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中級者プレイヤーの高レベルダンジョン攻略  作者: 白神シロ
第一章 『初めての高レベルダンジョン』編
1/1

第0話 辿り着いたら、今度こそ

これは、『カクヨム』でも投稿しております。

 最新型フルダイブ型VRMMORPG、『ブルー・フラグメンタル』が発売されてから、人類はVRMMOに沸いていた。

 どこに行っても、ゲーム。ゲーム。ゲーム。年配にはただの害としか思われていて、批判の声も上がるなか、やはり人気は上がる一方。もう、この人気は止められるモノではないと、専門家も語った。

 もう、止められるモノではない。──そう、誰にも。


「なあ、本当に行くのか?俺たちのレベルじゃ勝てねぇだろ?」

「うるせぇな、お前は天才頭脳持ちだろ?しっかりしてくれよ」

「だから言ってんだよ!?」

 隣でブツブツといつまでもぼやく【魔術師】(メイジ)のエイジに、俺はボケ混じりでそう言う。

 それでもまだ納得しないエイジは再びブツブツと呟く。

「だって、ここ高レベルダンジョンだぞ?推奨レベル60。俺達のレベルはまだ40。勝目ないって、カズサ」

 じとっとした目で俺に言うエイジ。

 確かに、エイジの指摘は間違ってはない。俺は視線を右上に移した。そこにはレベルを表す数字と、HPを表すバーが並んでいる。

 レベルを表す数字は41と言う表示。そしてここ、今俺たちの進んでいるダンジョンは平均推奨レベル60。確実に負ける。

 でも、仕方ない。だって、──高レベルダンジョン入りたくなっちゃったんだもん!

 と言うこと。

「もう戻れないし、頑張ろう!せめて最後まで戦って死のうな!」

「お前一人で死ね!」

 エイジの叫びが木霊していた──。


 ダンジョン深くに行く間にモンスターには一切出会わず、俺たちは張り詰めていた緊張を少し緩めた。

 こうして改めて考え直す時間があると、自分の過ちに気付く。

 俺たちは、仲良し引きこもり極小パーティーだ。まずもって近距離と遠距離いれば良くね?とか言って俺の【剣士】とエイジの【魔術師】しかいない時点で頭おかしい。

 その状態で、俺は何故か突然ダンジョンに入りたくなってこうしてこの高レベルダンジョンを歩いている。

 恐怖の1つもなかったのは最初だけ。段々奥に足を進めていくに連れて、俺たちの顔とテンションは下がりまくって、最終的にお化け屋敷歩くカップルみたいな寄り添い方して歩いてた。ラブラブ。

 そうして今に至るのだが、正直引き返そうか迷っている俺と、楽勝だと意気込むエイジの対照的な現状に引き返すことも難しい。

 エイジはもうこうなってしまっては知らぬ人だ。見知らぬ謎人間と化す。

 こうして、グダグダと進むダンジョン攻略。だが、ここまで来てハッとする。

「俺たち、モンスター倒してないからレベリング出来てなくね?」

「いきなりボス戦でレベルアップダンジョンみたいなもんだろ?······おっと、言ってる側からモンスターだぜ」

 エイジの言葉に釣られて顔をあげる。

 前方には、骨だけの盾と剣を構えたアンデッドモンスター『スケルトン』。その弱さと低レアさ故に『ブルー・フラグメンタル』中のスライムとされている。

簡単に言えばただの雑魚キャラだ。

 俺は背中から剣を引き抜いて構える。剣も、レア度は低いただの剣だが、十分にスケルトンを殺せる。

「おい、エイジ。敵の詳細」

「ああ、わーってる。······えーっと、有効攻撃属性は炎。推奨レベルは、え?嘘だろ?おい、まて」

「どうした?弱すぎるか?」

 俺は余裕の笑みでエイジを見るが、その顔に浮かぶひきつった笑みを見た俺は事態の深刻さを理解する。

 冷や汗が伝うエイジを見詰め、言葉の続きを待つ。

 やがて、エイジの口から、信じられない言葉が発せられる。

「推奨レベル、55」

「は!?」

 ほとんどのスケルトンは、推奨レベルは精々強くて30程度。つまり、このスケルトンは異常である。

 改めて、スケルトンを見る。事実を突き付けられ、びしびしと肌を叩く圧迫感に、俺たちは少し気圧される。

 だが、いつまでもこうしてる暇はない。

 俺は決心して口を開く。

「いつも通り、後方支援頼むぞ!」

「何言って──って、おい!辞めろ、死ぬぞ!」

「そんときは、ロストアイテム買ってくれ」

 背中に掛けられる必死の叫びを無視して、俺はスケルトンに突進を仕掛ける。

 スケルトンは、待ちわびたように安直な横薙ぎを繰り出す。それを、頭を下げて回避。すぐさま体勢を立て直して右肩から左下への切り下ろし。

 それは紛れもなく当たった。これでいくらかHPが──

「は?」

 俺は、視界に表示されるアタックダメージの数値を見て間抜けな声を漏らしてしまった。

 ──ダメージ0。

 突き付けられるその数値。呆然と、その数値を見詰め続けてしまう。やがてその表示が消えても、俺はそこを見続けてしまう。

 気付けば、肩にスケルトンの斬撃をくらい、HPバーがグイッと下がり半分以下まで、イエローゾーンに突入する。

 そして、体が不意に硬直し、地面に伏した。

 視線をHPバーに向ければ、そこには雷のアイコン──スタンの表示があった。

 ──雷属性!

 俺は雷属性の魔術耐性が一番低い。よりによって、この雷属性持ちが相手などとは。

 ボーッとする思考がゆっくりと持ち上げられるスケルトンの剣を見る。

 銀に煌めく禍々しい剣。それがゆっくりと俺の心臓部分に突き立てられ──俺のHPが0になった。

 光の粒子となって崩壊し、消失していく体。

 死亡演出。これで俺は、初期リスポーン地点か、または自身設定リスポーン地点にリスポーンする。俺の場合は、初期リスポーン地点。

 死亡ペナルティで一部自身所持アイテムのランダムロストが課せられる。

 剣がロストしなければ良いが······。だがもうしばらくはダンジョンは辞めよう。

 そうしているうちに、俺の体は完全に消失した。

 辿り着いたら、次は、今度こそ攻略する。

 ──中級者の、高レベルダンジョン攻略だ。

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