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第九十九話 反響

翌朝、私は誰よりも早く目が覚めた。

昨日、my tubeにアップした動画が気になっていたからだ。

私の予想ではチャンネル登録者数が300程度だと考えている。

はじめてだし、1日しか経っていないからそれほど伸びないだろう。


私はまだベッドでスヤスヤと寝息を立てているミクを揺さぶる。


「ちょめちょめ」 (ミク、朝よ。起きなさい)

「う~ん……ムニャムニャ」

「ちょめちょめ」 (何を寝ぼけているのよ。起きなさいってば)

「ふわぁ~。ちょめ太郎、もう少し寝かせて」

「ちょめちょめ」 (二度寝しない)

「う~ん、まだ眠いよ」


私は布団に潜り込もうとするミクの布団を引き剥がした。


「ちょめちょめ」 (もう、太陽さんは顔を出しているのよ。起きなさい)

「まだ暗いじゃん。もうちょっとだけ寝かせて」

「ちょめちょめ」 (ワガママを言わない。お姉ちゃんなんだからしっかりして)

「うぅ……寒い。お布団を返して」


必死の抵抗なのかミクはベッドの上で丸くなって布団を催促して来る。

その姿を見ていると丸くなったダンゴムシを思い出した。


「ちょめちょめ」 (もう。ぱんつを脱がすわよ)

「別にいいもん」

「ちょめちょめ」 (私がやらないと思っているわね。私は有言実行な女子なのよ。それ)


私はテレキネシスを使ってミクのパジャマのズボンといっしょにぱんつをずり下げる。

すると、プリッとしたミクのカワイイ真ん丸なお尻が顔を出した。


「ちょめ太郎のエッチ」

「ちょめちょめ」 (ミクが起きないのが悪いのよ)

「寒いよ。止めてよ」

「ちょめちょめ」 (ミクが起きるまで止めないからね。早く起きなさい。でないと恥ずかしいところまで丸見えになっちゃうよ)

「わかったよ。起きればいいんでしょう」

「ちょめちょめ」 (それでいいのよ。さっさとぱんつを履きなさい)


ミクはひざ下まで下げられたパジャマのズボンとぱんつをいっしょに引っ張りあげた。


「ちょめ太郎のせいで最悪な目覚めになっちゃった」

「ちょめちょめ」 (すぐに起きないからよ。自業自得ね)

「それで私に何かようなの?」

「ちょめちょめ」 (昨日、may tubeにアップロードした歌ってみた動画の結果を確認しようと思ってね)

「それなら、ルイも起さないと」


と言うことで私とミクは部屋を出て隣のルイの部屋に入って行く。

そして先ほどと同じようなことを繰り返してルイを起こした。


「もう、起こすなら普通に起こしてよ」

「ちょめちょめ」 (仕方ないでしょう。声をかけても起きなかったんだから。まったく、こういう部分だけはミクと同じね)

「反論はできないな」


私がすっぱり指摘するとミクは顔を赤くして俯いた。


「で、ルイに何のようなの?」

「ちょめちょめ」 (昨日、my tubeにアップした動画を確認するわよ)

「昨日の動画を確認するんだって」

「あっ、それ。ルイも気になっていた」

「ちょめちょめ」 (まあ、1日しか経ってないからそんなにも数が伸びていないだろうけどね)


私はスマホを操作してmy tubeにログインする。

そしてマイページに移動して昨日アップロードした歌ってみた動画を確認した。


「ちょめちょめ」 (あーっ、チャンネル登録者が1000を越えてる!)

「それってすごいことなの?」

「ちょめちょめ」 (すごいことよ。ルイの歌ってみた動画を気に入ってくれた人が1000人以上いるんだから)

「そんなにもルイの動画を気に入ってくれた人がいるの?すごーい」


さすがにチャンネル登録者数が1000を越えていたのははっきり言って驚きだ。

まだ1日しか経っていないのに私の予想の3倍以上も上回っているので驚きでしかない。

”アニ☆プラ”の楽曲を歌ったから”アニ☆プラ”ファンがチャンネル登録をしてくれたのかもしれない。


「ねぇ、お姉ちゃん、ルイにも見せてよ」

「この数字がチャンネル登録数だって」

「本当だ。1134ってなってる」

「その1134人の人がルイの歌ってみた動画を気に入ってくれたの」

「ルイってすごいんだね」


確かに私が向こうの世界にいたころ歌ってみた動画をアップした時には327人しかチャンネル登録をしてくれなかった。

同じ”アニ☆プラ”の楽曲を歌ったのだけど、この違いはなんなのだろうか。


「ちょめちょめ」 (あっ、動画再生数が1万を越えているわ!)

「どう言うこと?」

「ちょめちょめ」 (ルイの歌ってみた動画を再生した人が1万人以上いるってことよ)

「それって1万人以上の人がルイに興味を持ったってことなの?」

「ちょめちょめ」 (そうよ。これはただ事ではないわ)


素人でかつはじめてなのに動画再生数が1万を超えるなんてことは滅多にない。

しかも1日しか時間が経っていないのにそれだけの人が関心を示したのは驚きだ。

”アニ☆プラ”ファンはもちろんのこと歌に興味のある人達を集めたのだろう。


「エッヘン。ルイって人気者なんだね」

「ちょめちょめ」 (そう言うことになるわね。ちょっと悔しいけれど認めざるを得ないわ)


ルイは誇らしげな様子で鼻の下をこすって凄んでみせた。


もしかしたらルイは凄腕のmy tuberになれる素質を持っているのかもしれない。

抜群の歌唱力と可愛らしい見た目から多くのロリコンファンを引き寄せるだろう。

素直に認めたくはないが認めざるを得ない状況だ。


「でも、大丈夫かな。ルイのことをみんなに知られたら家に押しかけて来るかもよ」

「大丈夫だよ。みんなとお友達になればいいんだから」

「ちょめちょめ」 (ミク、心配しなくても大丈夫よ。向こうの人達がこっちの世界に転移して来ることはないから)

「向こうの世界?転移ってどう言うこと?」

「ちょめちょめ」 (だから、すごく遠くにいるから大丈夫だってことよ)


ミクを安心させるために言った言葉に疑問を持たれてしまった。

私が向こうの世界から転移して来たことは知らないから不思議に思ったのだろう。

これから発言する時は注意した方がいいかもしれない。


「ちょめ太郎、これは何?」

「ちょめちょめ」 (それはルイの歌ってみた動画を観た人達のコメントよ)

「なんて書いてあるの?」

「ルイは”歌がうまい”とか”小さいのにすごい”とか褒めるものばかりよ」

「照れるな~」


他人から歌を褒めらるのははじめてだから嬉しいのだろう。

ルイは体をくねらせながらミクが読み上げるコメントに耳を傾けていた。


他にもこんなコメントがついていた。


”小さな歌姫の降臨だ”

”アニ☆プラよりアニ☆プラかも”

”ぜひ、妹として迎えたい”

”デビューするべきだ”

”ファン第一号”


などルイの歌唱力を評価したコメントが多い。

ただ、意外なところも評価されていた。


”手作り感あふれるセットがいいわ”

”ピンクの耳あてなんてちょー最高”

”一生懸命さが伝わって来る”

”ファーストテイクを愛している人じゃないとできないね”

”これ、意外と流行るかもしれないぞ”


など。

本物のセットが用意できないのでそれっぽく仕上げたのだがそれがウケたようだ。


「ねぇ、ちょめ太郎。ルイ、もっとたくさんの人にルイの歌を聴いてもらいたいな」

「そうね。ルイのことをみんなに知ってもらえたらお姉ちゃんも嬉しい」

「ちょめちょめ」 (わかっているわ。そのために昨日、他の歌ってみた動画を撮影したんだもん)


もちろんただルイの歌ってみた動画をアップしようとは思っていない。

この人気ぶりならばすぐにチャンネル登録者数1万越えは狙えるはずだ。

動画再生数が億を越えたら話題になるから一儲けできるかもしれない。

広告収入でがっぽり稼げば私の寂しい懐も潤沢に潤う。


「ちょめちょめ」 (グフフ。これはビジネスチャンスよ。ルイをVtuberにしてがっぽり儲けてあげるわ)

「ちょめ太郎、全部聞えているよ」

「ちょめちょめ」 (ハッ。私の考えていることがミクに筒抜けだってことを忘れていたわ)

「ルイをお金儲けの道具になんてさせないからね」


すっかり手の内をミクに知られて断りを入れられてしまう。

ルイの協力が得られなければ儲けることは夢のまた夢だ。


そこで私はミクを説得して味方につけることにした。


「ちょめちょめ」 (お金儲けはとりあえずおいておいて。ルイのことを他の人達に知ってもらうことはいいことよ。ルイも寂しい思いをしなくてすむからね)

「それはそうだけどお姉ちゃんとしては心配だな」

「ちょめちょめ」 (ミクはまだはじめてのことだから臆病になっているだけ。ルイはやりたいって言っているんだから応援するべきよ)

「でも、ルイが遠くへ行っちゃうみたいで寂しいよ」


ミクの心配はルイが遠くなってしまう寂しさから来ていたようだ。

これまでルイと二人っきりでべったりと過ごして来たから想い入れが強い。

それを他の誰かに意識が向いてしまったらミクのことを気にかけてもらえなくなる。

ルイが必要としてくれたからいっぱいの愛情を注いで来たけどそれがなくなってしまうのだ。

その気持ちは親離れして行く子供を想う母親と同じなのだろう。


「ルイはどこにも行かないよ。ずっとお姉ちゃんといっしょだから」

「ルイ……」

「だから、お姉ちゃん、元気を出して」

「ありがとう、ルイ。お姉ちゃん、元気になっちゃった」

「よかった。いつものお姉ちゃんに戻って」

「ちょめちょめ」 (ウルウル。なんて美しい姉妹愛なの。私もこんな素直な妹が欲しかった)


ない物ねだりだがこんな美しい姉妹愛を目の当たりにしたら誰でも欲しくなる。

ミクとルイは全く汚れていないから天使のように透明感のある存在だ。

その二人の間に生まれる美しい姉妹愛は至高の果実と言えよう。


「ちょめちょめ」 (それじゃあ撮影した歌ってみた動画をアップするわね。一気にアップするともったいないから小出しにして行くわ)


その方が動画再生数もチャンネル登録者数も稼げる。

こちらとしてはあくまでカウント数を伸ばすことが目的だ。

目標である動画再生数の億を越えて話題になるのだ。


私は撮影してあるルイの歌ってみた動画をmy tubeにアップした。

今度は”アニ☆プラ”のセカンドシングル『快KAN』の歌ってみた動画だ。

この曲は疾走感のあるダンスナンバーだから別のファンを集められるはずだ。


「ちょめちょめ」 (これでいいわ。また、明日になったら確認してみましょう)

「早く結果が見たいな~」

「また、驚くような数を獲得しているはずだよ」


ルイが期待しているように私もミクも同じように期待している。

ルイとミクの期待は純粋なものだが私の期待は金儲けのことだ。

チャンネル登録者数と動画再生数をがっぽり稼いで金儲けに繋げるのだ。

そのためにもがっぽり稼ぐための準備をしておかないといけない。


私は頭に想い描いていた提案をルイとミクに話して聞かせた。


「ちょめちょめ」 (今よりもっと応援してもらいたいなら作戦が必要よ)

「作戦って?」

「ちょめちょめ」 (Vtuberとして活動するのよ)

「Vtuberって何?」

「ちょめちょめ」 (簡単に言うとmy tubeで動画を配信している人のことよ)

「それならルイの歌ってみた動画をアップしていればいいんじゃないの」


確かにミクが言うように他の人の応援が欲しいならそれでもいい。

だけど私が目指しているのはルイをVtuberにしてがっぽり稼ぐことだ。

そのためにはルイをVtuberにする必要がある。


「ちょめちょめ」 (ルイはアイドルになりたいって言ったよね。なら、Vtuberになって疑似体験するのがいいわ)

「そのVtuberとアイドルにどう言う関係があるの?」

「ちょめちょめ」 (普通のアイドルは実際にステージに立って歌うのだけどVtuberは動画で歌を届けるのよ。手段は違うけれどどちらともファン達を喜ばせることができるわ)

「なら、ルイがVtuberになればアイドル活動をできるようになるのね」


アイドルは実際に会いにいけるけれどVtuberはそれができない。

その代りにファン達の一番近いところで歌声を届けられるのだ。

もちろんアイドルが動画配信をしていたら同じことができてしまう。

だけど、Vtuberは実際に会いにいけないからファン達の欲求が強まるのだ。


「ルイにもわかるように説明してよ」

「ちょめ太郎が言うVtuberになればアイドル活動ができるんだって」

「ルイ、やりたい。Vtuberになってアイドルをする」


ルイは二の返事を待つことなくすぐに承諾した。

憧れのアイドルになれるから嬉しいのだろう。


「ちょめちょめ」 (なら、私は準備をするから)

「私達は何をしたらいい?」

「ちょめちょめ」 (とりあえず、ルイと時間を潰してて)

「わかった」


私はルイの部屋を出て隣のミクの部屋に戻る。

そしてスマホを操作して画像生成AIをダウンロードした。


「ちょめちょめ」 (まずはVtuberのキャラクターを作らないといけないわね)


キャラクターは何でもいいのだけれど一般ウケするように美少女キャラにする。

その方がファンがつきやすいし、覚えてもらえるきっかけにもなる。

それにもしメディアに取り上げられたとしても見劣りすることがないのだ。

ルイは6歳の女の子だからVtuberのキャラクターも低年齢化することにした。


画像生成AIにいくつかのキーワードを入力して画像を生成してもらう。

すると、候補となる美少女キャラクターがいくつかできあがった。

その中から一番ルイのイメージに近いキャラクターを絞り込む。

その上でさらにキーワードを加えて、よりリアルに近づけた。


「ちょめちょめ」 (ビジュアルはこんな感じでいいかな)


中々にしていい感じに仕上がったと思う。

幼さを感じさせるカワイイ美少女になった。

これならば多くのロリコンファンを夢中にさせることだろう。


「ちょめちょめ」 (次はこの画像を元にアクションをつけて行く作業だけどモーションキャプチャを使ってルイにしてもらおう)


あらかじめ動きのパターンを作っておくこともできるが台詞と合わない場合も想定される。

なので最新技術であるモーションキャプチャを最大限活用するのだ。


「ちょめちょめ」 (なら、台本の制作に取り掛かろう)


そのままのルイの言葉で話すこともできるが、それだとキャラがブレやすい。

その方がリアルなのだけれどリアル過ぎても問題になってしまう。

あくまで作ったVtuberのキャラクターのイメージを壊してはならないのだ。


「ちょめちょめ」 (まずは基本の台詞から作ろう。その後で想定される質問に対する回答を作成するのだ)


私の作戦では動画を配信するだけでなくファン達とコミュニケーションを取らせるつもりでいる。

その方がファンを満足させられるし、ルイもアイドルを疑似体験できるから一石二鳥だ。

もちろんルイには私が作った台本通りに喋ってもらうのだが問題はないだろう。

Vtuberを演じていると思えばなんら苦痛は感じることがない。


私は挨拶からはじまり、想定される質問一つ一つの回答を記して行った。

軸となるのは作ったVtuberのキャラクターイメージだ。

台詞ひとつひとつキャラクターイメージを壊さないようなものにしておく。

そうすることでブレのないVtuberを演じることができるのだ。


台本の制作作業は半日も時間を要した。

内容が細かいのでひとつひとつクリアーにして行く。

おかげで私の中のキャラクターのビジョンははっきりとした。


「ちょめちょめ」 (終わったわよ)

「待ちくたびれちゃった」

「ねぇ、早くやろうよ」

「ちょめちょめ」 (それじゃあ、カメラをセットするからルイはそこに立って)

「ルイ、そこに立ってだって」

「はーい」


ルイは指定された通りカメラの前に立つ。


「ちょめちょめ」 (画面に映っているのがVtuberのルイだから)

「その画面に映っているのがルイだって」

「これ?あっ、動いた」

「ちょめちょめ」 (ルイの動きに合わせて動くからね)

「ルイの動きに合わせて動くんだってさ」

「本当だ。おもしろ~い」


モーションキャプチャはカメラがルイの動きを捉えてくれるから体に何もつけなくても大丈夫だ。

ルイの動きを的確に捉えて画面に映っているVtuberを動かしてくれる。

その動きは滑らかで本物の人間が動いているかのようだった。


「ちょめちょめ」 (それじゃあ、ミク。この台本をルイに渡して)

「ルイ、これが台本よ」

「ちょめちょめ」 (まずは挨拶から撮影するから台本を覚えて)

「挨拶のところの台詞を覚えてだって」

「えーっ、台本を覚えるの?」

「ちょめちょめ」 (女優になったつもりで演じてくれればいいわ)

「女優さんになったつもりで演じてだってさ」

「女優さんか。面白そう」


ルイに細かい説明をするのは止めておいた。

説明しても理解できないだろうし、かえって混乱させるからだ。

だから、女優と言う言葉を使ってルイの興味を引くだけにしておいた。


さすがのルイはすぐに台本を丸暗記してしまう。

それは台詞だけでなく、どこで間をあけるかなど細かなところまで把握してみせた。


「ちょめちょめ」 (なら、本番をはじめるからね。最初は挨拶から歌の紹介までの部分を撮影するから)

「ルイ、準備はいい?」

「いつでもいいよ」


ルイに確認をとってから私はミクにカウントしてもらうように指示を出す。

それを受けてミクは指でカウントダウンするとスタートの合図をルイに送った。


「みなさん、こんにちは~。Vtuberのルイで~す。はじめての人もいるよね~。よろしくね」


ルイは台本に書かれていた通り幼い元気っ子キャラクターを演じてみせる。

台詞だけでなく口調も変えてイメージ通りのキャラクターを演じてくれた。


その動画は生配信されているのでmy tubeで動画が再生される。

すると、すぐに動画を観ていたファン達が反応を返して来た。


ルイの呼びかけに答えるようにコメントが乱立して行く。


「ちょめちょめ」 (はじめてにしてはいい反応が返って来てるわ。ルイ、続けて)

「ルイ、そのまま続けてだって」


ミクはスマホのマイクが拾わない小さな声でルイに指示を伝える。

それを確認したルイは次のシーンを演じはじめた。


「ルイは”アニ☆プラ”の大ファンで~す。とくに”ななブー”ちゃんが大好きで~す。みなさんは誰推しですか」


私は自分の私見でルイにしゃべらせたい台詞を台本に書いた。

作ったVtuberのキャラクターが”アニ☆プラ”ファンと言うのは設定だ。

それはルイが歌うのが”アニ☆プラ”の楽曲だからファンにした。

その方が説得力が増すし、”アニ☆プラ”ファン達も喜ぶと考えたのだ。


”ななブー”推しと言うのは私の個人的な趣味でしかない。

”あずニャン”推しでも”えりピョン”推しでも構わなかったのだ。

よくプロデューサーが歌手にこの歌詞を歌わせたいと思う気持ちといっしょだ。


すると、コメント欄に”アニ☆プラ”ファン達がそれぞれの推しの名を書き記す。

圧倒的に”あずニャン”が多かったが”ななブー”推しも負けてはいなかった。


「ちょめちょめ」 (まだ、世間は”ななブー”の良さに気づいていないようね)


”ななブー”は隠れセンターだから絶対的センターの”あずニャン”に負けている。

しかし、サードシングルで”ななブー”がセンターを務めたことでジワリと来ている。

そのうちに”あずニャン”を席巻して”ななブー”が取って代わるのも時間の問題だろう。


「”アニ☆プラ”って最高ですよね~。ルイも”アニ☆プラ”に近づきたくて”アニ☆プラ”の楽曲を歌っていま~す」


そうVtuberのルイの動画が流れると動画を視聴していたファン達がコメントをつける。

コメント欄に並んだ言葉はVtuberルイの歌を催促するものばかりだった。


「うわぁ~みんなも期待してくれているんだ。嬉しい。なら、みんなのところへ気持ちが届くように歌うね~」


ルイの台詞と同時に”アニ☆プラ”のファーストシングルの『スマイル』のイントロが流れはじめる。

ルイは体を揺らしながらリズムをとって歌い出しのタイミングを計る。

そして歌い出しのところまで来ると元気よく『スマイル』を歌いはじめた。


Vtuberを演じていてもルイの歌唱力は劣らずに見事なままに歌い上げる。

その歌声を聴いていたファン達は応援コメントを乱立させて答える。


「ちょめちょめ」 (これはもうライブと変わりないわ。実際にファンが目の前にいないだけで他は同じ)

「ルイ、楽しそうだね。観ている私も楽しくなって来る」

「ちょめちょめ」 (この分なら動画再生数の億越えも近いわ。グフフ。お金の音が聞える)

「ちょめ太郎、顔が歪んでいるよ」


私はひとり妄想を膨らませてだらしのない顔をしていたようだ。

実際にルイの生配信を観たら儲けられることを考えないはずはない。

すぐにルイの人気に火がついてネットニュースになるはずだ。

そうなればルイも影響力のあるインフルエンサーになれる。


「ちょめちょめ」 (広告収入が入ったら全部電子マネーに替えてもらおう)


そうすれば欲しいものは買いたい放題だ。

”アニ☆プラ”グッズを買いまくって”ななブー”を応援するのだ。


「ちょめちょめ」 (これで私も太客ね。将来が楽しみだわ)


ルイの生配信をよそに私は妄想を膨らませるだけ膨らませた。


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