72話 友愛高校襲撃のこと 後編(※残酷な表現アリ)
友愛高校襲撃のこと 後編(※残酷な表現アリ)
階段を駆け下りる。
すれ違う避難民たちがぎょっとした反応をしているが、構っていられない。
一刻も早く、行かなければ!
2階へ下りると、そこで階段は渋滞状態に。
上へ逃げようとしている避難民と、下へ行こうとしている警察官でごった返している。
「道を開けてください!」「通してください!!」
「た、助けてェ!」「子供が、子供がいるんだ!!」「何してるんだ!早く上に行け!!」
・・・くそ、この先は進めそうにない。
階段が煙突の役割をしているのか、鼻に焦げ臭さを感じる。
さっきのは・・・どう考えても爆弾だよな。
どうしようかと考えていると、風に乗って悲鳴が聞こえてきた。
―――子供の、悲鳴が。
「・・・っ!!」
階段に見切りをつけ、記憶を頼りに廊下へ飛び出す。
たしか・・・こっちだ!!
『第一理科室』と書かれた教室のドアを開け、中へ。
「すいません通ります!!」
驚いてこちらを振り向く避難民たちに目もくれず、一直線に窓際目掛けて走る。
床の毛布やマットレスを蹴飛ばし、窓枠に手をかける。
「ドンピシャぁ!!」
我が愛車が真下に停まっている。
「お、おいキミ・・・えっ」
後ろから声をかけてきたおじさんの声が驚愕に染まるのを聞きつつ、そのまま宙へ身を躍らせた。
一瞬の浮遊感の後、狙い通りに荷台へ着地。
足首、ヨシ!!
すぐさまドアの鍵を開け、助手席に立てかけておいた兜割を引っ掴む。
入れ替わりに愛刀を置き、ドアを閉めた。
さっき見た連中は盾を持っていた。
刀より、こっちの方がいいだろう。
脇差は持っているから斬ることもできるしな!
しばし呼吸を整え、もうもうと煙を上げる正門付近へと走り出した。
煙の隙間から、正門が見える。
重厚な門扉は、下が酷く歪んで開いている。
地面も、少し抉れている。
そこらじゅう煙まみれだ。
煙幕でも使いやがったのか!?
何人かの避難民や警官が地面に倒れ、ピクリともしていない。
・・・畜生!やりやがったな!!
襲撃者は・・・いた!
そこら中で警官とにらみ合っている。
まだ校舎の中までは侵入されていないようだ。
それより子供は・・・さっき聞こえた悲鳴の主はどこだ!?
走りながら周囲を確認する俺の耳に、か細い泣き声が聞こえた。
その方向を見る。
蹲った警官に、今まさに男がバットを振り下ろそうとしている。
いや・・・あの警官の姿勢は!!
視認した瞬間に、棒手裏剣を全力で投げる。
音も立てず飛んだ棒手裏剣は、男の喉元に突き刺さった。
「げぇ!?っが・・・!えひゅ!?」
振り下ろす動きを中断された襲撃者が、喉に手をやる。
ざまあみろ!ソイツは『返し』付きの特別製だ!!
「死ぃい・・・ねぇ!!」
「ぁぎ!?!?」
接近する俺に振り向いた男。
その、振り向きかけた顔面を全力で殴りつける。
額を陥没させながら、そいつは吹き飛んだ。
「おい!大丈夫か!おい!」
蹲った警官に声をかける。
背中に、金属か何かの破片がいくつか突き刺さっている。
こいつは・・・酷い。
位置からして致命傷ではないようだが・・・治療をしないと失血がヤバいな、これ。
「うぅ・・・こ、子供・・・は・・・」
痛みに震える声でそう言うのは、なんと森山くんだった。
俯いてたからわからなかった。
「お、おにいちゃ・・・」
地面に覆いかぶさった彼の下には、震える子供の姿があった。
そうか、この子を庇って・・・
森山くんが身を挺して庇ったおかげか、その体には傷一つない。
「安心しろ、子供は無事だ!よくやったな!」
「よ、よかったぁ・・・」
「すまんが避難しろ!ここは危な・・・!」
そう声をかけていると、不意に殺気。
「うああ!!」
「っしぃい!!」
煙に紛れて振られた鉄パイプを兜割で迎撃。
接触した瞬間に、手首の動きで下方向へ巻き取る。
「っふ!!」
鉄パイプを下へ逃がしながら身を引き、煙の中目掛けて突きを放った。
「ぎぎゅぶ!?」
この感触・・・口の中に突き刺さったな。
ふらつく敵の胴体辺りを蹴りつけ、倒す。
「森山くん!殿は俺に任せて下がれ!子供を頼む!!」
酷なようだが、彼の傷は背中。
足は無事だ。
俺は、この状況で背を向けられない。
立ち込める煙の中から、いつ敵が来るかわからんからだ。
「は、はい・・・!うぐ、ぐ・・・ぐ!」
森山くんは子供を抱っこしたまま身を起こし、校内の方向へ歩き出した。
「しっかりしろ頑張れ!子供の命がかかってんだぞ!!」
「は・・・はいっ!!」
いい返事だ。
男になったな、森山くんよ・・・見直したぜ。
すまんが、頑張ってくれ!
その背中を視界の隅で見送るうちに、また煙の中で動きが。
すわ敵か、と身構えるも。
「ヴァフ!!」
煙でせき込みながら、チェイスくんが駆け寄ってきた。
「おっと・・・さっきぶりだな!」
「オン!!」
・・・一体何を噛んだのか。
口元を赤く染めたチェイスくんは、見た感じ元気そう。
俺を心配してくれているのかな。
「こんのォ!!クソ犬ゥウ!!」
それを追って、左手を赤く染めた男が走ってくる。
あ、アイツを噛んだのか。
向かえ撃とうと身構えた瞬間。
「チェイス!!バイトォ!!!」
煙の向こうから、そう声がした。
「ハルルルルル・・・ガァアアア!!!」
チェイスくんは低く伏せ、体中のバネを使って瞬時に斜め上に跳躍。
「っひぃあ!?ガボ!?」
走ってきた男の喉笛に、放たれた矢のように喰らいついた。
「っしゃあ!!」
俺も続いて踏み込み、チェイスくんを引きはがそうとする男の胸を全力で突く。
骨の砕ける感触・・・殺った!!
男が地面に倒れてなお、チェイスくんは凄まじい形相で食らいついたままだ。
痙攣していた男の動きが止まると、やっと口を離した。
破れた傷から、鮮血が吹き出している。
・・・軍用犬、すげえ。
「ご無事、ですか!?」
六郷さんが煙から飛び出して来た。
破片が当たったのか、頭からひどく出血している。
「そっちの方が重傷じゃないですか!?一体何があったんです!?」
「田中野さん、でしたか。いえ、先程門の前に来た一団が・・・」
言いかける六郷さんの脇を掠めるように手裏剣を飛ばす。
返し付きの十字手裏剣が、今まさにこちらへ来ようとしていた男の左目に深々と突き刺さった。
「あぎゃぁあ!?」
手に持った盾を取り落とし、手裏剣に手を伸ばした男。
「っふ!!」
そいつに、六郷さんが振り向きざまの回し蹴りを放った。
どぼ、と鈍い音と共にブーツが男の鳩尾にめり込む。
白目を剥いた男は、前のめりに倒れ・・・自分の体重で手裏剣をさらに押し込み、死んだ。
・・・おお、いい蹴りだ。
腰が入っている。
「中に入れろと言いつつ、何か筒状のものをいくつか・・・恐らく爆弾と煙幕でしょう。こう視界が悪くては・・・銃も使えません」
なるほど、理解した。
「数は・・・恐らく30人前後でしょう。はっきりとは、しませんが」
「了解・・・この周囲に子供は!?」
「・・・いえ、そこまでは」
六郷さんが答えると同時くらいに、またもや殺気。
「ああああ!!死ね!!死ねえええ!!!」
盾を構えた男が、その車のドアめいた盾ごと突っ込んでくる。
こいつ、全身にプロテクターまで!
姿勢を極限まで低くして踏み込み、盾で守られていない足の爪先をぶん殴る。
「いぎ!?」
いわゆる弁慶の泣き所も、もう一撃。
ここは痛いぜぇ!
痛みで姿勢を崩した男。
その、持った盾に肩から突き上げるように体当たり。
バランスを大いに崩した男は、勢いよく後ろに倒れて地面で後頭部を強打。
弓なりに反った後、ぐにゃりと静かになった。
「六郷さん!下がって防御を固めてください!こいつら多分。無理やり中まで押し通る気だ!!」
恐らく一気に中まで侵入し、人質なりなんなりを取る気だろう。
その上で交渉なんかをするつもりだろうな。
こいつらの勝ち筋は、それしかない。
「ですが、あなたは!?」
「そりゃもう・・・ゴミ掃除です、よっ!!」
倒れたままの男の喉を突く。
ごぎゅ、とけったいな声を漏らして男は永遠に黙った。
「んじゃ、俺はこれで!チェイスくんも頑張ってなぁ!!」
「ウォン!!」
頼もしく吠える声を背中に、俺は煙幕の中に踏み込んだ。
奴らが平気で活動してるから毒ガスじゃないだろうが・・・それでも煙たい。
「行け行け行けェ!」
「中に入っちまえばこっちのもんだァ!!」
煙のそこかしこから声がする。
やっぱり、中まで一気に来るつもりかよ!
「いっで・・・やめ、あああ!!やべ!やべで!!」
手近な気配をぶん殴ろうとしていたら、そいつは急に悲鳴を上げた。
俺以外にも、肉弾戦で戦ってるやつがいるみたいだな。
「っせぇえい!!!」
どこかで聞いたような声の後、何かを高速で地面に叩きつけたような音。
「った、助けてくれえ!!こ、ここにバケモンがいるぞォ!!・・・ああ!く、来るな!!来るなあア!!!」
「ぬう・・・あぁあ!!!」
おかわりのように、2人目もやられた。
恐らく、掴んで投げている。
これはやっぱり・・・
「宮田さん!大丈夫ですか!?」
「田中野さんですか!」
声をかけると、煙の中から宮田さんがぬっと出てきた。
・・・おいおいおい!結構な数の金属片が体中に刺さってるじゃないか!
「ちょっと!それ・・・!」
「問題ありません!」
・・・さいですか。
見ればほぼ筋肉で止まってるな、破片。
両腕に刺さった数が多いのは、爆発の瞬間に腕でガードしたからだろうか。
どちらからともなく、背中を合わせる。
「なんですこいつらは!?」
「捜索番の後を付けてきたようです!それ以外は不明!」
打てば響くように返してくる。
ま、それだけ聞きゃあ十分か。
「助太刀しますよ!」
「ありがたい!!」
会話が終わった瞬間、宮田さん側から2人の男が出てきた。
盾とプロテクター装備の重武装・・・武器は斧と大振りな鉈。
「んの野郎がぁ!!」
斧の方が先に仕掛ける。
「っふ!!」
その巨体からは想像もできないほどの速度で、宮田さんが踏み込む。
後から動いたのになんて速度だ!
宮田さんは両手で盾を掴み、そのまま下へ腕を振る。
しっかりと保持していたのが仇になったか、男は悲鳴を上げながら地面へ叩きつけられた。
「ぬぅん!!」
「っひぃ!?あが!?」
その後頭部に、体重を乗せた肘が突き刺さる。
ヘルメットが放射状にひび割れ、肘が貫通した。
男はびくんと痙攣し、動きを止める。
「・・・は?」
余りの状況に理解が追いつかない様子のもう1人に、宮田さんは流れるような動きで近付き。
「っちぇりああああああ!!!!」
鉈を持つ右手を掴んだ瞬間、一本背負いの体勢で頭から地面に叩き落とした。
・・・右腕、投げる途中で肘が折れて肩が外れてたな。
なんちゅう力と速度、それに正確さだ。
さすが・・・柔道オリンピック強化選手。
路上では柔道が最強と言われるのもわかる。
硬い地面に頭から落とされりゃあ・・・人間なんぞひとたまりもねえなあ。
「我々がいる場所は、正門と入り口の直線上です!」
「なるほど・・・そいつはわかりやすいですねえ!」
つまり、ここを通さなきゃいいわけだ。
いつかは煙も晴れる。
それまでしのげば、俺たちの勝ちってわけだ。
後残りが何人か知らんが・・・ここは絶対に通さんぞ!
軽く息を吐き、兜割を握りしめる。
「南雲流、田中野一朗太・・・参る!!」
そう言い放ったと同時に、3人の人影。
はは、そりゃあお行儀よく1人ずつ来るわけねえか!
装備は相変わらずの盾とプロテクター。
武器は、鉄棒に長い鋸に金属バット。
間合いが一番広く、掠っただけで大怪我をしそうな鋸持ちに手裏剣を投げる。
顔面に投げるとフェイントをかけ、上がった盾の死角・・・下半身へ!
「うぁわ!?ああ!!あああああ!!!」
返し付きの十字手裏剣が、ファウルカップを付けていない股間に突き刺さった。
それと同時に、奴らの間合いに踏み込む。
「っひ!」「あああ!!」
若干早めに振り下ろされた鉄棒を弾き返しつつ、金属バット持ちの盾に蹴りを入れる。
体勢を崩す金属バットを無視し、弾かれた鉄棒を慌てて引き戻そうとしている男目掛けてさらに踏み込む。
・・・随分とご立派な盾だが、片手が塞がってるもんなぁ!
手振りで振り下ろす軽い攻撃なんざ、楽に弾けるってもんだよ!!
「っしぃい・・・あぁっ!!」
そのまま、渾身の突きを放つ。
「ぱっふぁ!?」
ヘルメットのバイザー部分を破壊して貫通した剣先が、その下の急所・・・口と鼻の間に突き刺さる。
即死はしないが、痛みでまともにものを考えることすらできんだろう!
「こ・・・のオォオオ!!!」
最後の一人が盾を捨て、両手で持ったバットを振り下ろしてくる。
回避する時間は、ない!
なので、あえて踏み込む。
奴の体に張り付くように。
バットより内側、奴の肘が俺の肩に当たる。
「はなっ離れろ!この野郎はなぎゅん!?!?」
肉薄しながら後ろ腰から抜いていた脇差を、脇腹に深々と突き刺して捻る。
これで、もう助からない。
「ぎゅううう・・・ぎいいい!!!」
脇差を引き抜き、蹴り倒す。
刺されたところを押さえてジタバタともがく男を放置し、また前を向く。
煙が晴れてきた。
うっすらと前方の状況が見えてくる。
俺や宮田さん以外にも、何人かの自衛官や警官が戦っている。
不意を突かれはしたが、銃を使えないという状況なら日頃から訓練をしている方が有利なんだろう。
相手側は押され気味のようだ。
「突っ込みますね、俺」
破壊された正門の外。
道路側に陣取っている、リーダーっぽい影が見える。
何故分かったかと言えば、やたらデカい声で突っ込め突っ込めと指示しているのが聞こえたからだ。
前方に盾持ちを何人か配置し、その後ろにいる・・・ように見える。
「殿は、お任せください」
宮田さんが頼もしく答える。
三下は別にどうでもいいが、頭は確実に潰しておかないとな。
逃げられたら目も当てられない。
「何人か関節を外して確保していますので、情報源は大丈夫です。思う存分暴れてください」
殺っちゃっていいってことか。
話が早くて助かる。
宮田さんも大分修羅場をくぐってきたようだな。
一瞬だけ後方を振り返ってアイコンタクトし、大地を蹴って駆け出した。
声を出さないように、体勢を低くして走る。
大声でビビらせるのも効果的な戦術ではあるが、今回は駄目だ。
逃げられないように、接敵した瞬間にケリを付ける。
正門を越えたあたりで、取り巻きが気付き始めた。
慌てて俺に向けて盾を構え、向かってくる。
が、もう遅い。
「ひぐ!?」
盾を構え始めた前列の男に、手裏剣を放つ。
足先にざっくり手裏剣が突き刺さり、男は思わずといった感じで傷を押さえようとしゃがみ込んだ。
「よっ・・・とぉ!!」
走るスピードを一切緩めず、しゃがみ込んだ男目掛けて跳ぶ。
「ふぁぎ!?」
ヘルメットを勢いよく踏みつけ、さらに足場とする。
足元から何かが砕ける感触を感じながら、前方に跳躍。
「・・・へぇえ?」
慢心か、それとも馬鹿なのか。
防具も付けずにふんぞり返っていたリーダーらしきおっさんが、俺を見上げて阿保面を晒す。
「ぬぅ・・・あっ!!」
着地と同時に、大上段に振りかぶっていた兜割を振り殺す。
鼻を砕き、目を飛び出させ、おまけに首まで折れる感触。
男は、口を開けたまま即死した。
「あああ!お前なにしてあああ!やめ!?」
息を整えていると、後方から珍妙な叫びが聞こえた。
振り返ると、丁度宮田さんが男の胸倉を掴み、門柱にとんでもない勢いで投げ飛ばした所だった。
「はぎゅん!?」
まるでミサイルのように飛んだそいつは、頭から門柱へ叩きつけられた。
ヘルメット越しとはいえ、首へのダメージは避けられまい。
しかしまあ、人間がほぼ水平にかっ飛ぶのは初めて見た・・・すげえな、腕力。
「ま、ままま待って!降伏!降伏すりゅが!?!?」
何故か、盾と武器を投げ出して俺に向かって両手を上げた男の首をぶん殴る。
・・・何か言っていたような気がするが、気のせいだろう。
爆弾のせいか何かの幻聴だな、うん。
「これで、一段落ですね」
そうこうしているうちにすっかり煙は晴れ、正門前の惨状が明らかになってきた。
襲撃してきた側はほぼ無力化されている。
ケガをしている避難民や警官たちも、担架で運ばれ始めた。
死人が出てないといいんだが・・・
森山くんも大丈夫だろうか。
・・・あ、今敵は全員無力化されたな。
腕をチェイスくんに噛まれた男が、助けて助けてと泣き叫んでいる。
そんなに言うなら最初からやるなってんだ。
チェイスくん、首をガブっとやっちゃいなさいな。
あ、神崎さんだ。
こっちに来ていたのか。
手を振ると、俺に向かって恥ずかしそうに手を上げてくれた。
・・・あのラ〇ボーみたいな大型ナイフが、真っ赤に染まっている。
一体何人殺したんだか・・・
「ええ、そうですね。いやあ、お世話になりました」
「宮田さんも怪我人側でしょう、ホラ早く治療治療」
致命傷ではないんだろうが、その見た目は針鼠。
見ているだけで大変痛そう。
「いいえ、とにかく門を何とかしなければ・・・」
無残な姿になった正門を見上げる宮田さん。
・・・片方は何とか無事だが、もう片方は門柱にもダメージがある。
たしかにとっとと塞がないとゾンビその他が来そうだ。
「・・・お、いいもの見っけ」
襲撃側のものであろう、ライトバンが道に停まっている。
あれでとりあえず封鎖しようか。
「おーい!大変だ警官の皆さん!!宮田巡査部長が大怪我しているぞお!!!」
「いえ田中野さん、私は大丈夫なんですが・・・田中野さん!?」
「宮田さん!!」「巡査部長!!」「おーい!!救護班を早く!!!」
わらわらと警官たちに群がられ始めた宮田さんから離れ、俺は咥え煙草で歩き出した。




