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31話 先に進む覚悟のこと

先に進む覚悟のこと




「えぇりゃあっ!!!」


ごう、と唸りを上げて六尺棒が迫る。

なんとも大迫力だ。

まともに受ければ手は痺れるし、武器も持てないかもしれない。


「っし!!」


手にした兜割で、打点をずらしながら受け流す。

クリーンヒットはしてないというのに、なんという重さだ。

力で対抗すれば、絶対に勝てない!


接触した個所から火花を散らしつつ、六尺棒をなんとか側面へ受け流すことに成功した。

今度はこっちの番・・・だ!


「しゃぁっ!!」


六尺棒に添えた兜割を、そのままスライド。

相手の胸を狙う。


「ぬんっ!!」


これは決まるかと思ったが、力ずくで六尺棒が跳ね上げられる。

その勢いに負け、兜割は標的を外れて宙へ流される。


まっずい!?

この、気配・・・『無拍子』!


大きく開いた俺の胴体目掛け、さっき流したのとは反対方向の先端が翻る。

いなされた兜割を引き戻す時間は・・・ない!


ならどうする?

このまま喰らうか?

・・・馬鹿言えっ!!


最高速に達する前の六尺棒の先端を、足の裏で押さえる。

蹴るのではない。

『乗る』のだ。


「・・・っ!」


恐ろしい勢いで振り抜かれる六尺棒に逆らわず、跳ぶ。

一瞬の浮遊感。


3メーターばかり吹き飛ばされた俺は、そのまま地面に降りたつ。

すかさず、着地すると同時に低い姿勢で下段に構える。


・・・完全に衝撃は殺したはずなのだが、足裏に軽い痛みがある。

跳ぶのがほんの一瞬遅かったな・・・


「よう跳ぶのう・・・まるで先生じゃぁ」


「ご冗談を、師匠なら空中で置き土産の一つ・・・いや二つでも置いていくでしょう」


心から楽しそうな七塚原先輩に対し、俺は苦笑しながら返した。

さあて、まだまだ勝負はこれからだ・・・!



ホームセンターから収穫したアレやコレやを荷下ろしした後。

高柳運送の駐車場において、俺は七塚原先輩と立ち合っている。


どうしてこうなったかと言えば、俺から頼んだからだ。


黒ゾンビと交戦して、俺はいささか考えを改めた。

今までのように、適当にやっていたんじゃあいずれ死ぬかもしれない。

道場に通わなくなってからの錆を、ここらで落としておくことにしよう。

そりゃあ、今までも一人で稽古はやってきた。

でも一人ではできることも限られてくる。

実戦の中で勘を取り戻そうにも、今までのゾンビや屑どもの力量はそれに及ばない。


『楽に勝ててしまう』のだ。

・・・もっとも、そんな相手に不覚を取ってカッコいい傷をこしらえた俺が言えることでもないが。


というわけで、身近な圧倒的強者である七塚原先輩に白羽の矢を立てたわけである。

基本的に巴さんの次に稽古が大好きな先輩は、二つ返事で了承してくれた。

・・・後藤倫先輩?

あの人とやれば必然的に素手での勝負になる。

俺は徒手は苦手なんだ。

勘を取り戻すまでにどこかしらの関節を破壊されるのがオチだ。


「うまうま」


「うま~」


「羊羹もいいですねえ、濃いお茶がよく合います」


「・・・」


「むーさんがんばれ~!田中野さんもがんばれ~!」


稽古を見物しつつ、神崎さんや璃子ちゃん母娘、それに巴さんと並んで座って羊羹をパクつく先輩をチラリと見る。

甘味の魔力は偉大である。

いつもの無表情はなりをひそめ、その顔はいつもより若干緩んでいる。

わかりにくいがアレは先輩的には満面の笑みだ。

ちなみにアイスは戦利品の冷凍庫の中で、まだ仕込みの最中である。



さて、距離を取り呼吸も整えた。

まだ行くぞ。

七塚原先輩が前のように突っ込んできそうなので、今度は俺から前に出る。


なるべく上下のブレを抑え、滑るように踏み込む。


「っしぃ!!」


狙いは下段。

先輩の踏み出した足を狙う!


が、案の定足を軽く上げて避けられる。

防御ではなく回避、ということは!


「っじゃあぁ!!!」


直上から唸る六尺棒!!

こうくるわなァ!!


さらに加速し、先輩の脇をすり抜け・・・!?


「がっばぁ!?」


腹に、さっき回避で、上げた、足が!!

跳ぶ隙も、ない!


腹部の激痛、それに浮遊感。

背中からまともに地面に激突する。

ごろごろと地面を転がり、衝撃を少しでも逃がす。

・・・ここ!!

吹っ飛ばされた勢いのまま、手を突いて無理やり立つ。


吐きそうなぐらい痛いが・・・休む時間はない。


何故なら、先輩が追撃に突っ込んできているからだ。


「があああああっ!!!」


「ぬううううううあっ!!!」


突進の勢いを乗せて突き出される六尺棒。

その先端を全力で殴りつけて軌道をずらす。

するとさっきのように、反対側の先端が俺の攻撃の勢いによってさらに加速。

横薙ぎが飛んでくる。

これを・・・待っていたァ!!


足を大股に開き、地面に倒れ込むように回避。

そのまま、俺にまた向くように上げられる足の・・・太腿目掛けて跳ね上がるように兜割を振る。

先輩の筋肉なら、兜割の一撃でも耐えられるだろ!

手加減している余裕は、ない!!


「しゃあぁ!!!」


蹴ろうとした足が邪魔をして、先輩は振り下ろせない。

兜割が、腰に近い太腿にめり込む。


「ぐぬ!」


かったぁ!?

案の定、タイヤみたいな手応えが俺に返ってくる。

なんちゅう筋肉!

なんたる肉体!


そのまま低い姿勢で地面を蹴り、後ろへ跳んで距離を稼ぐ。

さっきの声からしてダメージは与えられたようだが・・・俺のダメージとは比べ物にならん!


「おうりゃあああああ!!!」


だってホラ、今まさに突っ込んできてるし。


「あああああああっ!!」


俺もまた、逃げ出したいのを堪えて前に跳ぶ。

逃げるわけにはいかん!

元よりリーチは先輩の方が武器でも肉体でも圧倒的に上!

俺が唯一戦える距離は、至近距離だ!!


地面をこすりながら、下段から俺に向かう六尺棒。

それに、真っ向から兜割を振り下ろす。

下手な場所を打てば、その衝撃はまた受け流されて俺へ返るだろう。

だから、地面に向けて六尺棒の軌道を、落とす!!


「ぐう!!」


あ、これ無理。

手首が折れそう。


俺は上段、先輩は下段。

普通に考えれば有利な位置。

だが先輩は、そんなものを軽々と超えた。


冗談のように俺の両腕は宙へ跳ね上がり、痺れた手から兜割が抜け飛ぶ。

迫る攻撃に対し、俺は―――


「はァ!!!」


そのまま振り上げた手を利用し、先輩の首に手刀を落とす。

ぐぐう、手がいてぇ!!

少し驚いた様子で、先輩の攻撃速度が若干遅くなる。


冷や汗をかきながら風を纏う六尺棒を躱し、沈み込む。


「おらァ!!!」


その姿勢からバネのように跳ね、右膝を先輩の鳩尾に叩き込む。

まるで鉄板でも蹴ったような衝撃。

だが止まるわけには、いかん!!


六尺棒より、兜割よりさらに軽く速い。

徒手の回転数で、一矢報いる!!


入れた膝を引き戻し、左足で脛を狙う。

六尺棒の切り替えしまでに、せめてもう一撃!!


これは稽古だ、実戦じゃない。

だからこそ、持てる全力で立ち向かう。

失敗しても死ぬわけじゃないからな!

・・・いや、当たり所が悪ければ死ぬが。


ローキックが先輩の足に入る。

蹴り足に鈍痛。

・・・コレ本当に足かな?

超合金の塊とかじゃない?


いやいやいや変なことを考えている暇はない。

一手でも多く、一撃でも多く攻撃を当て―――



鳩尾に、掌底が突き刺さるのが見えた。




肺の中の空気と唾液が巻き散らかされ、成すすべもなく俺は吹き飛ぶ。

歯を剥いて笑う先輩が、見えた気がした。


そうだよなあ・・・先輩、六尺棒使わなくても強いもんなあ・・・

ああくそ、しかも掌底、かよ。

はぁ・・・優しいこった。

いや、俺が・・・弱いのか。


なんだよ・・・少し、悔しいなあ。


出鱈目に回転する景色と暗くなりつつある視界。

それを感じながら、さてどこまで転がるのかな・・・などと他人事のように考えつつ、俺は意識を手放した。




・・・これは、いつの記憶だろうか。

道場の天井が見える。

ということは、俺は今倒れているということか。

・・・ああ、わかった。

あの時かあ。



「お主は、心を隠すのが上手いのう」


ひとしきりボッコボコにされた後、師匠が言った。

・・・?

何のことだろうか。


「はあ?ポーカーで後藤倫先輩に100戦100敗の俺がですかあ?」


「ちーがう、ちがう、そこではない」


にやにや笑いながら、師匠はどっかりと床に座る。


「そんな表面のことでは、ない。心の奥底よ」


「まさか俺に、秘めたる強さ的なものが眠ってるとかそういう・・・?」


若干の嬉しさを覚える。


「馬ぁ鹿、そんな都合のいいものはこの世にないわい。強さとは、血反吐を吐いたその先にしか転がっておらん」


・・・ですよねー・・・


「・・・心の奥底に秘めた、望みよ」


「・・・?」


うーん?

なんだそりゃ。

俺の望み?

・・・毎日楽しておもしろおかしく生きていくことだけど?


「・・・『ゆか』」


「・・・っ!!!!!!」


瞬間、心臓が躍った。

一瞬で頭が冷え、汗が引く。


「・・・それよ」


師匠が真顔になって真っ直ぐ俺を見ている。


「・・・安心したわい。まだ『それ』はお主を強くしておるらしい」


「なんの、ことすか」


釈然としない気持ちでこぼすと、師匠はそれは楽しそうに嗤った。


「楽をしたいと言いながら、稽古をやめぬ。嫌だ嫌だと言いながら、自分より格上に喰らいつく・・・お主がそうできる、理由よ」


立ち上がった師匠は、嬉しそうに木刀を担ぐ。


「いつか、来るといいのう・・・お主の望みが叶う時が」


「・・・はぁ?」


呆けていらっしゃるのかな?


「む、なんじゃ師匠に対してその態度は。ほれほれ立て馬鹿者、実戦組手1000回」


「嘘でしょオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」


まあ、普通にボコボコにされた。

半死半生で横たわる俺を見下ろしながら、師匠が言ったことは今でもよく覚えている



「お主は色々考えすぎる。わしくらい阿呆ならよかったのにのう」




・・・冷たいなあ。

おでこが冷たくて気持ちいい・・・を通り越して痛い痛い痛い!!

全身が冷た痛い!!!!

雪山で埋もれている気分!!!


「ぶはぁっ!?」


「ん、やっと起きた」


「きゅ~ん!きゅ~ん!」


視界にいつものような無表情の後藤倫先輩、それに抱っこされたサクラ。


「なんなんっ・・・寒ゥイ!!!」


気が付くと俺は服を着たまま、デカい水を張った桶にぶち込まれていた。

思わず身を起こそうとすると、腹部に激痛。


「あだだだだ!!痛い冷たい!!」


「うっさい」


「ぐもう!?」


目にも止まらぬ速さで、口に何かが突っ込まれる。

これは・・・氷!?


気付けば、俺のつかっている水にもぷかぷかと大きい氷が浮かんでいる。

寒いわけだよ畜生!!!

何だこれ!?

冷凍庫で作った氷か!?


「寝すぎ、みんな心配してた・・・私以外」


「もごごご、ごごご(先輩はしてくれないんすね)」


「当然、あんな掌底で死ぬわけない。私の貫手なら別だけど」


・・・それは本当に死にそうだから勘弁していただきたいものだ。


長い事氷水につかっていて、末端まで冷えた体を起こす。

うおお・・・風呂・・・・風呂に入りたい。


「風呂は神在月が沸かしてる・・・しばらく日干ししたら?」


・・・だから神崎だってのに。

突っ込む気力もないので、おもむろに大の字で寝転がる。

サクラが先輩から飛び降りて、俺の顔に寄ってきた。


「きゅん!ひゃん!」


「おう、お父ちゃんもう大丈夫だかんな」


頬を舐めるサクラに手を伸ばし、撫でる。

サクラは目を細めて嬉しそうだ。


「心境の変化?」


「・・・へ?」


先輩の言葉に、思わず間の抜けた声が出る。


「吹き飛ばされた時、死ぬほど悔しそうだった」


「・・・」


「いっつもは、腕が折れても頭蓋骨にヒビが入っても、ヘラヘラ笑うだけだったのに」


あのねえ、両方あんたのせいでしょうがその怪我は。

しかし、そんな悔しそうな顔してたのか?俺は、


「・・・でもまあ、悪くはなかった」


言葉とは裏腹にとても嫌そうな顔をして、先輩は去って行った。

・・・なんのこっちゃ?



「な~んのことだろうなあ~」


「わふん」


サクラと一緒に風呂につかりながらぼやく。

いつものようにお湯を満たした桶の中にいるサクラは、俺を不思議そうに見つめている。


「お腹空いたなあ、サクラ」


「わっふ」


不精してそのまま泡立てた犬用シャンプーを付け、サクラをモフモフにする。

いいんだ別によ。

俺達が最後なんだから。


ソフトクリームの塊めいた状態のサクラを見ながら、腹に目を落とす。

うーむ、実に痛そうな痣だ。

実際とても痛い。

ちなみに先輩に入れた一連の攻撃は、全く意味をなしていなかったようだ。

・・・やっぱあの人は超合金でできているのかもしれん。


「・・・もうちょい頑張らねえと、なあ」


「ももふ」


泡まみれのサクラが、やはり不思議そうな顔をして俺を見つめていた。



いい湯につかり、サクラと湯気を上げながら風呂から出る。

サクラは最近ではすっかりドライヤーにも慣れ、手がかからなくなった。

いい子であるなあ。


そして入った休憩室には、それはそれは幸せそうな顔をして手製のアイスクリームを頬張る後藤倫先輩がいた。


「甘露甘露」


「粉末牛乳でも代用できたみたいですね」


「生乳には劣る・・・けどおいしい」


この世の幸せを一身に手にしました、といった雰囲気の先輩である。

サクラが大変興味深そうに見つめているが、あげるわけにはいかんな。

・・・あ、そうだ。

忘れていた。



サクラを伴って休憩室から出て、オフィスに置かれた冷凍庫へ向かう。

うん、問題なく稼働しているようだな。

本来はキャンピングカーなんかに載せる大型冷凍庫だ。

充電式なので、急に発電機が止まってもすぐに駄目になるものでもない。

動いているのはこれ1台だけだが、回収したのは全部で6個。

食料の長期保存もできるし、役に立ちそうだ。


それを開け、製氷皿からお目当ての氷を出す。

子犬用のミルクを凍らせたものだ。

なんとなく作ってみた。

それをボウルに移し、サクラの前に置いてやる。

舌に張り付くといけないので、通常のミルクも上からかける。


「ホレ、人生・・・いや犬生初めてのアイスだな、どうぞ」


初めて見る不可思議な物体に、興味津々ながらもなかなか口を付けないサクラ。

しばらくスンスンと匂いを嗅ぎ、それが飲みなれたミルクだと気付いたようだ。

ペロペロと舐め、おずおずと口に含む。

その感触が面白いのか、尻尾をぴこぴこと振りながらがりごりと齧り始めた。


「・・・気に入ったか?」


「わぉん!」


嬉しそうに俺に吠えると、サクラは再び氷との格闘に戻った。

お腹を壊すといけないから、あまり多くはやれないが・・・それでも嬉しそうでよかったなあ。


「お腹は大丈夫ですか?田中野さん」


そうしていると、神崎さんが外からオフィスへ入ってきた。


「ええまあ、ご心配をおかけしました。情けないことで・・・」


「いいえ、素晴らしい戦いぶりでした」


氷を齧るサクラを楽しそうに眺めながら、神崎さんは椅子に腰かけた。


「七塚原さんの棒術も凄まじいですが・・・田中野さんの剣術も、そして後半の格闘も・・・素晴らしかったです」


「いやあ、お恥ずかしい・・・」


頭を掻きながら、俺も適当な椅子に座る。


「いつもより、少し前のめりに感じましたが・・・何か、心境の変化でも?」


神崎さんにも先輩と同じことを言われたなあ。


「うーむ、なんていうかその・・・笑いません?」


「私が、田中野さんの頑張りを笑うことなどありえません」


・・・なにその全幅の信頼感は。

照れるぜ。


「いやあ、その・・・もっと強くなりてえなあ、なんて思いましてね・・・恥ずかしながら」


「・・・それは、新種のゾンビに関してですか?」


そう言われ、そうだと答えようとして。

脳裏に、さっき見た記憶が蘇った。


「いや・・・」



『わしくらい阿呆ならよかったのにのう』



そう、師匠の言葉がまた聞こえたような気がした。


「たぶんね、気に入らないんですよ、俺は」


定まらない気持ちのまま、口を開く。

言葉にするうちに、何となく自分でもわかってきた。


「俺の周りの人が、俺がなんとかできたはずの人が、死んじまうってことが」


ゆかちゃん。

生きていれば何者かになれていたはずの彼女。

それが、もういない。

いなくなってしまった。

外道のせいで。


「あの時は俺に力がなかった。でも今は違う」


そう、今は何とかなっている。

美玖ちゃんを思い出す。

助けることができた人を。


「・・・ああ、そうかあ」


やっと合点がいった。

俺の気持ち。

俺が抱えていたモヤモヤ。


「俺は・・・俺が助けたい人を、助ける力が欲しかったんだ」


すっ、と腑に落ちた。

俺の我儘。

俺の、意地。


ガキの頃から抱えていた、胸の奥の気持ち。


どうでもいい奴らは、どうでもいい。

外道は、ぶち殺してもなんとも思わない。


「俺は、ゆかちゃんや酒井先生を・・・助けたい」


あの人たちのような、この世界に必要な人たちを。

理不尽に、命を奪われる人たちを。

せめて手の届く範囲くらいは・・・助けたいのだ。


たとえ、何人この手でぶち殺したとしても。


命の選別だ、これは。

傲慢に過ぎるかもしれない。


だが、知ったことか。


俺がやりたいことなんだ、それが!


「・・・ありがとうございます、神崎さん。スッキリしました」


「・・・は、い」


何故かぼうっと俺を見ていた神崎さんが、惚けたように答える。

・・・どうしたんだろうか。

湯覚めかな?


ガラス越しに七塚原先輩の姿が見えた。

璃子ちゃんと巴さんと、バドミントンなんかしている。

六尺棒とは比べ物にならないくらいのぎこちなさである。


「うーし・・・神崎さん、サクラをお願いしますね!」


「え?」


「ちょっと、強くなってきます!」


オフィスに立てかけられていた兜割を掴む。

風呂に入ったばかりだが、また汗をかくとしよう。

なあに、また沸かせばいいだけのこった!

俺は、七塚原先輩に再度の稽古をお願いするために歩き出した。

「わふ?」


「卑怯・・・卑怯ですよ田中野さん、あんな顔・・・!!」


「きゅん!」


「サクラちゃん・・・あなたのお父さん、とっても素敵ね」


「わぉん!わふ!!」

ちょいと遅くなりました・・・

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[一言] 神崎女史とうとう高千穂に逝ったか? 神在月は高千穂の神さんの会議の月でしょう?
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