016_試し試され
その後、侍従頭は細々とした説明をし去っていった。
教えられたのは離れの間取りや、清めの酒、食材について。
そして前回血を採ってから三日経っているため、七日後に取りに来るということ。
あと、短刀と一緒に渡された恰幅の良い男の拳大はあろうかという壺。
これに入るだけの血を採る必要があるらしい。
一連の遣り取りに、少年は何の反応も示さなかった。
何度も見てきた光景なのかもしれない。
都では珍しい忌子に大金を払い試す程には、試された者が多くいたのだろうし……。
少年の浮世離れした容姿に、気が触れる者が出るのは分からなくもない。
ただ自害という言葉とは、結び付かなかった。
「でも今なら分かる気がする、分かりたくなかったけど……」
男女年齢問わず、魅了しかねない容姿の少年。
そんな少年に刃を突き立て、血を採る。
ある者には、背徳的な快楽を。
ある者には、罪と後悔の念を。
そういう感情を掻き立てられたのではないかな。
前者は気が触れたと判断され、後者は自害という形で最期を迎えたとしたら……。
「これは運が良いのか悪いのか」
気が触れたと判断された者がいても、少年はこうして生きている。
あたし達以外に誰かがいる気配はないけど、それこそ呪具か何かで監視しているのだろう。
いざという時、あたしを止めるために。
恐らく、あたしの命ごと……。
飢えたり、体を酷使されるようなことはさそうだけど、果たして心が持つのだろうか。
まだその経験をしていないあたしには想像しかできず、不安が募るばかりだった…………。




