015_黒き出会い
歳はあたしより、二つ三つ下かもしれない。
形の良い眉の下にあるのは、長い睫毛に覆われた黒い瞳。
鼻筋は細く、小さな顔に品よく収められている。
体付きは華奢で、振り向き少し着崩れた黒い浴衣の隙間から覗く鎖骨が艶かしい。
じっと見ていると、少年だと感じたのが間違いではなかったのかと不安になる。
少年のような少女、或いは少女のような少年。
どちらもあり得そうだった。
確かめたい誘惑と、知らずに幻惑されていたい想いが、心の中で葛藤する。
誰かにこれ程見蕩れたのは初めてで、さっきから心臓が早鐘のように鳴っていた。
けど、それも手足に巻かれた血の滲む包帯を見て鳴り止んだ。
しかも改めて見れば、異常はそれだけじゃない。
少年……と仮定するけど、少年にはあたしと同じ角がある。
けどあたしと違い、その角は一本。
一角の鬼もいるが、その場合は額の真ん中に生える。
しかし少年の角が生えている位置は、額の左側。
右側には、生えていない。
この少年、咎者なんだ……。
この世に生を受ける時、授かるものを授けられない者がいる。
里で目にしたことがあるのは、手足や指が足りない者。
そういう者は祖先の咎を背負う定めにあるのだと、里では言われていた。
でも種族の証に咎が及んだ子を、あたしは知らない。
「……」
少年はあたしの動揺など気にした様子もなく、無言で縁側の外へと向き直る。
するとそれを見計らったかのように、侍従頭が声を掛けてきた。
「あの方に仕えるのが、お前の仕事だ。それから、六つ目の決め事を伝える」
唐突な決め事の追加……嫌な予感がする。
そして嫌な予感程よく当たることを、あたしは身を以て知った。
侍従頭が、懐から徐に短刀を取り出す。
「十日に一度、この短刀を用いてあの方から血を採れ」
「なっ」
頭が驚きで真っ白になる。
そして気が付くと、あたしはいつの間にか短刀を握らされていた……。
お読み頂き、ありがとうございます。
連休はいかがお過ごしだったでしょう?
心身は休められたでしょうか??
憂鬱な連休明けの平日、またこの時間にお届けできればと思います。




