめちょめ」 (今のところルイミンには何のキャラクター性がないからね。このステージでどんなキャラクター性がつくのか楽しみだ)


私の予想だと”アニ☆プラ”の”まいチュウ”と同じでお笑い担当が濃厚だ。

リリナが清純派、セレーネが色気だから残っているのはお笑いぐらいだ。

たとえお笑い担当でも確固たる地位を築いているから侮れない。

アイドルはカワイイやキレイだけでは不十分なのだ。


それから会場の様子を見ながら時間になるのを待った。


私も一応関係者だからステージの舞台裏で待機だ。

ステージ裏ではアイドル部のスタッフ達が準備に取り掛かっている。

照明はどうかとか、音響機器はどうかとか最終確認をしていた。


すると、そこへメイクを終えたルイミン達がステージ衣装を着てやって来た。


「どう、会場の様子は?」

「ちょめちょめ」 (みんな待っているわよ)

「すごいお客さんです。こんなのはじめてです」

「ファンが集まることはわかっていましたけれど、これほどとは驚きですわ」


リリナやセレーネも経験したことのないステージになるようだ。

王都中から路上ライブを観たい人達が集まっているからすごい。

これほど集まるならもっと応援グッズを制作しておくべきだった。

そうすればがっぽりと儲けることができたはずだ。


「ちょめちょめ」 (これは今後の課題ね)

「もう、ちょめ助。またひとり言を言っている」

「ちょめちょめ」 (気にしない、気にしない。それより時間でしょう)

「そうだった」


ここから先は私にできることはない。

ルイミン達のステージを見守るだけだ。


「それでは気合をいれますわよ」

「ルイミンちゃんも手を重ねてください」

「こう?」


セレーネが音頭をとるとリリナもそれに合わせて手を重ねる。

ルイミンのリリナに急かされて手を重ねるとお互いの顔を見た。


「それではリリナさん、お願いしますわ」

「このステージは絶対に成功させるよ。セレーネさんもルイミンさんもいいですか。最高のステージにましょう!」

「「しょーっ!」」


リリナが音頭をとって叫ぶとセレーネとルイミンも声をあげて気合を入れた。


「ちょめちょめ」 (ああっ、いいわ。青春をしているって感じがして)


きっと”ななブー”達もステージ裏ではこんな感じなのだろう。

ファンと言う立場では絶対に見れないシーンだから貴重だ。

今度、舞台裏を撮影してPVに組み込めばファンにウケるだろう。


「ちょめちょめ」 (グフフフ。またまたお金の匂いがして来たわ)


私がひとりそんな妄想を描いている間にルイミン達はステージに上がっていた。


「ワ―、ワー」

「キャー、キャー」


会場に集まっていたファン達はルイミン達に黄色い声援を送る。

そのほとんどがリリナとセレーネに対するものだった。


「L・O・V・E、ラブリーリリナ!」

「愛して愛して愛してリリナ!」

「ちょめちょめ」 (相変わらずリリナのファンは80’しているわね。応援の仕方が昭和だわ)


そもそも親衛隊なるものが出来たのも80’頃からだ。

その頃は純粋にアイドルを守ると言う精神が強かった。

だから、親衛隊に入隊する時も入隊試験があったぐらいだ。

昭和は努力や根性などのキーワードが踊っていたからそうなのだろう。


だけど令和となった今はそんなものは存在しない。

推したいアイドルの推し活をすることがブームになっている。

その推し活に男も女もないのだ。


それとは対照的にセレーネのファンは写真撮影に夢中になっていた。


「ちょめちょめ」 (これはこれでアリなのだろうね)


推し活の新しいスタイルかもしれない。

推しを応援しないで写真撮影に夢中になるなんて。

レイヤーはアイドルとは違って写真撮影されるのがメインになるからだ。


「ちょめちょめ」 (でも、これで歌がはじまったらどうするのかしら)


歌がはじまっても写真撮影に夢中になっていたら醍醐味が損なわれる。

リリナファン達のようにいっしょになって盛り上がらないと楽しくないのだ。

路上ライブのなのだからファン達もはち切れた方がいい想い出になる。


その脇でルイミンの推し活部の仲間達が団扇を振ってルイミンを応援していた。


「ちょめちょめ」 (圧倒的に少数派だけれど心強いわね)


”ナコリリ”の路上ライブの時のように応援してくれる人が誰もいなかったら心が折れるだろう。

あの神経の図太いナコルでさえも、心を折られて”ナコリリ”を辞めてしまったぐらいなのだ。


現実世界でもコロナになって無観客ライブをするアーティストが多くなったが正直虚しかっただろう。

いつもは一緒になって盛り上がってくれるファンがいないから熱も入らなかったかもしれない。

やっぱりライブはアーティストとファンがいっしょに盛り上がる方がいいのだ。


すると、リリナのマイクをとって挨拶をはじめた。


「私たち、”ファニー☆プラネット”です。”ファニ☆プラ”って呼んでください」

「ちょめちょめ」 (う~ん、挨拶はもうちょっと手を加えた方がよさそうね)


”Shiziu”のように”We see you。私たち、Shiziuです”みたいなものの方がいい。

その方が普通に挨拶をするよりもテンポよくリズム感があるからグループ名も言いやすい。

おまけにグループ名も覚えてもらいやすくなるから一石二鳥なのだ。


「ちょめちょめ」 (後で考えておいた方がいいわ)


私がそんなことを考えている間にリリナはグループ名の紹介をはじめる。


「”ファニー☆プラネット”は訳すと”面白い惑星”です。私達のキャラクターが個性的だからプロデューサーがつけてくれた名前なんです」

「私がレイヤーで、リリナさんがアイドル。そしてルイミンさんはファンです。このメンバーでアイドルグループを組むなんて普通は考えませんわよね。でも、そこが面白いのですわ」

「まだ凸凹トリオですけれど最後まで応援して行ってくださいね!」


リリナとセレーネは舞台慣れしているのでマイクパフォーマンスをしている。

それに比べて圧倒的に経験のないルイミンはマイクを持ったまま黙っていた。

まあ、はじめてのステージで流暢に喋ることの方が難しい。

だから、今はとにかく”恋するいちごぱんつ”を歌い上げることだけに集中していてほしい。


「え?なに?聞えませんよ。もっともっと」

「L・O・V・E、ラブリーリリナ!」

「リリナ―っ、最高!」

「揃ってない。ちゃんとみんなの想いを届けてください」

「「リリナの歌声でメロメロにしてください!」」

「はーい。して差し上げますわ」


私の知らない間にリリナのマイクパフォーマンスも成長していた。

ファン達に想いを届けさせるなんて今までになかった演出だ。

何度も路上ライブを経験しているうちにレベルアップをしたのだろう。


マイクパフォーマンスでどれだけファンを煽れるかがカギになる。

ファン達の感情を高揚させることができれば歌の時も盛り上がる。

やっぱり路上ライブはファンと一体になってこそナンボのものなのだ。


「ちょめちょめ」 (にしてもセレーネファンときたら、まだ写真撮影に夢中になっているわ)


まあ、どう楽しもうとファンの勝手だから強くは言えないけれど路上ライブの時ぐらい撮影は控えてもらいたい。

ステージ上のセレーネの瞬間を撮影したい気持ちは痛いほどわかる。

”橋木環奈”のように刹那に魅せた表情が天使のようだったこともあるぐらいなのだ。

それがきっかけで”橋木環奈”は有名になった。

だから、何がきっかけでポッと出るのかはわからないのだ。


「ちょめちょめ」 (少数派のルイミンの推し活部の仲間が一番お手本のようだわ)


私がプロデュースした応援団扇も持っているし、お揃いの法被を着ているしで一体感がある。

後は応援タオルとか、ペンライトなんかを制作すれば応援グッズは完璧に揃う。


「ちょめちょめ」 (この分野でたんまり稼げそうだから、今後の課題にしておこう)


私が頭の中でお金の勘定をしているとリリナは曲紹介をはじめていた。


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