第九十八話 my tube
投票結果は私の希望通り、”渡良瀬まい”が僅か数票差で首位を保った。
2位は力闘した”後田かおり”だ。
3位が”川咲みほ”で4位が”低橋りえ”。
”YUMI”は最後まで最下位だった。
推していた”渡良瀬まい”がトップになったのは私の努力があったからだろう。
アンチ達は邪魔をして来たが私の敵ではなかった。
だが、これで喜んではいられない。
これで”アニ☆プラ”の追加メンバーが決まった訳じゃないのだ。
プロデューサーの最終選考に残らないと追加メンバーにはなれない。
プロデューサーがどう判断するかで結果が変わって来る。
しかし、投票結果は無視されることはないだろう。
(”渡良瀬まい”はカタいわよね。でも、ひとりだけってことはないかもな……)
仮に”渡良瀬まい”が”アニ☆プラ”に入ってもお笑い担当枠を勝ち取るだけだ。
でも、それだけでは”アニ☆プラ”がパワーアップしたとは言い難い。
可愛らしさとファンタジーにお笑いが加わってもさほど変わらない。
”アニ☆プラ”がちょっとだけ面白くなるだけでイメージはそのままだ。
(だとすると、2位の”後田かおり”も加わる可能性があるわ)
だけど、”ななブー”と被るから私としては”後田かおり”に入ってほしくない。
それなら3位の”川咲みほ”や4位の”低橋りえ”の方がいい。
2人とも実力者だから”アニ☆プラ”に入ったらパワーアップするだろう。
(意外な線で”YUMI”ってのもあるかも)
”YUMI”はギターを弾けるから”アニ☆プラ”がバンド化するかもしれない。
”アニ☆プラ”の誰がどの楽器をやるのか想像できないけどないことはない。
ただ、それだと”アニ☆プラ”のメンバーが楽器を覚えるまで時間がかかりそうだ。
(あぁ~、気になって気になってしかたないわ)
考えれば考えるほど想像は膨らんで行くのでとりとめもなくなる。
いくら便利なスマホがあってもこればかりは発表を待つしかない。
ネット上では誰が選ばれるのか議論しているがそこに参加するつもりはない。
どうせ自分が推している声優を選ぶだけだからだ。
(私は無駄なことはしない主義なの)
けど、暇になってしまった。
”アニ☆プラ”関連の情報は発表まで更新されないからだ。
×(ちょめ)ではメンバーの近況が知れるけれど確信をつく情報はない。
(ゲームしてもつまらないし、漫画を読む気にもなれないし)
この世界がファンタジーだから今さら非現実を求めなくなっている。
物語でファンタジーを求めるより、この世界を堪能した方が満足できるからだ。
(自撮りしてインスパにでもアップしようかな)
この世界の写真をアップしてもリゾート地だと思うだろう。
景色だけをみれば向こうの世界とそう変わらないのだ。
ただ、建物や人を映すのは止めた方がいいかもしれない。
いかにもファンタジ―を感じさせるから疑問を持たれるはずだ。
(それを言ったら私が映る方がマズいか)
私のようなちょめ虫は向こうの世界にはいないから驚かれるだろう。
よく出来たCGとも言えないことはないがあらぬ誤解を招くことは避けるべきだ。
(ミクのママの料理でもアップしようかな)
私が作ったわけじゃないけれど人気が出るはずだ。
とかくインスパは料理やファッションの画像が多い。
映える写真をアップすればいいねをたくさんもらえるからだ。
(けど、ミクのママになんて言おうかな)
インスパのことを話すのはマズいし、食事中に写真を撮りまくるのも問題だ。
向こうの世界ではあたり前のことだけれど、こっちの世界では失礼にあたる。
(やっぱりダメよね)
私は暇を持て余しながら大きな長い溜息を吐いた。
(my tubeでも観るかな)
何か面白い動画が転がっているかもしれない。
無料で観れるし、誰もが投降できるから掘り出し物があるのだ。
下手なテレビ番組を観ているよりもmy tubeを観ている方が楽しい。
私は動画を流し観しながら面白い動画がないか探した。
(あっ、これってファーストテイクじゃん)
画面をスクロールして止まったところでサムネをクリックするとファーストテイクの動画が再生された。
歌っていたのはHIASOBIの数田のこで”この馬に賭ける”を歌っていた。
(やっぱ、上手いな~。全然、ミスらない)
”この馬に賭ける”はHIASOBIのデビュー曲だ。
コンポ―サーのAyaso?が競馬を題材にした小説を元に作った曲でもある。
小説+音楽と言う新しいジャンルを切り開いたので業界に衝撃を与えた。
とかくAyaso?のセンスと言うべきかAyaso?の描く世界観はリアルなのだ。
小説の世界観を壊さずにより鮮明に描くことを意識して楽曲を作っているのだと言う。
(いい曲よね。やっぱAyaso?の力かな)
ただ、HIASOBIにはボーカルの”数田のこ”も欠かせない。
”数田のこ”がいなかったらHIASOBIは存在していなかったのだ。
”数田のこ”はもともと歌ってみた動画をmy tubeにアップしていた。
そこで音楽業界の人の目に止まってスカウトされたのだと言う。
後日談になるが”数田のこ”の歌声を聴いて一目惚れしたらしい。
(”かずのこちゃん”の歌声は透明感があるからね)
真似をしようと思っても中々真似できない。
ただ、モノマネの”ゆゆゆちゃん”だけは完コピしている。
”ゆゆゆちゃん”自身、歌唱力があるから成せる技だ。
(私も歌ってみた動画をアップしてみようかな)
モザイクをかけておけばちょめ虫の姿でも問題ない。
歌は特別うまい方ではないけれど自信はある。
カラオケでさんざん”アニ☆プラ”の楽曲を歌って来たからだ。
歌詞を見ないでも歌えるぐらい完全にマスターしている。
ただ――。
「ちょめちょめ」 (今の私は”ちょめ”としか話せなかったんだー)
ついちょめ虫であることをすっかり忘れてしまっていた。
スマホで動画を見ているうちに昔を思い出していたからだ。
(ちょめジイがちょめ虫に転生するから私はカワイイ美少女でいられなくなったのだ)
今さら文句を言っても何もはじまらないが不満は溢れて来る。
おまけに”カワイ子ちゃんの生ぱんつを100枚集める”と言う使命を負わされたのだ。
私がいったいどんな悪いことをしたのだろうと言うのか。
神様がいるならばちょめジイを地獄に落としてほしいくらいだ。
(あ~ぁ、いいこと思いついたと思ったんだけどな……そうだ!)
ヒラメキは私を見放してはいなかった。
瞬間、頭の中が輝き出して神様が降臨して来た。
神様は手にいっぱいのヒラメキを持っている。
それを私に渡してからニコリと笑みを浮かべて消えて行った。
(ルイの歌ってみた動画をアップすればいいんだわ)
ルイは抜群の歌唱力を持っているから歌ってみた動画はマッチしている。
以前にルイのMV撮影をした時も”アニ☆プラ”の楽曲を完璧に歌いこなしていた。
ルイが病気でなかったらアイドルに推薦したいぐらいだ。
(病気だからアイドルにはなれないけれどアイドルを疑似体験できるはずだ)
それにルイがどれほどのものなのか向こうの世界の人達に審議してもらえる。
歌ってみた動画をアップしてチャンネル登録者が増えれば人気があるのだと言うことがわかる。
その評価はルイの励みにもなるからルイも満足するはずだ。
(それじゃあ、さっそく。ルイに交渉しよう)
私はスマホを持ってルイの部屋に駆け込んで行った。
ルイの部屋に行くとミクがルイに絵本を読み聞かせしていた。
このところ精霊の森に出かけていないからルイといっしょに過ごしている。
おぼこぼさま探しをやめた訳じゃないけれどルイとの時間を大切にしているのだ。
それはあと2年もすればミクが家を出て学校に行ってしまうからだ。
そうなったらルイはひとりで過ごさなければならない。
だから、今のうちに遊べるだけ遊んでおくのだ。
「あっ、ちょめ太郎。そんなに慌ててどうしたの?」
「ちょめちょめ」 (ルイに話があるんだ)
「ルイに?どんな話なの?」
「ちょめちょめ」 (次いでだからミクも聞いて)
私はさっきヒラメイたことをミクとルイに説明した。
「歌ってみた動画はわかったけどmy tubeって何?」
「ちょめちょめ」 (簡単に言うと撮影した動画を集めている場所よ。誰でも無料で閲覧できるから便利なのよ)
「お店屋さんなの?」
「ちょめちょめ」 (う~ん。そう言われればそうかもしれないけれど違うような気もする)
ネットのない世界でネットのことを説明するのは難しい。
魔法のない世界で魔法を教えるようなものだ。
向こうの世界はネットがあるけど魔法がない。
逆にこっちの世界は魔法はあるけどネットがないのだ。
「ちょめ太郎もよくわからないものをルイに薦められないわ」
「ルイ、やってみたい」
「ダメよ。危険なことかもしれないのよ」
「ちょめちょめ」 (それは大丈夫。命を取られるようなことはないから)
歌ってみた動画をネットにアップして命を取られたと言う話はない。
反響があったとしてもこちらの世界は異世界だから何ら問題もない。
ファンが家に尋ねて来るなんてことはあり得ないのだ。
「私はお姉ちゃんとして反対だからね」
「え~、ルイ、やってみたい」
「ちょめちょめ」 (ルイもこう言っているんだからやろうよ)
「ダメよ。ルイにもしものことがあったら大変だもの」
ミクは頑として意見を譲らない。
お姉ちゃんだからルイのことが心配なのはわかるが心配し過ぎだ。
歌ってみた動画をアップしてもいいねがついたりコメントをもらえたりするだけだ。
まあ、たまにはアンチが割り込んで来て悪口を言いまくることもあるがその程度だ。
こちらの世界にいる限り、ルイに危険が及ぶことはないのだ。
「ちょめちょめ」 (わかったわ。なら、試しに動画を撮影してmy tubeにアップするわ)
どうなるのか実際に体験してみればミクも納得するだろう。
私はスマホを持って外に出て行って辺りの風景を撮影した。
なるべく異世界を思わせるようなものが映り込まないように注意した。
「ちょめちょめ」 (今から、この動画をmy tubeにアップするから)
私はmy tubeのアカウントを作ってから撮影した動画をアップした。
そして動画を観れる設定をすませてからミク達にスマホを見せた。
「ちょめちょめ」 (これが今、アップした動画よ。動画が再生されると、ここの数が増えて行くの)
「この”いいね”ってのは何?」
「ちょめちょめ」 (それは動画を再生していいと思ったらいいねをしてくれるのよ。数字が多いほどたくさんの人がその動画をいいと思っているのよ)
「へぇ~、そんな便利なものがあるのね。オドロキ」
「お姉ちゃん、ルイにも見せてよ」
私の説明にハマっていたミクはスマホを独占してしまう。
自分の目で見て危険でないか確かめたいからなのだろう。
ルイが甘えた声でおねだりするとスマホをルイに見せた。
「全然、数が増えないね」
「ちょめちょめ」 (まあね。アップしたてじゃ観る人は少ないわ)
「あっ、ここの数字が増えたよ」
「ちょめちょめ」 (それは動画が再生されたってことよ)
「なら、誰かがこの動画を観ているってことね」
しかし、増えたのは3人ほどで、それ以降は数字が伸びなかった。
ありきたりな風景を撮影しただけの動画だから再生数が伸びないのだろう。
「ちょめちょめ」 (これでわかったでしょう。何も危険なことはないって)
「ちょめ太郎の言うとおりね。ルイ、歌ってみた動画を撮影してもいいよ」
「本当!やったー!」
ミクの許可が出たのでルイは飛び上がって喜んだ。
いつも暇を持て余しているからたまには変わったことがしたいのだろう。
歌ってみた動画の撮影はまさにルイにピッタリの挑戦だ。
私はさっそく歌ってみた動画の撮影の準備に取り掛かる。
「ちょめちょめ」 (まずは、ファーストテイクみたいなセットを作らないと。ミク、シーツの端を持ってそっちの壁に貼り付けて)
「シーツなんて何に使うの?」
「ちょめちょめ」 (生活感が出ると雰囲気が壊れるからシーツで隠すのよ)
「こう?」
「ちょめちょめ」 (いい感じ。それでいいわ)
私とミクはルイの使っていたシートを外して壁に貼り付けて隠す。
「ちょめ太郎、こっちはいいの?」
「ちょめちょめ」 (カメラに映る範囲だけ隠せればOKよ)
「他には何が必要なの?」
「ちょめちょめ」 (マイクとヘッドホンね。これがないとはじまらないわ)
「マイクはお父さんのカラオケセットのが使えるよ」
「ちょめちょめ」 (なら、それを持って来て)
「わかった。だけど、ヘッドホンってのはわからない」
「ちょめちょめ」 (う~ん、なんて言うかな。耳あてみたいなやつよ)
「耳あてならあるよ」
「ちょめちょめ」 (まあいいわ。とりあえずそれを持って来て)
ミクは1階からお父さんのカラオケセットについているマイクを持って来る。
その後で自分の部屋に戻ってクローゼットから耳あてを持ち出した。
「これでいいかな?」
「ちょめちょめ」 (マイクはいいけど耳あてはちょっとね。せめて黒だったらいいのだけど)
「私、ピンクの耳あてしか持っていないからないよ」
「ちょめちょめ」 (ちょめジイに頼んで私のヘッドホンを召喚してもらおうかしら)
だけど、そんなお願いをしたらまた余計な要求をされるはずだ。
”せくしーぱんつは飽きたからカワイ子ちゃんのぱんつを撮影して来るのじゃ”なんて言うかもしれない。
以前にも同じ要求をされたからある程度、予想がわかるのだ。
「ちょめちょめ」 (まあ、いいわ。これでいきましょう)
手作り感は否めないけれどファーストテイク感を演出できればいい。
観てほしいのはセットじゃなくてルイの歌声なのだから。
「ちょめちょめ」 (ルイ、前に歌った”アニ☆プラ”の”スマイル”を覚えている?)
「ルイ、この前に歌った歌を覚えているかって」
「覚えているよ」
「ちょめちょめ」 (それをこれから歌うのよ)
「その歌を歌うんだって」
「わかった」
ルイは一度聴いた曲はすぐにマスターしてしまう能力を持っている。
なので、時間が空いても忘れることがなくいつでも歌えるようだ。
「ちょめちょめ」 (音楽は流さないからルイはいつものように歌ってちょうだい)
「ルイはいつものように歌えばいいんだって」
「任せてよ」
「ちょめちょめ」 (ミクが指でカウントをしてルイに合図を送ってちょうだい)
「わかったわ。ルイ、お姉ちゃんが合図をしたら歌ってね」
「はーい」
ミクとルイに指示を出してから私はスマホを固定して撮影の準備を整える。
その後でミクに指示を出してカウントしてもらった。
ミクの指の合図に合わせてルイは一呼吸おいてから歌い出した。
”白紙のページに 言葉を並べて”
”自分だけの ストーリーを 作ろう”
”ワクワクだらけの 冒険活劇”
”魔法と剣、モンスターも飛び出す”
さすがはルイだ。
全く音程も外さずに完璧に歌っている。
アカペラははじめてなのに見劣りしていない。
”アニ☆プラ”の歌は歌い慣れて来たが私よりも俄然に上手だ。
それからルイが歌い終えると少し間をあけてスマホの停止ボタンを押した。
「ちょめちょめ」 (OKよ。さすがはルイね)
「もう、いいよだって」
「ルイ、もっと歌いたい」
「ちょめちょめ」 (それはまた後でね。まずは撮影した動画をmy tubeにアップするのが先よ)
私はスマホをいじって動画を簡単に編集するとmy tubeにアップロードした。
そして誰でもコメントできる設定にしてから動画を公開に設定した。
これで誰でも動画を再生できるようになるからコメントもつくはずだ。
「ちょめちょめ」 (設定完了よ。後は明日になるのを待つだけね)
「明日までおあずけだって」
「え~、つまんな~い」
「ちょめちょめ」 (なら別の曲のバージョンも撮影しておく?)
「他の曲で歌ってみるかって」
「うん、やる~」
と言うことで別の曲のファーストテイク動画を撮影することにした。
もちろん歌ってもらうのは”アニ☆プラ”の楽曲だ。
今のところフォースシングルまで発売されているから4曲だ。
ファーストシングルが『スマイル』でポップな曲調でアニ☆プラらしい楽曲だ。
セカンドシングルが『快KAN』でダンスナンバーの楽曲でアニプラのイメージを一新させた。
サードシングルが『stardust rain』でアニメ「優秀なサラリーマンは声優アイドルに恋しない」のエンディングテーマ曲だ。
フォースシングルが『もう一度』で大人の失恋を描いた楽曲だ。
こうして見てみると”アニ☆プラ”は攻めた楽曲を発表している。
可愛らしいファンタジ―な世界感とは少しかけ離れた感じだ。
これもプロデューサーの意図が反映されているからなのだろう。
「ちょめちょめ」 (じゃあ、次は『快KAN』を覚えてちょうだい。ダンスナンバーだからさっきとは違うからね)
「次の曲は『快KAN』だって。さっきのとは違うから気をつけてだって」
「任せてよ。ルイ、お歌上手だもん」
私はストリーミングサイトに繋いで『快KAN』を再生する。
すると、ルイはスマホを耳にあてて曲を耳コピしはじめた。
「ちょめちょめ」 (これで覚えちゃうんだからすごいよね)
「ルイはある意味、天才だからね」
「ちょめちょめ」 (同じ姉妹なのにミクは違うのね)
「ちょめ太郎のイジワル」
私の指摘にミクは頬を膨らませて抗議をして来る。
姉妹なのだから少しは似て来るものだがミク達は対照的だ。
ルイは歌がうまくてダンスが苦手。
逆にミクは歌が苦手でダンスが得意だ。
同じ遺伝子から生まれたのに不思議なものだ。
ちなみに私は歌もダンスもそこそこのレベルだ。
「覚えたよ」
「ちょめちょめ」 (もういいの?もう1回、聴いてもいいよ)
「もう1回聴いてもいいよって」
「大丈夫だよ。もう、歌えるもん」
「ちょめちょめ」 (わかったわ。なら、はじめるからね。ミク、合図をお願い)
「うん」
ルイは先ほどと同じようにヘッドホン代わりの耳あてをつけてマイクの前に立つ。
そして呼吸を整えてから私達に合図を送って来たので私はミクにカウントの指示を出す。
ミクは指でカウントダウンをした後でルイに歌うように合図を送った。
”静寂を かき消す 鼓動”
”眩い 光りの 講堂”
”ひと集まって 怒涛 乗ってけ”
”サーファー 今が 始動の時だ”
ルイはさっきとは違う歌声とリズムで『快KAN』を歌いはじめる。
声色もダンスナンバーに合うように変えていて歌唱力の高さをうかがわせた。
「ちょめちょめ」 (本当にうまいよね。私もこんな才能を持ってみたかったわ)
「ちょめ太郎は”ちょめ”としか話せないじゃん」
「ちょめちょめ」 (それは言わないでよ。私だって好きでちょめ虫になった訳じゃないもの)
「仕方ないよ。ちょめ太郎はちょめ虫なんだから」
ミクはすっぱりと私を切り捨てる。
ちょめ虫になったのはみんなちょめジイのせいなのだ。
だから”カワイ子ちゃんの生ぱんつを100枚”集めて元の姿に戻る。
私がそんなことを考えている間にルイの歌唱は終わっていた。