エピローグ
減速──ブレーキ──停車──ニュートラルを確認──キーをオフ。
これまで何千回とやってきた操作=ニシの愛車/ヤマハの大型バイク/今時珍しいレシプロエンジン。
魔導セルによる電動カーが主流になりつつある昨今=騒音&排気ガスというだけで職質の対象に/しかし4気筒サウンドの虜。
東京潰瘍が見渡せる自宅/元々は築年数の古いアパート/利根川沿い/周囲に建物はなく基礎部分だけが残っている。住宅街ともいえない寂しい環境の中では大音量を発する乗り物にクレームを言う人=ゼロ。
駐輪場/ひさしの下にバイクを入れる/ヘルメットを取る=ため息。
嘘を言うのに慣れていない/泣かれるのに慣れていない=迷った挙げ句にまだハセガワさんにLINEを送っていない。
加えて藤堂社長から、あのジンに対する有効打を聞き出せなかった。
「どうしたらいいと思う?」
相談相手=カグツチは家の中にいる/子どもたちとゲームしているせいか返事がない。
あるいはカナへ/スマホを点けたがすぐにオフ=たぶん二日酔いでまだ寝ているはず。
常磐の会長なら何か手立てを知っているか/しかし会長の性根がわからない。害ある存在かもしれない。
ニシは玄関を開けた/玄関の小さい段差に腰掛ける小さい影=サナ。
「あ、お兄さん。おかえりなさい」
「サナ、大丈夫か?」
ニシはしゃがんでサナと視線を合わせた。
「お兄さん、覚えていますか。もし、私が記憶を取り戻したいと思ったらそれに協力してくれるって」
「あ、ああ。確かに言ったが」
「方法はあるんですね」
「なくはないんだが、荒療治なんだ。あまりおすすめできない」
「それでも構いません、お兄さん。私、決めたんです。記憶を取り戻したいです」




