008_洗浄無情
「うえぇんっ」
雪女の子供が、泣いている。
「うぐ、ふぐぅっ」
山男の子供も、泣いている。
しかも雪女より体の大きい山男の方が、激しく泣いていた。
時折母親らしき名前を読んでいるあたり、見た目以上に幼いのかもしれない。
勝手口に回った後、あたし達を待ち受けていたのは、紅ブンブクさんによる容赦の無い洗浄だった。
無患子という実の果皮は、水に浸すと泡が立つ。
糸瓜のたわしをそれで濡らし、紅ブンブクさんは力一杯あたし達の体を削り……磨き始めた。
その痛みに悲鳴を上げ、実際泣いてしまったのが雪女と山男の子供だ。
もっとも、雪女の方は店の裏庭で男女の区別なく裸にされたことの方が、堪えたように思う。
洗われる前の方が、激しい抵抗を見せ泣き叫んでいた。
あたしは見せて恥ずかしいような体をしていないので、気にならない。
ただそれは誇れるという意味ではなく、貧相な体だからという理由だけど……。
この十日間、家に居た時よりしっかり食べられたおかげで、多少肉は付いたと思う。
なのに、あたしより幼い雪女に女として明らかに負けている。
くっ、これが種族の差……いや、元姉はしっかり膨らみがあったから、単にあたしだからか。
起伏の少ない体を見下ろし溜息一つ吐いていると、鬼熊の子供がぽんと肩を叩いてくれた。
熊っとした厳つい容姿だけど、案外優しい。
というか今の気遣いからして、実は女の子だったのか……。