第百六話 最後のひとり
ようやくリリナの悩みが解決できたことにホッとする。
あとはリリナとセレーネでアイドル活動をはじめればいいのだ。
ただ、パッと見もリリナとセレーネはアンバランスだ。
カワイイとセクシーと言う異なる要素を持っているからだ。
これだと衣裳を決める時に問題になってくる。
カワイイを重視してリリナスタイルにするとセレーネが似合わなくなる。
かと言ってセクシーを重視してセレーネスタイルに合わせるとリリナのイメージが崩れてしまう。
その間を取って中間で攻めるのがいいけれどどっちつかずになってメインがなくなってしまうのだ。
それに二人だけだと”ナコリリ”が連想されてしまう。
「ちょめちょめ」 (う~ん。やっぱり二人じゃしっくり来ないわ)
「えーっ、今決めたばかりじゃん。まだ物足りないの?」
「ちょめちょめ」 (グループは何よりもバランスが大事なの。ひとりだけ飛び抜けていてもダメ。今のリリナとセレーネは個性がぶつかり合っているのよ)
「なら、どっちらかに合せるの」
「ちょめちょめ」 (それもダメ。どちらかに寄せたらもう一方の個性が死んじゃうからね)
「なら、どうするの?」
現時点で明確な答えはない。
リリナとセレーネの個性を壊して合わせることはできない。
二人の個性を壊さずにバランスをとるのが大事だ。
それには新たにメンバーを追加する必要がある。
グループも二人よりも三人の方が力強い。
「ちょめちょめ」 (決めたわ。新しいメンバーを加えよう)
「また、新しいメンバーを探すの?」
「ちょめちょめ」 (そうよ。でも、もう決めているわ)
「え?誰?」
「ちょめちょめ」 (ルイミン、あなたよ)
「えーっ、私」
私の答えを聞いてルイミンは驚いた顔を浮かべる。
薄々気づいていたようだから驚きは小さかった。
「ちょめちょめ」 (ルイミンは十分にポテンシャルを持っているのよ)
「だから、何度も言っているじゃん。私はリリナちゃんを応援することを使命だと思っているんだって」
「ちょめちょめ」 (それはわかっている。その上でのお願いよ。ルイミン以外の候補はいないの)
「ちょめ助のお願いでもきけないよ。私はリリナちゃんの推し活をしている一ファンでしかないのだから」
ルイミンの決意は固いようだ。
私が頼んでも1ミリも受け入れようとはしない。
それはファンとしてのプライドなのだろう。
ただ、私の方としてもここで諦める訳にはいかない。
せっかくセレーネの獲得に成功したのだからルイミンも獲得したい。
でなければリリナのアイドル活動は再開しないのだから。
「ちょめちょめ」 (これはみんなの総意なのよ。私もリリナもセレーネもルイミンを必要としているのよ)
「そんなこと言われたって」
私達に囲まれてルイミンは逃げ場を失う。
後はルイミンが首を縦に振るだけなのだ。
すると、リリナがルイミンの足元に膝をついて土下座をした。
「ルイミンちゃん、私達とアイドル活動をしてください。ルイミンちゃんがいれば百人力です。いっしょにアイドル活動をして待っているファン達を喜ばせてください」
「リリナちゃん、そんなことをしないでよ」
「いいえ。ルイミンちゃんがOKしてくれるまで諦めません。ルイミンちゃんといっしょにステージに立ちたいです。お願いします、この通りです」
「リリナちゃん……」
リリナの真摯な姿を見てルイミンは何も言い返せなくなる。
こうまでしてリリナがお願いして来ているのだから無下にはできない。
だけど、ルイミンが首を縦に振ることはアイドル活動をすることを認めることだ。
リリナの一ファンでいたいルイミンにとっては難しい選択でもある。
アイドルになれば誰よりも近くでリリナを見ていられる。
それはファンであった頃には考えられなかったことだ。
しかし、神聖なアイドル像を壊してしまうことにもなる。
ただのファンであるルイミンがアイドルになることで、それまで抱いていたイメージが崩れ落ちるのだ。
「ルイミンさんも気づいているのではないですか?自分の使命を」
「私の使命はリリナちゃんを応援することです。それ以上もそれ以下もないです」
「応援するなら同じステージに立っていてもできるはずです」
「それはそうですけれど……」
「ステージに立てばリリナさんを応援するだけでなく力になってあげることもできるのですよ。それはファンとしたらこの上ない喜びではないですか」
「……」
「沈黙がルイミンさんの正直な答えですね」
セレーネの絶妙な誘導にルイミンも言葉をなくしてしまう。
肯定も否定もしないことはルイミンの中で何が正しいのかわかっているからだ。
ただ、言葉にしてしまえば引き返せないから返事をできずにいるのだ。
私も”ななブー”のファンだからルイミンの気持はよくわかる。
ファンでいれば推しを応援することはできるがいつももらってばかりだ。
推しが問題を抱えていても元気をなくしていても応援することしかできない。
それで解決できる問題ならそれでもいいがそうでない時は辛い。
推しが苦しんでいるのに応援することしかできない自分の無力さを覚える。
もし、寄り添てあげることができたのなら苦しんでいる推しを救えただろう。
そんなことを何度も経験して来たかルイミンの迷いが理解できるのだ。
だから、ルイミンには前に進んでもらいたい。
これが私の正直な気持だ。
「ちょめちょめ」 (ルイミン、新しい道へステップアップしよう)
「ちょめ助」
「ちょめちょめ」 (ルイミンが進む未来は絶望じゃないのよ。明るい未来しか待っていないの。さあ、怖がらずに勇気を出して)
「わかったよ。だけど、条件がある」
私達の説得でルイミンはようやくOKを出してくれる。
新しい未来へのチケットを手に取ったのだ。
待っているのは明るい未来だけだ。
私は大手をあげて喜ぼうとした時にふと我に返った。
それはルイミンが交換条件を出して来たからだ。
「ちょめちょめ」 (条件って何よ?)
「ちょめ助が私達をプロデュースして」
「ちょめちょめ」 (えーっ、私が?)
「ちょめ助がOKしてくれるなら私もOKをするよ」
よりにもよって私にプロデュースをお願いしてなんて予想もしていなかった。
確かに”アニ☆プラ”のファンを長いところやっていたからアイドルに精通している。
だけど、プロデュースするなんてはじめてのことなので考え込んでしまう。
おまけにプロデューサーの手腕次第で人気が左右するから責任は重大なのだ。
「ちょめ助くん、OKしてもよろしいのではないですか」
「ちょめちょめ」 (そう簡単に言わないで。プロデューサーになるなんてアイドルになるより難しいのよ。すぐには答えられないわ)
「ちょめ助さんならできますよ。私達のプロデューサーになってください」
「ちょめ助、どうする?みんなはちょめ助にお願いしているよ」
「……」 (……)
投げたブーメランがこう言う形で帰って来るなんて予想外だ。
できることなら避けて通りたかったけれど私に選択肢はない。
もし、私がOKしなかったらルイミンもOKをしないからだ。
私はしばらく考え込んで答えを決めた。
「ちょめちょめ」 (わかったよ。あなた達のプロデューサーになるわ)
「なら、私もアイドルになるわ」
「これできまりのようですわね」
「よかった。ルイミンちゃん、よろしくお願いします」
と言うことで私はプロデューサーにルイミンはアイドルになった。
「ちょめちょめ」 (さっそくだけれどグループ名を決めるわよ。名前がないとはじまらないからね)
「グループ名か。どんなのがいいんだろう」
「それなら皆さんの名前の頭文字をとるのはいかがですか?」
「名前の頭文字ね。となるとリリナのリリ、ルイミンのルイ、そして私、セレーネのセレと言うことになるわね」
「リリルイセレ……ルイリリセレ……セレリリルイ……いまいち」
リリナが言う通りお互いの名前の頭文字を並べてみるがしっくりこない。
6文字と文字数が多いこともあるが、そもそも語呂が悪いのだ。
”ナコリリ”の時のように短くて語呂がよければ問題はないが。
ただ、私としては”ナコリリ”の失敗が連想されるので避けたい。
同じ轍を踏むわけじゃないが1度あったことは2度あるのだ。
「ちょめちょめ」 (それぞれの名前の頭文字をとるのは縁起が悪いわ。却下よ)
「簡単だと思ったけれど以外に難しいんだね」
「でしたらそれぞれの名前の頭文字を英数字に変えるのはいかがです?」
「リリナのL、ルイミンのR、セレーネのSで”LRS”ですか」
「ちょめちょめ」 (”LRS”なんてパソコンの用語のように聞えるわ。ダメね)
アイドルグループなのだからもっと愛嬌のある名前の方がいい。
自分達のイメージと合っていてファン達からも覚えやすいことが肝心だ。
でないと人気も出ないだろうし、ファンも集まらなくなってしまう。
「なら、カワイイとセクシーを合わせた”カワセク”ってのはどう?」
「カワセクですか。何だかしっくりこない」
「もっと名前に意味を持たせた方がよろしくて」
「意味か……私達、アイドルのタマゴだから”ドルたま”ってのは?」
「ちょめちょめ」 (”ドルたま”なんてパチンコそのものじゃない。却下よ)
「なら、ちょめ助は何かいい名前はあるの?」
そうルイミンに質問されて私も困ってしまう。
アイドルのグループ名なんて考えたことがないからだ。
しかし、ここで何も答えがないとルイミン達に馬鹿にされてしまう。
プロデューサーなのだからちゃんと答えないといけない。
私はふと頭にひらめいたアイデアをルイミン達に聞かせた。
「ちょめちょめ」 (”アニ☆プラ”の人気にあやかって”ファニー☆プラネット”にするわ)
「”ファニー☆プラネット”?」
「”ファニ☆プラ”ですか。いいんじゃないですか」
「面白い惑星って意味ですわね」
「ちょめちょめ」 (あなた達は個性的なキャラクターが集まっているから面白いと言う意味の”ファニー”にしたの。どうかしら?)
「私は賛成。”ファニ☆プラ”好きになりそう」
「私も同じ意見です」
「もちろん私も賛成ですわ」
「ちょめちょめ」 (なら、”ファニー☆プラネット”に決まりよ。今日からあなた達は”ファニ☆プラ”と名乗りなさい)
我ながらいいアイデアが降って来たと思う。
”アニ☆プラ”にあやかって”ファニ☆プラ”なんて人気が出そうだ。
音が”アニ☆プラ”を被ってしまうがこの世界にはいないので問題はない。
ルイミン達もグループ名が決まったので喜んでいた。
「それじゃあ、練習のスケジュールを決めよう」
「まずは練習をしないといけませんからね」
「ごめんなさい。私は土曜日にならないと時間がとれないわ」
「土曜か」
「仕方ないですわ。そう言うお約束ですものね」
せっかくグループ名が決まったけれどスケジュールが合わない。
セレーネはコスプレ部とアイドル部の兼任だから時間が限られているのだ。
約束では週3でアイドル部の活動をすることになっている。
なので、みんなで合せて練習ができるのは週3回だけだ。
「じゃあ、リリナちゃん。明日から歌の練習をいっしょにやろう」
「はい。たぶんルイミンちゃんならすぐに歌えますわ」
「なら、私は今度の土曜日に合流しますわ」
ルイミン達はスケジュールを決めると解散をした。
路上ライブをできるのは早くても1ヶ月後だ。
セレーネの歌の仕上がり次第で前後するだろう。
「なら、今日はもう解散だね」
「そうですね。私、さっそく歌の練習の台本を仕上げます」
「なら、私は後片付けをして帰りますわ」
みんなそれぞれにやることがあるので、その場で解散した。
「ちょめちょめ」 (ちょっと、ルイミン。私に付き合ってくれる?)
「えーっ、帰って応援グッズを作ろうと思っていたのに」
「ちょめちょめ」 (それよりも大切なことよ。あと、セレーネにも付き添ってもらうわ)
「セレーネも。何をしようとしているの?」
「ちょめちょめ」 (それはおいおい話すわ。セレーネを呼んで来て)
「わかったよ」
私がルイミンを呼び止めたのには理由がある。
それは”ファニ☆プラ”の衣裳を作るためだ。
せっかくアイドルとして始動するのだから新しい衣裳があった方がいい。
セレーネにはアドバイザーとして同行を求めたのだ。
「セレーネを呼んで来たよ」
「私に何か御用かしら」
「ちょめちょめ」 (これから”ファニ☆プラ”の衣裳をオーダーしに行くわよ)
「”ファニ☆プラ”の衣裳を作るの?」
「ちょめちょめ」 (今までの衣裳を着ていても仕方ないでしょう。新しく生まれ変わったのだから衣裳も新調するのよ)
「それで私を呼んだのですか」
呑み込みの早いセレーネは自分の役割を理解した。
「ちょめちょめ」 (さっそくだけどセレーネ、衣裳をオーダーしているお店に案内して)
「セレーネの行きつけの服飾店に案内してだって」
「わかりましたわ。顔馴染ですからツケもできますわ」
「ちょめちょめ」 (今は軍資金がないから後払いにしてもらう予定よ)
「お金がないなら、バイトをしないといけないね」
それはあとあと考えることにして私達はさっそくセレーネの行きつけの店に向かった。
セレーネの行きつけの服飾店は王都にあるコスプレ専門店だった。
さまざまなキャラクターの衣裳が並んでいて目移りしてしまう。
カワイイ衣裳からセクシーな衣裳まで何でも揃っていて目を楽しませてくれる。
見ているだけでもお腹がいっぱいになりそうなぐらい品数が豊富だった。
「これカワイイ。あっ、これも」
「ちょめちょめ」 (ちょっと、ルイミン。私達はコスプレをしに来たんじゃないわよ)
「ごめんごめん。あまりにカワイイ衣裳ばかりだったからさ」
そんなルイミンの気持ちもよくわかる。
私でさえ並んでいる衣裳に目を奪われるくらいからだ。
アイドルの衣裳とは違ってコンセプトがあるからデザインがしっかりしている。
どんなキャラクターなのかすぐに連想できるほどクオリティが高かった。
「それでどんな衣裳にしようと決めているのですか?」
「ちょめちょめ」 (可愛らしさとセクシーさを兼ね備えた衣裳よ)
「カワイイとセクシーか。何か難しそうだな」
「可愛らしさとセクシーならこんな感じでしょうか?」
セレーネは並べてあったコスプレ衣裳を手に取って見せて来る。
その衣裳はAラインのフリルがいっぱいついたスカートと肩を出した上着で構成されている。
いわゆるアイドルが着るような可愛らしさたっぷりの衣裳だ。
セクシーさは短めのスカートの丈で表現されていた。
「それカワイイ」
「ちょめちょめ」 (う~ん、ちょっとセクシーさが足りないわね)
「そうかな。これがいいと思うけど」
「ちょめちょめ」 (リリナやルイミンが着るならいいけどセレーネはちょっと合わないかな)
もっと大人のセクシーさがあった方が衣裳のバランスがとれる。
すると、セレーネはセクシーさを備えた衣裳をチョイスした。
「こちらの衣裳はどうでしょう。かなりセクシーさが出ていると思いますけど」
セレーネが次に持って来た衣裳はタイトなチャイナドレス風の衣裳だ。
スリットが腰のあたりまであるからかなりセクシーさが増している。
おまけに体のラインがしっかりと出るからセレーネが着たらエロいだろう。
「エロいね」
「ちょめちょめ」 (う~ん。セクシーになったのはいいけれど、今度はリリナやルイミンに合わないわ)
リリナやルイミンは幼く見えるからその衣裳を着ると違和感を覚える。
やっぱりセレーネのような大人女子でないと着こなせない衣裳でもある。
ただ、セクシーさの路線はかなりいい感じになっていた。
「ちょめちょめ」 (さっきのとこれの間をとったような衣裳はない)
「ちょめ助は、これとそれの間をとった衣裳が欲しいって」
「となるとこちらでしょうかね」
次にセレーネが持って来た衣裳はカワイさとセクシーさを持った衣裳だった。
スカートはフリフリのAラインで前が大きく空いていて後ろの裾が長くなっている。
ちょうど燕尾服の上着のような感じになっている。
上着はチューブトップでかなり露出が増えている衣裳だ。
だけどフリルがいっぱいついているので可愛らしさもある。
「エロカワイイね」
「ちょめちょめ」 (これなら問題はないわ。これをオーダーするわ)
「要望に応えられたようでよかったですわ」
「ちょめちょめ」 (あとはカラー決めね)
「色を決めるの?」
「ちょめちょめ」 (誰がどの色を担当しているのか決めるとファンも覚えやすいのよ)
候補としてはリリナが白またはピンク、ルイミンが黄色、またはオレンジ、セレーネが黒または紫だ。
だけど白、黄色、黒の組み合わせだと標識のようになってしまうからなしだ。
となると自ずとピンク、オレンジ、紫と言う担当になる。
「ちょめちょめ」 (リリナがピンク、ルイミンがオレンジ、セレーネが紫よ)
「リリナちゃんがピンクで私がオレンジ、セレーネが紫ね」
「キレイな色を選びましたね。さすがです」
私の絶妙なセンスにセレーネが感心した。
「ちょめちょめ」 (それじゃあ、衣裳のカラーリングを決めるわよ)
「このままでいいんじゃない」
「ちょめちょめ」 (ダメよ。それじゃあ何のために色を決めたのかわからないじゃない)
「決めた色を衣裳に反映させるのですね」
私達はコスプレショップのデザイナーと相談しながら衣裳のカラーリングを決めた。
衣裳の持ち味は殺さずにそれぞれのメインカラーを表現するような配色にした。
おかげで予想していたよりもカワイさとセクシーさを合わせて持った衣裳になった。
「それではこれでお願いいたしますわ」
「承知しました」
「いつ頃、仕上がりますか?」
「1週間もあれば仕上がりますよ」
「なら、1週間後、受け取りに来ますわ。お代はその時にいっしょに支払います」
「かしこまりました」
セレーネはコスプレショップの店員に衣裳をオーダーしてから店を出た。
「1週間じゃ、お金を貯められないよ」
「私が代わりに立て替えておきますから安心してください」
「ちょめちょめ」 (さすがセレーネね。太っ腹)
きっとコスプレ活動で稼いだお金がたんまりあるのだろう。
まあ、トップレイヤーなのだからがっぽり稼いでいるはずだ。
もしかしたらリリナ以上の稼ぎ柱かもしれない。
「それでは私はこれで。この後でやることがありますので」
「ありがとう、セレーネ。土曜日を楽しみにしているよ」
「ちょめちょめ」 (またね)
コスプレショップの前で別れるとセレーネは足早に帰路についた。
「グループ名も決まったし、衣裳も決まったし、もうやることはないね」
「ちょめちょめ」 (まだまだやることはあるわよ)
「何をするのよ?」
「ちょめちょめ」 (物販用のグッズを作ることよ。これがあるかないかで収益が変わるから注意しないといけないわ)
路上ライブのチケット代だけでは十分に稼げられない。
場所代や警備費、会場設営の費用にほとんどが消えてしまう。
なのでアイドル活動をする人達はグッズを販売して儲けている。
裏を返せば物販がアイドル活動の軍資金を創出しているのだ。
それは現実世界でも同じでアイドル達は物販に力を入れている。
中には写真撮影に法外な値段をつけているアイドルもいるくらいだ。
「で、どんなグッズを作ればいいの?」
「ちょめちょめ」 (まずはタオルね)
「タオル?」
「ちょめちょめ」 (ライブで振り回したりできるから必須のアイテムよ)
他にも写真入りの団扇やペンライトなんかも応援グッズとして販売できる。
自分達で手作りするファンもいるけれどグッズがあれば手間を省ける。
なので狙い目の商品になっている。
「他には?」
「ちょめちょめ」 (”ポムポムボール”も外せないわね)
「”ポムポムボール”って?」
「ちょめちょめ」 (アンコールの曲を決める時にファンがステージに投げるボールよ。柔らかいからぶつかっても怪我をしなくてすむわ)
”ポムポムボール”は”アニ☆プラ”のライブで取り入れられている。
アンコール曲を決める時に誰に歌って欲しいのかファンが決める仕組みだ。
より多くのポイントを稼いだ人がセンターの楽曲が選ばれる。
なのでファン達は自分の推しているアイドルのボールを投げるのだ。
”アニ☆プラ”の”ポムポムボール”は守護している動物のカタチをしている。
おまけに中にチップが入っているから自動的にカウントされる仕組みになっている。
なのでつぶさに集計結果が電光掲示板に表示されるのだ。
ルイミン達は守護している動物がないので色分けすることになる。
リリナはピンクのボール、ルイミンはオレンジのボール、セレーネは紫のボールと言った具合にだ。
「何だか面白そうだね」
「ちょめちょめ」 (面白いってレベルじゃないわ。アンコールの時は会場が盛り上がるのよ)
「へぇ~、ならぜひ作ろうね」
「ちょめちょめ」 (もちろんよ。他にもいいグッズがないか二人で決めよう)
私とルイミンは心行くまで”ファニ☆プラ”のグッズ造りのアイデアを出し合った。
その後でグッズを作ってくれるショップへ行ってグッズの手配をすませた。
とうめん軍資金はないので後払いにしてもらうことも忘れない。
路上ライブが成功すればすぐに資金を回収できるだろう。
私の思惑はそんな甘いビジョンを描いていた。