やっちゃいました
第3話投稿時、間違って完結にしてしまってめっちゃ焦りました(つд;)
アデューは、路地に身を潜めて立っていた。
そこから薬屋の扉が見え、誰かが出てくるのを今か今かと待ち続けている。
途中、朝早くにも関わらず、ゴミ出しに出てきたおばちゃんに悲鳴を上げられたが、気にしないでおく。
明かりがついた。
店に突撃したい気持ちをグッとこらえ、その時を待つ。しばらくすると、ようやく店の扉が開いた。
(リーリア!)
リーリアが店から出てきた。
やはりここにいた!とその姿を確認し、安堵と歓喜に震える。
路地から飛び出しかけた次の瞬間、アデューは目を見開いて息を飲んだ。
リーリアの後ろから、1人の青年が出てきた。
思わず足を止め、再び隠れた。
うるさいぐらいに鳴る心臓を服の上から押さえ、爪を立てる。フーッ!フーッ!と息が荒くなり、怒りで気が狂いそうになる。
(誰だ!だれだダレだダレダ!!)
リーリアが頼ったのは、自分でもなく、育ての親である薬屋の婆さんでもなく、あの男だというのか!
アデューは嫉妬と寝不足と疲労から、まともな判断が出来ないでいた。
出てきたのが薬屋の店番をしている青年だということに気付かず、薬屋の中にお婆さんがいる可能性を考えもしなかった。
ただただ、自分は拒絶され、目の前の青年が受け入れられた事実に打ちのめされていた。
リーリアはこちらにまだ気付いておらず、青年と親しげに話をしている。
青年がこちらを一瞬見た気がした。
直後、青年はリーリアの耳元に口を寄せ何か喋ると、リーリアは驚き、真っ赤になって恥ずかしそうに俯いた。
あいつは誰だとか、なんでそんなに近いんだとか、リーリアはなんでそいつに笑顔を向けるんだとか、色んな考えがよぎる。
なんで、そんな、、
呆然と、ふらふらとした足取りで近付くと、かすかにリーリアの声が聴こえてきた。
「‥ょう、あ‥とう。また泊まっても、、いい?」
「まったく‥その代わり部屋は自分で片付けな」
「いいの!?もちろんやるよ!ありがとう!」
青年に満面の笑みで抱きつくリーリア。
それをいとおしそうに抱き止めて、背中をなでる青年。
もう、限界だった。
アデューが走って二人に近付くと、足音に気付いたリーリアが青年から体を離し、慌てて青年の後ろに隠れるように逃げた。
それを見たアデューの胸はズキリと傷んだ。
(なんで逃げるんだ!なんで俺じゃないんだ!)
苦しくて悲しくて、自分ではもう押さえきれない感情が怒りとなって、リーリアをかばうように立つ目の前の青年へと向かう。
青年はアデューを冷めた目で一瞥し、リーリアは顔を赤らめながら青年の服を掴んで俯いた。
なんだよ、なんなんだよその顔は。
無意識に拳を握りしめ、爪が食い込んで血が滲む。怒りで痛みは感じなかった。
「あんたは、リーリアのなんなんだ?」
怒気を含んだ声に、リーリアの肩がびくりと跳ねる。
それを、ちらりと横目に見た青年はため息を吐いて、アデューを下から睨み付けた。
「そういうあんたは、この子のなんなんだい?」
俺は、、おれは、リーリアの‥
「俺はリーリアの好きな男だ!!」
「あ、アデュー!?」
俺は怒りにまかせて大声で怒鳴っていた。
リーリアは真っ赤になって、非難めいた声をあげた。
「ふ、ふふっ、ぶっ、ふふふっ!」
口許を押さえて笑いを堪えようとするも、堪えきれずに笑いだす青年。
俺と青年を交互に見てオロオロするリーリア。
青年はひとしきり笑うと目尻に貯まった涙を指で拭い、アデューを挑発するようににやりと笑った。
「で?」
青年はリーリアの横に立ち、肩を抱く。
「私もリーリアに愛されてると、自信をもって言えるが?」
「なっ!?」
「ちょっ、しっむぐっ?!」
青年はリーリアの唇に人差し指を押し当てて言葉を遮ると、その手を頬に滑らせる。
リーリアが導かれるように青年を見上げると、彼は不満そうな顔で問いかけた。
「なんだ、違うのかい?」
「え?!それは、その、、違わないけど‥」
リーリアはもじもじと答える。
「だろう?私もリーリアを大切に想っているよ」
「‥ふっざけんな!」
アデューはリーリアの腕を掴んで引き寄せると、その胸に抱き締めた。リーリアが自分を呼ぶ声が聞こえたが、気にしていられない。
「俺の方が!俺が!!
1番リーリアを愛してんだよ!!」
「えぇっ!?」
「へ~?」
リーリアがすっとんきょうな声を上げ、青年はにやにやと笑みを崩さない。
その余裕な様子にアデューの苛立ちは最高潮になる。
「リーリアは絶対に誰にも渡さねぇ!!」
「「あ」」
「アデュー!?ちょっ、んむっ!?」
俺はリーリアの顎を掴んで上を向かせると、自分の唇をリーリアのそれに押し付けた。
お互いの歯がぶつかり、あまりの痛さにお互い咄嗟に口を離してうずくまった。
口を押さえて動けないでいる二人に青年は近づくと、アデューの頭に拳を落とした。
「このど阿呆が。とりあえず店に入んな。」
青年はリーリアの肩を抱いて、店の中へ誘う。
「ししょ~、痛い~‥」
「はいはい、まったく。見かけ倒しかい。やっぱり図体だけ無駄にでかいガキだったね。」
誰がガキだって!?とイラッとするが、リーリアの言葉が引っ掛かり、その内容に困惑した。
ししょう、師匠‥って、リーリアの薬師の師匠?
は?いやまてまてまて。
師匠って言えば、フードで顔隠した陰鬱な背中の丸まった老婆だろ?こいつとは似ても似つかない‥もう一人師匠がいたってことか?
アデューの心を読んだかのように、青年は振り向きもせず
「その老婆が私だよ」
と青年は答えた。