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コンサル幽霊

作者: ジョーン

江戸時代の画家「円山応挙」、人気画家だった彼は、飲食店を営む友人に、

経営を立て直したいから何か良いアイデアが無いかと聞かれ、幽霊画をプレゼントした。


何ですか、こんな、陰気な血まみれの幽霊の絵なんて・・・

と、店主が文句を言っていると、


「陰は必ず陽に巡るもの。この絵を飾れば経営は陽に向くだろう」と答える。


その後、プレゼントされた飲食店は、応挙の幽霊見たさに

人が並ぶほどの繁盛を見せた。


こうして応挙の幽霊画は現代でも人気なのだが・・・


おやおや、この会社にも、応挙の幽霊が来るようですよ。


「おう、カギヤマ君」


「なんです部長」


「このな、この日本画、幽霊画なんだけどな、今、ウチ経営厳しいじゃない?」


「はあ」


「だから、何とか親父の実家から持ってきたわけよ」


「へー応挙の幽霊画ですか」


「何か、これを使う良いアイデアないかな?」


「置いとくだけで僕もウツになりそうです」


「・・・・うらめしや・・・」


ガタタ


「部長、何か言いましたか?」


「私は何も言っとらんよ」


「うーん変だなぁ、でもこの応挙の絵ってのは本物ですかね?」


「本物だよぉ、だって出るもん。コレが」

部長は両腕を胸の前にあて、手の甲をこちらにぶら下げてプラプラして見せる。


「出るんですか」


「親父の実家じゃあ毎晩ガタゴトやってたらしいからなぁ」


「へえーこのブサイクな絵が」


「・・・・うらめしや・・・」


ガタタ


・・・・


「・・・まさか、カギヤマ君、もう一度この絵をけなしてみてくれ」


「ええっ?そうっすねー、やーいシースルーバングー」


「・・・・・・」


「何もありませんね」


「わかりにくかったんじゃないか?」


「若い頃のデヴィ婦人に似てますね」


ガタタタタ


スゥッ


「うわぁぁ!出たぁぁ」



「あなたたち、さっきから、うらめしいわよ」


「あわわわわ」


「ぶ、部長、本物ですね!」ヒソヒソ


「お、おう。さすがは由緒ある我が家だ。本物の絵だったな」ヒソヒソ


「ちゃいますよ、本物の幽霊じゃないですか!どうするんですか、早く帰ってもらわないと」ヒソヒソ




「聞こえてるわよ!」


「うわあああああ」


「あなたたち、さっきから失礼なことばかり言って、謝りなさいよ」


「すみませんでした」「すみませんでした」


「経営をうまくいかせたいんでしょ?」


「は、はい」部長が答える。


ドンドン! 幽霊が、足がないが元気な幽霊が、胸を叩く。


「胸が、苦しい」カギヤマ君がジェスチャーに答える。


「違うわよ!私にまかせなさいよ、という事よ」


「ええ~でも、今時、幽霊に何してもらいますかねぇ・・・」カギヤマ君は疑問のようだ。


「ウチの商品、かわりに売ってきてくれたり?」部長が聞いてみる。


「そういうのは無理かもぉ」


「よく見るとカワイイっすね・・・でも何ができるんです?」カギヤマ君が聞いてくれる。


「とりあえず、お酌はできるわよ」


「ウチは飲食店じゃあないんだよなぁ」部長が嘆く。


「夜勤の派遣に行ってもらったら?」カギヤマ君が部長に進言・・・


「重いものはちょっと・・・いるだけで良いならできるかなあ」


「そんな仕事ありますかねぇ?」カギヤマ君が部長に聞いてみる。


「うーん、何かあったらお願いするから、とりあえず応接室に飾っとくか」


◇◇◇



その日からしばらく、幽霊は応接室に飾られた。


日中は外に出ないが、夕方残業時間になると、好き勝手にフヨフヨと、幽霊は飛び回った。



◇◇◇


「カギヤマ君」


「はい~」


「カ・ギ・ヤ・マ・くーん!」


「なんでしょう部長~!」


「毎日毎日、夕方5時過ぎたらフヨフヨ歩くの、あいつにやめさせてもらえないかなあ」


「ムリですよぉ、部長が持ってきたんじゃないですか」


「何か、役に立つアイデア思いついたかい?」


「そうですねぇ、やっぱユーチューブチャンネル作って宣伝しましょうか。『幽霊だけど歌ってみた』とかやりますか」


「やらないわよ!」


「やらないのかぁー聞こえてたのかぁー」


「あなたたち、今まで私ずっと応接室にいたけど、全部、会議と打合せ聞いてるのよ、カギヤマ君」


「ええ、昼も寝てないのか」


「そうよ、私はね、あなたたちの接客対応って全くなってないのに気が付いたわ」


「本当かよぉ、カギヤマぁ」


「部長もいつもいるじゃないですかー」


「まず、部屋に比べてソファーが大きい」


「ええ~そこからかよぉ」部長が嘆く。


「中小企業のくせに応接室を圧迫してたら、本来やるべき打合せがやりにくいでしょうが」


「なるほど、カギヤマ君、明日午後でも中古の家具屋、行ってくんない?」


「えー午後ですか、わかりました。営業の帰りに寄ります」


「他にも何か、気付いた点はないかね?」部長が押してみる。


「そうねえ、パートのトモちゃんと若手のいっくんは付き合ってるわね」


「マジか、トモちゃんかわいいのにチクショー」


「カギヤマぁ」部長がたしなめる。


「それと、働いてる人全員にひととおり取り()いてみたけど、みんなあんまりやる気無いみたいね。よく言えば牧歌的。悪く言えばサプライヤーの論理に甘えてしまっているというか・・・」


「ピーンときちゃいましたよ」


「さすがに古いっすよ部長。どうしました?」


「この幽霊様に、コンサルをお願いするのだ。明日社長に話してみる」


---

・・・コンサルティング (英: consulting) とは、企業(まれに行政など公共機関)など対して問題の解決策を示し、その発展を助ける業務のこと。

---


「まじかよぉ」


◇◇◇


こうして、幽霊コンサルとして彼女は正式に会社の一員となったが・・・


はてさてどうなることやら


◇◇◇


「カギヤマ君、なんか、売上は上がってないけど、生産性は上がったみたいだね」


「そっすね、残業は無くなりました。人件費が減って利益は確保できそうです」


「フフン」幽霊が満足気


「この調子で、社員にバッチリ取り()いて、会社の経営を上手く回してくれたらもう今期はなんとか万歳だ」


「いやあ、いい幽霊だなぁ、ずっとウチの守り神としていてくれよ!」


「まあ、考えてあげてもいいけど」幽霊はもっと調子に乗るのだった。



◇◇◇


そこからしばらくして、他の社員から苦情が来るようになる。


・幽霊がいると集中できない。

・寒気がしてカゼかどうかわからない。

・やる気が必要なのはわかるが、自主性に任せてほしい。

・残業ができないと残業代が貰えない分生活が苦しい。


ふむふむ


さらには


・着替え中なのに入ってくる。

・取り()いて、勝手に告白するのはやめて欲しい。

・夢にも出るが取り()いているのか、ただの夢なのかわからない。

・まじめにやってるのに取り()いて来る。

・幽霊に信頼されてないと感じる。

・幽霊が気持ち悪い。


「・・・とのことです」


「カギヤマ君、最後のはかわいそうだね」


「かわいいところもあるんですけどね」


「シクシク・・・(T_T)」


「カギヤマ君、幽霊ちゃん泣いちゃったじゃん」


「よしよし、お前はよく頑張ってるよ」


「うぇぇん、私は会社のためにぃ・・・・」


「仕方ないなあ、せっかく上向きになった経営だけど、あんまり無理させちゃいけないかな」


「えー幽霊コンサル終了ですか?」


「社員の反発もあるし、ちょっと行き過ぎたところもあったみたいだし」


「うぇぇん、私はいらない子なんだ・・・」


「よしよし、お前はよく頑張ってる、俺はわかってるからな」


「お、カギヤマぁ、そういう事ならもうお前、この幽霊持って帰っていいぞ」


「え、これ部長の絵じゃないですか、実家に怒られますよ」


「いいんだよ、持て余してたみたいだし、ほら、よく見ると山口智子みたいでかわいいじゃないか」


「え?山口智子?誰ですか?」


「うぇぇん『居酒屋ゆうれい』っていう映画があったのぉ」


「そうだぞ、カギヤマ、今のはお前が悪い!結婚する気ないんだろ?お前が一生この子の面倒見ろ」


「マジっすか、しょうがないなあ」


「・・・これからもよろしくね・・・」幽霊がちょっと顔を赤らめる。



◇◇◇


こうして、カギヤマ君は幽霊を持ち帰り・・・

二人で幸せに暮らしましたとさ。



「コンサルされながら生活するとかヤダー・・・」



おしまい。

読んでいただきありがとうございました。


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