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第四話 潜入、イメル村

夜のイメル村は思っている以上に暗かった。

街灯が全くなく家から漏れる灯かりが頼り。

ただ、夜空はキレイで眩いばかりの星々が煌めいていた。


(キレイね。こんな風に星空が見えるなんて日本では考えられなかったわ)


私の住んでいた場所は都会ではなかったがそれなりに発展していた。

あたり前のようにコンビニがったし、あたり前のようにスーパーもあった。

眠らない街ほど煌びやかではないが、それでも夜は灯かりが溢れていた。

だから、夜空を見上げてウットリするなんてことはなかった。

ただ、田舎のおばあちゃん家に行った時は同じ風に感じたことを覚えている。


(発展してないのは不便だけど、発展し過ぎているのも問題ね)


両方のいいとこどりをできる方法があれば一番いい。

まあ、そんな都合のいい話はどこにもないけれど。


私は家の灯かりの漏れている方を目掛けて進んで行く。

ちょうど街の東側に住宅が密集しているのでひときわ明るくなっている。

それに比べて西側は真っ暗で家畜の鳴き声が聞えて来る。

街の中央には井戸があって水を汲めるようになっていた。


(井戸で水を汲むだなんてどんな田舎よ。日本の田舎にだってそんなものはないのに)


私も井戸を見るのははじめてで時代劇でチラッと見たとき以来だ。

日本の田舎に行っても井戸で生活している人はほぼいない。

水をキレイにしないと体に害を与える細菌が死なないからだ。

現代っ子の私もコンビニで買った水しか飲んだことがない。

水道から直接水を飲んでいるのは昭和の人ぐらいなものだろう。


(今はちょめ虫だから井戸の水も飲めそうだけど)


灯かりを頼りに民家に近づくと美味しい匂いが漂って来た。


(すーぅ。美味しそうな匂い。コトコト煮込んだ肉と野菜の混じった香りがして来る。この家の晩御飯はビーフシチューかしら)


匂いを辿りながら壁をよじ登って窓にへばりつく。

そして気配を消して、こっそりと中の様子を確かめた。


(うわー、美味しそう……ゴクリ)


ダイニングテーブルには色とりどりの美味しそうな料理が並んでいる。

ゴロゴロとした肉と野菜のスープにバケット、鳥の姿焼き、新鮮な野菜たっぷりのサラダ、デザートのアイスまであった。

ダイニングテーブルには4人家族が並んで座っていていただきますを待っていた。


「早く食べたーい」

「食べたーい」

「まずはお祈りをしてからだ」


そう父親らしき髭モジャの体格のいい男が静かに目を閉じると他の家族も真似をする。

そして父親らしき髭モジャの男がブツブツとお祈りの言葉を喋りはじめた。


(私も食べたーい)


見ているだけで涎が滝のように流れて行く。

朝からお菓子だけだったからすっかりお腹が減っていた。


「いただきます」

「「いただきまーす」」


お祈りが終わると父親らしき髭モジャの男がいただきますをしてみんないっせい食べはじめた。

幼いお兄ちゃんと妹は味わうこともなく勢いよくバクバク食べている。

顔中ソースだらけになってもおかまいなしだ。


「うまっ」

「うまーっ」

「もっとゆっくり食べなさい。おかわりはいくらでもあるんだから」

「ハハハ。子供はこれくらいのほうがカワイイものさ」


そう言っている父親らしき髭モジャの男も口元にソースをつけていた。

その様子を見て母親らしき女は優しい笑みを浮かべてクスクス笑っていた。


(いやーん。お腹空いた。ちょめジイ、”ダブチ”を召喚してよ。ハンバーガーが食べたくなっちゃった)

(パリポリ……ゴックン)

(ねぇ、ちょめジイ。今、何か食べてなかった?”ポテチ”を食べる音が聞えて来たんだけど)

(気のせいじゃ)


確かに私の耳には”ポテチ”を咀嚼する音と袋をガサガサする音が聞えていた。

ちょめジイのことだからこっそりと日本から”ポテチ”を召喚しているのかもしれない。

そして漫画を読みながらポテチをバリバリ食べてジュースをゴクゴク飲んで……って、中坊かい!


(ちょめジイだけずるーい。この世界に影響のあるものは召喚してはいけなかったんじゃないの)

(じゃから気のせいじゃと言っておるじゃろう。それより”ダブチ”とは何じゃ?)

(”ダブチ”ってのは”ダブルチーズバーガー”のことよ。せっかくだからセットでお願い)

(ダメじゃ)

(何でよー。自分だって”ポテチ”を召喚しているでしょう。”ダブチ”だって召喚しても問題ないわよ)

(お主は虫なのじゃから葉っぱでも食べておれ)


ちょめジイはあくまで譲らないようだ。

私が飢えて死んでしまえば”カワイ子ちゃんの生ぱんつ”なんて集まらなくなるってのに。

”ポテチ”と”ダブチ”にどれほどの違いがあると言うのか。

別に他の人にあげる訳でもないのだから問題ないはずだけど……。

いや、絶対に問題はない。


(なら、コンビニのつぶつぶコーンのいっぱい乗ったパンとラテでいいわ。これなら問題ないでしょう)

(パリポリ……だからダメと言っておるじゃろう。聞き分けのない娘じゃな)

(自分で勝手に私を召喚したのでしょう。なら、最後まで面倒をみてよ)

(じゃから言っておるじゃろう。お主は虫なんだから葉っぱで十分じゃ)

(だって、葉っぱを食べても苦かったんだもん。そこら辺の雑草じゃ、私のデリケートな口に合わないのよ)

(贅沢な虫じゃな。なら、これでも食べておけ)


そう言ってちょめジイが召喚したのは採れたての新鮮なキャベツだった。


(キャベツだけ?せめてマヨネーズをつけてよ)

(ダメじゃ)

(いやーん、いやーん。マヨがないとお野菜は食べれなーい)

(勝手にするのじゃ)


プツン。


私があまりにワガママを言っていたのでちょめジイは念話を切った。


(あっ。念話中に勝手に切るなんてマナー違反よ。ちょっと、ちょめジイ)


いくら呼びかけてもちょめジイが答えることはなかった。


私は目の前に置かれてる丸々のキャベツをじーっと見つめる。

確かに虫が食べるくらい美味しいことはわかっているけどキャベツだけだなんて。

私はウサギじゃないのよ……ちょめ虫だけれど。


仕方なしに私は家族が食べている料理を眺めながらキャベツを1枚ずつ食べた。

キャベツの味しかしないが美味しそうな匂いと妄想を膨らませればマズいこともない。

ただ、目の前に置いてあるキャベツを見ると急に現実に引き戻されてしまう。


(これがトロけるまでクタクタに煮込んだロールキャベツだったら……ゴクリ)


こうなったら何としてでもこの世界のご馳走を食べてみよう。

今は叶わぬ夢だとしてもいつか必ず舌鼓を打ってやるのだ。


そう私が心の中に誓いを立てていると背後から何かが近づいて来た。


クンクンクン。


(いやーん。私のお尻が魅力的だからってお尻に熱い吐息を掛けないでよ。アンッ、感じちゃう……って、犬かい!)


後を振り返ると私のお尻の匂いをしきりに嗅いでいる毛むくじゃらの大きな犬がいた。


「ちょめちょめちょめ」 (ちょっと、そんなにも私のお尻の匂いを嗅がないでよ。まるでお尻にう○こがついているみたいじゃない。クサクサじゃないのよ、私のお尻は)

「バウッ」


私が猛抗議をすると毛むくじゃらの大きな犬はバカっぽく吠えた。


「ちょめ」 (”バウ”だって。バカっぽーい。犬なんだから”ワン”と鳴きなさい)

「バウッバウッ」


私の思いも伝わることなくバカ犬は興奮したように騒ぎ出す。

すると、家の中から子供達の騒ぐ声が聞えて来た。


「ゴンゾウが外で騒いでる」

「騒いでる」

「お腹が空いているんだよ」

「空いているんだよ」

「夕飯はあげたよな」

「ちゃんとゴンゾウの分は用意したわ」


家族達は夕食をとる手を止めてゴンゾウの心配をする。


「ちょめ」 (あんた、ゴンゾウって言うんだ。バカっぽい名前ね)

「バウッ」


ゴンゾウは私の言っていることをわかってるかのように返事をした。

同じ生き物だから言葉は通じなくても心だけは通じるのだろう。


「ちょめ」 (いい子だからあっちへ行ってなさい)

「バウッバウッ」

「ちょめ」 (聞き分けのない子ね。そんなんじゃモテないわよ)

「バウッバウッ」


私がゴンゾウを遠ざけようとするとゴンゾウは興奮しはじめた。


「中に入れたあげたほうがいいんじゃない」

「それもそうだな」


そう言って髭モジャの父親が席を立ち上がると玄関へ向かう。

いっしょに子供達も窓際に近づいて来たので私は慌てて物陰に隠れた。


「ゴンゾウ、中に入れ」

「バウッバウッ」

「そんなところで何をやっているんだ。早く入れ」

「バウッバウッ」


ゴンゾウは髭モジャの父親が命令しても私の傍から離れようとはしない。

そればかりか”バウッバウッ”とバカっぽく吠えながら主を呼んでいた。


「ちょめ」 (早くあっちへ行きなさい。見つかっちゃうじゃない)

「バウッバウッ」

「ちょめ」 (ほんとバカ犬ね。私はあなたの飼い主じゃないの)

「バウッバウッ」


私が隠れている場所はちょうど影になっていて髭モジャの父親からは見えない位置にいる。

そのためゴンゾウがなぜしきりに吠えているのか意味がわからないでいた。


「そこに何かいるんだよ」

「いるんだよ」


窓から覗いていた子供達は身を乗り出しながら騒ぎ出す。


「ゴンゾウ。そこに何かいるのか?」

「バウッバウッ」

「ちょめ」 (ちょっと返事をしないでよ。見つかっちゃうじゃない)


すると、髭モジャの父親が玄関に置いてあったモップを持って家から出て来る。


「ちょめ……」 (マズいわ。このままだと見つかっちゃう)


私は瞬間的に辺りを見回しながら何か代わりになるものがないか探す。

そして食べかけのキャベツを目に止めるとテレキネシスで放り投げた。


「バウッバウッ……ハアハアハア」

「キャベツだと。何でこんなところにあるんだ」

「バウッバウッ」

「お前が持って来たのか?」

「バウッバウッ」


ゴンゾウは転がるキャベツに反応してキャベツを追い駆けて行く。

そして髭モジャの父親が尋ねるとバカっぽく吠えて尻尾を振っていた。


「全く誰に似たんだか。散らかるからキャベツはもらうぞ」

「バウッ」

「お前はこれで遊んでいろ」

「バウッバウッ」


髭モジャの父親がキャベツの代わりにボールを投げるとゴンゾウはボールを追い駆けって行った。


「ちょめ」 (ふーぅ。危なかった)


とりあえずピンチは回避できた。

もし、私が見つかろうものなら捕まってしまうだろう。

ちょめ虫だなんて誰も見たことないから珍しいのだ。

まあでも、ここがモンスターのいる世界ならその限りでもないけどね。

とにかく今は人目につかない方が身のためだ。


髭モジャの父親は食べかけのキャベツを持って家の中へ戻って行った。


「そのキャベツはどうしたの?」

「ゴンゾウがこれで遊んでいたんだ」

「いやだわ。どこから持って来たのかしら」

「とりあえず家畜のエサにでもするよ」


そんな会話が聞えて来るのを確認してから私は民家から離れた。

ここに留まっていても食事にありつける訳でもないからそうしたのだ。

特に行くあてはないがとりあえず眠る場所を探さなければならない。


(齢14歳の美少女が野宿なんてしたら危険過ぎるからね……今はちょめ虫だけど)


私は家畜達のいる村の西側へ向かう。

人目につかないところで休まないといけないのでそうしたのだ。

あいにく家畜の小屋ならば暖はとれるしエサも残っている可能性がある。

まあ、家畜が食べるエサなんてたかが知れているのだが。


「ブヒッブヒッ」

「ちょめ」 (ここは豚小屋のようね。ちょっと臭うわ。芳香剤でも置きたいところだわ)


でも豚に塗れていれば温かそうだから宿の候補のひとつね。


私は豚小屋から離れると隣にあった鳥小屋へ足を向ける。

鳥小屋の中では鶏が熟睡中で静かに寝息を立てていた。


「ちょめ」 (ここは良さそうね。そんなにも臭くないし、鶏に抱かれていれば暖もとれるしね)


不意に鶏の足元を見ると卵がひとつ転がっているのが見えた。


「ちょめ!」 (ラッキー!あの卵をもらえば卵焼きを作れるわ。どうせならミルクを混ぜてスクランブルエッグにしたいところね。そこにチーズも入れたら最高だわ)


考えただけで涎が出て来る。

丸一日ろくなものを食べていないからお腹はペコペコだ。


私が涎を垂らしながら卵を見つめていると鶏が急に飛び起きた。


「コケーッ、コケーッ」

「ちょめっ」 (ちょっと何よ。そんなに怒らなくてもいいじゃない。私は卵泥棒じゃないのよ)


鶏は興奮しながら羽をばたつかせて威嚇して来る。

勢いよく網に飛びつくので私は思わず後ずさりしていた。


「コケーッ、コケーッ」

「ちょめちょめちょめ」 (確かに卵を食べようとしたけど、それは妄想の中でのできごとなの。悪気はないわ)


それでも鶏は興奮しながら私に飛びかかろうとする。

おかげで卵が10個も隠し持っていたことがわかった。

朝になったら鶏小屋を空けて鶏を追い出してから卵を盗ろう。


卵10個もあればスクランブルエッグだけじゃなく味玉も作れそうだ。

お米とチキンを手に入れればオムレツも作ることができる。

案外ここは穴場なのかもしれない。


「ちょめ……」 (ムフフフ……。明日が楽しみだわ)


私は鶏小屋から離れると傍にあった馬小屋の中へ入った。


馬は私が近づいても驚いた様子もなく乾草を食べている。


「ちょめ」 (やっぱり下等動物の豚や鶏とは違うわ。さすがは馬ね)


”ななブー”推しだから豚のことは悪く言いたくないけど”ななブー”はコブタを守護している星のアイドルだから違う。

家畜の豚は後で人間に食べられてしまうけれどコブタは食べられたりはしない。

”ななブー”はそんな薄情なことはしないのだ。


私は馬を潜り抜けて行くと山積みになった乾草に飛び込んだ。


「ちょめ」 (ちょっとチクチクするけれど乾草のいい匂いがして温かいわ。これならばいい夢がみられそう)


私は山積みになった乾草から顔を出すと馬に挨拶をした。


「ちょめ」 (一晩お世話になるわ。私はマコ。よろしくね)

「ブルルルン」


馬は私をその大きな眼で見つめると小さく鳴いて応えてくれた。


さすがは動物の中でも賢い馬だけのことはあるわ。

私を見ても驚かないし、威嚇もして来ない。

豚や鶏が夜盗だとしたら馬は聖騎士ね。


馬は乾草を咀嚼しながらゆっくりと食事をしている。

そんな様子を見ていたら私も干し草が食べれるような気がして来た。


「ちょめ」 (そんなに夢中になるくらいだから乾草は美味しいのよね)

「ブルルルン」

「ちょめ……」 (ちょっと分けてもらおうかしら……)


私は馬の真似をして欲し草を頬張って咀嚼してみた。


ムシャムシャムシャ。


「ちょめっ」 (ぺっぺっぺっ。マズいわ……よくこんなマズいものを食べられるわね)

「ブルルルン」


やっぱり私は高等なちょめ虫のようだ。

普通の虫とは違って味覚はデリケートのようだから人間が食べるものじゃないと合わないらしい。

これも元が人間だったことの名残なのだろうか。

どうせなら味覚もちょめ虫仕様にしてもらいたかったわ。


(ねぇ、ちょめジイ。贅沢は言わないからおにぎりを召喚してちょうだい。おにぎりぐらいこの世界にもあるでしょう)

(パリポリ……ガブガブ。ダメじゃ)

(何でよ。これじゃあお腹が空き過ぎて眠れないわ)

(これも試練じゃ)

(何よ、自分ばっか好き放題してさ。私にもちょっとおすそ分けをしてくれてもいいじゃない)

(ワシはこの世界のことを思ってしていることじゃ。これは怠惰ではないぞ)


ちょめジイはあくまでも私の要求に答えないつもりだ。

自分は漫画を読みながらポテチを食べてジュースまで飲んでいるのに。

それがこの世界にどれだけ悪影響を与えているのかを知らんふりをしている。

もし、この世界に日本の文化が流入しようものならば世界が壊れてしまうだろう。


(それなら”カワイ子ちゃんの生ぱんつ”を100枚集めないからね)

(別にワシは構わんぞ。お主がちょめ虫として1000年生きるだけじゃからな)

(ちぃ……あげ足をとってからに)

(お主は”カワイ子ちゃんの生ぱんつを100枚集める”ことが宿命なのじゃ)


反論もできない。

私がちょめ虫に転生してしまったがために負った宿命なのだ。

もし帰れるのならばすぐにでも日本に戻りたい。

よくある転生小説のように殺された訳でもないのだから。


(わかったわよ。もう、いい!)


これ以上、ちょめジイにお願いしても無駄だ。

口を開けば”カワイ子ちゃんの生ぱんつを100枚集めろ”だのとほざく。

それはちょめジイの趣味なのだから自分ですればいいのだ。


(私がちょめ虫になったばかりに……クソッ)


私はお腹がグーと鳴るのを子守歌にしながら静かに目を閉じた。


(……)


瞼を閉じても浮かんでくるのは食べ物ばかりだ。

ラーメンにハンバーガーにチャーハンにたらこパスタ。

どれも炭水化物だらけでダイエットには不向きのメニュー。

ただ、人間がここぞとばかりにお腹を空かせたときは炭水化物を欲することがわかった。

普段は肉に目が行きがちだが人間が一番好きなのは炭水化物なのだ。


「ちょめっ」 (ダメだわ。全然眠れない。目を閉じると食べ物ばかり浮かぶから)


すごく疲れて眠いはずなのに眠気に食欲が勝ってしまう。

深い眠りに入るのであれば何かお腹に入れないといけない。


「ちょめ……ちょめ……」 (おにぎり食べたーい……ラーメン食べたーい……)

(そんなことを言ってもやらんからな)

「ちょめ……ちょめ……」 (ピザ食べたーい……かつ丼食べたーい……)

(……)

「ちょめ……ちょめ……」 (海鮮丼食べたーい……うな重食べたーい……)

(あーっ、煩い奴じゃ)


私がここぞとばかりにちょめジイの頭に念仏のように念話を送るとちょめジイが観念した。


(今回だけ特別じゃからな)


そう言ってちょめジイが召喚して来たのはツナマヨのおにぎりひとつだった。

ちゃんとこの世界に悪影響がないようにパッケージは取り除かれている。


「ちょめぇ」 (やっぱりデキる男は違うわね。さすがはちょめジイだわ。神様仏様ちょめジイ様)


私は嬉しさのあまり思ってもいないことを口走っていた。


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