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第百一話 リリナのお悩み

「最近、リリナちゃんの様子がおかしいね」

「”ナコリリ”が解散してからみたいだし」

「もしかしてナコルとケンカでもしたのかな」

「あり得る。だっていきなり解散だもんね」

「きっとナコルに酷いことを言われたんだよ」

「ナコルはいじめっ子だからね」


遠くからクラスメイト達のお喋りが聞えて来る。

私は気づかぬふりをしながら窓の外を眺めていた。


「もう、アイドル活動を止めちゃうかな」

「ここ最近、ぜんぜんアイドル活動をしていないしね」

「アイドルが嫌になったのかもよ」

「アイドル部ってハードだもんね」

「毎日、遅くまで練習をして週末は路上ライブ。休む暇もないし」


普通の女子高生からしたら考えられないほどアイドル部のスケジュールは詰まっている。

それは応援してくれるファン達の期待に応えるために路上ライブのクオリティを高めているからだ。

それには日々の練習が欠かせない。


路上ライブは同じことの繰り返しだから余計に完成度を高めている。

グダグダにならないようにトップアイドルとしての質を磨く。

そうすることがトップアイドルの使命だと思っているのだ。


「ハードな上にナコルのいじめ。これは決定的ね」

「となるとリリナちゃんは他の部に移籍するのかな」

「リリナちゃんだったらコスプレ部がいいんじゃない」

「アイドル部もコスプレ部も親戚みたいなものだものね」

「持ち前のカワイさを存分に生かせるわ」


クラスメイト達は私がいるのにも関わらず好き勝手言っている。

別にナコルにいじめられた訳でもないし、コスプレ部に移籍しようとは思っていない。

ただ、今は考える時間が欲しいからアイドル部の活動を休止しているだけだ。


「でも、コスプレ部にはセレーネさんがいるよ」

「コスプレ部の部長であり絶対的な地位を築いている名レイヤーか」

「セレーネさんの色気の前ではリリナちゃんの可愛らしさも霞んで見えちゃう」

「やっぱ可愛らしさよりも色気の方が勝つのか」

「スケベな男子共は色気の方が好きだしね」


私は別に男子の気を引きたいからアイドルをしている訳じゃない。

たまたまアイドル部にスカウトされてはじめただけだ。

今ではトップアイドルになりたいと夢を抱いている。

やっぱりはじめた以上、トップを目指すのがあたり前だから。


「あ~ぁ、私もコスプレ部に入部しようかな」

「あなたじゃ無理よ。コスプレ部はキレイじゃないと入れないわよ」

「私ってそんなにもブス?」

「ブスもブス。豚のお尻みたいな顔をしているよ」

「ショック。自分では”最上級にカワイイ”と思っていたのに」


クラスメイト達のお喋りは横道にそれて私のことから離れて行く。

女子のお喋りはきまってそんなものだからお喋りさせておけばいい。


「でも、大丈夫じゃない?コスプレ部は書類選考だから写真さえカワイくしておけばいいわよ」

「それだと実際に会った時に”そうでもない女子”だと思われちゃうわ」

「写真は可愛いのに実際はそうでもないだなんて詐欺だもんね」

「やっぱ庶民は容姿の関係ない軽音楽部や絵画部なんかに入るのが妥当ね」

「あ~ぁ、私もカワイく生まれて来たかったな」


クラスメイト達はとりとめもない話をしている。

可愛らしさなんて本来、他人と比べるものじゃない。

いくら容姿がカワイくても性格が悪ければブスだからだ。

本当にカワイイと言うのは見た目も中身も可愛らしい女子のことを差す言葉だ。

だから誰にでもカワイくなれるチャンスはある。

そう思っているから世の中の女子は可愛くなろうとしている。

カワイくなれば自信もつくし、男子から声をかけてもらえる。

そうなることでいつも幸せを感じていられるのだ。


そんなクラスメイト達のお喋りを聞いていると予鈴が鳴った。


「もう、休み時間、終わりなの。早すぎる」

「次の授業は誰だっけ?」

「化学の湯水よ」

「えーっ、あの変態おやじなの。ヤダー」

「仕方ないじゃない。授業なんだから」


湯水先生は化学の先生で45歳の独身の男性教師だ。

先日の”ぱんつ消失事件”で変態であることが生徒達にバレた。

それ以来、湯水先生は変態ロリコンおやじのレッテルをはられて女子生徒から嫌われている。

私も声をかけられそうになった時は逃げ出してしまったぐらいだ。

やっぱり悪い評判の立っている先生とは仲良くしたくない。


「おい、お前ら。授業をはじめるぞ。さっさと席に着け」

「イヤー。湯水が教室に入って来たわ。犯される」

「何を馬鹿なことを言っているだ。言うことを聞かないと成績を下げるぞ」

「それってパワハラです。校長先生に言いつけますよ」

「やれるものならやってみろ。その代りエッチなお仕置きをするからな」

「開き直った中年オヤジは恐怖だわ」


そんな馬鹿なやり取りが終わると湯水先生は授業をはじめた。


湯水先生は校長先生からもいい評価をもらっていない。

”ぱんつ消失事件”のことが校長の耳にも入ったからだ。

ただ、長年に渡りセントヴィルテール女学院の化学の先生を続けて来た実績が首の皮をつないでいる。

おまけに労働基準法があることで校長もそうやすやすと湯水先生を解雇できないのだ。

恐らく湯水先生はこれからもセントヴィルテール女学院の化学の先生を続けて行くことだろう。


「よし、教科書の32ページを開け」


湯水先生は教科書に記載されていた化学反応の授業をはじめた。


難しい授業なのでクラスメイト達はちんぷんかんぷんな顔を浮かべている。

とかく女子は化学や物理が苦手だからテストでもあまりいい点が取れない。

なので補習を受ける生徒が多いのだ。

それでもわからない人は塾に通って勉強をしている。


私はとくに苦手意識は持っていないので話の内容を理解できた。

ただ、今は授業に集中できる気分ではないので教科書を立てて外を眺めていた。


私の悩みはナコルが”ナコリリ”を脱退してしまったことだ。

あの時は”応援する”と言ったけれどそんな気持ちは持っていない。

その場をとりつくろうため嘘を言っただけだ。


「何で引き止めなかったんだろう……私のバカ」


本当はナコルを脱退させたくはなかった。

はじめて友達ができたから放したくはなかったのだ。


私はこれまでひとりでアイドル活動を続けて来た。

もちろん協力してくれるスタッフとはいつでも一緒だった。

だけど友達と呼べる間柄ではなく、ただのスタッフだ。

だから、悩みや相談をしたことは全くない。

ただの仕事のパートナーとして接して来た。


応援してくれるファンもたくさんいた。

だが、ファン達は私を応援することしかできない。

私が悩んでいても落ち込んでいても関係ないのだ。

自分達が欲しい私を求めて来ただけだ。


だから私は常に孤独を感じていた。

何をするにもひとりでこなさないといけない。

おまけにアイドルだから弱みを見せてもいけない。

私はファンを元気にさせる存在だから強くないといけないのだ。


それが積り積もって私の大きな悩みとなっていた。


そんな時、ナコルが来ていっしょにアイドルをやりたいと言い出した。

正直、嬉しくて嬉しくて飛び上がりそうなぐらい喜んだ。

はじめて自分の悩みを打ち明けられる友達ができたからだ。

これからはひとりでアイドル活動を続けなくてよくなった。


”ナコリリ”と言うグループ名ができた時はとても嬉しかった。

自分の名前とナコルの名前が合わさっているからだ。

いつでもふたりで協力できるから心強くもあった。


”ナコリリ”としてはじめてファン達の前に立った時は興奮していた。

自分でも舞い上がっちゃってスケジュールを忘れるぐらいだった。

ナコルとふたりで新しいスタートを切れたことで未来が明るくなった。


だけど、喜んでいたのは私だけでナコルは思い悩んでいた。

集まってくれたファン達はナコルのことなど気にも留めていなかったからだ。

私の応援ができればいいと思っていたようでナコルは無視をしていた。

そのことがナコルの心を折ってしまい、ナコルは去って行ったのだ。


そして私はまたひとりになってしまった。


「ナコルちゃん……どこにいるの」


私は目を細めて遠くの空を見やりながらナコルの姿を想い描いた。


私にはナコルが必要だってことに後から気づいた。

離れてみてはじめてわかることがあるように気づいた時は遅いのだ。

恐らくナコルは私のところには戻って来ないだろう。

たとえ説得してもナコルは聞き入れてはくれない。


”卒業”と言う言葉が相応しいのだろうけれどあまりにも悲し過ぎる。


今の私の心は深い海に沈んだ物言わぬ貝のようだ。


「これからどうしよう……」


このままずっとアイドル活動を休止することはできない。

ファン達も待っているし、スタッフ達も待っているからだ。

だけど、今の気持ちのままではステージに立てない。

仮にステージに立ったとしてもファン達を元気にすることはできないだろう。


誰かほかに私の悩みを話せる相手がいれば少しは救われる。

この悩みはひとりで抱えておくにはあまりにも大きすぎるからだ。


ナコル以外の友達と言えばルイミンしかいない。

だけど、ルイミンは私のファンのひとりでもある。

だから、弱みを見せてはいけないと思っている。

ルイミンも他のファンと同じようにアイドルとしての私を待っているのだ。


「おい、リリナ。教科書33ページを読め」

「……」

「おい、リリナ。聞えているのか」

「あっ、は、はい」

「いくら勉強ができるからってな、授業はちゃんと受けろよ」

「すみません」


湯水先生に不意をつかれて私は慌てて教科書に視線を落す。

考えごとをしていたのでどこまで進んだのかすぐにはわからなかった。


そんな感じで放課後まで授業を受けた。





放課後――。


「リリナちゃんから誘ってもらえるなんて夢みたい」

「……」

「リリナちゃんは何する?私はおまかせコースにするよ」

「……」

「おまかせコースは1500円で3種類のミニケーキとドリンクを楽しめるお得なコースだよ」

「……」

「リリナちゃんはドリンクを何にする?私はカフェラテにするけど」

「……」

「リリナちゃん?聞いてる?」

「あっ、ごめんなさい。ちょっと考えごとをしていただけです」


結局、私はルイミンに頼ることにして喫茶店へ誘ったのだ。

ルイミンは私が誘ったのですごくテンションが高くなっている。

友達として喫茶店に誘ってくれるなんて夢のようなのだろう。


「リリナちゃん、最近変だよ。アイドル活動も休止しているし」

「ちょっとお勉強が忙しくて」

「リリナちゃんでもできないことがあるんだね」

「私ってそんな風に見えていたのですか」

「もちろんよ。だってリリナちゃんは私にとって女神様のような存在だからね」


そう言うルイミンの期待が私とルイミンとの間に壁を作っている。

私はルイミンと普通のお友達として接したいと思っているからだ。

でなければ応援してくれるファン達となんら変わりないのだ。


「私は女神様でも特別な存在でもありません。ただの普通の女子です」

「そんなことないよ。リリナちゃんは尊い存在でけっして汚してはいけない女子なの」

「ルイミンさんの目には私はそんな風に映っているんですか?」

「そうだよ。だって私、リリナちゃん推しだからね」

「そうですか……」


ルイミンの言葉を聞いて私は力なく大きなため息を吐いた。


ルイミンも他のファンと同じで私のことをアイドルとしてしか見ていない。

アイドルの前にひとりの女子なのに認めてくれないことは悲し過ぎる。

何のためにお友達になったのかわからない。


やっぱりルイミンは一ファンでしかないようだ。


「私はこれで失礼します」

「えっ、もう行くの。まだ、ケーキ食べてないじゃん」

「お腹いっぱいですから」

「リリナちゃん、私に話したいことがあるのよね。だから私を誘ったんでしょう」


その言葉を背中からかけられて私は足を止めた。


「私達、友達じゃん。悩みがあるなら話してよ。何でも聞くから」

「ルイミンさん……」

「そのルイミンさんってのは止めてよ。友達なんだからルイミンでいいよ」

「ルイミン……ちゃん」


私はルイミンの言葉に甘えてテーブルに戻る。

そしてルイミンと顔を合わせながらタイミングを計った。


「何でも話していいよ。最後まで聞いてあげるから」

「ありがとうございます」

「堅苦しいな。でも、それがリリナちゃんだもんね」

「実は私、悩んでいるんです」


私はルイミンに何に悩んでいるのか話して聞かせた。

ルイミンは話に割って入っては来ずに最後まで耳を傾けてくれた。


「そうだったんだ。私、ぜんぜん気づかなくてごめんね」

「ルイミンちゃんが謝ることじゃありません。みんな私が悪いんです」

「自分が悪いだなんて思っちゃダメだよ。リリナちゃんはひとりで頑張って来たんだから」

「けど、私はファンの皆さんに背を向けてアイドル活動を休止しています」

「仕方ないよ。心が折れている時は何も手につかないもの」


そのルイミンの言葉は凍りついていた私の心を温めてくれた。

はじめて自分以外の人が自分の気持に寄り沿ってくれたからだ。

それは温かくもあり、優しくて、春の柔らかな日差しのようだった。


「私、これからどうしたらいいのでしょうか」

「アイドル活動を続けるべきだよ。だって、リリナちゃんはアイドルなんだもん」

「でも、ステージに立てる自信がありません」

「何も考えちゃダメ。ステージに立ってファン達に歌声を届けて。そうすれば悩みは消えて行くはずだよ」


ルイミンの言う通りなのかもしれないが足がすくんでしまっている。

昔の輝いていた頃の自分には戻れないような気がしてならない。

だけど、その場から逃げ出す勇気も持ち合わせていない。

結局、私はどっちつかずの状態で身動きがとれないのだ。


「けど、ひとりでは怖いです」

「私はアイドルじゃないから応援することしかできない。けれど、いつもリリナちゃんの傍にいるよ。だから、元気を出して」

「ルイミンちゃん……」

「どんな時だって私達は友達なんだからね」


胸の中の悩みをルイミンに話したことで少しだけ気持ちが楽になった。

それは同時にルイミンのことを友達だと認めたことでもある。

ルイミンに話す前までは壁を作っていたけれど今は壊れている。

心と心をつなぎ合わせた訳じゃないけれどルイミンは友達だ。


「ありがとうございます」

「お礼を言われることじゃないよ。友達ならあたり前だもん」

「友達……そうですね、友達です」

「あっ、リリナちゃんが笑った。やっぱリリナちゃんは笑顔が似合うよ」


自分でも笑顔がなくなっていたことに気づかなかった。

このところずっと悩んでいたから顔をこわばらせていたのだろう。

けれど、ルイミンのおかげでいつもの自分を取り戻すことができた。


「お待ちどうさまです。おまかせコースのオリジナルケーキ3種盛りとドリンクのセットです」

「やっと来た。もう、お腹ペコペコ」

「それではごゆるりとお楽しみください」

「ありがとうございます」


ようやくウエイトレスが注文をしたおまかせコースの品を運んで来た。


お皿には一口サイズの色とりどりのオリジナルケーキが乗っている。

ひとつはイチゴのミルフィーユケーキで上に大きなイチゴが乗っている。

もうひとつは抹茶ケーキで抹茶クリームがスポンジから溢れ出ている。

最後のひとつはチーズケーキで表面が焦げていて香ばしい匂いがした。


「美味しそうだね」

「はい」

「どれから食べる?」

「う~ん。イチゴのミルフィーユかな」

「やっぱり。私もそう思っていたところ」

「同じですね」


私と意見が合うとルイミンは満面の笑みを浮かべる。

そして手づかみでイチゴをとるとそのまま口に放り込んだ。


「あま~い」

「イチゴの甘さが口いっぱい広がって後から酸味が追い駆けて来ますね」

「リリナちゃん、食レポうまい」

「普通に感想を言っただけです」

「フフフ」

「クスクス」


私とルイミンはお互いの顔を見合わせて声を出して笑った。


こんな風に友達と笑い合えるのはいつぶり以来だろうか。

普通にスイーツを食べているのだけど嬉しさが込み上げて来る。

それは幼少期の頃にあたり前のように感じていた時間そのものだ。


アイドル活動をする前は普通に友達がいた。

休憩時間にお喋りをして、お昼はいっしょにお弁当を食べて、女子寮までいっしょに帰って。

誰もがしているあたり前のことをあたり前のようにしていた。

だから、その時はそれが大切なことだなんて気づきもしなかった。

だけど、ひとりになってはじめて大切なことに気づかされた。


私は何気ない時間の中で常に幸せに包まれていたのだと。


「やっぱリリナちゃんの笑顔を見ると癒されるな」

「そんなことありませんよ」

「そんなことあるの。リリナちゃんの笑顔は天使だからね」

「それを言うならルイミンちゃんの笑顔も素敵です」

「えーっ、私なんてタコが驚いているような顔だよ」

「そんなことありません。ルイミンちゃんの笑顔はカワイイです」


けっして、お世辞を言っている訳じゃない。

ルイミンは自分が思っているよりもカワイイ女子なのだ。

アイドルになったらきっと人気が出ることだろう。


「リリナちゃんがそう言うなら私の笑顔はカワイイんだね」

「そうですよ。笑顔だけでなく、ルイミンちゃんはカワイイです」

「そんなこと言われたのはじめて。だけど、嬉しい」

「ルイミンちゃん、私とアイドル部をしませんか?」


私は思い切ってルイミンをアイドル部に誘ってみた。

ルイミンとならいっしょにやっていけると思ったからだ。

ルイミンは誰よりも私の近くで私を見て来た存在だ。

アイドルの何たるかもすべて把握している。

だから、即戦力になるのだ。


ただ、ルイミンはすぐに返事をしなかった。

しばらくの間、黙り込んで悩んでいた。


「私はアイドルにはなれないよ。だって、推し活部に入部しているし」

「アイドル部に編入すれば大丈夫ですよ」

「でも、私はアイドルをするよりもリリナちゃんを応援していた方が楽しいかも」

「もったいないですよ。そんなにカワイイのに」


部活を併用することは学院のルールで禁止されている。

だから、どちらかの部を選ばなければならない。

推し活部をして来たルイミンにとって推し活部は大切だ。

だけど、憧れの私といっしょにいられるのならアイドル部に編入した方がいい。

そうすれば誰よりも近い場所で私を見ていられるのだ。


「私はリリナちゃんの推し活をしていることに人生をかけているの。だから、アイドルにはなれないわ」

「推し活ならアイドル部に入ってからでもできますよ」

「ううん。私はリリナちゃんのファンのひとりとして他のファンと同じ場所から応援していたいの。私なんかが気安くリリナちゃんの傍にいたらリリナちゃんのブランドが傷ついちゃうからね。リリナちゃんはあくまで手の届かない天使でないといけないの。だから、応援していられるのよ」

「そうですか……残念です」


ルイミンとならいっしょに頑張れると思ったけれどダメだった。

ルイミンにはルイミンの考えがあって、それを捻じ曲げることができない。

たとえ私の近くにいられても心が満たされることはないのだ。


それが推し活をしているルイミンの埃なのだろう。


それから、私はルイミンとお茶を楽しんでからひとりで女子寮に戻った。


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