011_二度目の値付け
男の言葉に、あたしとブンブクさん以上の反応を見せたのが、店で同じように買われるの待っている者達だった。
「どうしてあんな無能が」
「忌子の分際で」
「私の方が絶対役立つのに」
などと、一斉にあたしを下げに掛かる。
別に皆の言葉を否定するつもりはないけど、それって客である男の意思にけちを付けることになるのでは?
恐る恐る男を窺うと、気にした様子もなくブンブクさんに話し掛けていた。
遣り取りの最中、ちらっとブンブクさんと目が合う。
にこやかなその目は、良い商いとなったことを喜んでいる。
加えて、周りが羨む程の相手にあたしが買われたことを純粋に祝う、そんな気遣いの色も見えた。
ブンブクさんには、里での別れの様子を見られているからなあ。
商い屋として同情はしないまでも、気にはなっていたのかもしれない。
おまけにあしたは、忌子だしね。
男はその後、以前元親へブンブクさんが渡したのと同じくらいの大きさの袋を差し出した。
あれが次なる、あたしの値段。
ブンブクさんが恭しく両手で受け取ると、その手がぐんと沈み込む。
慌てて力を籠めた様子から、ブンブクさんにも予想外の重さだったらしい。
金に糸目は付けないという話だったけど、実際どれだけの値が付いたのか……。
笑顔を引き攣らせたブンブクさんの顔を見て、あたしは空恐ろしくなった。
高い値には、訳がある。
あたしへ付いた値には、どんな訳があるのやら…………。




