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31話 キャプテン無職誕生のこと

キャプテン無職誕生のこと




あれから数日。

朝に家に帰って昼あたりに避難所へ行き、農作業や炊事洗濯なんかの手伝いをして夜は泊まる。

そんな生活を続けていた。


家から持ってきたプレーヤーで夜も楽しく過ごせた。

だがやはり自分の家じゃないので心からくつろげないな。


左肩はとっくに治り、顔の傷からの出血も止まった。

神崎さん曰く抜糸はまだ先だが、やっと包帯を取れることになった。

暑苦しかったんだよなあこれ。

頭もろくに洗えないから臭いも気になってたんだ。


と、いうわけで神崎さん立ち合いの下スルスルと包帯をほどく。


「うわーお。」


30年以上慣れ親しんだ俺の顔。

それにでっかい斜めの傷が走っている。

抜糸すれば多少はマシになるだろうが、こいつは一生消えないだろう。

マジで俺が美少女じゃなくてよかった。


なんというか・・・


「某有名宇宙海賊キャプテンさんみたいだ。」


「あの、感想が大雑把すぎませんか、それ・・・?」


まあショックはショックであるが、目をやられたわけでもないし今となっては破傷風で死ぬこともない。

それに誰かのせいで負ったのなら腹も立つが、これは俺の油断が招いた結果だ。

自分に腹を立てても空しいだけだ。


怒りは両足に込めて己を支える礎とせよ。


俺の大好きな漫画の主人公がそう言っていた。

次に同じ失敗をしなければいいのだ。

生きていればなんとかなる。


いささかデカいが、この傷を戒めとしよう。

鏡を見る度に思い出すからちょうどいいしなあ。


なお、由紀子ちゃんがこの傷を見てまた泣いてしまった。

雄鹿原さんも涙目でプルプルしていた。

2人とももう大丈夫か痛くないのかと死ぬ程心配してくれた。


感受性が豊かすぎる。

優しい娘たちだなあ。


また、神崎さんには歴戦の戦士っぽくてカッコイイと思うと言われた。

評価ポイントォ・・・

まあ、当の俺が気にしてないので言ってくれたのだろうし。

腫物扱いされた方が恐縮してしまうしな。


でも見慣れてくると本当にかっこよく見えてくる。

宇宙のSEAは俺のSEA!とか歌いたくなるな。



顔面に過剰な迫力が追加されたがこれで一応復活だ。

早速この先の計画を立てよう。


宮田さんは俺に何か頼みごとがあると言っていた。

それを解決すれば貸し借りはゼロになる。

・・・俺の中では。

宮田さんたちはそんなの気にするなと言うだろうが、これは俺の心の問題だ。

充実した生活のためには、心の重荷はないほうがいい。

しっかりと準備して挑む必要がある。



というわけで、俺は避難所の近くにあるバイク販売店にいた。

スマホのスタンドアロン地図アプリのおかげですぐに見つかった。

相変わらずネットも電話も使えないが、こいつがあるおかげでかなり助かるなあ。


目的は破損したヘルメットの代わりと、防具的なものを調達するためだ。

武器類は充実しているので、次は防具というわけだ。


元はあっただろうバイクは残らずなくなり、オイル等の消耗品もほとんど残っていない。

ここら辺は略奪が盛んだったようだな。

まあバイクは運転できないし、いらないので別に問題はない。


店に踏み込むと、奥に1体のゾンビがいたのでサクッと頭を砕いて成仏させた。

店員はいたが死体になっていた。


さて、まずはヘルメットを探す。

元々のヘルメットはハーフタイプだったが、もう少し防御力が欲しい。

かといってゴツいフルフェイスのものでは逆に重すぎる。


うおっ!なんだこのシステムヘルメットっていうのは!

フルフェイスだと顎になる部分が額まで上がって、下ろすとカチッとハマってフルフェイスに・・・!

か、かっこいい・・・鋼鉄男社長みたいじゃないか!

だが、よくよく確かめたら重量はフルフェイス以上だった。

本末転倒なのでかなりカッコいいが断念。


うーん、このジェットとかいうタイプのものが無難だな。

顔面の部分にシールドがついていて、上下に開閉できるタイプだ。

今使ってるライトが干渉するが、側面にケースごとネジかなんかで固定できるように改造すればいい。

試しにかぶってみるが、以前のものより首をがっちりガードしてくれている。

こいつもなかなかかっこいいな。

重さも許容範囲なのでこいつで決まりだ。



お次はプロテクターコーナーだ。

おー、あるある。

サポーターみたいなものから鎧みたいなものまで様々だ。

防御力はもちろん欲しいが、かといって動きを阻害するようなものは困る。

肝心の剣術が使いにくくなると大変だ。

上半身の可動域を確保しつつ、それなりの防御力が欲しい。

そんな都合のいいものはそうそうないので、可動か防御のどちらかを犠牲にしなけりゃならんかなあ。


お?なんだこりゃ。


『衝撃時のみ硬化!最新のインナープロテクター!』


ふむ。

見た目は少しゴツゴツした長袖のインナーだ。

持ってみると多少重いが、そこまで気にならない。

少し試着してみよう。


なるほど、胸や腹筋、肩や二の腕、肘、背中にパッドのようなものが入っているらしい。

試しに肩の部分を木刀で叩いてみる。


うわっすげえ!固くなった!全然痛くない!


最近の科学技術はすごいなあ・・・こんなものがあるとは。

軽く動いてみるが、問題なく動ける。

よし、これをもらっていこう。

1着はこのまま着て、予備に3着ほど持っていくか。


・・・こんなに高いのこれぇ!?

おいおいおい3着で俺の差してる刀が買えるぞ・・・

・・・こんな時じゃないと見向きもしないな・・・


後は膝用の、なんか野球のキャッチャーが着けてるっぽいタイプのもので、値段の高いものを予備も含めて2つ持っていく。

ブーツに干渉しない程度の長さのものだ。

これも試着して軽く動いてみたが、高いだけあって剛性もあるし、フィットしていて動くのもさほど気にならない。

高いものはいいものだなあ。


後は太腿に装着するタイプの、頑丈そうな小物入れを見つけたので持っていく。

簡易手裏剣ホルダーになりそうだ。


フル装備で鏡の前に立ってみる。

うおお・・・すごい強そうだ。

安心感が段違いだな。


すぐに避難所に帰って細かい動きの確認をしよう。



というわけでフル装備で帰ってきた。

門番の警官をすっごい警戒させてしまった。

ごめんなさい。

脱いどきゃよかった。


避難してる皆さんを怯えさせてはいけないので、校庭の隅に行く。

ちゃんと宮田さんに許可は取ったので安心だ。


まずは木刀を軽く振り回してみる。

やはり思った通り上半身の動きはスムーズだ。

頑丈になったしヘルメットもあるので、ゾンビ相手に噛まれる心配はほぼない。

露出してるのなんて指先くらいだしな。

しかし油断は禁物。

この傷に誓って、兜の緒を締めなければ。


次に刀を差し、型の確認。

力でぶん回す木刀と違って、真剣は繊細な取り回しが必要になる。

刃筋が立たなければ、日本刀は基本的に切れない。

以前の服との違和感を解消するために、とにかく色々動いてみる。


抜き打ち、上段、正眼、下段、脇、八双その他もろもろ。

・・・やっぱりすごいなこのインナー。

ほとんど違和感がない。


だが、いかに服がすごかろうとも大事なのは俺の心。

装備に頼り切るのは愚の骨頂だ。


俺が師匠に唯一褒められたことがある。

それは、馬鹿正直に納得がいくまで練習するってことだ。

劣等生だったがそれだけは好きでやっていた。


いかん、熱が入りすぎた。

汗だくになっちまった。


一息入れて、最後に手裏剣と足技の確認をした。

うーん、この十字手裏剣我ながらいい出来だ。

多少適当に投げても刺さるのが素敵。

実際の忍者はこれに毒を塗ったりしたんだよな。


毒・・・ニコチンくらいしか思いつかねえ。

たしか某名探偵の孫の小説で、犯人が剣山に塗って殺してたなあ・・・効くのだろうか?

とっさの機会に俺が刺さりそうなので却下だけど。

あくまでこれは牽制用だ。


ふーむ・・・まあ全体的に違和感はあるっちゃあるけど、この先すり合わせていこう。

今日の所はこんなもんかなあ。



「復活したので前に言ってた依頼、受けますよ!」


「・・・本当にもういいのですか?」


「抜糸はまだ先ですが、田中野さんの回復力はちょっと異常です。大丈夫かと。」


「むう・・・」


その足で宮田さんの所に向かう。

しかし宮田さんは何故か俺ではなくそこにいた神崎さんに確認を取った。

解せぬ。

異常!?異常なんでござるか拙者は!?


「そういうことであれば・・・」


宮田さんは渋々俺に向き直った。


「田中野さんに頼みたいのは、近隣にある避難所の現状確認です。」




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― 新着の感想 ―
[一言] 田宮氏の中で凛ちゃんは田中野の配偶者なのかな? ダメ亭主に聞くより奥さんに聞くの当然でしょう? ニコチンは痛い毒で痛みで動きを阻害する系の毒で 手裏剣や吹き矢に塗って痛みで鳥の動きを阻害して…
[良い点] 最新の忍者装備を 手に入れた!
[一言] ニコチン毒は獲物を殺すのではなく、 痛みで行動不能にする毒だそうですよ? えげつないですね!だから傷周囲だけ切り取り 肉を得るそうです人間にはあまり影響のない毒だから 狩猟で使われるそうです…
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