020_就寝後
体を拭き終えた後、傷口に軟膏を塗り新しい包帯を巻き直し終えると、少年は既にうとうとしていた。
あたしは布団に寝かせ、
「おやすみなさい」
と告げてから、盥や取り替えた包帯を持ち、行灯を消しその場を離れた。
幸い月が明るく、射し込む光で歩くのに困りはしない。
里育ちで、元々夜目は利く方だし。
水瓶から綺麗な水を汲み、食器等と一緒に外で洗う。
ちなみに、あたしの夕餉は少年の食べ残し。
色んなことがあり過ぎて、決め事以外で世話役に許されることまで気が回らなかったからだ。
「明日にでも侍従頭に聞いてみよう」
ついでに少年の傷痕……については聞かないにしても、なぜ血を採るのかも。
片付けを終え、あたしは土間に敷かれた筵に横たわった。
ようやく一息付いて思うのは……。
「怒涛の一日だったなあ」
これに尽きた。
青都へ着いてから、どれも現実とは思えないことの連続で、夢だと言われた方がまだ受け入れ易い。
「ただ、懸念していた気が触れる心配は無さそう」
少なくともあの姿を見たせいか、少年の美しさにやられる気はしない。
もっとも、六日後のことを考えれば油断できないのだけど。
いや、共感したからこそより危険になった可能性はある。
「まあ、きっと大丈夫……かなあ」
予想が一瞬で揺いだことに不安を覚えつつ、あたしは本当の夢の中へと落ちていった。




