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002_口減らし


 天高く、細い雲が幾筋もたなびく、秋の半ば。


 既に寒いと感じる山中を、あたしは朝から晩まで歩き回っていた。


 赤や黄の落ち葉に、葉を落とさぬ樹の緑、空の青。


 色彩豊かな秋の山は、ぼうっと見ているだけでも飽きないが、そんなことに(うつつ)を抜かしていると、後でどんな仕置きをされるか分からない。


 獣は実りの秋に蓄え、冬へ備える。


 それはあたし達も同じだ。


 そしてこの時期のあたしの仕事は、山で木の実を拾い、仕掛けた罠を見回ること。


 しかも、一定の量を持ち帰えれと言われている。

 

 できなければ、良くて飯抜き。


 悪いと折檻(せっかん)のおまけが付いてくる。

 

 ちなみに、この罰はあたしだけだ。


 兄や姉に科されたことはない。


 兄は妖力で体を強くできる、赤鬼。


 姉は妖力を用いた術を放てる、青鬼。


 一方のあたしは、妖力を持たない白鬼。


 白は各種族で稀に生まれる妖力を持たない者で、忌子(いみご)とも呼ばれる。


「この分だと、ぎりぎりかな……」


 背負い籠の重さが、心許ない。


 ここ数年、山の恵みが減っている。


 里では忌子がいるせいだと、声を潜めることなく言われるけど、あたしにそんな力があればとっくに恵みを消している。


 日頃から満足に食わせてもらっていないあたしは、真っ先に死ぬだろう。

 

 でも、死なば諸共(もろとも)だ。


 少なからず里の者を道連れにできると思えば、本望とすら言える。


 そんな良くないことを考えたせいだろうか。


 疲れた足を引き摺り家に帰ると、父親からこう告げられた。



「お前を売って冬の備えを補う」



 その言葉に、心に浮かんだのは怒りや悲しみじゃなく。


 こんな時ですら名前を呼んではくれないのかという、ただその想いだけだった……。


続けてお読み頂いた皆様、ありがとうございます。

本日はこれにて、明日は朝7時に投稿予定です。

今後共お付き合い頂けましたら、幸いです。

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