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転生してもラッキーアイテムを占っています

作者: もりのはし

異世界転生ものが好きで、書いてみました。

好きだけれどあまり知識がないので、変なところがあったら教えてください。

 私、ミリア。十六歳。

 スティア王国の首都“ラグアス”で、ひとり暮らしをしている。


 いきなりだけど、私には前世の記憶がある。


 前世の私は、二十一世紀の日本で占い師をして暮らしていた。

 自分のお店でお客さん相手に占ったり、あとは雑誌の星座占いなんかもやっていた。

 占いは好評だったけど、私が発表するラッキーアイテムは、なぜか持っていたら逆に不幸になったとかでクレームばかり来ていたっけ。


 ちゃんと占いで出たものを書いていたのに……。



 そんな日々を過ごしていたある日、私は死んだ。


 自分が発表するラッキーアイテムが、なぜ不評なのかを確かめるため、占いで出たラッキーアイテムを持って過ごしてみることにしたのだ。

 結果、道に落ちていたバナナを踏んで足を滑らせ、頭を打って死んだ。




 次に目を開けると、前世の記憶を持ったまま剣と魔法の世界──異世界に転生していた。


 生まれたばかりの頃はこの世界にワクワクしていたなあ。


「あー、あうー(これって転生ってやつだよね? もしかして私、すごい才能を持って産まれたのかも!)」


 けれど、ワクワクは早々に消え去った。


 剣は分からないけど、私には魔力がなかった。マジックポイントが五しかないって、一回ホ◯ミを使ったら終わりじゃない。


 そんなわけで、私の第二の人生はハズレだ。


 私が生まれたところは、前世で言うド田舎みたいなところで、周りは森と畑しかなく、子どもも少ない。村の大人たちは、朝から晩まで畑や家畜の世話に大忙し。

 一歳になったときには、すでに両親は畑に出ていた。なので、私の側には隣に住む一つ年上の幼なじみ・ガブリエルしか居なかった。


 前世の記憶のおかげで、教えられなくても大抵のことは一人で出来てしまった私は、(よわい)六歳にして早々に第二の人生に飽きた。


(あ〜〜〜〜、ヒマ。代わり映えのしない景色に、人。アニメみたいなことも起こらないし。毎日、切り株に座って空を見るしかやることない)


 ヒマをもてあました私は、屋根裏に眠っていた占い道具を使って、前世と同じ占いを始めた。

 なんで家に占いの道具があるのかというと、昔ママが占い師になりたくて通信教育を始めたそうなんだけど、思ってたのと違ったとかで辞めてしまったそうだ。

 そうして、屋根裏でホコリをかぶっていた占い道具を私が見つけた。

 本当はパパやママの運勢なんかを占ってあげたかったけど、忙しいパパとママには子どもの占いごっこの相手をしている時間はなかった。

 最初の一週間くらいは毎日ガブリエルを占っていたけど、またそれも飽きそうになっていた。


 そんなとき、七歳を迎えたガブリエルが


「明日、森に一人で野草を取りに行くんだ! ……怖い動物が出ないと良いけど」


と、ワクワクと不安が入り交じった顔をしながら話してきた。

 森とは、私たちの住む村のすぐ近くにある“トングの森”のことだ。森の中は、ウサギやリスといった小動物しか生息しておらず、モンスターもいない。子どもが一人で行っても比較的安全な場所だ。


(怖い動物なんていないと思うけど……)


 子どもっぽくない私は、村の数少ない子どもたちから遠巻きにされていた。そんな私の隣にいつも居てくれるガブリエル。


(前世では不評だったけど、今世では大丈夫かも。それに、効果はなくてもお守り代わりにでもなれば……)


 すぐに家に帰り、明日のガブリエルのラッキーアイテムを占ってみた。幸い家にあるものだったので、次の日森に向かうガブリエルにラッキーアイテムを渡せすことが出来た。

 悪いことが起きませんように。





 夕方。

 切り株に座ってオレンジ色の空を眺めていると、なにやら興奮した様子のガブリエルがやってきた。

 良かった。生きてた。


「ミリア! ミリアのくれたラッキーアイテムのおかげで、ボク、モンスターをやっつけたよ!」

「え、モンスターが出たの?」


「うん。えっと……



森のなかでボクが薬草をとっていたら、草のなかからワァッ! てモンスターが出てきたんだ!


モンスターはでっかくて、黒くて、全身毛皮におおわれていて、キバやツメもとがっていて、見てすぐにモンスターだって分かったよ。


ボクは急いでモンスターから走って逃げたんだ。母さんにモンスターが出たら走って逃げろって言われていたからね。


でも、モンスターはボクを追いかけてきた。


走っても走っても追いかけてきて、あとちょっとで追いつかれちゃう! ってところで、ボク、木の根につまずいて転んじゃったんだ。


そしたら、森に行く前にミリアがくれたラッキーアイテム?がポケットから落ちちゃったの。


あっ! て思ったら、モンスターがそれを拾って、フタを開けて、中身をなめちゃったんだ!


小ビンの中に入ってた金色のトロトロしたやつを!


そしたらね! そしたらね!


モンスターが森のおくに帰って行ったんだ!


ミリアがくれたラッキーアイテムは取られちゃったけど……モンスターをやっつけたんだ!



ミリアが占ってくれて、ボクにラッキーアイテムを持たせてくれたからだよ。ミリア、君って本当にすごいや!」


 たまたま運が良かっただけで、私がすごい訳じゃないけど、ガブリエルが喜んでくれているし、いっか。


「どういたしまして」


 あとで分かったことだけど、ガブリエルが森で出会ったのはモンスターではなく、ただのクマだった。

 おそらく初めてクマを見たこととその時の状況から、とても恐ろしいモンスターに見えたのだろう。

 ちなみに、私がガブリエルに渡したラッキーアイテムは『ハチミツ』だった。


「やっぱりクマって、ハチミツが好きなのかな?」




 それから二日後。


 私の家の前には長蛇の列が出来ていた。


 なんでもガブリエルのラッキーアイテムの話が、ガブリエルからガブリエルの両親へ、両親から隣の家の人へ、隣の家の人からまた隣の家の人へ……そうして村全体へ広がってしまい、私にラッキーアイテムを占ってほしいって人が集まってきてしまった。

 私は家の前にテーブルとイスを置いて、前世でよくやっていた駅の近くにいる占い師みたいなことを始めた。

 相手の話を聞いて、占い、ラッキーアイテムを伝える。


 ラッキーアイテムは星座ごとに分かるものだからひとりひとりを占う必要はないんだけど、占いで分かるのは『乙女座のラッキーアイテムは金塊』みたいな感じで、全ての人が用意出来るものとは限らない。なので、私は全員の話を聞いて、この人は持っていそう・用意出来そうと思うものに変えて教えてあげている。例えば、ラッキーアイテムが金塊ならコインにするとかね。

 占い料は、一人一ベル。日本円で一円くらいかな。

 安すぎると思うかもしれないけど、うちの村は物々交換が主流であまりお金の使い道もない。それに、占いは私の趣味みたいなものだしね。あと、お金を払ったのに、前世みたいに良いことが起こらない・逆に不幸になったなどということが起こったら、私もパパもママもこの村に居られなくなっちゃう。


(ガブリエルみたいな奇跡は起こらなくても、持っていたら何か良いことがあるかもくらいの、お守りみたいなものだと思ってもらえればいいや)


 そんな思いとは裏腹に、なんと私の占ったラッキーアイテムを身に付けていた村人すべてに良いことが起こった。


 ある人は、運命の相手に出会って良い関係になった。


 ある人は、病気が治った。


 ある人は、行方不明だった家族が帰ってきた。


 などなど。

 村では、私の占うラッキーアイテムを身に付けていると必ず幸運が訪れることから『幸運のお告げ』だと評判になった。


(いやいや、ラッキーアイテムにそんな力ないし……もしかしてこれが異世界パワーってやつなの?)




 数年後。

 一足先に村を出たガブリエルに誘われて村を出る十四歳になるまで、私は村の中で神様のような扱いを受けた。

 まあ、毎日『幸運のお告げ』と言う名のラッキーアイテムを占っていただけなんだけどね。


 村を出て町の新聞社で働いていたガブリエルは、町に出てきたばかりの私に、占いコーナーの執筆の仕事をくれた。


 今まで他の新聞にはなかった占いコーナーはすぐに話題になり、新聞は飛ぶように売れているとガブリエルが嬉しそうに話していた。


 私は、新聞では名前を出さずに執筆しているおかげで村に居た頃のような扱いも受けず、自由気ままに暮らしている。


(最初は神様みたいな扱いも良かったけど、なーんか疲れちゃったんだよね)




 現在。

 ミリア、十六歳。


 どこで漏れたのか。

 ある日、直々にラッキーアイテムを占ってほしいと言う二人の男が、私の前に現れた。


「なあ、国民の……いや、俺のために毎日幸運のお告げをくれないか?」


 家の目の前でプロポーズをするみたいに地面に膝をつき、バラを一輪こちらに差し出してきた男。

 この国“ティスア”の第一王子サルバ・ティスア・ヘーゼル。


「そなたの占いとやらで分かる幸運のお告げは他とは違う。その力、われのために使え」


 買い物から帰ってきたら、なぜか家の中に居た不法侵入男。

 魔界の王“大魔王”アリヴァ。




 うーん。

 とりあえず、


「新聞を読んだら分かるから、帰ってもらっていい?」


 


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