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96話 探せ!ペットフードのこと 後編

探せ!ペットフードのこと 後編




「・・・なんで店がないの?」


「・・・ものの見事に消えとるのう」


モンドのおっちゃん宅での歓談を終え、少々遅めの出発をした俺たち。

以前、おっちゃんと一緒に行った近所のホームセンターを目指したのだが・・・


「中村さんも何も言いよらんかったし、こりゃあ・・・」


「ま、ここあそこから結構離れてますしね・・・気付かなかったんじゃないでしょうか」


お目当てである懐かしのホームセンターは、黒こげの瓦礫の山と化していた。


「放火・・・ですかねえ?」


「小競り合いか、それとも自然発火か・・・こうなりゃわからんのう」


ええい、クソ。

ここが一番だったのに・・・出鼻を挫かれちまったなあ。


周囲にゾンビや人間の気配はない。

先輩が自然体なので、よくわかる。


だが、ここでこうしていても始まらん。

瓦礫が欲しくて来たわけではないのだ。


「先輩、ペットフード置いてる店に心当たりは?」


「・・・龍宮にゃあいくらか心当たりがあるが、詩谷じゃあのう・・・ホームセンターくらいしかわからん」


携帯のスタンドアロン地図アプリを立ち上げ、検索する。

GPS万歳だな。

世界がまともに戻るまで頑張って飛んでてくれよ、衛星さん。


「むーん、どっちにせよここら辺にはないですね。詩谷中心部に戻りつつ探しますか」


検索結果を見ながら呟く。


正直、ここで揃うなら楽だったんだけどなあ・・・

詩谷中心部はゾンビやら変なの多そうだし。


俺たちが早々苦戦するとは思えんが、それでも面倒なものは面倒なのだ。

周囲に気を配らんといかんしな。


「移動しますか」


「ほうじゃのう」


とにかく出発しよう。

先輩のノロケ百連発で結構時間喰ったし。

空模様も・・・微妙だな。

途中で雨が降るかもしれん。


そんなわけで、俺たちは再び軽トラに乗り込んだ。



相も変わらずゴーストタウンめいた我が故郷を走る。

・・・だが、前と違う点がいくつか見受けられるな。


「人間、増えたのう」


「増えたっていうか、外に出てきたんでしょ?食わなきゃ生きていけないし」


車は少ないが、川沿いで釣竿を持った人間がチラホラ見える。

空き地で畑的なものを作っている形跡も。

そこそこ人間の営みが戻ってきつつあるようだ。


「他人から奪おうとしとらんのはええことじゃ」


「ですねえ、龍宮より若干民度がマシ・・・かな?」


時間が経って、ゾンビのことが分かってきた人が増えてきたんだろう。

ノーマルゾンビは対処法さえしっかりしていれば、早々脅威にはなりえない。

それに、ここら辺には白黒やら黒ゾンビがいない。

理由は知らんが、それだけで生存難易度はぐっと下がるだろうさ。


何度か車とすれ違ったが、以前のように追われることもなかった。

まあ、今は荷台に六尺棒以外積んでいないしな。

魅力的には映らないんだろう。

帰りは気を付けないとならんがな。


「人間はしぶといけえな、ゾンビごときにゃ負けはせんじゃろ」


「まあねえ、戦争に比べりゃマシでしょうなあ」


ゾンビは核兵器とか反応弾とか縮退砲とか使ってこないしな。


「・・・しぶといけぇ、屑も増えるんじゃが」


「ま、それはね」


いかんともしがたい問題である。

同族を殺してても生き残る・・・それが人間の動物としての強みなのかもしれん。

俺たちも似たような事やってるし。


「世界を救うとか、そういうのは勇者的な人に任せますよ。俺は手の届く範囲で精一杯です」


「わしもじゃ。巴と子供らぁが無事なら、わしはそれでええ」


先輩はブレないなあ。

強い。

ブレブレな俺も見習わないとなあ。


「とりあえず、今は可愛い子猫のために頑張りますか」


「おう」


こういうのは考えすぎるとドツボにはまる。

楽にいこう、楽に。


「・・・万象千手のことじゃが」


先輩が真剣な顔で言う。


「気をつけえよ。恐らく最初に狙われるんは、おまーじゃ」


「・・・でしょうなあ」


ああ、気が重い。


「アイツは先生に・・・いや南雲流に恨みを持っとる。そういう相手はのう、頭だけ殺すだけじゃ気がすまんもんよ」


「間違いなく流派ごと潰しにかかってきますよね。話に聞くだけでも執念深そうだし・・・まったく、とっとと師匠に突撃しときゃいいんだ」


爺さんになったとはいえ、あの師匠が誰かに負けるなんて想像がつかない。


「はは、順番通りにかかってくるじゃろうよ」


「へっ、じゃあ先輩まで回ることはないですな。俺の所でぶち殺しますからね」


死にたくないし、殺されてやるつもりもない。

俺の所に来るなら・・・完膚なきまでに叩き潰してやる。


「言うようになったのう、田中野」


先輩はなんだか嬉しそうだ。


「やりたいことも、行きたいところもまだまだいっぱいあるんですよ。あんな狂犬ごときに殺されてやる道理はないですもん」


折角少し人生が楽しくなってきたところなんだ。

ここで急ブレーキかけられるわけにゃあ、いかんのよ。


「・・・先生に似てきたのう、田中野」


「・・・気のせいじゃありません?」


なんか最近よく言われるけどさあ。

似てない似てないって。

若い頃の師匠は、前にも言ったけどすっげえイケメンだし。


「そうじゃのう、先生に似とったら・・・これほどニブチンじゃあなかろうしのう」


「最近は気配察知能力も大分磨かれてきたんですよ?前の俺と同じだと思ってもらっちゃ、困りますなあ」


「(・・・そういうところがじゃ、まったく)」


何やら呟いた後、先輩は大あくびをして目を閉じた。

さて、第二候補に行きますかね。


俺はカーナビを確認し、アクセルを踏み込んだ。




「懐かしいなあ」


次に来た場所は、やはりホームセンター。

以前にも来た場所だ。


「死体がないけど、どうしたんだろうか」


そう、えーと・・・タカ?だかリク?だとかいうチンピラを成仏させたところである。

駐車場は以前のようにがらんとしており、特に変わったところはない。


即席火炎瓶をぶちまけた焦げ跡は見えるが、死体が綺麗になくなっている。

ゾンビ共が焼肉として召し上がったんだろうか?

あれだけ黒こげになってりゃ、ゾンビ化もしないだろうし。

っていうかもう死んでたらゾンビにはならない。

・・・ならないんだよな?知らんけど。


「おまーも暴れとったんじゃのう」


「降りかかる火の粉を払っただけですよ、ええ」


そう言い返して、兜割を引き抜く。

さ、初心に帰って・・・スカベンジといくか。

相も変わらず、ぽっかりと口を開けた入口へ歩き出す。

神崎さんでもそうだが、仲間がいるってのは心強いなあ。



足を踏み入れたホームセンター内は、以前にも増して荒れている。

ヘルメットライトの映し出す視界には、床に散らばった梱包材の破片やらなんやら。

隙間に血痕が見える。


「おるな」


「ええ、どうします?」


何者かの気配がする。

たぶん、ゾンビだろう。


「ここでええじゃろ。わしが左で・・・」


「俺が右、っと!」


兜割で床を勢いよく叩くと、甲高い音が暗がりに反響する。

ヘルメットのシールドを下ろすとほぼ同時に、聞き馴れた声。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」「アガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」「イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」


おうおう、大合唱だ。

数は・・・たぶん10くらいかな?


響く足音。

ライトが照らす丸い円に、チラホラ見えるゾンビの影。


「さて、と」


軽く息を吐き、兜割を肩に担ぐ。


「ソラのご飯のためだ・・・成仏、しなぁっ!!」


一番乗りゾンビの脳天に、勢いよく兜割を振り下ろす。

眉間に叩き込まれた一撃で、ゾンビの額が陥没し両目が飛び出る。


うおっ!?柔らか!?


詩谷ゾンビがやわやわなの忘れてた!

白黒ぶっ叩くぐらいの勢いでやっちまったな!

力加減が・・・難しい!


「っふ!!」


続くゾンビの膝を薙ぎ、地面に引き倒す。

こっちも柔らかい!

俺も少しは・・・強くなってるってことかなあ!


3体目のゾンビに胸を勢いよく突きを放ちつつ、よくわからない感想を抱いていた。



「地域でゾンビの強弱が違うっちゅうのは、不思議じゃのう」


ゾンビを粘土細工めいた物体に変換し終えた先輩が呟く。

周囲には、名状しがたい状態の成れの果て。

・・・いくら柔らかいって言っても、なにこの惨状。

俺もいくらか成長したようだが、破壊力の点では先輩の足元にも及ばんなあ。


「ねー、不思議ですよねえ。さてさて、じゃあ探しますかな」


「わしゃあ、何か役立つもんがないかどうか探してみるわ。終わったら入り口で合流じゃな」


「了解でーす」


近くに転がっていたカートを押し、俺はお目当てのペットショップエリアへ向かう。



「・・・むごご」


腐敗臭が、凄い。

前に来た時は気付かなかったが・・・なんだこれ。

口元にタオルを巻いたが、あまり効果を感じられない。


ライトで照らした先には・・・壁に並んだケージの中が見える。

元は愛くるしいワンちゃん猫ちゃんだったそれらは、物言わぬ死体となっていた。

他にも、熱帯魚コーナーや小動物コーナーでも死体の山。

それらが混然一体となって、ペットコーナー周辺を凄まじい悪臭で包んでいる。


「・・・だが在庫は潤沢だな」


元々食料にするには抵抗があるし、何よりこの悪臭のお陰か。

周囲の物資は結構略奪されているというのに、ここはほぼ手付かずである。


「結構美味いのになあ、ペットフード」


ササミとかジャーキー限定だけどな。

あのペレット状の方が味がないし・・・

今度高級缶詰を試してみようかしら。


まあ、この先食料がヤバくなってくればみんなペットフードの魅力に気づくかもしれんな。

俺の好きな某ポストアポカリプスゲーでも主食だったし。


さてと・・・とりあえず子猫用の餌だな。

腐臭に耐えながら該当の棚へ行く。

おお、あるある・・・よりどりみどりだ。


子猫用ミルク・・・ん?

うお、結構細かく分かれてるんだな。

小型?

大型?

うむむむむ・・・


あれ、そういえばソラって・・・どんな種類の猫なんだろうか。

どう見ても血統書のあるような種類じゃないだろうし・・・


「・・・まあいいか、猫は猫だし」


片っ端から持って帰ることにしよう。

神崎さんと後藤倫先輩なら詳しそうだし。


ミルクばかりじゃなくて、大きくなった時用に缶詰やドライフードも持って帰ろう。

日持ちするしな、特にドライの方。


「参ったな、こりゃ何往復かせにゃ」


いつでも来れるとも限らんし、今度来た時に残っているという保証もない。

持てるだけ持って帰るか。




「ふいい・・・結構疲れた」


「まるで引っ越しじゃのう、幌を張らにゃ」


小一時間ほど往復を繰り返し、軽トラの荷台はパンパンになった。

ソラの食料は当然として、葵ちゃんのリクエストでもある猫用オモチャ。

サクラの食料兼俺の非常食に、やっぱり犬用のオモチャやリード、犬用の靴やレインコート。

各種予防薬に・・・組み立て式のキャットタワー。

後は風呂沸かし棒の予備と、着火剤などのこまごまとしたもの。


なお、発電機や冷蔵庫は根こそぎなくなっていた。

テレビまで消えてたのは笑ったが。

ラジオはともかく、なんでテレビなんか・・・あ、DVDとか見るためにかな。


「割れんとええのう」


そして先輩が回収してきた荷物。

子供用の下着、パジャマ、靴に普段着。

ボールやバットのような遊具。

そして食品売り場に残っていたという乾物やお菓子類、それにいくばくかの保存食。

野菜の種と肥料。

そして極め付きは・・・そう、おっちゃんのお土産用の酒である。


「大漁ですな」


「あるうちに回収しとかにゃあ、な」


戦利品で荷台はこんもりである。

確かに、幌でもつけて固定しないと走行中にポロポロこぼれてしまう。

早速固定してとっとと帰ろう。


「ぬ」


「む」


そう思った所、音が聞こえた。


駐車場の向こう・・・国道から車が入ってきた。

黒塗りのワゴン車である。


「・・・わしが見とくけぇ、はよう幌出せ」


「ういっす」


ワゴン車と軽トラの間に先輩が立ち、六尺棒を地面につける。

・・・正直。アレ見てこっちを襲おうとする人間なんていないんじゃなかろうか。

懐の拳銃をいつでも抜けるように位置を調整しつつ、幌を付ける。


入ってきた黒ワゴンは、俺たちからかなり離れた位置に駐車した。


横目で見ていると、車内からは3人の男と2人の女が降りてきた。

年齢は・・・大学生くらいか?

大学生・・・なんか嫌な記憶が蘇ってくるな。


そいつらは俺たちの方をチラリと見て・・・正確には六尺棒を持って仁王立ちした先輩を見て固まった。

・・・まあ、そりゃあな。

怖いもん。


「あ、あの!あのっ!ぶ、物資を探しに来ただけなんですっ!入ってもいいですかっ!?」


リーダー格っぽい男が、ここから見てもわかるほど顔を青くして叫んでいる。

こんなにちゃんと話ができる人間、外で久しぶりに見たな。

俺たちがここを独占してると思ったのかな。

俺のポケットにはちょいとデカすぎるだろ。


「わしらの店じゃないけえ、好きにせい!!」


「はいっ!ありがとうございますぅ!!」


彼らはまるで世界記録にでも挑戦するように、先を争ってホームセンターに消えていった。

おいおい・・・俺たちが掃除したからいいけど、武器も持っていかないのはアホすぎだろう。

それだけ動転していたということだろうか。

とにかく、喧嘩を売ってくるような人間じゃなくてよかったよかった。


俺は胸を撫で下ろし、引き続き幌の展開作業に戻った。

今回は楽に帰れそうだな、やったぜ。




「甘く考えすぎて罰が当たったんですかねえ!!」


「馬鹿はどこにでもおるっちゅうことじゃ!前見ぃ前!!」


途中までは平和だったんだ、途中までは。


ホームセンターを出発し、車を走らせていたところ・・・

ちょうどおっちゃんの家への中間地点で、すれ違った車が豪快にターンして追いかけてきた。

先に行かせようと車線を移動しても付いてくる・・・ハイハイ強盗ですね。


今の愛車は、幌で覆い隠されていてもパンパンの荷台だ。

さぞ宝の山に見えたことだろう。

それに、なんといっても軽トラ。

ごつくて頑丈そうな車よりは、弱そうな連中が乗っていると思われたのかもしれん。


「このままじゃ追いつかれますよ!どうします!!」


「中村さんとこまで引っ張っていくわけにゃあいかんじゃろ!この先の・・・ホレ!あっこの駐車場へ入れ!!」


「了っ・・・解ぃ!!」


トップスピードのまま、ハンドルを切って左折。

河原まで下りる緩やかなスロープを疾走し、放置車両だらけの駐車場へ入る。

川が近いからだろうか。

人が住んでいるっぽいテントが芝生の上にチラホラ見える。


俺たちの後に続き、追跡してきた車両も走ってきた。

見るからに速そうなスポーツカーだ。

あのまま逃げても逃げ切れたとは思えんな。

ここ、ほぼ一本道だし。

脇道がいっぱいあれば小回りの利く愛車が有利なんだが、直線じゃあとてもとても・・・


「六尺棒後ろでしょ!?先に俺が降りますよせんぱいえええええ!?!?」


車を停めようとスピードを下げていたら、なんと先輩が助手席のドアを開けて飛び降りた!

無茶苦茶だよあの人!!


ドリフト気味に停車し、慌てて降りようとする。


視界の隅で、一切スピードを緩めず先輩に突っ込む車が見えた。

アイツら!そのままぶつける気か!?


「先輩!逃げて―――」


先輩が手を振ると同時に、スポーツカーのフロントガラスに蜘蛛の巣状のヒビが入った。

・・・手裏剣か!?


車はパニックを起こしたように蛇行し、先輩の脇をすり抜けて放置されているトラックに突っ込む。

轟音が響き、白煙が上がる。


「六尺棒ォ!!投げぇ!!!」


先輩の声に慌てて荷台から六尺棒を取り出し、相変わらず馬鹿みたいに重いそれを先輩に向かって投げる。

結構な勢いのそれを、先輩はこともなげにキャッチした。


「・・・!新手ェ!!」


スロープを降りてくる後続車が見えた。

無線か何かで連絡を取ってやがったのか!?

数は、2台!


後続車がこちらへ向かってくるのと同時に、先輩が白煙を上げる車に走る。


「ぬううううりゃあああああああああああああああっ!!!!」


半壊した車の助手席から這い出した男に、六尺棒が襲い掛かる。

かぶっていたヘルメットを盛大に変形させながら、男は糸の切れた人形のように吹き飛ぶ。

・・・あっちは任せといて大丈夫だな。


スロープを下り、俺の方へ猛然と突っ込んでくる車を横目に走る。

このままだと軽トラに突っ込まれかねないからな。


案の定、車は進路を俺の方へ変えた。


走りながら懐から銃を抜き、駐車場と河原を区切っている金属ポールを飛び越えた。

着地すると同時に両手で銃を保持し。フロントガラス目掛けて発砲。


3発ほど撃ち込むと、いい所にでも当たったのか車は急ハンドルを切って横転。

今までのスピードもあって、ゴンゴンと転がる。

何人乗ってるかは知らないが、生きていてもしばらくは動けんだろう。

さて、最後の1台は・・・っと。


最後尾にいた車は、スピンでもするようにUターンしようとしている。

鴨だと思っていたら鳳凰だった・・・というような心境だろうか。

引き際だけは見事だな。


だが、もう無理だ。

その先には、先輩が走り込んでいる。


先輩はターンしたばかりでスピードが出ていない車に、真正面から跳んだ。

空中で突き出された六尺棒は、いともたやすくフロントガラスを貫通。

ボンネットを陥没させる勢いで踏み込んだ先輩は、そのまま天井で受け身を取りながら地面に降り立つ。

何回転かする先輩の背後で、車は車止めに突っ込んで止まった。

・・・なんちゅう動きだよ、真正面から車と喧嘩するなんて俺には真似できな・・・そういえば昔やったな。


俺の目の前の方の横転した車からは、誰も出てこない。

ふむ・・・失神でもしたかな?

どこか破損したのか、風に乗ってガソリンの臭いが鼻を突く。


「んー・・・」


懐から煙草を取り出し、火を点ける。

何回か紫煙を楽しんだ後、ポイ捨て。


くるくると回る煙草は、地面に流れたガソリンに引火。

瞬く間に車を炎で包む。

ごうごうという音に紛れ、小さく悲鳴が聞こえてきた。

まだ生きてたか・・・でもまあ、すぐに死ぬだろう。


「っの!このぉ!!あああああああ!!ふっざかんなああああああ!!!」


燃え盛る車のドアを蹴り開け、血だらけの男が喚きながら出てきた。


「あーあー、待ってりゃじっくりウェルダンになったてのに」


俺の声に反応し、大振りなナイフを握った男は血走った目で俺を見て。


「てめえこのやろがああああああああ!?あっ!?あがあ!!!!」


俺が放った棒手裏剣を喉に喰らった。

地面に倒れ、のたうつ男に炎が引火。

何語かわからない叫びを上げながら、男はすぐに動かなくなった。


「こっちは済んだで!」


「こっちも火葬まで済みましたー!」


先輩の声に、俺も返す。

龍宮より民度がいいって発言、取り消すわ。

どこにでもアホはいるってこった。


俺は、新しい煙草に火をつけながら愛車に向かって歩き出した。

まったく、平和に1日が終わると思ってたんだけどなあ・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] よし、平和回だな
[一言] これもまた平穏な日常(炎上&火葬
[一言] 可愛い軽を煽ってたら、ムキムキマッチョが下りてきました。 って動画がありましたねぇ…… 脇道入って猛スピードで逃げて行きました(笑)
感想一覧
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