表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/161

第百四話 えっちなみらいぱんつ②

コスプレイベントが終わるとファン達はゾロゾロと帰って行く。

ただ、余韻に浸りたいファンはその場に居残って味わっていた。

もちろん私達も用があるので居残るファン達といっしょにいた。


レイヤーは楽屋へ戻り帰りの支度をはじめる。

スタッフ達はイベントの後片付けに取り掛かっていた。


「ちょめちょめ」 (今が頃合いね。ルイミン、行くわよ)

「いきなり訪ねて大丈夫かな」

「ちょめちょめ」 (ちょっと話をするだけだから問題ないわよ)

「だといいけどね」


私とルイミンはあと片付けをしているスタッフを塗って楽屋へと向かう。


楽屋は公園の隅にあってテントを張っているだけの簡易なものだ。

公園に御大層な楽屋なんて設置できないから簡略化したのだろう。

ただし、テントには幌が貼られているので外からは見えない造りになっている。


「ちょめちょめ」 (テントは3つあるけどどれかしら)

「一番立派なテントだと思うよ」

「ちょめちょめ」 (なら、あの一番大きいテントね)


私とルイミンは3つあるテントのうち一番大きいテントへ向かった。


「ちょめちょめ」 (ちょっと覗いてみるわ)


私はテントの入口の扉を少し開けて中を覗いた。


「ちょめちょめ」 (いや~ん、恥ずかしい)


テントの中には5人ほどのレイヤーが着替え中だった。


「ちょめ助、真面目にやってよ」

「ちょめちょめ」 (ごめん。女子のお着替えを見るとつい興奮しちゃってさ)

「ちょめ助は変態だったのね」

「ちょめちょめ」 (変態って言わないでよ。これもちょめジイのせいなんだから)


だらしのない顔をしている私を見て呆れたようにルイミンがこぼした。


これもそれもちょめジイのせいだから全く私に責任はない。

人から変態と言われようが言われまいが私には関係ないのだ。

だから、ルイミンから変態扱いされても傷つかない。


「で、セレーネさんはいたの?」

「ちょめちょめ」 (う~ん。この中にはいないようね)

「おっかしいな。セレーネさん部長だから一番大きなテントを使っていると思ったんだけどな」

「ちょめちょめ」 (順当に考えればその通りね)


一番偉い人が一番大きいテントを使うのはごく自然なことだ。

ただし、大所帯の場合はそれに限ったことではない。

大きいテントを他のレイヤーに譲って自分は個室にする場合もある。

そう考えるとセレーネがいるテントは一番小さいテントだと予想できる。


私は辺りを見回して一番小さいテントを見つけた。


「ちょめちょめ」 (ルイミン、あそこの小さいテントを確めるわよ。恐らくセレーネがいるはずだわ)

「えーっ、一番小さいテントだよ。セレーネさんいるかな」

「ちょめちょめ」 (よく見なさい。あのテントだけスタッフ達が出入りしているでしょう。中にセレーネがいるからよ)

「そう言われてみればそうかも」

「ちょめちょめ」 (ルイミン、手ぶらだと怪しまれるから何か荷物を持ってスタッフに偽装しなさい)

「荷物って何がいいかな」

「ちょめちょめ」 (その辺に置いてあるものでいいわよ)

「じゃあ、この段ボール箱にしておくわ」


ルイミンはテントの脇に置いてあった段ボール箱を持ち上げる。

中には余ったポスターやチラシが少し入っていた。


偽装したおかげでスタッフに見られても疑わることはなかった。

荷物を持ってウロウロしていればスタッフにしか見えないからだ。


私とルイミンは一番小さなテントの前に来ると入口の扉を少し開けて顔をツッコんだ。


「ちょめちょめ」 (いた。セレーネだわ)

「ひと息ついて水を飲んでるね」

「ちょめちょめ」 (お着替えが覗けなかったのは残念だけど今がチャンスね)


あいにくテントの中にはセレーネだけで他のレイヤーやスタッフはいない。

これならばテントの中に入って行っても閉め出されることはないだろう。


「でもいいのかな。私達、部外者よ」

「ちょめちょめ」 (だから、わざわざ偽装したんでしょう。ブツブツ文句を言っていないで行くわよ)

「なら、ちょめ助だけ行ってよ。私、顔を覚えられるのは嫌だから」

「ちょめちょめ」 (何を言い出すの。私は”ちょめちょめ”としか話せないのよ。誰が通訳するの)

「フィーリングで伝えればいいじゃん」

「ちょめちょめ」 (そんな芸当はルイミンとじゃないとできないわ)


この期に来てルイミンが自信がなさそうにしながらしり込みしはじめる。

それっぽい理由をつけてセレーネの楽屋を訪ねることを拒否して来た。


「ちょめちょめ」 (いいから行くわよ)

「気が進まないな」

「ちょめちょめ」 (これもリリナちゃんのためなの。腹を括りなさい)

「わかったよ。いっしょに行くよ」


そんなやり取りをセレーネの楽屋の前で繰り広げているとスタッフに声をかけられた。


「ちょっと、そんなところでサボってないでこっちを手伝ってよ。ただでさえ、人が少ないんだから」

「ちょめちょめ」 (ルイミンのせいで見つかっちゃったじゃない。適当なことを言って追い返して)

「ごめん。これからこの荷物をセレーネさんのところへ届ける途中なの」

「その持っている荷物ってポスターの余りでしょう。それはもういらないものなのよ」

「だって。どうしよう」

「ちょめちょめ」 (とりあえず逃げるわよ)


私は退却の指示を出してルイミンといっしょに慌てて逃げ出す。


「あなた達、ちょっと待ちなさい」


そう言いながらスタッフは私達の後を追い駆けて来た。


それからテントの周りをグルグル回りながら追い駆けて来るスタッフを振り切る。

あいにく私達の足の方が早かったので何とかスタッフをまくことができた。


「ちょめちょめ」 (ハアハアハア。何とか逃げられたわね)

「ハアハアハア。もう、捕まったらどうするつもりだったのよ」

「ちょめちょめ」 (その時はその時よ。強硬手段に出て逃亡するわ)

「ハッキリ言うと無策と言うことね。ちょめ助らしい」


最後の言葉が引っかかったが逃げ切れたのでよしとする。

そして再びセレーネの楽屋の前へ行きこっそりと中を覗いた。


「ちょめちょめ」 (中にはセレーネしかいないわ。今なら大丈夫よ)

「あっ、さっきのスタッフが来た」

「ちょめちょめ」 (ルイミン、早くこっちへ来て)


私とルイミンはセレーネの楽屋に飛び込んで身を隠す。

そしてテントの隙間から外にいるスタッフの様子を確めた。


スタッフは辺りをキョロキョロ見回しているだけで私達には気づいていない。

しばらく様子を眺めていると諦めて向こうの方へ駆けて行った。


「ちょめちょめ」 (ふぅー、何と助かったわ)

「危なかったね」


すると、背後に人の気配がしたと思ったら誰かに声をかけられる。


「あら、お客様なんて珍しい」


振り返るとセレーネが不思議そうな顔をして立っていた。


「ちょめちょめ」 (いやん、見つかっちゃった)

「ちょめ助、ふざけている場合じゃないでしょう」

「ちょめちょめ」 (ごめん、つい)


私はテレビで見たことのあるお笑い芸人のギャグを無意識にしていた。

これもお笑い怪獣と呼ばれるお笑い芸人のせいだ。


そんなことより――。


「ちょめちょめ」 (ルイミン、通訳をして)

「いいよ」

「ちょめちょめ」 (私達はセレーネに用があって来たの。少しいい?)

「私達はセレーネさんに話があって来たんです。少しお時間いいですか?」

「いいわよ。そこの席に腰をかけてちょうだい」


とりあえずセレーネのOKがとれたので私達は席に着いた。

すると、セレーネは淹れていたコーヒーを私達の前に置いた。


「ありがとうございます」

「ちょめちょめ」 (意外と気が利くのね)

「ちょめ助、お礼を言わないとダメだよ」

「ちょめちょめ」 (いいのよ。私達はお客様なんだから)


私達のやりとりを見ていたセレーネは疑問を投げかけて来た。


「あなた、この子の言葉がわかるの?」

「わかると言うか何となくそんなことを言っているんじゃないかって感じるだけです」

「すごい能力ね。それだけこの子と心を通じ合えている証拠ね」

「そんなに褒められるようなことじゃないですよ」

「ちょめちょめ」 (ルイミン、こう言う時は素直に受け入れるべきよ。褒められたのだから)


セレーネから褒められて嬉しくなったルイミンは謙遜してしまう。

私が言う通り素直に受け入れれば正直な人だと思われただろう。

ただ、ルイミンのように謙遜しても謙虚な人だと思われるから問題はない。


「私は推し活部のルイミンて言います。この子はお友達のちょめ助」

「ルイミンちゃんとちょめ助くんね。私はコスプレ部のセレーネよ」


そう自己紹介するとセレーネが手を差し伸べ来たのでルイミンは軽く握手をした。


「ちょめちょめ」 (単刀直入に。セレーネ、アイドルにならない?)

「何か言われたみたいだけれどなんて言ったのかしら?」

「セレーネさん、アイドルになりませんか?」

「アイドル?」


ルイミンの言葉を聞いてセレーネはきょとんとした顔を浮かべる。

一瞬、何を言われているのか理解できなかったのだろう。

それも無理はない。

セレーネは既にコスプレ部をやっているからだ。


部活の兼任は禁止されていないがやっている人はいない。

それは部活動が忙し過ぎて他の部活動に手が回らないからだ。

二つの部活動を平行してやることはなかなか難しいことなのだ。


「ちょめちょめ」 (どう?セレーネなら十分にアイドルになれるポテンシャルがあるわ)

「セレーネさんはキレイだからアイドルになれる素質があります」

「そうは言われてもね。私、コスプレ部の部長をやっているからアイドルはできないわ」


セレーネの答えも予想していた通りの返事だった。


すぐにOKをもらえるとははじめから思っていない。

諦めずに食い下がって説得する必要があるのだ。


「ちょめちょめ」 (アイドルもコスプレと同じようなものよ。カワイイ衣裳を着て歌って踊って)

「コスプレとアイドルって似てると思いませんか?カワイイ衣裳を着るところなんてすごく似ていると思うんです」

「確かにその点だけをクローズアップしたラ同じね。だけど、レイヤーはキャラクターを演じなければならないわ。その点がアイドルと違うところね」


ルイミンが余計なことを口走ったのでセレーネの機嫌が少し悪くなった。


セレーネとしてはアイドルのようにただカワイイ衣裳を着ている訳じゃない。

ちゃんとレイヤーとしてのプライドを持ってキャラクターを演じている。

レイヤーにとってどれだけキャラクターに近づけるかがカギなのだ。

そのためなら何だってするのがレイヤー魂だ。


ただ、私としてもここで食い下がる訳にはいかない。

ぜひともセレーネをスカウトしてアイドルの道へ引きずり込むのだ。


「ちょめちょめ」 (今のは失礼な発言だったわね。ごめんなさい)

「別にコスプレを否定するつもりじゃなかったんです」

「わかっているわ。ルイミンちゃんはそんな酷いことを言う人じゃないもの。もちろん、ちょめ助くんもね」


セレーネは見た目の通り精神的にも大人のようだ。

言動や振る舞いにも品があって落ち着いている。

ムカつくようなことを言われても感情を表に出さない。

それができるのは常に冷静でいるからだろう。

ますますセレーネが欲しくなった。


私は作戦を変更してリリナちゃんのことを話すことにした。


「ちょめちょめ」 (ルイミン、リリナちゃんのことを話して)

「アイドル部にリリナちゃんって子がいるんですけれど、最近、グループを解散してひとりっきりになってしまったんです。そのことがショックでリリナちゃん、アイドル活動を止めてしまったんです。きっとリリナちゃんは寂しいのだと思います。だから、私、リリナちゃんの力になってあげたいんです」

「理由はわかったわ。それで私を誘ったのね」


セレーネはルイミンの話してくれたことを信じてくれた。

同時にルイミンが心優しい子だとわかったようだ。

ルイミンを見つめる目も柔らかなものに変わっていた。


「ちょめちょめ」 (アイドルになってリリナちゃんを助けてくれない)

「お願いです、セレーネさん。アイドルになってください」

「事情もルイミンちゃんの気持ちもわかったわ。だけど、コスプレ部を辞めることはできないわ。トップレイヤーになることは私の夢だから」

「ちょめちょめ」 (今でも十分にトップじゃない。コスプレ部の部長もやっているだから満足でしょう)

「今でもすごく人気があると思うんですけれどそれじゃ足りないんですか」

「そうよ。頂点に立つと言うことはそう簡単にはいかないの。ルイミンちゃんも推し活をしているのならばわかるでしょう」


何事もその道を極めるにはただならぬ努力をしなければならない。

ましてや頂点に立つと言うならばなおのことを身を削る必要がある。

努力に努力を重ねて、さらに運を味方につけてはじめて頂点に立てる。

その後もトップを維持するために努力をし続けなければならないのだ。


そんなセレーネの気持ちや考えもわかるが諦めることはできない。

何としてでもセレーネを説得して首を縦に振らせなければ終われない。


「ちょめちょめ」 (人助けと自分の夢とどっちを取るつもり)

「お願いです。リリナちゃんを助けるために協力してください」

「悪いけれど他をあたってちょうだい。私には難し過ぎる選択だわ」

「ちょめちょめ」 (それでいいの?困っている人に目を背けてトップレイヤーになれると思っているの?甘いわよ)

「ちょめ助、それも訳すの?」

「ちょめちょめ」 (あたり前じゃない。ここで粘らないとだめなのよ)


私のツッコんだ言葉を聞いてルイミンは訳すのをためらう。

あまりに失礼な言葉だからセレーネに伝えられないのだろう。

だけど、リリナちゃんを助けるためならば壁を乗り越えなければならない。

たとえセレーネを否定したとしても貫き通すのだ。


「ルイミンちゃん、構わないわ。ちょめ助くんは何を言っているの」

「リリナちゃんを見捨ててまでレイヤーになったところでトップになんて立てないって」

「……それもそうかもしれないわね。他人を犠牲にして頂点に立っても報われないわね」


私の言葉をルイミンを通して知ったセレーネはその言葉の意味を受け止める。

そして難しそうな顔をしながらしばらくの間、考え込んだ。


「ちょめちょめ」 (あと、もう一息で落とせるわ。ルイミン、ぬかるんじゃないわよ)

「本当にこんなのでいいのかな」

「ちょめちょめ」 (いいのよ。これもそれもリリナちゃんを助けるためなのよ。割り切りなさい)

「リリナちゃんのため……リリナちゃんのためなのよね」


ルイミンは自分に言い聞かせるように何度もつぶやいていた。

その間にセレーネの考えがまとまって返事をした。


「わかったわ。アイドルになってあげる」

「ちょめちょめ」 (その答えを待っていたわ。ありがとう)

「だけど、条件があるわ」

「条件?」

「コスプレとアイドルを兼任することよ。それが飲めるならアイドルになるわ」


今度はセレーネの方から選択肢を投げかけて来た。

先にも言った通り部活動を平行してやることは難しい。

ひとつの部活動でさえ忙しいのにさらにもう一つなど普通じゃあえり得ない。

恐らくコスプレ部とアイドル部を平行してもどちらかが犠牲になることは明らかだ。

だからと言ってセレーネが提示した条件を突っぱねることはできない。

せっかくいい返事を引き出せたのに無視するのは勿体ないからだ。


私はすぐに返事を出さずにしばしの間、考え込んだ。


アイドル部とコスプレ部を平行することは実に困難だ。

どちらかをとればどちらかがおろそかになることは必然。

かと言ってここでセレーネを諦めることはできない。

セレーネをアイドルにできればこの上ない力になるからだ。

カワイイとセクシーの融合で相乗効果を産んでパワーアップできるだろう。

だから、多少ハードルは高くても条件を飲むことが肝要だ。


「ちょめちょめ」 (わかったわ。その条件を飲むわ)

「ちょめ助は条件を飲むそうです」

「なら、交渉成立ね。いっしょに頑張りましょう」


ルイミンは私の代わりに手を差し出すとセレーネと固い握手を交わした。


「ちょめ助、本当にこれでよかったの」

「ちょめちょめ」 (とりあえず今はこれでいいのよ)


後はセレーネが実際にアイドルを体験してから考えればいい。

私の思惑ではセレーネにアイドルを理解させて軌道修正する予定だ。

いかにしてアイドルが優れた存在なのかを知ればアイドルに気持ちが靡く。

そうしたら外堀を埋めて逃げられないようにすればいい。

セレーネはアイドルになるべくしてなったように演出するのだ。

そうすることでアイドルに運命を感じるはずだ。


ただ、心配になるのはセレーネの体の方だ。

今まで以上に体力を使うからすぐに疲労してしまうだろう。

それが原因でアイドル活動が停止したら元もこうもない。

だから、セレーネにはアイドル活動をする日とコスプレ活動をする日を分けてもらうつもりだ。


「ちょめちょめ」 (それじゃあ、さっそくスケジュールを立てるわよ)

「スケジュール?」

「ちょめちょめ」 (アイドル活動とコスプレ活動を両立させるためよ)

「私の方としてはアイドル活動は週1にしておきたいわ」

「ちょめちょめ」 (そんなのダメよ。アイドル活動も一日じゃ成り立たないのよ)

「バランスが悪いって、ちょめ助は言っています」

「でもね。コスプレ活動もイベントが詰まっているからね」


セレーネの返事を聞いて私はすぐに切り捨てた。


アイドル活動とコスプレ活動を6対1にするなんて不公平だ。

せめて間をとって3対4にしなければならない。

アイドル活動をはじめるにも練習が必要だからだ。

週1ペースではじめたらいつ路上ライブできるのかわからない。


「ちょめちょめ」 (もっと歩み寄ってちょうだい。でないと同時進行はできないわ)

「もう少し何とかなりませんか?」

「そうね……なら、週2でどうかしら」

「ちょめちょめ」 (もう一声)

「もう少し勉強をしてください」

「仕方ないわね。週3にしておくわ。だけど、これ以上は譲れないからね」


何とか粘ったおかげでアイドル活動をする日を週3にできた。

もちろん残りの4日はコスプレ活動をする日にあてられる。

既に決まっている予定は変更できないので開始は2週間後からだ。


「ちょめちょめ」 (これで交渉成立ね)

「けど、セレーネさんがお休みする日がないよ」

「私のことは気にしないで。これぐらい何ともないから。それにどうしてもダメってときはコスプレ活動を休むから」

「ちょめちょめ」 (そうしてもらえると助かるわ)


何かに夢中になっている人は走り続けられる。

走り続けることが楽しいから疲れなど知らないからだろう。

それはセレーネも同じでレイヤーをしている時が幸せなのだ。


私も”ななブー”の推し活をしている時が一番幸せだ。

何時間でも夢中になれるから疲れなど忘れている。

気がついたら5kg痩せていてもラッキーと思えるくらい。


「ちょめちょめ」 (後はリリナちゃんと顔合わせね。これから空いている?)

「リリナちゃんと会わせたいのでお時間はありますか?」

「この後でみんなで反省会をするから、それが終われば大丈夫よ」

「ちょめちょめ」 (なら、私達は反省会が終わるまで待たせてもらうわ)

「ここで待っていてもいいですか?」

「いいわよ。後でスタッフに話しておくから」


外で待つのも嫌なので楽屋で待たせてもらうことにした。

セレーネがスタッフに話してくれれば問題はない。

堂々と楽屋でセレーネを待っていることができる。


私はテーブルの上に置いてあったお菓子を取った。


「ちょめ助、勝手に食べちゃダメだよ」

「ちょめちょめ」 (置いてあるからいいじゃない)

「それは頂ものだから食べてもいいわよ。私達だけじゃ食べきれないからね」


そう言いながらセレーネは衣裳を脱ぎはじめた。

どうやら着替えてから反省会をするようだ。


近未来を彷彿とさせる衣裳なので脱ぐと何か違和感を感じる。

それに合わせてメイクもカツラも着けているからだろう。


そして何気にセレーネに視線を向けるとパッと私の目が見開く。


「ちょめちょめ」 (何よ、あのぱんつ!あれはぱんつって言うの!)

「どうしたの、ちょめ助。いきなり大きな声を出して」

「ちょめちょめ」 (これが驚きをせずにはいられる!みらいのぱんつを見たのよ!)


私の視線はすっかりセレーネの履いていたぱんつに釘付けになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ