表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/56

012_道中問答


 本当に見回りの最中だったらしく、あたしは店を出た男の後ろを付いて歩くことになった。


 ……いや、買われた以上、声に出さずとも男呼びはまずいか。


 そう言えばツルギ家の御当主様だと、ブンブクさんが言ってたな。


 ならツルギ様、もしくは御当主様?


 どちらが正しいのか分からないけど、ひとまず御当主様にしておこう。


 方針を定めよしよしと頷いていたら、男……御当主様がこちらを上から下へ無遠慮に眺めていた。


「こうして陽の下で見ると、本当に白いな。それだけ白いのは忌子でも珍しい。髪だけでなく、鬼の証たる角までとなれば尚更だ。もっとも、目は紅いようだが」


 その視線には、嫌悪を感じない。


 あたしにはそれが不思議だった。


「ごっ、御当主様は気味悪く思わないのですか、あたしのような忌子を」

 

 思い切って尋ねてみると、


「魔物よりはましであろう」


 という身も蓋もない答えが返された。


 旅の途中で遭遇した猪の魔物に比べれば確かにそうかもしれないけど、よりにもよって比較対象があれか……。


 釈然としないあたしを置いて、言葉が続く。


「それに驚きの方が勝っておる。都の外で、忌子がここまで育つことは滅多にない。殆どは生まれ落ちて直ぐ、黄泉(よみ)へと(かえ)されると聞いているが?」


 問い掛けに、心へ鈍い痛みが走るのを感じながら答える。


「……母が病弱で、女手が足りなかったからだと思います」


 実際には男手も足りず、妖力の無いあたしはそっちもやらされたのだけど、そこまで言う必要はないか。


 ただ、御当主様は興味深そうに聞いていた。


「なるほど……しかし()せぬな。クシナといったか? そのように育ったにしては、学があるような喋りをするではないか」


「母が、忌子ならせめて学を身に付けておけと……」


 母が生きていた頃は、朝から晩まで働いた後に読み書きを叩き込まれた。


 半ば、()()()()の意味で。


 当時は、そんなことより早く寝させて欲しかったものだ。


 けど生きていれば、何がどこで活きるか分からない。


 実際、それを聞いた御当主様は『思わぬ拾い物やもしれん』と、どこか機嫌良さそうに口にしていたのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ